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「ニケメティは軍用部門も抱えている会社だぞ。ウチの商品を軍事転用されたら、社員にどう言い訳する?」
「今更民間技術の軍事転用なんて珍しくもない。アンタお気に入りの東方精密精器こそ戦車に軍用機に、お得意の半導体を使われ放題でしょう?」
と、専務。据わった目で先輩のこと見て、ぱちぱち瞬きしている。
先輩が傷が深くて苦しいのか、反論できないのかムッと眉間にシワを刻むと、専務が唇を歪め声を出さずに笑った。
「……それで千賀さんの研究データを盗ませたのかよ、叔母さん」
「私が盗んだんじゃあないのよ。防犯カメラの映像、ちゃんと残っていたでしょ。全部柳がやったことなんだから」
「……やらせたんだろーが。叔母さんのしたことは背任罪だぞ。親父が知れば悲しむ……」
そこまで言った先輩が(んん……?)と急に黙り、鼻をひくつかせると唇をひん曲げて私を見た。
「くっさっ。イズっちゃん、屁ぇこいた?」
「はぁっ!? ……する訳ないでしょ!」
急に変な濡れ衣かけられてこっちは恥ずかしいやら慌てるやら。大声で言い返すと先輩が「うぅ……」とうめき声をもらした。
「ちょ、ちょっと大丈夫なの、先輩?」
至近距離で大声出すなんて怪我人に対する態度じゃなかった……心配でどうしようもなくって背中を丸めて先輩の顔を覗き込む。すると、私のことチラリと見上げて何度か目を瞬かせた先輩の顔が真っ赤になった。
——え? なに、なに、なんなの?
先輩の顔色の急な変わりようにカァーっと頭に血が上った私が、
「……死んだりしないでよっ」
と涙混じりに言ったのと、
「すげー綺麗」
って、先輩が言ったのが前後して。
(は? 何が?)
と先輩の顔を見る。で、気づいた。先輩の目線は私の顔じゃなくて、私のドレスの胸元のその奥に注がれているってこと……。
先輩は、モジモジとはにかみながら、
「イズっちゃんのちっぱい、すんげー好きかも」
って、言ってくれちゃって!
思わず両手で胸元を押さえた。支えを失って膝枕状態だった先輩の頭が床に滑り落ちる。ゴツッと重たい音がして「ひどぉ……」先輩が小声で文句を言うのが聞こえたけどさ。
——あぁ、もう! 信じられない!
声にならない叫びに天井を仰いでいると、
「氷雨くん、歩けますか。私は専務を運ぶので」
遠慮がちに近づいてきた課長。肩に専務を担いでいるその姿に私がギョッとすると、
「当身して気を失ってもらいました」
と言う。その頃には白い煙が立ち込め始め、私や氷雨先輩が気にしていた嫌な匂いは、この船内のどこかで何かが燃えてるからなんだって、いくら私でもわかり始めてた。
とにかくこの煙、すっごく煙い!
口元を片手で覆って歩くんだけど、ケホケホしちゃうし喉の奥がいがらっぽくて呼吸するとチクチク痛む。空いた方の手で仰ぐんだけど、払っても、払ってもしつこく纏わりついてきて息苦しいたらありゃしない! (このまま避難できずに死んじゃうかも……)なんて、言葉にしちゃいけないフラグの予感を感じ始めた時。
「課長、予定変更。ちょっとこの状況やばすぎる。マイケル探すのは諦めて逃げよう」
氷雨先輩が突然言った。
え! と課長が振り返る。その肩に女性としてはがっちり体型で身長も課長より高い専務を乗せて、クルッてできちゃうんだよ? それでいてびくともしないってマジ凄い。改めて驚きながら私は、
「レンは? 千賀さんは?」
と、肩を貸している氷雨先輩の顔を見上げた。
白い煙のせいで霞んで見えるけど……。
「レンは……どこかに閉じ込めているなら見張り役がいるはず。流石にこの状況じゃ、そいつが一緒に連れて逃げているだろう。千賀さんには俺から連絡する」
先輩はそう言うと、ボーイの制服の内ポケットからスマホを取り出し、器用に片手だけで千賀氏に電話をかけ始めた。
——それでいいのかな。いや、きっとそれでいいんだ。……先輩がそう言うんなら。
「……イズっちゃん?」
通話を終えた先輩に、「じゃあ、行くぞ」って促されて、なのにその場で固まって動かない私の顔を先輩が覗き込む。
私だって……。頭では動こうって思ってるのに、体が動かなかったんだもん!
「氷雨先輩たちは、先に行ってて……」
「はぁっ? ここは言うこと聞くとこだろーが」
私の肩を掴んで怒鳴ってきた先輩の必死の目力に、つい頷きそうになったけどさ。私の言葉に間髪入れずかぶせてくる、その言い方!
カチン! ときた。
「今更民間技術の軍事転用なんて珍しくもない。アンタお気に入りの東方精密精器こそ戦車に軍用機に、お得意の半導体を使われ放題でしょう?」
と、専務。据わった目で先輩のこと見て、ぱちぱち瞬きしている。
先輩が傷が深くて苦しいのか、反論できないのかムッと眉間にシワを刻むと、専務が唇を歪め声を出さずに笑った。
「……それで千賀さんの研究データを盗ませたのかよ、叔母さん」
「私が盗んだんじゃあないのよ。防犯カメラの映像、ちゃんと残っていたでしょ。全部柳がやったことなんだから」
「……やらせたんだろーが。叔母さんのしたことは背任罪だぞ。親父が知れば悲しむ……」
そこまで言った先輩が(んん……?)と急に黙り、鼻をひくつかせると唇をひん曲げて私を見た。
「くっさっ。イズっちゃん、屁ぇこいた?」
「はぁっ!? ……する訳ないでしょ!」
急に変な濡れ衣かけられてこっちは恥ずかしいやら慌てるやら。大声で言い返すと先輩が「うぅ……」とうめき声をもらした。
「ちょ、ちょっと大丈夫なの、先輩?」
至近距離で大声出すなんて怪我人に対する態度じゃなかった……心配でどうしようもなくって背中を丸めて先輩の顔を覗き込む。すると、私のことチラリと見上げて何度か目を瞬かせた先輩の顔が真っ赤になった。
——え? なに、なに、なんなの?
先輩の顔色の急な変わりようにカァーっと頭に血が上った私が、
「……死んだりしないでよっ」
と涙混じりに言ったのと、
「すげー綺麗」
って、先輩が言ったのが前後して。
(は? 何が?)
と先輩の顔を見る。で、気づいた。先輩の目線は私の顔じゃなくて、私のドレスの胸元のその奥に注がれているってこと……。
先輩は、モジモジとはにかみながら、
「イズっちゃんのちっぱい、すんげー好きかも」
って、言ってくれちゃって!
思わず両手で胸元を押さえた。支えを失って膝枕状態だった先輩の頭が床に滑り落ちる。ゴツッと重たい音がして「ひどぉ……」先輩が小声で文句を言うのが聞こえたけどさ。
——あぁ、もう! 信じられない!
声にならない叫びに天井を仰いでいると、
「氷雨くん、歩けますか。私は専務を運ぶので」
遠慮がちに近づいてきた課長。肩に専務を担いでいるその姿に私がギョッとすると、
「当身して気を失ってもらいました」
と言う。その頃には白い煙が立ち込め始め、私や氷雨先輩が気にしていた嫌な匂いは、この船内のどこかで何かが燃えてるからなんだって、いくら私でもわかり始めてた。
とにかくこの煙、すっごく煙い!
口元を片手で覆って歩くんだけど、ケホケホしちゃうし喉の奥がいがらっぽくて呼吸するとチクチク痛む。空いた方の手で仰ぐんだけど、払っても、払ってもしつこく纏わりついてきて息苦しいたらありゃしない! (このまま避難できずに死んじゃうかも……)なんて、言葉にしちゃいけないフラグの予感を感じ始めた時。
「課長、予定変更。ちょっとこの状況やばすぎる。マイケル探すのは諦めて逃げよう」
氷雨先輩が突然言った。
え! と課長が振り返る。その肩に女性としてはがっちり体型で身長も課長より高い専務を乗せて、クルッてできちゃうんだよ? それでいてびくともしないってマジ凄い。改めて驚きながら私は、
「レンは? 千賀さんは?」
と、肩を貸している氷雨先輩の顔を見上げた。
白い煙のせいで霞んで見えるけど……。
「レンは……どこかに閉じ込めているなら見張り役がいるはず。流石にこの状況じゃ、そいつが一緒に連れて逃げているだろう。千賀さんには俺から連絡する」
先輩はそう言うと、ボーイの制服の内ポケットからスマホを取り出し、器用に片手だけで千賀氏に電話をかけ始めた。
——それでいいのかな。いや、きっとそれでいいんだ。……先輩がそう言うんなら。
「……イズっちゃん?」
通話を終えた先輩に、「じゃあ、行くぞ」って促されて、なのにその場で固まって動かない私の顔を先輩が覗き込む。
私だって……。頭では動こうって思ってるのに、体が動かなかったんだもん!
「氷雨先輩たちは、先に行ってて……」
「はぁっ? ここは言うこと聞くとこだろーが」
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カチン! ときた。
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