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きつく巻けばこれで止血になるからって。
でもさ、先輩の後ろを歩く私は白い布地にじわりと滲んでいる赤に気が気じゃない。
もぅ、勘弁してよぉ。
イライラしたりハラハラさせられたり……。
翻弄されてる感が、腹立つ。
……なーんてぐだぐだ考えて、返事しないでいたら、先輩が足を止めた。
「泣いてんの?」
と、見下ろされ、
「まさか」
意識して無表情で返した私の顔をじっと見た千パオは私に背を向けてまた歩き出す。
何? 今の間。
先輩の動作一つひとつを意識して反応してしまいそうになる自分が、自分でもよく話買わないんだ。
ほんと、勘弁してほしい……。
「パーティでもっと食べておけば良かった」
「お腹すいちゃった?」
「あー……、はい」
「あはは、いいね。腹が減る=生きてる証だもんね。ここ出たら美味い飯奢るからさ」
「美味いだけじゃなくて高級なのでお願いします」
そんな風に他愛なくだべりながら歩いていたら、フッ、って空気がなんか違う方向に揺れた気がして。
「……?」
立ち止まった私に気づいた先輩が「どうした?」って聞いてくる。
「……何か、聞こえません?」
と会話する私たちの目の前に急に男の人が現れた。ピシッと決まった白い上下。傍目にも船員の、多分一番偉い人……例えば船長、とか? その人は私たちを見るなりすごい勢いでがなり立ててきた。
早口すぎ! 何言ってるか聞き取れないし、訳わかんないし!
まず先輩に話しかけ、相手にされないと見るや(推定)船長は私の腕を掴んできた。その剣幕に久しぶりに人に会えた喜びより恐怖を覚えてしまった。反射的に手を振り払うと、船長(あくまでも推定)は青い瞳に苛立たしさを湛え、ペット床に唾を吐くと私たちをその場に残して走って行ってしまった。その背中を振り返り見送ってから(あ! 出口聞けば良かった……)と気づいたけど、もう後の祭り。
「なんだったの、もぅ……」
と、腕をさする私に、
「船長だったね」
と言いながら(推定じゃなかったんだ……)、氷雨先輩は目の前の扉に手をかけた。途端に、
「あっつ!」
と声を上げ、サッとノブから離した手を上下に振り、握ったり開いたりして息をフーフー吹きかけている。そして懐から取り出したハンカチでドアノブを覆い、慎重な動作でもう一度ドアを押し開けた。
ドアが開くと共に熱気が顔に吹き付けてくる。私は反射的に(あっ)と目を閉じた。とてもじゃないけど開けていられなかったんだ。その時感じた。ドアと私の体の間の空間に、ねじり込むように何かが走り抜けていったのを。
一瞬、私の肌に触れた。ざわざわとした感じは……。
うぉっ、と先輩。
「なんで船の中に百獣の王がいんのっ」
先輩の言葉といえども、これは信じがたくない?
(うっそぉ!?)相変わらず熱いけど好奇心に負けて私は目を開ける。「怖えぇ……」と氷雨先輩が目を向けたその先に。
レンが、倒れていた。
いや、そこにいたのはレンだけじゃなくって……。
でもさ、先輩の後ろを歩く私は白い布地にじわりと滲んでいる赤に気が気じゃない。
もぅ、勘弁してよぉ。
イライラしたりハラハラさせられたり……。
翻弄されてる感が、腹立つ。
……なーんてぐだぐだ考えて、返事しないでいたら、先輩が足を止めた。
「泣いてんの?」
と、見下ろされ、
「まさか」
意識して無表情で返した私の顔をじっと見た千パオは私に背を向けてまた歩き出す。
何? 今の間。
先輩の動作一つひとつを意識して反応してしまいそうになる自分が、自分でもよく話買わないんだ。
ほんと、勘弁してほしい……。
「パーティでもっと食べておけば良かった」
「お腹すいちゃった?」
「あー……、はい」
「あはは、いいね。腹が減る=生きてる証だもんね。ここ出たら美味い飯奢るからさ」
「美味いだけじゃなくて高級なのでお願いします」
そんな風に他愛なくだべりながら歩いていたら、フッ、って空気がなんか違う方向に揺れた気がして。
「……?」
立ち止まった私に気づいた先輩が「どうした?」って聞いてくる。
「……何か、聞こえません?」
と会話する私たちの目の前に急に男の人が現れた。ピシッと決まった白い上下。傍目にも船員の、多分一番偉い人……例えば船長、とか? その人は私たちを見るなりすごい勢いでがなり立ててきた。
早口すぎ! 何言ってるか聞き取れないし、訳わかんないし!
まず先輩に話しかけ、相手にされないと見るや(推定)船長は私の腕を掴んできた。その剣幕に久しぶりに人に会えた喜びより恐怖を覚えてしまった。反射的に手を振り払うと、船長(あくまでも推定)は青い瞳に苛立たしさを湛え、ペット床に唾を吐くと私たちをその場に残して走って行ってしまった。その背中を振り返り見送ってから(あ! 出口聞けば良かった……)と気づいたけど、もう後の祭り。
「なんだったの、もぅ……」
と、腕をさする私に、
「船長だったね」
と言いながら(推定じゃなかったんだ……)、氷雨先輩は目の前の扉に手をかけた。途端に、
「あっつ!」
と声を上げ、サッとノブから離した手を上下に振り、握ったり開いたりして息をフーフー吹きかけている。そして懐から取り出したハンカチでドアノブを覆い、慎重な動作でもう一度ドアを押し開けた。
ドアが開くと共に熱気が顔に吹き付けてくる。私は反射的に(あっ)と目を閉じた。とてもじゃないけど開けていられなかったんだ。その時感じた。ドアと私の体の間の空間に、ねじり込むように何かが走り抜けていったのを。
一瞬、私の肌に触れた。ざわざわとした感じは……。
うぉっ、と先輩。
「なんで船の中に百獣の王がいんのっ」
先輩の言葉といえども、これは信じがたくない?
(うっそぉ!?)相変わらず熱いけど好奇心に負けて私は目を開ける。「怖えぇ……」と氷雨先輩が目を向けたその先に。
レンが、倒れていた。
いや、そこにいたのはレンだけじゃなくって……。
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