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孤児
6売られる
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「ドン!ドン!ドン!」
朝早くから家のドアを叩く音がした。
ファン爺ちゃんの家にやって来る人なんて人手が足りなくて困っている村の人しかいないから、何かあったのかと急いでドアを開ける。
「お、おはようございます。あの、誰?」
そこに立っていたのは村人ではなく全く知らない人達だった。裕福な身なりの恰幅の良い小太りの男性と、その後ろにはその使用人らしい格好の男性が2名いた。
「お前がタダだな。今から出発するから荷物を持って表へ出ろっ!!」
「えっ??あのっどうして?一体何があったの?」
初対面の小太りの男性が俺に表に出ろと言うので、何の事か分からず思わず聞き返してしまった。
「何だ?お前は何も聞かされてないのか?ふーん……まあそういう事もあるだろうに。お前はな、そこで寝ている爺さんは確かファンと言ったか……その爺さんに売られたんだよ!!」
「えっ!!」
思わず耳を疑った。ファン爺ちゃんは俺の事を特に可愛いがった訳ではなかったが、そんなに疎ましく思われていた訳でも無かったと思うし、家事もしていたし、お使いもして少しは役に立ってたと思っていたからだ。
「そ、そんな事がある筈がない!!」
「まあ、いきなり聞かされたらそう反応するわな。だったらそこで寝ているファンを起こして聞いてみたら良い」
信じられない気持ちで言い返すが、小太りの男性は少し哀れんだ目で俺を見ていた。
その何か確信めいた目に不安になり、俺はまだ寝ているファン爺ちゃんを起こした。
「爺ちゃん、ファン爺ちゃん、起きて。聞きたい事があるんだ!!」
ファン爺ちゃんの目が開いた所で俺が売られたって本当かと聞いてみると、ファン爺ちゃんはようやく目が覚めたのか目をパチクリさせて俺と、ドアに立っている男性達を交互に見てから言った。
「おやっ?今日だったかな?」
「えっ……爺ちゃん……うそじゃないのか」
う、うそだ……そんな。ファン爺ちゃんの言葉で、本当に爺ちゃんが俺を売ったんだと分かってしまった。
俺は……このままファン爺ちゃんと生活して、もう少し大きくなったらしっかり働いて、爺ちゃんと不自由ない生活ができるように貢献しようとしていたのに、爺ちゃんの方はそう思っていなかったのだ。
「な、何故なの?どうして爺ちゃんは俺を売った?」
「タダ、お前そんなに悲しいか?お前の事は嫌いじゃあないんだが……お前の為に貰ったお見舞い金も底を尽きてきてお酒が買えないじゃないか。
そんな時に丁度お前位の男の子を探してしているという話を聞きつけたもんで、話を聞けば結構なお金で売れたよ。有難うなあタダ」
「そ、そんな……」
「今まで有難うなあ。またお前のお陰で酒が飲めるよ」
あまりのショックで頭が真っ白になってしまった。ファン爺ちゃんは俺の事はお金か酒に変えられる何かと思っていたんだと、はっきりと分かった衝撃がやはり大きい。
いや、ファン爺ちゃんはお酒の為なら何でもやる人で……そんな事とっくに知っていた筈なのに、俺は大丈夫だと根拠のない自信があっただけに過ぎない。
「おい、タダ。これでお前が売られたのが分かっただろう?自分の荷物をまとめて早く来るんだ」
ファン爺さんの前でぼう然としていると、小太りの男性は待っているのに痺れを切らしてそう言った。
俺はどうしたらいいか分からなかったが、とにかくファン爺ちゃんは俺を売ったからもうこの家から出なくては行けない事は分かった。
この人達に付いて行くしかないのだ……
俺の荷物をまとめる……と言っても俺の荷物なんか殆どない。そうだ……木の根元にある麻袋位だ。
俺が麻袋を取りに家の庭の方に行こうとすると、「タダこっちにおいで」とファン爺ちゃんに呼び止められた。深刻な話をしていた筈なのに弾んだ様子だったので、俺を売ったのを少し後悔したんじゃないかと思って嬉しくなった。
「爺ちゃん何?やっぱり俺がここにいた方が良いと思ったんだろ?」
爺ちゃんに近づいて俺がそう言うと、爺ちゃんは俺の耳元で
「あの麻袋は昨日のうちに貰っといてやったから」
と言ってニヤっと笑ったファン爺ちゃんの顔を見た時、俺はまだそんなに生きていないけれど生きてきた中で1番涙が溢れた。
「ドン!ドン!ドン!」
朝早くから家のドアを叩く音がした。
ファン爺ちゃんの家にやって来る人なんて人手が足りなくて困っている村の人しかいないから、何かあったのかと急いでドアを開ける。
「お、おはようございます。あの、誰?」
そこに立っていたのは村人ではなく全く知らない人達だった。裕福な身なりの恰幅の良い小太りの男性と、その後ろにはその使用人らしい格好の男性が2名いた。
「お前がタダだな。今から出発するから荷物を持って表へ出ろっ!!」
「えっ??あのっどうして?一体何があったの?」
初対面の小太りの男性が俺に表に出ろと言うので、何の事か分からず思わず聞き返してしまった。
「何だ?お前は何も聞かされてないのか?ふーん……まあそういう事もあるだろうに。お前はな、そこで寝ている爺さんは確かファンと言ったか……その爺さんに売られたんだよ!!」
「えっ!!」
思わず耳を疑った。ファン爺ちゃんは俺の事を特に可愛いがった訳ではなかったが、そんなに疎ましく思われていた訳でも無かったと思うし、家事もしていたし、お使いもして少しは役に立ってたと思っていたからだ。
「そ、そんな事がある筈がない!!」
「まあ、いきなり聞かされたらそう反応するわな。だったらそこで寝ているファンを起こして聞いてみたら良い」
信じられない気持ちで言い返すが、小太りの男性は少し哀れんだ目で俺を見ていた。
その何か確信めいた目に不安になり、俺はまだ寝ているファン爺ちゃんを起こした。
「爺ちゃん、ファン爺ちゃん、起きて。聞きたい事があるんだ!!」
ファン爺ちゃんの目が開いた所で俺が売られたって本当かと聞いてみると、ファン爺ちゃんはようやく目が覚めたのか目をパチクリさせて俺と、ドアに立っている男性達を交互に見てから言った。
「おやっ?今日だったかな?」
「えっ……爺ちゃん……うそじゃないのか」
う、うそだ……そんな。ファン爺ちゃんの言葉で、本当に爺ちゃんが俺を売ったんだと分かってしまった。
俺は……このままファン爺ちゃんと生活して、もう少し大きくなったらしっかり働いて、爺ちゃんと不自由ない生活ができるように貢献しようとしていたのに、爺ちゃんの方はそう思っていなかったのだ。
「な、何故なの?どうして爺ちゃんは俺を売った?」
「タダ、お前そんなに悲しいか?お前の事は嫌いじゃあないんだが……お前の為に貰ったお見舞い金も底を尽きてきてお酒が買えないじゃないか。
そんな時に丁度お前位の男の子を探してしているという話を聞きつけたもんで、話を聞けば結構なお金で売れたよ。有難うなあタダ」
「そ、そんな……」
「今まで有難うなあ。またお前のお陰で酒が飲めるよ」
あまりのショックで頭が真っ白になってしまった。ファン爺ちゃんは俺の事はお金か酒に変えられる何かと思っていたんだと、はっきりと分かった衝撃がやはり大きい。
いや、ファン爺ちゃんはお酒の為なら何でもやる人で……そんな事とっくに知っていた筈なのに、俺は大丈夫だと根拠のない自信があっただけに過ぎない。
「おい、タダ。これでお前が売られたのが分かっただろう?自分の荷物をまとめて早く来るんだ」
ファン爺さんの前でぼう然としていると、小太りの男性は待っているのに痺れを切らしてそう言った。
俺はどうしたらいいか分からなかったが、とにかくファン爺ちゃんは俺を売ったからもうこの家から出なくては行けない事は分かった。
この人達に付いて行くしかないのだ……
俺の荷物をまとめる……と言っても俺の荷物なんか殆どない。そうだ……木の根元にある麻袋位だ。
俺が麻袋を取りに家の庭の方に行こうとすると、「タダこっちにおいで」とファン爺ちゃんに呼び止められた。深刻な話をしていた筈なのに弾んだ様子だったので、俺を売ったのを少し後悔したんじゃないかと思って嬉しくなった。
「爺ちゃん何?やっぱり俺がここにいた方が良いと思ったんだろ?」
爺ちゃんに近づいて俺がそう言うと、爺ちゃんは俺の耳元で
「あの麻袋は昨日のうちに貰っといてやったから」
と言ってニヤっと笑ったファン爺ちゃんの顔を見た時、俺はまだそんなに生きていないけれど生きてきた中で1番涙が溢れた。
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