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いーな、仕事もデキそう。一年たっても、自分の所属部署の仕事内容知らなかった私なんかと違ってさ。
もし私が男ならレンの魅力に秒でイチコロだ。確実に。千賀氏が鈍チンだから今のところ彼女の思惑にハマってないだけ。あんな美人にぐいぐいこられて嫌な男はいないもん。ということは、私の皮算用はほんとに皮算用のまま終わってしまうかもしれない。
このまま私が何もできなければ。
翌日。
すっかり手詰まりな私は、朝からどよーんてデスクに突っ伏していた。同じ社員でも機密保持に厳しい研究棟に他部署の人間はおいそれと入れない。とりあえず昼休みが来るまで、千賀氏にちょっかい出せない。彼との距離を縮めたいのに縮まらない……これって恋? いや、仕事か。無駄にぐるぐるしてる頭の中、レンの笑顔(おーほっほ)がチラついてムカつく。
(くそー。どうしてやろうかしら)って思うのに、何をしたらいいのか全然思いつかない。ウンウンうなってたらいきなり頭にポンって軽く衝撃がきた。
(……誰っ?)
顔を上げたら氷雨先輩が立っていた。手には筒状に丸めた資料の紙の束。ううむ、これで私のことはたいたのね。不機嫌さを隠さずジトッと見ると先輩は相変わらず眠たそうな顔で、
「調べがついたよ、イズっちゃん」
と言ってきた。
(調べた? 何を?)
小首を傾げると、(なんだ? わかってないのか?)って軽く睨みかえされてしまった。
「昨日、お前のデート(嫌みたらしい言い方!)に乱入してきたあの女のこと」
「え? 昨日の今日でわかっちゃうんですか」
「バーカ、デキる男は違うんだっての」
って、また、丸めた紙でぽかりとやられた。
「彼女、名前は蓮子晴。ウチには去年の九月途中入社後、秘書課に配属されて、今は専務付き」
私よりあとの入社じゃん……ってことは私よりペーペーじゃん。なのに、あんな自信たっぷりの態度?! 仕事内容だって私とは雲泥の差だし。
なんなの、この虚しさはっ! って、打ち震えていると、
「うちのペーペーとは出来が違うのよ」
と先輩が言ってくる。(何その言い方。先輩は私の味方じゃないの?)流石にムッとして、
「気安くポンポンしないでくれます?」
って言ったら、鼻で笑われた。
「ガキにはこのくらいでちょうどいーの」
「ムカつく!」
先輩との言い合いは単なる戯れあいって頭では理解していても、昨日からの精神的ダメージが癒えてない私にはちくちく痛くて仕方ない。本気で腹が立ってきて涙目になりかけたところで課長が会話に入った。
「まあまあ、彼女、日本語だけでなく、英語に中国語にフランス語……五カ国語イケるそうですよ。加えてあの美貌。社内ではちょっとした有名人ですから。なんでも、ハーフらしいですよ」
ムキー!! ますます敵わないじゃん! 私は内心地団駄踏みながら言った。
「私は、一か国語イケますよ!」
そしたら、苦笑いされた。二人に! 爆笑されるより傷つく。くっそ。しかも課長ったら、
「いっそ対象と彼女とくっつけて社内婚ということで収めたらどうでしょう」
なんて言いはじめた。
ゲ。それじゃ私が困るの! スパダリ(と勝手に決め込んでいる)と結婚&借金とおさらば! っていう、私の計画が台無しになっちゃう。
「でも、彼女がウチの会社に腰を据えてくれる保証はないですよねっ? 途中入社ってことはどこかを辞めてウチにきたわけでしょ」
立ち上がって詰め寄った私に課長が目を白黒させている。
「それは何とも言えませんが。彼女、前職はホープでやはり秘書をしていたと人事記録にありましたけど……」
思いがけない大手企業の名前が出てきて、私はびっくりしてしまった。
「……ホープって、国内家電メーカー三番手だったとこじゃないですか」
実家の薄型テレビ、ホープのだもん。ホープって言ったら、ほんの数年前まで、群を抜く画質の良さと本体の薄さでテレビ市場を席巻した、日本人なら、いや世界でも知らない人なんていない有名家電メーカーじゃない。でも今年、年が明けた途端突然倒産しかけて、今は、海外の精密機器メーカーに吸収合併されたとか何とか。日の丸家電を外国勢に明け渡したって、当時、経営陣がマスコミにずいぶんと叩かれてたもん。テレビでさ、立派な様子のおじさんたちが、ペコペコ頭下げてるの見て、なんだかこっちまで惨めな気分になって……。
もし私が男ならレンの魅力に秒でイチコロだ。確実に。千賀氏が鈍チンだから今のところ彼女の思惑にハマってないだけ。あんな美人にぐいぐいこられて嫌な男はいないもん。ということは、私の皮算用はほんとに皮算用のまま終わってしまうかもしれない。
このまま私が何もできなければ。
翌日。
すっかり手詰まりな私は、朝からどよーんてデスクに突っ伏していた。同じ社員でも機密保持に厳しい研究棟に他部署の人間はおいそれと入れない。とりあえず昼休みが来るまで、千賀氏にちょっかい出せない。彼との距離を縮めたいのに縮まらない……これって恋? いや、仕事か。無駄にぐるぐるしてる頭の中、レンの笑顔(おーほっほ)がチラついてムカつく。
(くそー。どうしてやろうかしら)って思うのに、何をしたらいいのか全然思いつかない。ウンウンうなってたらいきなり頭にポンって軽く衝撃がきた。
(……誰っ?)
顔を上げたら氷雨先輩が立っていた。手には筒状に丸めた資料の紙の束。ううむ、これで私のことはたいたのね。不機嫌さを隠さずジトッと見ると先輩は相変わらず眠たそうな顔で、
「調べがついたよ、イズっちゃん」
と言ってきた。
(調べた? 何を?)
小首を傾げると、(なんだ? わかってないのか?)って軽く睨みかえされてしまった。
「昨日、お前のデート(嫌みたらしい言い方!)に乱入してきたあの女のこと」
「え? 昨日の今日でわかっちゃうんですか」
「バーカ、デキる男は違うんだっての」
って、また、丸めた紙でぽかりとやられた。
「彼女、名前は蓮子晴。ウチには去年の九月途中入社後、秘書課に配属されて、今は専務付き」
私よりあとの入社じゃん……ってことは私よりペーペーじゃん。なのに、あんな自信たっぷりの態度?! 仕事内容だって私とは雲泥の差だし。
なんなの、この虚しさはっ! って、打ち震えていると、
「うちのペーペーとは出来が違うのよ」
と先輩が言ってくる。(何その言い方。先輩は私の味方じゃないの?)流石にムッとして、
「気安くポンポンしないでくれます?」
って言ったら、鼻で笑われた。
「ガキにはこのくらいでちょうどいーの」
「ムカつく!」
先輩との言い合いは単なる戯れあいって頭では理解していても、昨日からの精神的ダメージが癒えてない私にはちくちく痛くて仕方ない。本気で腹が立ってきて涙目になりかけたところで課長が会話に入った。
「まあまあ、彼女、日本語だけでなく、英語に中国語にフランス語……五カ国語イケるそうですよ。加えてあの美貌。社内ではちょっとした有名人ですから。なんでも、ハーフらしいですよ」
ムキー!! ますます敵わないじゃん! 私は内心地団駄踏みながら言った。
「私は、一か国語イケますよ!」
そしたら、苦笑いされた。二人に! 爆笑されるより傷つく。くっそ。しかも課長ったら、
「いっそ対象と彼女とくっつけて社内婚ということで収めたらどうでしょう」
なんて言いはじめた。
ゲ。それじゃ私が困るの! スパダリ(と勝手に決め込んでいる)と結婚&借金とおさらば! っていう、私の計画が台無しになっちゃう。
「でも、彼女がウチの会社に腰を据えてくれる保証はないですよねっ? 途中入社ってことはどこかを辞めてウチにきたわけでしょ」
立ち上がって詰め寄った私に課長が目を白黒させている。
「それは何とも言えませんが。彼女、前職はホープでやはり秘書をしていたと人事記録にありましたけど……」
思いがけない大手企業の名前が出てきて、私はびっくりしてしまった。
「……ホープって、国内家電メーカー三番手だったとこじゃないですか」
実家の薄型テレビ、ホープのだもん。ホープって言ったら、ほんの数年前まで、群を抜く画質の良さと本体の薄さでテレビ市場を席巻した、日本人なら、いや世界でも知らない人なんていない有名家電メーカーじゃない。でも今年、年が明けた途端突然倒産しかけて、今は、海外の精密機器メーカーに吸収合併されたとか何とか。日の丸家電を外国勢に明け渡したって、当時、経営陣がマスコミにずいぶんと叩かれてたもん。テレビでさ、立派な様子のおじさんたちが、ペコペコ頭下げてるの見て、なんだかこっちまで惨めな気分になって……。
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