最初のオトコ

たみやえる

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 夏になるとこま子の会社は繁忙期真っ只中で、荒木も仕事に渡仏の準備にと忙しく、二人で会う時間は極端に減っていた。プロポーズへの返事もズルズルと引き延ばしになったまま。
 そんな時。
 荒木の乗っていた飛行機が落ちた。
 最後の出張だと言っていたのに……。
 昼休み、ふと見た社食のテレビ。海に不時着した機体が映っていた。その胴体は、真っ二つに折れていて……。



 今、こま子の目の前には黒い土と、規則正しい緑の丸い連なりが広がっている。
「……こんなに広いんですか」
 日傘越しに眩しく照りつける太陽に目を細め、ため息のように言ったこま子に、
「えぇ、これ全部キャベツ畑で。あの子はホラ、あそこでタネ撒いてますわ」
と答えた女性は、色の抜けた麦わら帽に長袖長ズボン、花柄のエプロンをつけていた。腰に吊り下げた小さな缶からは蚊取り線香の匂いがする。
「こんなにキャベツがあって……まだタネを撒くんですか」
「キャベツは主力商品なんでねぇ、通年、切らさんようやってます」
 おーい、と女性が呼ぶと、プラスチックの箱を椅子に作業していた男性が腰を上げた。すっかり日に焼けて、まるで別人。着ている服は上下ともにチェックの柄柄で、ファッションに明るくないこま子でも(ダサいな)とわかる。

 畑を一回りしてから案内された作業小屋、勧められるまま丸椅子に腰掛けると、女性が隅に置いてある冷蔵庫からピッチャーに入った冷えた麦茶を出してくれた。
「驚きましたでしょ」
(あぁ、目元がほんとそっくり)と出かけたため息を飲み込んだ。
「はい、あの……私が知っている習平さんはもっとおしゃべりで……もっと、あの……」
 麦茶を飲んで、続く言葉を濁すと、女性が寂しい笑いをシワの刻む口元に浮かべた。
「脳がね……電話でも話しましたけど、高次機能障害言うんですか? 性格も変わってしまって。いえ、前に戻ったと言った方がいいかしらん」
「えっ?」
「習平はね、元々人付き合いが苦手で、会釈が挨拶と思っとるような子で。もぅ、じれったくなるくらい無口でね。それが大学入って最初の帰省で、まぁ、垢抜けて、話すようになって。あまりの変わりっぷりに、どうしたん? って聞くと、好きな子に振り向いてもらわなあかん。どうしても、って」
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