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アンバランサー・ユウと世界の均衡「星の船」編
ジーナが、心配する。
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冒険者たちも、一緒になって、梱包した遺物の積み込みを手伝い、そしてすべての準備が整った。
出発は、明日の朝となった。
一日の仕事を終え、夕餉の支度が始まる。
リベルタスさんが、わたしたちのところにやってきて、おずおずと聞いた。
「で、どうなんだい? 今回は、アレはなんとかなるか?」
「ああ、あのかれえですか」
「うん……」
とリベルタスさんは、ちょっと恥ずかしそうに
「あれはとてもよかった。もし、今回もあるのなら、ちょっとでいいから、なんとかならないか」
「いいですよ」
ユウは、にっこりして
「用意してありますよ」
「そうか! それはありがたい!」
リベルタスさんの顔がぱっと明るくなる。
「みんなに言っても良いかな? いや、そんな量は無理だよな、いくらなんでも。となると、こっそりといただくしかないか……みんなには悪いが」
「かまいませんよ、リベルタスさん。全員の分がありますから」
「えっ、そうなのか! ……さすがだ。よおし!」
リベルタスさんは、大声でふれまわったのだ。
「おおーい、みんな! よく聞けえ!! 『雷の女帝のしもべ』が、おれたちにご馳走を用意してくれたぞぉ!」
「うおおお!」
「すげぇ!」
「えっ? おれたちのぶんもあるのか?」
「あるとも! なんと、全員分だ!」
「おおう!」
「『雷の女帝のしもべ』バンザーイ!!」
大歓声が上がる。
「ユウさん、ユウさん」
わたしは、心配してユウに
「ほんとうに、大丈夫なんですか? こんな大勢にふるまうほど、用意してあるんですか? 百人以上いますよ」
「そうだよ、ユウさん、今回は、大鍋つかって用意なんかしてなかったじゃん」
「大丈夫なんだよ」
ユウは、自信たっぷりにいった。
「思いついたことがあってね」
「「?」」
そして、ユウのいんふぃにてぃ・ぼっくすから、全員の器にかれえが注がれる。
例によって、これは、女帝の後継者の収納魔法ということになっているので、わたしがまた、
「水と火のなべに……ごにょごにょ……土のかまど……ごにょごにょ……無限のかれえ!」
いんちきな魔法を詠唱する(詠唱するふりをする)はめとなる。
もう、勘弁してほしいと思う。
そして、ユウの言葉通り、全員に問題なくかれえがふるまわれ、さらにはおかわりも可能であった。リベルタスさんは、五回もおかわりをした。本当に好きなんだ……。
「すげえ、ほんとうにすげえ、どんだけ収納できるんだよ」
冒険者が感嘆の声を上げる。
「さすが、女帝の後継者は、とんでもない魔法を使いやがるぜ!」
いや、あなた、その認識は、根本からまちがっているのです。わかりますか?
「美味しいですね」
と、マリア院長もかれえに舌鼓をうちながら、こっそりとわたしたちに
「これって、ほんとうは収納魔法じゃないですよね? ユウさんの力で、静止空間に配置してあったんですよね?」
と聞いてくる。
ああ、わかってくれるのは、マリア院長だけだ。(たぶん、あと、アーダもね)
「正確に言うと、ちょっと違っててね」
とユウが教えてくれた。
「気がついたんだよね。別に最初からぜんぶの量を作らなくても、ちょっとだけ作ったやつを、複製コピーして増やせばいいんじゃないかって。今回、配ったのは、このまえの残りが一皿くらいあったから、それを増やしたやつだよ。四百倍くらいに増やしたら、十分足りたよ」
得意げである。
あの……アンバランサーって。
もはや、ユウについて、なんといっていいか、わたしにはわかりません……。
そして、夕餉のあとには、ジーナがまたやった。
ドレスに着替えて、月の光を浴びながら、しずしずとみんなの前に現れたジーナが、歌声を披露したのだった。
もちろん、ユウから習った「月の沙漠」が、レパートリーに加わっていた。
「うおおおん……」
「女神だ、おれは歌の女神の降臨をみた!」
「うおおおん!」
また、観客は号泣である。
ジーナが歌うと、かならず、みんな泣いちゃうんだけど。
ひょっとして、ジーナって才能があるの?
(このときのわたしは、やがて、ジーナの二つ名が「歌う嵐の獣人女王」(!)となることをまだ知らない)
そんなふうに、遺跡の夜は更けていった。
発掘隊のつかのまの団欒のひとときのかたわらで、ユウが、ひとり、はるか砂漠の向こうに目をこらし、真剣な顔をしているのに気づくものは、誰もいなかったのだった。
出発は、明日の朝となった。
一日の仕事を終え、夕餉の支度が始まる。
リベルタスさんが、わたしたちのところにやってきて、おずおずと聞いた。
「で、どうなんだい? 今回は、アレはなんとかなるか?」
「ああ、あのかれえですか」
「うん……」
とリベルタスさんは、ちょっと恥ずかしそうに
「あれはとてもよかった。もし、今回もあるのなら、ちょっとでいいから、なんとかならないか」
「いいですよ」
ユウは、にっこりして
「用意してありますよ」
「そうか! それはありがたい!」
リベルタスさんの顔がぱっと明るくなる。
「みんなに言っても良いかな? いや、そんな量は無理だよな、いくらなんでも。となると、こっそりといただくしかないか……みんなには悪いが」
「かまいませんよ、リベルタスさん。全員の分がありますから」
「えっ、そうなのか! ……さすがだ。よおし!」
リベルタスさんは、大声でふれまわったのだ。
「おおーい、みんな! よく聞けえ!! 『雷の女帝のしもべ』が、おれたちにご馳走を用意してくれたぞぉ!」
「うおおお!」
「すげぇ!」
「えっ? おれたちのぶんもあるのか?」
「あるとも! なんと、全員分だ!」
「おおう!」
「『雷の女帝のしもべ』バンザーイ!!」
大歓声が上がる。
「ユウさん、ユウさん」
わたしは、心配してユウに
「ほんとうに、大丈夫なんですか? こんな大勢にふるまうほど、用意してあるんですか? 百人以上いますよ」
「そうだよ、ユウさん、今回は、大鍋つかって用意なんかしてなかったじゃん」
「大丈夫なんだよ」
ユウは、自信たっぷりにいった。
「思いついたことがあってね」
「「?」」
そして、ユウのいんふぃにてぃ・ぼっくすから、全員の器にかれえが注がれる。
例によって、これは、女帝の後継者の収納魔法ということになっているので、わたしがまた、
「水と火のなべに……ごにょごにょ……土のかまど……ごにょごにょ……無限のかれえ!」
いんちきな魔法を詠唱する(詠唱するふりをする)はめとなる。
もう、勘弁してほしいと思う。
そして、ユウの言葉通り、全員に問題なくかれえがふるまわれ、さらにはおかわりも可能であった。リベルタスさんは、五回もおかわりをした。本当に好きなんだ……。
「すげえ、ほんとうにすげえ、どんだけ収納できるんだよ」
冒険者が感嘆の声を上げる。
「さすが、女帝の後継者は、とんでもない魔法を使いやがるぜ!」
いや、あなた、その認識は、根本からまちがっているのです。わかりますか?
「美味しいですね」
と、マリア院長もかれえに舌鼓をうちながら、こっそりとわたしたちに
「これって、ほんとうは収納魔法じゃないですよね? ユウさんの力で、静止空間に配置してあったんですよね?」
と聞いてくる。
ああ、わかってくれるのは、マリア院長だけだ。(たぶん、あと、アーダもね)
「正確に言うと、ちょっと違っててね」
とユウが教えてくれた。
「気がついたんだよね。別に最初からぜんぶの量を作らなくても、ちょっとだけ作ったやつを、複製コピーして増やせばいいんじゃないかって。今回、配ったのは、このまえの残りが一皿くらいあったから、それを増やしたやつだよ。四百倍くらいに増やしたら、十分足りたよ」
得意げである。
あの……アンバランサーって。
もはや、ユウについて、なんといっていいか、わたしにはわかりません……。
そして、夕餉のあとには、ジーナがまたやった。
ドレスに着替えて、月の光を浴びながら、しずしずとみんなの前に現れたジーナが、歌声を披露したのだった。
もちろん、ユウから習った「月の沙漠」が、レパートリーに加わっていた。
「うおおおん……」
「女神だ、おれは歌の女神の降臨をみた!」
「うおおおん!」
また、観客は号泣である。
ジーナが歌うと、かならず、みんな泣いちゃうんだけど。
ひょっとして、ジーナって才能があるの?
(このときのわたしは、やがて、ジーナの二つ名が「歌う嵐の獣人女王」(!)となることをまだ知らない)
そんなふうに、遺跡の夜は更けていった。
発掘隊のつかのまの団欒のひとときのかたわらで、ユウが、ひとり、はるか砂漠の向こうに目をこらし、真剣な顔をしているのに気づくものは、誰もいなかったのだった。
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