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第一部 「エルフの禁呪」編
その人の知識は、なんだかちぐはぐで
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「あっ! そういえば!」
三人でギルドに向かう途中で、ジーナが、とつぜん声をあげて、立ち止まった。
わたしとユウは、なにごとかとジーナを見る。
「あの……、なんだか、とても、いまさらなんだけど……」
とジーナが、ユウの顔をみて
「あたしの名前は、ジーナです」
と名乗った。
「こっちが」
わたしを指して、
「ライラ」
「ライラです」
ジーナが改まって言うので、わたしもあわてて名乗った。
「うん、知ってた」
「「えっ?」」
「いや、ライラは、あのとき泣きそうな顔でなんどもジーナの名前を呼んでたよね。
そして、目を覚ましたジーナは、最初にライラの名前を呼んだね。
だから、わかったよ。
二人はきっと、大切な友だちなんだね」
わたしとジーナは、ユウにそう言われて顔をみあわせた。
ジーナが死ななくてよかった、ほんとうにそう思った。
「そして、あなたは、ユウさん」
と、わたしが言うと、
「あっ、そうなんだ、お兄さんは、ユウさんっていうんだ!」
あれ……?」
ジーナは首をかしげ、わたしをにらむようにして、
「ライラなんでそれ知ってるの? 自分だけもう紹介してもらったなんて、なんかずるい気がするんだけど?!」
ほっぺたをふくらませた。
「でも……、ずるいっていわれても、あなたはそのとき、意識不明。血まみれで死にそうだったのよ?」
「……そうなのか……」」
「ごめんごめん、ジーナにはまだ名のってなかったね。そう、ライラのいうように、ぼくの名前は、ユウっていうんだよ」
「ユウさん……んー……やっぱり、なにか不思議な名前……そして、この不思議なにおい、なんだか……あの、やっぱり、そのにおいが」
鼻をうごめかした。
「だめだめ、なんかおかしくなる……」
そして気を取りなおしたように
「あの、……ユウさん、このあたりの人とちがうよね? なんか服装からなにから、とにかくいろいろ変わってるし……王都からきたの?」
「うーん……王都かあ……そうではなくて、なんていうか……すごく遠くから、なのはきっと確かで」
「えっ、じゃあまさか、他の国から」
とジーナは目をかがやかせた。
「うん、そうだね、外国……まあ、そんなところかな……」
「だよねー、とにかく、不思議な匂いするし」
ジーナはまだ匂いにこだわっている。
「それで、ユウさんは、なにをしにこの町に?」
「いや……さっき、ここに着いたばかりで、今のところ、なにもきまってないかな」
なにか話がかみあっていない気がする。
やはりよく分からない人だ。
でも、わたしは思い切っていってみた。
「あの……もし良かったら、この後、わたしたちの家にきませんか」
「いえ?」
「それがいい! 命の恩人だし!」
ジーナがぴょんとジャンプした。
「あ、家って言っても、わたしとジーナが二人で住んでいるわけでなくて」
と、わたしは説明した。
町外れにある孤児院「ドムス・アクアリス」がわたしたちの住まいで、そこでは、十人ほどの子供たちが生活をしている。わたしとジーナは、そこの最年長だ。もちろん、院長先生をのぞけば、だけど。
「うーん」
ユウさんは少し考えていたが、遠慮がちにいった。
「……いきなり、めいわくでなければ……いいんだけど」
「ぜひ! 院長せんせいもきっと大歓迎だよ!」
ジーナが興奮してうなずく。
街道をあるいていくと、ときおりすれ違う人が、みんな、わたしたちを……というより、ユウをちらっと見る。
そして不思議そうな顔をする。
無理もないと思う。
「ところで、ギルドってどんなところなのかな?」
ユウが聞いた。
「えっ、ギルド知らないの?」
ジーナがびっくりした顔でいった。
ユウは、わたしたちがきいたこともない、「じゅうりょく」というものについて詳しくしっているのに、冒険者ギルドなんて、どの町にも、そしてたぶんどの国もあるものを知らないと言う。
「あ……もちろん、名前くらいは、きいたことあるけど……」
それで、わたしたちは、と言ってもわたしたちの知っているていどのことだけど、冒険者ギルドについて、道道、ユウに説明してあげた。
(この人って…)
そして、わたしが気がついたことは、ユウは、おおげさな言い方をすると、わたしたちの暮らしているこの世界について、具体的なことをほとんど知らないという事実だ。
名前はきいたことがある、でもじっさいに見たことがない、まるで……まるで……、
そう、知らない世界の話を、本で読んだような、そんな知識なのだ。
「そうか、こうした地方では、その冒険者ギルドが、最低限の治安維持の働きも請け負っているってわけか……たしかに、それしかないのかもしれないな」
しかし決して知識が少ないわけではなく、今も、なにか難しいことをつぶやいている。
そんなふうに話す様子をみていると、見かけとはちがって、わたしたちより、ずっと歳上の人のようにも思えるが……どうもなにもかもが、ちぐはぐな人だ。
「あれだよ! あの建物が冒険者ギルド」
ジーナが、指差した。
街道から町に入る、その入り口のところにたつ、石造りの建物だ。
いざと言う時、町をまもる盾となる必要もあるため、頑丈に建てられいる。
「さっ、行くよ! 報奨金だよ!」
「ちょっとまって」
ジーナが駆け出そうとするのを、ユウが止めた。
いぶかしげな顔をするジーナに
「あの、ふたりに、お願いがあるんだ」
ユウが、しんけんな顔でいった。
「「何?」」
「んー……悪いんだけど、あの連中をぼくがやっつけた、重力操作については黙っててもらえるかな」
「えー? なんで? すごい技だよ、みんなびっくりするよ?」
ユウは、困った顔で、
「いや……ちょっとね……たぶんだれも知らない技術だと思うんで、いろいろつっこまれると、あとあと、まずいことになると思うんだ」
「そうなの……? 自慢できるのにな……でも、まあ、ユウさんがそういうなら……」
「うん、わたしも、ユウさんがいうようにしたほうがいいと思うな……」
ということで、わたしたちは、打ち合わせをしてから、ギルドに入っていったのだ。
三人でギルドに向かう途中で、ジーナが、とつぜん声をあげて、立ち止まった。
わたしとユウは、なにごとかとジーナを見る。
「あの……、なんだか、とても、いまさらなんだけど……」
とジーナが、ユウの顔をみて
「あたしの名前は、ジーナです」
と名乗った。
「こっちが」
わたしを指して、
「ライラ」
「ライラです」
ジーナが改まって言うので、わたしもあわてて名乗った。
「うん、知ってた」
「「えっ?」」
「いや、ライラは、あのとき泣きそうな顔でなんどもジーナの名前を呼んでたよね。
そして、目を覚ましたジーナは、最初にライラの名前を呼んだね。
だから、わかったよ。
二人はきっと、大切な友だちなんだね」
わたしとジーナは、ユウにそう言われて顔をみあわせた。
ジーナが死ななくてよかった、ほんとうにそう思った。
「そして、あなたは、ユウさん」
と、わたしが言うと、
「あっ、そうなんだ、お兄さんは、ユウさんっていうんだ!」
あれ……?」
ジーナは首をかしげ、わたしをにらむようにして、
「ライラなんでそれ知ってるの? 自分だけもう紹介してもらったなんて、なんかずるい気がするんだけど?!」
ほっぺたをふくらませた。
「でも……、ずるいっていわれても、あなたはそのとき、意識不明。血まみれで死にそうだったのよ?」
「……そうなのか……」」
「ごめんごめん、ジーナにはまだ名のってなかったね。そう、ライラのいうように、ぼくの名前は、ユウっていうんだよ」
「ユウさん……んー……やっぱり、なにか不思議な名前……そして、この不思議なにおい、なんだか……あの、やっぱり、そのにおいが」
鼻をうごめかした。
「だめだめ、なんかおかしくなる……」
そして気を取りなおしたように
「あの、……ユウさん、このあたりの人とちがうよね? なんか服装からなにから、とにかくいろいろ変わってるし……王都からきたの?」
「うーん……王都かあ……そうではなくて、なんていうか……すごく遠くから、なのはきっと確かで」
「えっ、じゃあまさか、他の国から」
とジーナは目をかがやかせた。
「うん、そうだね、外国……まあ、そんなところかな……」
「だよねー、とにかく、不思議な匂いするし」
ジーナはまだ匂いにこだわっている。
「それで、ユウさんは、なにをしにこの町に?」
「いや……さっき、ここに着いたばかりで、今のところ、なにもきまってないかな」
なにか話がかみあっていない気がする。
やはりよく分からない人だ。
でも、わたしは思い切っていってみた。
「あの……もし良かったら、この後、わたしたちの家にきませんか」
「いえ?」
「それがいい! 命の恩人だし!」
ジーナがぴょんとジャンプした。
「あ、家って言っても、わたしとジーナが二人で住んでいるわけでなくて」
と、わたしは説明した。
町外れにある孤児院「ドムス・アクアリス」がわたしたちの住まいで、そこでは、十人ほどの子供たちが生活をしている。わたしとジーナは、そこの最年長だ。もちろん、院長先生をのぞけば、だけど。
「うーん」
ユウさんは少し考えていたが、遠慮がちにいった。
「……いきなり、めいわくでなければ……いいんだけど」
「ぜひ! 院長せんせいもきっと大歓迎だよ!」
ジーナが興奮してうなずく。
街道をあるいていくと、ときおりすれ違う人が、みんな、わたしたちを……というより、ユウをちらっと見る。
そして不思議そうな顔をする。
無理もないと思う。
「ところで、ギルドってどんなところなのかな?」
ユウが聞いた。
「えっ、ギルド知らないの?」
ジーナがびっくりした顔でいった。
ユウは、わたしたちがきいたこともない、「じゅうりょく」というものについて詳しくしっているのに、冒険者ギルドなんて、どの町にも、そしてたぶんどの国もあるものを知らないと言う。
「あ……もちろん、名前くらいは、きいたことあるけど……」
それで、わたしたちは、と言ってもわたしたちの知っているていどのことだけど、冒険者ギルドについて、道道、ユウに説明してあげた。
(この人って…)
そして、わたしが気がついたことは、ユウは、おおげさな言い方をすると、わたしたちの暮らしているこの世界について、具体的なことをほとんど知らないという事実だ。
名前はきいたことがある、でもじっさいに見たことがない、まるで……まるで……、
そう、知らない世界の話を、本で読んだような、そんな知識なのだ。
「そうか、こうした地方では、その冒険者ギルドが、最低限の治安維持の働きも請け負っているってわけか……たしかに、それしかないのかもしれないな」
しかし決して知識が少ないわけではなく、今も、なにか難しいことをつぶやいている。
そんなふうに話す様子をみていると、見かけとはちがって、わたしたちより、ずっと歳上の人のようにも思えるが……どうもなにもかもが、ちぐはぐな人だ。
「あれだよ! あの建物が冒険者ギルド」
ジーナが、指差した。
街道から町に入る、その入り口のところにたつ、石造りの建物だ。
いざと言う時、町をまもる盾となる必要もあるため、頑丈に建てられいる。
「さっ、行くよ! 報奨金だよ!」
「ちょっとまって」
ジーナが駆け出そうとするのを、ユウが止めた。
いぶかしげな顔をするジーナに
「あの、ふたりに、お願いがあるんだ」
ユウが、しんけんな顔でいった。
「「何?」」
「んー……悪いんだけど、あの連中をぼくがやっつけた、重力操作については黙っててもらえるかな」
「えー? なんで? すごい技だよ、みんなびっくりするよ?」
ユウは、困った顔で、
「いや……ちょっとね……たぶんだれも知らない技術だと思うんで、いろいろつっこまれると、あとあと、まずいことになると思うんだ」
「そうなの……? 自慢できるのにな……でも、まあ、ユウさんがそういうなら……」
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ということで、わたしたちは、打ち合わせをしてから、ギルドに入っていったのだ。
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