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第一部 「エルフの禁呪」編
その人は、ギルドカードの記録を更新(しようと)する。
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「ああー、ユウさん、お久しぶりですね! 活躍ぶりは、うかがってますよ!!」
ギルドに入ると、アリシアさんが、満面の笑みで迎えてくれた。
わたしとジーナもいるのに、話しかける相手はユウである。
「ユウさん、べつに毎日、顔を出してもらっても、わたしはいいんですよ!」
「はあ……」
「用事なんかなくても、来てもらっていいんですから!!」
あいかわらず、ぐいぐいくるアリシアさんである。
「それで、今日はどのようなご用件で? あ、用事なんか、ぜんぜんなくてもいいんですけど、もちろん!」
わたしたちは、ギルドカードの更新にやってきたのだった。
ギルドカードの中には、それを携帯している間にわたしたちが倒した魔物の情報が保持されている。魔物の種類、ランク、数などが自動的に記録される仕組みになっているのだ。
それをギルドの装置で読み取る。
ギルドはその情報をもとに、冒険者のランク付けや、あるいは大人数でのミッションの場合、各チームへの褒賞の分配を決めることができる。
よく考えてみたら、わたしたちは、あの大さわぎのごたごたで、レイス退治のポイントすら読み取ってもらってなかった。
ダンジョンから帰ってきて、そのことを思い出したので、今日はこうやってやってきたわけである。
もともとランクなどに関心のないユウは、あまり乗り気ではなかったが、わたしやジーナにとっては、これで冒険者としての実績とランクが上がるわけだから、とても大事なことなのである。冒険者としてのランクが上がることで、受けられる仕事も当然ながら幅が広がっていくのだ。わたしたちが、冒険者としてやっていくためには、ランクを上げることは欠かせない。
「わかりました、では、こちらへどうぞ」
アリシアさんが、また、ユウの手をとって(なぜ、わざわざ手を取る必要があるのか、そこが疑問ではある)引っ張っていくのは、この間ユウが冒険者登録をしたあの部屋である。
部屋には、新品の魔水晶石を取りつけた、ピカピカの装置が鎮座していた。
買い換えたのだ。
「うーん……大丈夫かなあ」
ユウは、前回のことを思い出して不安げだ。
「大丈夫です!」
アリシアさんが断言する。
「でも、念のため、ライラたちからやりましょう」
アリシアさん、口調とはうらはらにあまり安心はしていないようだ。
「じゃ、あたしからやるね」
ジーナが言って、装置の下部にある切れ込みに、カードをさしこんだ。
つづいて、魔水晶石に右手を乗せる。
こうすることで、カードが本人のものであるかを照合しているのだ。
やがて、魔水晶石がかすかにうなり、赤く光り始める。
魔水晶石の上の空間に、光で構成された板が現れ、その板の上を、情報が流れていく。
ジーナがこの間に倒した魔物の情報である。
「ジーナ、すごいわ」
アリシアさんが感心したように言った。
「この短期間で、すごい数。アンデッドに、コボルドに、沼人に、クラーケンのポイントもあるわ! すごいすごい。ランクアップ間違いなしだわ」
「えへへ……」
ジーナは嬉しそうだ。
たぶんその大半はイリニスティスをふるってなぎ倒した魔物であろう。
「では、こんどはわたしが」
と、わたしもカードを差し込んで、手をかざす。
同じように魔水晶石がかすかにうなり、光の板に情報が流れだす。
「うーん、ライラもすごいじゃない!」
アリシアさんがほめてくれる。
「はい、ルシア先生にしごかれたので……」
見ていると、最後に、どっと獲得ポイントが跳ね上がったのは、クラーケンを丸焼きにした件のようだ。
「ライラもランクアップまちがいなし!」
アリシアさんがうけおった。
それからアリシアさんは、ユウににこりと微笑み、
「では、ユウさんもやりましょう」
「ほんとに大丈夫かなあ?」
「大丈夫、たぶん、大丈夫」
ユウがおそるおそるカードをさしこむ。
そして、手をかざした途端
ぶぅわああああん!
「うわっ」
装置がこの前のように、不気味な振動を開始し、でたらめな色に点滅をはじめた。
「なんか、これ、まずいんじゃあ?」
それでもなんとか光の板が現れたが、
「うわーっ、こんなめちゃくちゃなポイントの上昇、初めて見ますよ?!」
アリシアさんが目を真ん丸にしている。
なにしろ、あの地底にいた無数のアンデッドを全部消滅させてしまったのだから、それだけでもたいへんなポイントの上昇である。カウントが追い付かない。そこへもってきて、災厄級の化け物レイスを一人で倒している。
板上のカウンターがぐるんぐるん回り、
ぶわんぶわんぶわん!
装置がバラバラになりそうにうなり、そして
ボシュッ!
魔水晶石が消滅。
ゲフッ
カードが吐き出されて床に落ちた。
「ああ、またか……」
ユウが申し訳なさそうな顔をする。
「ま、まあ、とにかく記録はすんだんじゃないでしょうか、ははははは……」
アリシアさんは力なく笑った。
いや、わたしの見るところ、レイスのあたりでたぶん装置は力尽きたんだと思う。だから、そのあとのダンジョンの記録まで、ぜんぜんたどりつけてない気がするんだけど。
まあ、でも、ここまでくると、もう、この人にランクなんてどうでもいいような気がしてきた。
——わたしとジーナは、めでたく、冒険者ランクが二つ上がりました。
ユウは、やっぱり記録が読み取れておらず、新しい装置がくるまで、ランク判定は保留になってしまいました。
ギルドに入ると、アリシアさんが、満面の笑みで迎えてくれた。
わたしとジーナもいるのに、話しかける相手はユウである。
「ユウさん、べつに毎日、顔を出してもらっても、わたしはいいんですよ!」
「はあ……」
「用事なんかなくても、来てもらっていいんですから!!」
あいかわらず、ぐいぐいくるアリシアさんである。
「それで、今日はどのようなご用件で? あ、用事なんか、ぜんぜんなくてもいいんですけど、もちろん!」
わたしたちは、ギルドカードの更新にやってきたのだった。
ギルドカードの中には、それを携帯している間にわたしたちが倒した魔物の情報が保持されている。魔物の種類、ランク、数などが自動的に記録される仕組みになっているのだ。
それをギルドの装置で読み取る。
ギルドはその情報をもとに、冒険者のランク付けや、あるいは大人数でのミッションの場合、各チームへの褒賞の分配を決めることができる。
よく考えてみたら、わたしたちは、あの大さわぎのごたごたで、レイス退治のポイントすら読み取ってもらってなかった。
ダンジョンから帰ってきて、そのことを思い出したので、今日はこうやってやってきたわけである。
もともとランクなどに関心のないユウは、あまり乗り気ではなかったが、わたしやジーナにとっては、これで冒険者としての実績とランクが上がるわけだから、とても大事なことなのである。冒険者としてのランクが上がることで、受けられる仕事も当然ながら幅が広がっていくのだ。わたしたちが、冒険者としてやっていくためには、ランクを上げることは欠かせない。
「わかりました、では、こちらへどうぞ」
アリシアさんが、また、ユウの手をとって(なぜ、わざわざ手を取る必要があるのか、そこが疑問ではある)引っ張っていくのは、この間ユウが冒険者登録をしたあの部屋である。
部屋には、新品の魔水晶石を取りつけた、ピカピカの装置が鎮座していた。
買い換えたのだ。
「うーん……大丈夫かなあ」
ユウは、前回のことを思い出して不安げだ。
「大丈夫です!」
アリシアさんが断言する。
「でも、念のため、ライラたちからやりましょう」
アリシアさん、口調とはうらはらにあまり安心はしていないようだ。
「じゃ、あたしからやるね」
ジーナが言って、装置の下部にある切れ込みに、カードをさしこんだ。
つづいて、魔水晶石に右手を乗せる。
こうすることで、カードが本人のものであるかを照合しているのだ。
やがて、魔水晶石がかすかにうなり、赤く光り始める。
魔水晶石の上の空間に、光で構成された板が現れ、その板の上を、情報が流れていく。
ジーナがこの間に倒した魔物の情報である。
「ジーナ、すごいわ」
アリシアさんが感心したように言った。
「この短期間で、すごい数。アンデッドに、コボルドに、沼人に、クラーケンのポイントもあるわ! すごいすごい。ランクアップ間違いなしだわ」
「えへへ……」
ジーナは嬉しそうだ。
たぶんその大半はイリニスティスをふるってなぎ倒した魔物であろう。
「では、こんどはわたしが」
と、わたしもカードを差し込んで、手をかざす。
同じように魔水晶石がかすかにうなり、光の板に情報が流れだす。
「うーん、ライラもすごいじゃない!」
アリシアさんがほめてくれる。
「はい、ルシア先生にしごかれたので……」
見ていると、最後に、どっと獲得ポイントが跳ね上がったのは、クラーケンを丸焼きにした件のようだ。
「ライラもランクアップまちがいなし!」
アリシアさんがうけおった。
それからアリシアさんは、ユウににこりと微笑み、
「では、ユウさんもやりましょう」
「ほんとに大丈夫かなあ?」
「大丈夫、たぶん、大丈夫」
ユウがおそるおそるカードをさしこむ。
そして、手をかざした途端
ぶぅわああああん!
「うわっ」
装置がこの前のように、不気味な振動を開始し、でたらめな色に点滅をはじめた。
「なんか、これ、まずいんじゃあ?」
それでもなんとか光の板が現れたが、
「うわーっ、こんなめちゃくちゃなポイントの上昇、初めて見ますよ?!」
アリシアさんが目を真ん丸にしている。
なにしろ、あの地底にいた無数のアンデッドを全部消滅させてしまったのだから、それだけでもたいへんなポイントの上昇である。カウントが追い付かない。そこへもってきて、災厄級の化け物レイスを一人で倒している。
板上のカウンターがぐるんぐるん回り、
ぶわんぶわんぶわん!
装置がバラバラになりそうにうなり、そして
ボシュッ!
魔水晶石が消滅。
ゲフッ
カードが吐き出されて床に落ちた。
「ああ、またか……」
ユウが申し訳なさそうな顔をする。
「ま、まあ、とにかく記録はすんだんじゃないでしょうか、ははははは……」
アリシアさんは力なく笑った。
いや、わたしの見るところ、レイスのあたりでたぶん装置は力尽きたんだと思う。だから、そのあとのダンジョンの記録まで、ぜんぜんたどりつけてない気がするんだけど。
まあ、でも、ここまでくると、もう、この人にランクなんてどうでもいいような気がしてきた。
——わたしとジーナは、めでたく、冒険者ランクが二つ上がりました。
ユウは、やっぱり記録が読み取れておらず、新しい装置がくるまで、ランク判定は保留になってしまいました。
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