アンバランサー・ユウと世界の均衡 第二部「星の船」編

かつエッグ

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アンバランサー・ユウと世界の均衡「星の船」編

ジーナが、心配する。

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 冒険者たちも、一緒になって、梱包した遺物の積み込みを手伝い、そしてすべての準備が整った。
 出発は、明日の朝となった。
 一日の仕事を終え、夕餉の支度が始まる。
 リベルタスさんが、わたしたちのところにやってきて、おずおずと聞いた。

 「で、どうなんだい? 今回は、アレはなんとかなるか?」
 「ああ、あのかれえですか」
 「うん……」

 とリベルタスさんは、ちょっと恥ずかしそうに

 「あれはとてもよかった。もし、今回もあるのなら、ちょっとでいいから、なんとかならないか」
 「いいですよ」

 ユウは、にっこりして

 「用意してありますよ」
 「そうか! それはありがたい!」

 リベルタスさんの顔がぱっと明るくなる。

 「みんなに言っても良いかな? いや、そんな量は無理だよな、いくらなんでも。となると、こっそりといただくしかないか……みんなには悪いが」
 「かまいませんよ、リベルタスさん。全員の分がありますから」
 「えっ、そうなのか! ……さすがだ。よおし!」

 リベルタスさんは、大声でふれまわったのだ。

 「おおーい、みんな! よく聞けえ!! 『雷の女帝のしもべ』が、おれたちにご馳走を用意してくれたぞぉ!」
 「うおおお!」
 「すげぇ!」
 「えっ? おれたちのぶんもあるのか?」
 「あるとも! なんと、全員分だ!」
 「おおう!」
 「『雷の女帝のしもべ』バンザーイ!!」

 大歓声が上がる。

 「ユウさん、ユウさん」

 わたしは、心配してユウに

 「ほんとうに、大丈夫なんですか? こんな大勢にふるまうほど、用意してあるんですか? 百人以上いますよ」
 「そうだよ、ユウさん、今回は、大鍋つかって用意なんかしてなかったじゃん」
 「大丈夫なんだよ」

 ユウは、自信たっぷりにいった。

 「思いついたことがあってね」
 「「?」」

 そして、ユウのから、全員の器にかれえが注がれる。
 例によって、これは、女帝の後継者の収納魔法ということになっているので、わたしがまた、

 「水と火のなべに……ごにょごにょ……土のかまど……ごにょごにょ……無限の!」

 いんちきな魔法を詠唱する(詠唱するふりをする)はめとなる。
 もう、勘弁してほしいと思う。
 そして、ユウの言葉通り、全員に問題なくかれえがふるまわれ、さらにはおかわりも可能であった。リベルタスさんは、五回もおかわりをした。本当に好きなんだ……。

 「すげえ、ほんとうにすげえ、どんだけ収納できるんだよ」

 冒険者が感嘆の声を上げる。

 「さすが、女帝の後継者は、とんでもない魔法を使いやがるぜ!」

 いや、あなた、その認識は、根本からまちがっているのです。わかりますか?

 「美味しいですね」

 と、マリア院長もかれえに舌鼓をうちながら、こっそりとわたしたちに

 「これって、ほんとうは収納魔法じゃないですよね? ユウさんの力で、静止空間に配置してあったんですよね?」

 と聞いてくる。
 ああ、わかってくれるのは、マリア院長だけだ。(たぶん、あと、アーダもね)

 「正確に言うと、ちょっと違っててね」

 とユウが教えてくれた。

 「気がついたんだよね。別に最初からぜんぶの量を作らなくても、ちょっとだけ作ったやつを、複製コピーして増やせばいいんじゃないかって。今回、配ったのは、このまえの残りが一皿くらいあったから、それを増やしたやつだよ。四百倍くらいに増やしたら、十分足りたよ」

 得意げである。
 あの……アンバランサーって。
 もはや、ユウについて、なんといっていいか、わたしにはわかりません……。

 そして、夕餉のあとには、ジーナがまたやった。
 ドレスに着替えて、月の光を浴びながら、しずしずとみんなの前に現れたジーナが、歌声を披露したのだった。
 もちろん、ユウから習った「月の沙漠」が、レパートリーに加わっていた。

 「うおおおん……」
 「女神だ、おれは歌の女神の降臨をみた!」
 「うおおおん!」

 また、観客は号泣である。
 ジーナが歌うと、かならず、みんな泣いちゃうんだけど。
 ひょっとして、ジーナって才能があるの?

 (このときのわたしは、やがて、ジーナの二つ名が「歌う嵐の獣人女王」(!)となることをまだ知らない)

 そんなふうに、遺跡の夜は更けていった。
 発掘隊のつかのまの団欒のひとときのかたわらで、ユウが、ひとり、はるか砂漠の向こうに目をこらし、真剣な顔をしているのに気づくものは、誰もいなかったのだった。
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