クローバーをあげたくて

たみやえる

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クローバーをあげたかったんだ 2

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「なぁ……冬木」
「なんですか」
「デートプラン、変更しよっか?」
「何を突然」
「映画観るのやめてさ。これから、四葉のクローバー探しに行こ?」
洸夜の提案に冬木は眉を寄せる。
「俺は映画の方がいいんだけど」
 今は十二月だ。外の気温は一桁代前半。
「外でしゃがんでクローバー探すとか、嫌だ。体が冷える」
「冷えたら、冬木があっためてくれればいーじゃん」
 ポケットの中で洸夜の指が、つつ……っと手の甲に浮く筋を辿る。
 崩れた体勢を立て直してこちらを見た洸夜の瞳が妖しく煌めいた。
 瞬間目の奥に視えたソレは冬木には慣れ親しんだ洸夜のイケナイ妄想な訳で。
 一旦目をつむり、軽く頭を左右に振る冬木に洸夜の口角がニンマリとつり上がった。
 冬木は茹だった顔で空咳を繰り返して反撃を試みる。
「そういえば、話してるうちに思い出したんだけど、聞いていいですか」
「いいよ。なんでも答えちゃう」
 返事が軽い。だいぶ機嫌が良い。
「ほら、自然教室の時一緒にいた女子、覚えてます? ……でっかいミミズをいじってたっけ。洸夜、あの時様子がおかしかったですよね?」
 冬木としては、サラッと言うのを意識した。
 洸夜のプライドは高くて脆い。別に傷つけたいわけじゃないし喧嘩したいわけでもないからここはちょっと気をつけなきゃだ。
 予想通り、ハッとなった様子の洸夜が目をらした。
「……そうだったか、な」
「なんでも答えてくれるんじゃなかったんですか」
「そ、それは置いとこう」
「知りたいです」
「いや恥ずかしいし!」
「……」
「好きなやつの前ではカッコいいままでいたいんだけど……言わなきゃダメ?」
と、とっておきの上目遣いで見上げられれば、それ以上追求できなくなるわけで……。


 その後結局冬木が折れて、洸夜と一緒に河原で数時間四葉のクローバー探しをした。
 映画は見られなかった。
 シャワーを済ませて競うように潜り込んだ布団の中、「やっぱり寒かった」とぼやく洸夜の体を自分の体温で温める。
(幸せだ……)
 腕の中の恋人に追いつきたい。けれど追いつけない……そんな不安を忘れさせてくれる温もりに冬木はうっとりとなる。
 今、この瞬間を大切にしたい。
 そしてできればずっとこの人を幸せにしたい……と願う。
 ぎゅっと抱きしめなおす。
 それほど力を込めたつもりはなかったが、ゲホッと洸夜が咳き込んだ。
「お前はプロレスラーか、バカ冬木っ。手加減しろって」
 文句を言ってくる可愛い唇に、触れるだけのキスをする。
 黙った洸夜がおねだりするような、何かを期待する眼差しで見てくる。苦笑した冬木は布団を被り直して洸夜の身体に覆いかぶさった。

 膨らんだ布団の中からは、くぐもった笑い声に止まらないキスの音……そしてため息。


 ベッドサイドに置いた分厚い辞書の間には、なんとか一つだけ見つけた四葉のクローバーが新聞紙と一緒に挟まれている……。



〈了〉






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