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しおりを挟む――そして、現在。
寝室のフットライトの灯りが洸夜の白い頬にほの赤いオレンジ色を差している。
前後に揺さぶられている洸夜は、さっきから、
「んぁッ、んぁ……ッ……」
と、それだけしか声にならない様子だ。
与えられる快感に身を捩り赤く熟れた胸の尖を俺に向かって突き出す、そんな姿を俺だけのために見せてくれる……。
こんな日常、夢か想像の中でだけでしか叶えられないと思っていた。
それが嬉しくて、ついネチネチと彼の弱いところを選んで攻めてしまう。
「気持ちイイですか? 今日はこの後、何回イキましょうか」
「んぅ、ん……ンッ」
「答えられないくらい気持ちイイ? 洸夜はホント、俺のが大好きですね……」
いい気になって、より奥へ突き進もうと腰を浮かせた瞬間、洸夜の両足が絡みついてきて気がつけば俺の方が組み敷かれていた。
「……んッ!」
と声をあげたのは洸夜の方だったのか俺だったのか。
勢いをつけて俺の腹に乗り上げた洸夜と俺のつなぎ目から、ねっとりとした水音が上がった。(恥ずかしい音だ……)俺の耳たぶが、じんわり熱をはらむ。
だって、挑発的すぎる。
洸夜は頭をもたげた自分の分身と胸の先で主張する頂きを自分の指でこねくりながら、
「だいぶ上手になったね。でも、こんなんでオレを満足させられると思う?」
と、俺を見下ろした。
ピュ、ピュと吐き出されたモノが彼の指を汚してゆく……。
彼の視線の下、俺の腹の上では洸夜のまばらな下草と俺の濃い茂みが混じり合っていた。
その上に彼の欲望が。
ドロリとした欲望が。
「好き、好き……もっと、まだ足りないよ」
体をくねらせ胎内にいる俺をまだまだ可愛がろうとする洸夜に俺はせいぜい取り繕った冷静なふりで片眉だけあげて見せた。
すぐにでも下から突き上げたい衝動をちょっとの間我慢したんだ。
余裕のない男って、カッコ悪いだろ?
だからさ。
「わざと煽ってない? 洸夜」
これは結構忍耐がいる。
洸夜の頬がぷくっと膨らんだ。
(何が不満なんだ?)と思わず俺は耳をそば立ててしまう。
結局俺は洸夜に平伏す下僕でしかない、と思うときだ。
「最近さ、研究室に入り浸ってるって?」
「ゼミにかわいい子いるんだって?」
「教授のお気に入りは昼メシも一緒に食うのかよ?
立て続けに質問された。
さて、問題です。
なぜ、社会人一年目の洸夜がお手のキャンパルライフを知っているのか?
それはね……。
大学を卒業しても、俺の洸夜には彼の熱烈なシンパ(簡単にいえば洸夜のファン……つーか、洸夜に心酔してる俺から見たらちょっとやばい人たちのこと)がいて、洸夜はそんな彼ら彼女らを使って俺のことをスパイさせてる。
世の中の恋人たちの大半は、相手からそんなことされたら嫌だろうなー。
喧嘩したり、別れたりとかするかもしれない。
でも……俺はそういうの、嫌じゃないから放ってる。
なぜって?
だって相手が洸夜だから。
彼の束縛、彼が俺に向けて放つ独占欲だから許せる、というか気持ちイイ。
なかなか理解されないことだろうけど……。
ただ、許せるからってなんでも飲み込めるわけじゃない。
俺にだって俺の目指す道ってやつがあるからさ。
まずはちゃんと大学卒業しなきゃだし。
「……だって、ゼミに入らなきゃ、研究とか卒論に不自由するでしょうに」
「洸夜以外だったらお断りって知ってるのに、聞くかな?」
「教授は師であると同時に俺の友人です。彼の恋バナに付き合っていただけですよ」(彼にはひと回り下の恋人がいるのだ)
一つ一つ俺なりに質問に答えたつもりだったが、帰ってきた洸夜の返事は、
「……オレ思うんだけど、学部を変えたら?」
というものだった。
洸夜はいまだに俺が以前教授からセクハラめいた扱いを受けたことを気にしているのだ。(それは彼がうちの大学に来る前で、俺は彼の職業も彼が自分の学部に来ることも、何も知らなかった)
若くてちょっぴりヤンチャな恋人をゲットした彼に、もはや俺に何かしようなんて気はさらさらない。
そんなの洸夜だって分かっているはずなのに、どうも今日の彼は何やらモヤモヤを抱えているらしい。
「今日はずいぶん駄々をこねますね?」
首を傾げて見上げると、プイッと視線を逸らされた。
「明後日から出張なんだ……冬木を一人置いていくなんて、不安でオレ泣いちゃいそう……」
と、ちらっと流し目されて。
うぅっ。くそ可愛いー!
と、テンションがぶち上がった俺はついに〈待て〉(←自主的なものだったが)ができなくなり、もう一度体勢を入れ替えて思う存分この、可愛くていやらしい俺の恋人を声が枯れるまでをあんあん言わせた。
洸夜のちんこからもう出すものがナイってとこまで責め苛んでくたっとベッドに大の字になった彼の髪を撫でて楽しんだんだ。
そして、
「お仕事は大事ですから、気をつけて行ってきてください。帰ってきて食べたいものとかある? って俺、カレーしか作れないけど」
と労りも込めながらった俺をなぜか洸夜が恨めしそうに見上げてくる。
なんで?
出張に出かける恋人に言うセリフとしてはまぁ普通の対応をしたつもりだったんだが……。
目をパチパチしていると、洸夜の指先がピンと俺の鼻先を弾いてきた。
「明後日、なんの日か忘れたのかよ」
「え……っと。もしかして俺の誕生日だから、出張行きたくない、とか?」
半信半疑で聞いてみる。
洸夜の顔がかぁ~ッと茹で上がった。
「ふ、冬木の誕生日はトクベツだからだッ」
……だって。
「だって、初めて冬木の冬木に触れた日だし……」
ゴニョゴニョゴニョゴニョ……。
なんだよ!
もっとすごいこと、これまでいっぱいしてるじゃないか!
と、言おうかと思ったのに。
「~~~っ!」
俺だって照れてしまう。
……そっか。
洸夜と俺にとって、俺の誕生日は特別な日なんだなって……。
〈了〉
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