アンバランサー・ユウと世界の均衡 第二部「星の船」編

かつエッグ

文字の大きさ
11 / 69
アンバランサー・ユウと世界の均衡「星の船」編

わたしたちは、盗賊の正体を知る。

しおりを挟む
 盗賊団「地獄の猟犬」は、壊滅した。

 盗賊団は総勢三十二人の戦力でわたしたちを襲撃したのだが、首領と、その参謀役の魔法使いをふくめ、十四人が死亡、十五人は大怪我を負い動けず、なんとか動けるのは三人のみという惨状で降伏した。
 こちら側は、流れ矢によって負傷した者が一人いるのと、肉弾戦になったときに軽い傷を負ったもの二人、あとにやられたウォリスさんである。ウォリスさん以外の負傷者も、「月下の黒豹」と「夜明けの誓い」の魔法使いが、治癒魔法をつかって、問題なく回復した。

 「まあ、こんなもんか……」

 と、リベルタスさんが言った。

 「こちらの戦力を考えると、本来なら襲撃するのには力不足なのを、古代兵器に頼ってましたからね。あれさえなければ、それほどの脅威ではなかった」

 と、ユウ。

 「それにしても……」

 リベルタスさんが、ユウに

 「あんた、恐ろしいな……。いったい、なにをやった?
  魔法なのか? 首領もろとも、古代武器をこなごなにしてしまったが」
 「それに、君は、あの赤い魔法の光をねじ曲げたな? これが、アンバランサーの力というやつなのか?」

 「夜明けの誓い」のヴァンさんも言う。

 「ええ、まあ……」

 と例によってユウは口をにごす。
 しかし、以前の「牙」といい、今回の「地獄の猟犬」といい、ユウに手を出す盗賊団はたいへんな目に遭う。もう、盗賊団は、ユウには近づかないのがいいと思う。

 「ねえ、ライラ……」

 アーダが、わたしに小声で

 「あれって、重力操作じゃないの? それに空間も歪めてるよね?」

 と聞いてくる。

 「えっ、アーダ……」

 あなた、なんで、それを知っているの?

 「ところで、あいつら、アーダをひきわたせって言ってましたね。
 なんででしょうね」
 「うむ、たしかに考えてみると、最初から、お嬢さんが狙いだったふうでもあるからな……」

 リベルタスさんは、凄みのある顔で、

 「それでは、尋問をはじめるか」

 生き残りの盗賊を問い詰める。
 残念ながら、首脳陣が全員死亡しており、話をきけたのは下っ端の盗賊ばかりだったので、核心の部分は直接は聞けなかったが、生き残った盗賊の一人が言うことには——

  ——俺たちは、もともとは、五六人の気の合う仲間で、細々とちんけな稼ぎをしていたんだ。
 追い剥ぎとか、コソ泥とか、一人で旅しているような女をさらって売り飛ばすとか、まあ、そんなもんだ。
 それが、ある日、酒場でおだをあげていると、ラマノスという男から声をかけられて。
 そう、こいつが、もうあんたらにやられて死んじまったが、「地獄の猟犬」の首領だ。
 首領は、自分と一緒に大きな稼ぎをやらないか、という。そんなにガタイのいいやつでもない。神経質そうな、どちらかといって弱っちい感じの男だったから、あんた、大きな稼ぎなんて、どうやってできるんだよ、そういって俺たちが笑うと、秘密の武器があるんだという。誰も持ってない、たいへんな代物だ。それを使えば、勝てる奴はいない。
 ほう、もしその話がほんとうなら、一つのってもいいが、言葉だけじゃ信じられないな。
 俺たちがそういうと、見せてやるからついてこいと言う。
 じゃあ、見せてもらおうか、とおれたちは酒場を出た。
 首領の後について、暗い夜道を歩いていくうちに、俺たちは思ったんだ。もし、その話が本当なら、今、こいつを襲って、その秘密の武器とやらを俺たちのものにしてしまえばいいんじゃないか?
 首領は、のんきに歩いていく。
 俺たちは目配せをして、一気に襲いかかった。
 ところが、首領は、後ろに目があるかのようだった。あとできいたら、とか言うからくりで、つねに周りを見張っていたらしいがね。
 赤い光が、暗闇の中にひらめいて、仲間の一人は、もののいわずバタリと倒れた。
 仲間の額の真ん中には、小さな穴があいて、その穴は頭の後ろにつきぬけていたよ。
 即死だ。恐ろしいもんだ。
 首領は、つめたく笑うと、わかっただろう、これにかなう奴はいない、どうするんだ、お前たち、ここで死ぬか、わたしの手下になって忠誠をちかうか、どちらだ? そう言って、迫ってきた。
 いちもにもなく、俺たちは従った。じっさい、これまで、どんないかつい戦士だろうが、力の強い魔法使いだろうが、あの武器に抵抗できたものはいないからな。どの相手も、防ぎようがなく、一撃で斃れたんだ。
 まあ、それでも、あんたらには通用しなかったがな。いったいどうやったんだ?
 とにかく、おれたちは首領のもとで稼ぎをくりかえし、だんだん、人が集まって、大きな組織になっていったわけだ。いまでは、「地獄の猟犬」といえば、それなりに名の知れた盗賊団だからな。名前を聞いただけで、抵抗を諦めた連中もおおぜいいたぜ。いろいろ、いい思いもできた。
 今回も、いつもの調子で、ちょろい稼ぎのはずだったんだがなあ……。

 「なるほど……」

 とリベルタスさん。

 「それで、神官のお嬢さんを狙ったのはどう言うわけだ?」

 盗賊は答えた。

 「俺にはわからん。でも、首領は、あの娘を人質にすれば、新しい武器が手に入るんだ、とは言っていたが……」
 「新しい武器が、手に入る? あれは古代文明の残した武器だろうが? どうやって手に入れるんだ?」
 「そうなのか? 古代文明の武器だって? まさか、そんなものがほんとにありやがるとは……」
 「知らなかったのか?」
 「知らんよ。首領はおれたち下っ端には、武器をけっして触らせたりはしないし、なんの説明もしないから……」

 話を聞いていたアーダが、

 「わたしには、どういうことかわかります……」

 と言った。

 みんなは、いっせいにアーダを見た。

 「あの首領——ラマノスは、元、王立古代遺跡院の職員です。三年前に、遺跡の発見物を盗んで、失踪した人物です」
 「なるほど!」

 リベルタスさんが膝を打った。

 「そういうことか……。古代遺跡院の職員なら、な。でも、お嬢さんを人質にって、それはどういうことなんだ?」

 アーダが答えた。

 「それは……わたくしが、王立古代遺跡院の院長である、マリア・ビーグルの娘だからです」
 「「えっ、そうなの?」」

 わたしも、ジーナもびっくりして声をあげた。
 そうか、古い言い伝えとかを研究しているお母様って。
 それで、アーダは、あんなふうにいろいろ詳しかったんだ。

 「お嬢さんを人質にとって、マリア院長と交渉しようとしたわけか……」
 「たぶん、そうだと思います。わたくしは、遺跡院でなんどかラマノスに会ったことがあります。気の小さそうな男で、まさか、こんなことになっているとは思いませんでしたが……」
 「でも、それなら、あんた、今なんで神官見習いなんてやってるのよ」

 ジーナが無遠慮に聞く。

 「それは……」

 アーダはちょっとためらったが

 「まあ、母とはいろいろありまして……」

 つらそうな顔をした。

 「ジーナ、だめよ。みんな事情というものがあるんだから」
 「そうだね……ごめん」

 ジーナがしょぼんとする。

 「気にしないで。いいのよジーナ」

 アーダがとりなす。

 「これで、だいたい事情はわかったな。あとは、この連中をどうするかだ……」

 と、リベルタスさんが続けた。
 ニヤリと笑って、

 「ずっと、この先、連れていくわけにもいくまい。全員、ここで始末してしまうか?」

 盗賊たちが真っ青になる。

 「たっ、たすけてくれ!」
 「どうせ厳罰をくらうんだから」
 「死ぬよりはましだ!」
 「お前らだって、これまでに、さんざん人を殺してきたんだろう?」
 「いや、それは……ちょっとだけだ……」
 「殺してるじゃないか! 自業自得だ」

 言葉で盗賊たちをいたぶるリベルタスさん。

 「あの……あんまり非人道的なことは……」

 といったのは、シュバルツさんだ。やはり、すこしばかり甘い。
 けっきょく、事告げ鳥をギルドに送り、事情を知らせ人を呼ぶことになった。
 事告げ鳥は一瞬で向こうにつくが、ギルドから人が来るのに、いそいでも四日はかかるだろう。

 「土の精霊と水の精霊の紡ぐ金剛の茨の格子、不壊の覆いアンブロークンケイジ!」

 わたしたち魔術師の詠唱により、たちまち大地から鉄色の茨が伸び広がり、大きな籠となって盗賊たちを包み込んだ。盗賊たちは武装解除し、水と糧食をおいてある。今はもう、魔法使いはいないから、この牢獄を解除してそとに逃げだすことは、彼らにはできない。
 このまま、迎えがくるまでここで過ごしてもらう。
 まあ、よほど強力な魔獣が襲ってこなければ、なんとか生き延びることができるのではないだろうか。

 「すげえよ、女帝の後継者……こわいこわい」

 また、「暁の刃」の連中が何かいっているが、あなたたち、ちゃんと見てましたか?
 この魔法は、「月下の黒豹」「夜明けの誓い」の魔法使いと、わたしと三人でかけたんですよ。後継者は関係ないでしょう。
 でも、エミリアには、わたしたちのところに来てもらって、この魔法を教えてあげた。
 エミリアはとても喜んでいた。

 「ありがとうございます、女帝の後継者様から、じきじきに教えていただくなんて! 光栄です!」

 いや、そういう話ではないからね……。

 そして、キャラバンは再び進み始める。
 王都をめざして。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

完結【進】ご都合主義で生きてます。-通販サイトで異世界スローライフのはずが?!-

ジェルミ
ファンタジー
32歳でこの世を去った相川涼香は、異世界の女神ゼクシーにより転移を誘われる。 断ると今度生まれ変わる時は、虫やダニかもしれないと脅され転移を選んだ。 彼女は女神に不便を感じない様に通販サイトの能力と、しばらく暮らせるだけのお金が欲しい、と願った。 通販サイトなんて知らない女神は、知っている振りをして安易に了承する。そして授かったのは、町のスーパーレベルの能力だった。 お惣菜お安いですよ?いかがです? 物語はまったり、のんびりと進みます。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです

yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~ 旧タイトルに、もどしました。 日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。 まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。 劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。 日々の衣食住にも困る。 幸せ?生まれてこのかた一度もない。 ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・ 目覚めると、真っ白な世界。 目の前には神々しい人。 地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・ 短編→長編に変更しました。 R4.6.20 完結しました。 長らくお読みいただき、ありがとうございました。

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」

【完結】うちの孫知りませんか?! 召喚された孫を追いかけ異世界転移。ばぁばとじぃじと探偵さんのスローライフ。

かの
ファンタジー
 孫の雷人(14歳)からテレパシーを受け取った光江(ばぁば64歳)。誘拐されたと思っていた雷人は異世界に召喚されていた。康夫(じぃじ66歳)と柏木(探偵534歳)⁈ をお供に従え、異世界へ転移。料理自慢のばぁばのスキルは胃袋を掴む事だけ。そしてじぃじのスキルは有り余る財力だけ。そんなばぁばとじぃじが、異世界で繰り広げるほのぼのスローライフ。  ばぁばとじぃじは無事異世界で孫の雷人に会えるのか⁈

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

いつまでもドアマットと思うなよ

あんど もあ
ファンタジー
二年前に母を亡くしたミレーネは、後妻と妹が家にやって来てからすっかり使用人以下の扱いをされている。王宮で舞踏会が開催されるが、用意されたのは妹のドレスだけ。そんなミレーネに手を差し伸べる人が……。

処理中です...