23 / 23
クローバーをあげたかったんだ 2
しおりを挟む
「なぁ……冬木」
「なんですか」
「デートプラン、変更しよっか?」
「何を突然」
「映画観るのやめてさ。これから、四葉のクローバー探しに行こ?」
洸夜の提案に冬木は眉を寄せる。
「俺は映画の方がいいんだけど」
今は十二月だ。外の気温は一桁代前半。
「外でしゃがんでクローバー探すとか、嫌だ。体が冷える」
「冷えたら、冬木があっためてくれればいーじゃん」
ポケットの中で洸夜の指が、つつ……っと手の甲に浮く筋を辿る。
崩れた体勢を立て直してこちらを見た洸夜の瞳が妖しく煌めいた。
瞬間目の奥に視えたソレは冬木には慣れ親しんだ洸夜のイケナイ妄想な訳で。
一旦目をつむり、軽く頭を左右に振る冬木に洸夜の口角がニンマリとつり上がった。
冬木は茹だった顔で空咳を繰り返して反撃を試みる。
「そういえば、話してるうちに思い出したんだけど、聞いていいですか」
「いいよ。なんでも答えちゃう」
返事が軽い。だいぶ機嫌が良い。
「ほら、自然教室の時一緒にいた女子、覚えてます? ……でっかいミミズをいじってたっけ。洸夜、あの時様子がおかしかったですよね?」
冬木としては、サラッと言うのを意識した。
洸夜のプライドは高くて脆い。別に傷つけたいわけじゃないし喧嘩したいわけでもないからここはちょっと気をつけなきゃだ。
予想通り、ハッとなった様子の洸夜が目を逸らした。
「……そうだったか、な」
「なんでも答えてくれるんじゃなかったんですか」
「そ、それは置いとこう」
「知りたいです」
「いや恥ずかしいし!」
「……」
「好きなやつの前ではカッコいいままでいたいんだけど……言わなきゃダメ?」
と、とっておきの上目遣いで見上げられれば、それ以上追求できなくなるわけで……。
その後結局冬木が折れて、洸夜と一緒に河原で数時間四葉のクローバー探しをした。
映画は見られなかった。
シャワーを済ませて競うように潜り込んだ布団の中、「やっぱり寒かった」とぼやく洸夜の体を自分の体温で温める。
(幸せだ……)
腕の中の恋人に追いつきたい。けれど追いつけない……そんな不安を忘れさせてくれる温もりに冬木はうっとりとなる。
今、この瞬間を大切にしたい。
そしてできればずっとこの人を幸せにしたい……と願う。
ぎゅっと抱きしめなおす。
それほど力を込めたつもりはなかったが、ゲホッと洸夜が咳き込んだ。
「お前はプロレスラーか、バカ冬木っ。手加減しろって」
文句を言ってくる可愛い唇に、触れるだけのキスをする。
黙った洸夜がおねだりするような、何かを期待する眼差しで見てくる。苦笑した冬木は布団を被り直して洸夜の身体に覆いかぶさった。
膨らんだ布団の中からは、くぐもった笑い声に止まらないキスの音……そしてため息。
ベッドサイドに置いた分厚い辞書の間には、なんとか一つだけ見つけた四葉のクローバーが新聞紙と一緒に挟まれている……。
〈了〉
「なんですか」
「デートプラン、変更しよっか?」
「何を突然」
「映画観るのやめてさ。これから、四葉のクローバー探しに行こ?」
洸夜の提案に冬木は眉を寄せる。
「俺は映画の方がいいんだけど」
今は十二月だ。外の気温は一桁代前半。
「外でしゃがんでクローバー探すとか、嫌だ。体が冷える」
「冷えたら、冬木があっためてくれればいーじゃん」
ポケットの中で洸夜の指が、つつ……っと手の甲に浮く筋を辿る。
崩れた体勢を立て直してこちらを見た洸夜の瞳が妖しく煌めいた。
瞬間目の奥に視えたソレは冬木には慣れ親しんだ洸夜のイケナイ妄想な訳で。
一旦目をつむり、軽く頭を左右に振る冬木に洸夜の口角がニンマリとつり上がった。
冬木は茹だった顔で空咳を繰り返して反撃を試みる。
「そういえば、話してるうちに思い出したんだけど、聞いていいですか」
「いいよ。なんでも答えちゃう」
返事が軽い。だいぶ機嫌が良い。
「ほら、自然教室の時一緒にいた女子、覚えてます? ……でっかいミミズをいじってたっけ。洸夜、あの時様子がおかしかったですよね?」
冬木としては、サラッと言うのを意識した。
洸夜のプライドは高くて脆い。別に傷つけたいわけじゃないし喧嘩したいわけでもないからここはちょっと気をつけなきゃだ。
予想通り、ハッとなった様子の洸夜が目を逸らした。
「……そうだったか、な」
「なんでも答えてくれるんじゃなかったんですか」
「そ、それは置いとこう」
「知りたいです」
「いや恥ずかしいし!」
「……」
「好きなやつの前ではカッコいいままでいたいんだけど……言わなきゃダメ?」
と、とっておきの上目遣いで見上げられれば、それ以上追求できなくなるわけで……。
その後結局冬木が折れて、洸夜と一緒に河原で数時間四葉のクローバー探しをした。
映画は見られなかった。
シャワーを済ませて競うように潜り込んだ布団の中、「やっぱり寒かった」とぼやく洸夜の体を自分の体温で温める。
(幸せだ……)
腕の中の恋人に追いつきたい。けれど追いつけない……そんな不安を忘れさせてくれる温もりに冬木はうっとりとなる。
今、この瞬間を大切にしたい。
そしてできればずっとこの人を幸せにしたい……と願う。
ぎゅっと抱きしめなおす。
それほど力を込めたつもりはなかったが、ゲホッと洸夜が咳き込んだ。
「お前はプロレスラーか、バカ冬木っ。手加減しろって」
文句を言ってくる可愛い唇に、触れるだけのキスをする。
黙った洸夜がおねだりするような、何かを期待する眼差しで見てくる。苦笑した冬木は布団を被り直して洸夜の身体に覆いかぶさった。
膨らんだ布団の中からは、くぐもった笑い声に止まらないキスの音……そしてため息。
ベッドサイドに置いた分厚い辞書の間には、なんとか一つだけ見つけた四葉のクローバーが新聞紙と一緒に挟まれている……。
〈了〉
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
寂しいを分け与えた
こじらせた処女
BL
いつものように家に帰ったら、母さんが居なかった。最初は何か厄介ごとに巻き込まれたのかと思ったが、部屋が荒れた形跡もないからそうではないらしい。米も、味噌も、指輪も着物も全部が綺麗になくなっていて、代わりに手紙が置いてあった。
昔の恋人が帰ってきた、だからその人の故郷に行く、と。いくらガキの俺でも分かる。俺は捨てられたってことだ。
2度目の恋 ~忘れられない1度目の恋~
青ムギ
BL
「俺は、生涯お前しか愛さない。」
その言葉を言われたのが社会人2年目の春。
あの時は、確かに俺達には愛が存在していた。
だが、今はー
「仕事が忙しいから先に寝ててくれ。」
「今忙しいんだ。お前に構ってられない。」
冷たく突き放すような言葉ばかりを言って家を空ける日が多くなる。
貴方の視界に、俺は映らないー。
2人の記念日もずっと1人で祝っている。
あの人を想う一方通行の「愛」は苦しく、俺の心を蝕んでいく。
そんなある日、体の不調で病院を受診した際医者から余命宣告を受ける。
あの人の電話はいつも着信拒否。診断結果を伝えようにも伝えられない。
ーもういっそ秘密にしたまま、過ごそうかな。ー
※主人公が悲しい目にあいます。素敵な人に出会わせたいです。
表紙のイラストは、Picrew様の[君の世界メーカー]マサキ様からお借りしました。
【完結】恋した君は別の誰かが好きだから
海月 ぴけ
BL
本編は完結しました。後日、おまけ&アフターストーリー随筆予定。
青春BLカップ31位。
BETありがとうございました。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
俺が好きになった人は、別の誰かが好きだからーー。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
二つの視点から見た、片思い恋愛模様。
じれきゅん
ギャップ攻め
【完】君に届かない声
未希かずは(Miki)
BL
内気で友達の少ない高校生・花森眞琴は、優しくて完璧な幼なじみの長谷川匠海に密かな恋心を抱いていた。
ある日、匠海が誰かを「そばで守りたい」と話すのを耳にした眞琴。匠海の幸せのために身を引こうと、クラスの人気者・和馬に偽の恋人役を頼むが…。
すれ違う高校生二人の不器用な恋のお話です。
執着囲い込み☓健気。ハピエンです。
君に望むは僕の弔辞
爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。
全9話
匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意
表紙はあいえだ様!!
小説家になろうにも投稿
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる