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アンバランサー・ユウと世界の均衡「星の船」編
わたしたちは、アンバランサーの徴を見る。
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「またアンバランサーに戦ってもらわなくてはならないかもしれない」
ミネーヴァさまの言葉に、わたしたちとジーナは息をのんだ。
「まあ、必要があれば、いつでもそうしますから」
と、ユウは、いつものような口調で答えた。
「ありがとう、外の世界から来たあなたに、こんなことを……」
「いえ、ぼくは、今後この世界にごやっかいになることを決めたのですから」
「でも!」
と、わたしはミネーヴァさまに
「そんなに、危険がさしせまっているのですか?」
ミネーヴァさまはうなずく。
「多分……」
「いったい、それはどのような?!」
「わたしの、神としての直感ですが……古代遺跡が、そこには関係してくるでしょう。そして、おそらく、この世界の禍つ神が、何らかの動きを見せてくると思われます」
「禍つ神ですか…」
その言葉に、あたりの空気がいっしゅん冷えたようだった。
「神は、人間のすることは見通せても、おなじ神のすることは完全には見通すことができない。わたしにも、おぼろげにしか見えませんが、大きな危険のにおいがします」
「わかりました」
ユウが言った。
「なにがあるかは、わからないにしても、ぼくにできるかぎりのことをします。ぼくはこの世界が、とても好きだから」
「ありがとう、アンバランサー・ユウ。あなたが、この世界を好きでいてくれることが、わたしたちをとても勇気づけるのよ」
ミネーヴァさまは、そういって、ほほえんだ。
わたしも同感です、ミネーヴァ様!
「これを」
といって、ミネーヴァさまが、小さな手のひらをユウにさしだした。
手のひらの上には、銀色のメダルが載っていた。
「女神のメダル。これがきっと、必要なときに、あなたの役に立つと思いますから」
「ミネーヴァさま、ありがたく、いただきます」
ユウが、ミネーヴァさまの手のひらから、そっとメダルを受け取った。
ここちよい風が、わたしたちのまわりに吹き、その風の中、白い花びらがくるくると回るのだった。
ミネーヴァさまに見送られ、わたしたちは大聖堂を後にした。
ミネーヴァさまが話してくれたのは、たいへんなことだった。
いろいろ考えなければならないことが多くて、頭が混乱しそうだ。
「あっ、そうだ」
ジーナが、急に言った。
「ユウさん、大司教さまがいってたじゃん、アンバランサーの徴って」
「いってたねえ」
「あれって、なんなの? なにか、しるしがついてるの? わからないけど」
「うん、それはね、アンバランサーという存在が、この世界にとって異物であるって、話があったでしょう?」
「ガネーシャ様がいってた」
「そう、で、アンバランサーという異物が、この世界にまぎれこんでいるために、ぼくのまわりの空間に、ちいさな歪みが生じるんだよ。まるで、風が、障害物にぶつかって、くるくるその場で渦を巻くみたいにね」
「へえ、そうなの? あたしにはさっぱり見えないけど、それが視える人がいるんだね」
「そうだね、神職で、修行を重ねた人には見えやすいみたいだよ」
「そっか、最初にあったとき、アーダが『邪教のにおいがする』なんていってたのは、それだったんだ」
「彼女は、あのとき、完全に視えてたわけじゃないみたいだね。ただ、その気配をかんじたようだけど、でも、それだけでもたいしたものだけどね」
「ね、ユウさん」
ジーナが、目をキラキラさせて、いった。
「それってさあ、あたしたちにも見えるようにならない? アンバランサーの徴がどんなふうか、見てみたいなあ。ねえ、ライラ、あんたもそう思うでしょ!」
「うん、わたしも見てみたい!」
「まあ、できるけど……そんな、面白いものじゃないよ」
「「見せて、見せて!」」
「うーん、じゃあ、ちょっとだけね」
ユウがそういったとたん、ユウの頭上に、それは出現した。
「風が渦をまく」
ユウが、さっきそういったが、まさに、そんな感じに、ユウの頭の上で、なにか、キラキラひかる美ししい光の粒が、いくつもいくつも、渦をまいて、くるくると回転していたのだった。
「きれいだねえ」
わたしたちは見とれたが、
「はい、おしまい」
ユウがいって、ふっと見えなくなってしまった。
うーん、もっと見ていたかったな……。
そして、わたしははっと気がついた。
その蜘蛛と蛇はなんだ、と神官は言っていた。
ヴリトラ様の祝福を受けたもの、と大司教様も言っていた。
ひょっとして、見えないけど、わたしの頭の上にも、なにかあるのでは?
あるとしたら、何が……?
赤と黒の、まだらの蜘蛛と蛇が、わたしの頭の上で楽しくダンスをしている様子を想像しそうになって、わたしはあわてて、それ以上考えるのをやめたのだった。
その夜、わたしたちのところに訪問者があった。
アーダだった。
食事もおわり、部屋でくつろいでいたところ、セバスチャン執事から知らせがあり、フロアに降りていってみると、そこではアーダが待っていたのだった。
神官服ではなく、私服のアーダは、旅の時とはまた違う雰囲気だ。
「わあ、アーダ、会いに来てくれたんだね!」
わたしたちは喜んだが、アーダの表情は、こころなしか、かたかった。
「なにか、あったの? アーダ」
「相談したいことがあって」
「そうだん?」
ききかえすと、
「そうなのだ、あなたたちに相談がある。わたしも、同席していいだろうか?」
横からもう一人の声がして。
そこに立っていたのは、これも私服の、カテリナ団長であった。
ミネーヴァさまの言葉に、わたしたちとジーナは息をのんだ。
「まあ、必要があれば、いつでもそうしますから」
と、ユウは、いつものような口調で答えた。
「ありがとう、外の世界から来たあなたに、こんなことを……」
「いえ、ぼくは、今後この世界にごやっかいになることを決めたのですから」
「でも!」
と、わたしはミネーヴァさまに
「そんなに、危険がさしせまっているのですか?」
ミネーヴァさまはうなずく。
「多分……」
「いったい、それはどのような?!」
「わたしの、神としての直感ですが……古代遺跡が、そこには関係してくるでしょう。そして、おそらく、この世界の禍つ神が、何らかの動きを見せてくると思われます」
「禍つ神ですか…」
その言葉に、あたりの空気がいっしゅん冷えたようだった。
「神は、人間のすることは見通せても、おなじ神のすることは完全には見通すことができない。わたしにも、おぼろげにしか見えませんが、大きな危険のにおいがします」
「わかりました」
ユウが言った。
「なにがあるかは、わからないにしても、ぼくにできるかぎりのことをします。ぼくはこの世界が、とても好きだから」
「ありがとう、アンバランサー・ユウ。あなたが、この世界を好きでいてくれることが、わたしたちをとても勇気づけるのよ」
ミネーヴァさまは、そういって、ほほえんだ。
わたしも同感です、ミネーヴァ様!
「これを」
といって、ミネーヴァさまが、小さな手のひらをユウにさしだした。
手のひらの上には、銀色のメダルが載っていた。
「女神のメダル。これがきっと、必要なときに、あなたの役に立つと思いますから」
「ミネーヴァさま、ありがたく、いただきます」
ユウが、ミネーヴァさまの手のひらから、そっとメダルを受け取った。
ここちよい風が、わたしたちのまわりに吹き、その風の中、白い花びらがくるくると回るのだった。
ミネーヴァさまに見送られ、わたしたちは大聖堂を後にした。
ミネーヴァさまが話してくれたのは、たいへんなことだった。
いろいろ考えなければならないことが多くて、頭が混乱しそうだ。
「あっ、そうだ」
ジーナが、急に言った。
「ユウさん、大司教さまがいってたじゃん、アンバランサーの徴って」
「いってたねえ」
「あれって、なんなの? なにか、しるしがついてるの? わからないけど」
「うん、それはね、アンバランサーという存在が、この世界にとって異物であるって、話があったでしょう?」
「ガネーシャ様がいってた」
「そう、で、アンバランサーという異物が、この世界にまぎれこんでいるために、ぼくのまわりの空間に、ちいさな歪みが生じるんだよ。まるで、風が、障害物にぶつかって、くるくるその場で渦を巻くみたいにね」
「へえ、そうなの? あたしにはさっぱり見えないけど、それが視える人がいるんだね」
「そうだね、神職で、修行を重ねた人には見えやすいみたいだよ」
「そっか、最初にあったとき、アーダが『邪教のにおいがする』なんていってたのは、それだったんだ」
「彼女は、あのとき、完全に視えてたわけじゃないみたいだね。ただ、その気配をかんじたようだけど、でも、それだけでもたいしたものだけどね」
「ね、ユウさん」
ジーナが、目をキラキラさせて、いった。
「それってさあ、あたしたちにも見えるようにならない? アンバランサーの徴がどんなふうか、見てみたいなあ。ねえ、ライラ、あんたもそう思うでしょ!」
「うん、わたしも見てみたい!」
「まあ、できるけど……そんな、面白いものじゃないよ」
「「見せて、見せて!」」
「うーん、じゃあ、ちょっとだけね」
ユウがそういったとたん、ユウの頭上に、それは出現した。
「風が渦をまく」
ユウが、さっきそういったが、まさに、そんな感じに、ユウの頭の上で、なにか、キラキラひかる美ししい光の粒が、いくつもいくつも、渦をまいて、くるくると回転していたのだった。
「きれいだねえ」
わたしたちは見とれたが、
「はい、おしまい」
ユウがいって、ふっと見えなくなってしまった。
うーん、もっと見ていたかったな……。
そして、わたしははっと気がついた。
その蜘蛛と蛇はなんだ、と神官は言っていた。
ヴリトラ様の祝福を受けたもの、と大司教様も言っていた。
ひょっとして、見えないけど、わたしの頭の上にも、なにかあるのでは?
あるとしたら、何が……?
赤と黒の、まだらの蜘蛛と蛇が、わたしの頭の上で楽しくダンスをしている様子を想像しそうになって、わたしはあわてて、それ以上考えるのをやめたのだった。
その夜、わたしたちのところに訪問者があった。
アーダだった。
食事もおわり、部屋でくつろいでいたところ、セバスチャン執事から知らせがあり、フロアに降りていってみると、そこではアーダが待っていたのだった。
神官服ではなく、私服のアーダは、旅の時とはまた違う雰囲気だ。
「わあ、アーダ、会いに来てくれたんだね!」
わたしたちは喜んだが、アーダの表情は、こころなしか、かたかった。
「なにか、あったの? アーダ」
「相談したいことがあって」
「そうだん?」
ききかえすと、
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