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ジンside
2ウェイの気持ち
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あの日、イーランの出産はウェイ家の中でさせるのは不安があった。
私がウェイ家に忍ばせている部下がいるように、ハン家の者もウェイ家に忍びこませているかもしれない。
宮廷には幸せそうな出産間近のイーランを連れ添ってウェイとリーが見守りにやってきた。
絶対にイーランを死なせない。
イーランが元気な赤ん坊を出産した時は宮廷中が喜びで満ち溢れていたと思ったのに、その直後にイーランの容体急変で喜びは一瞬で動揺に変わり、私は勿論、イーランの夫であるウェイの一族はイーランの方に全員心を寄せてしまっていた。
その時誰か1人でも一族から赤ん坊の見守りをしていれば……それが私の手の者であったなら誘拐なんてさせなかったのに。
それからの後悔の日々……1番辛かったのはイーランの夫であるウェイだ。
最愛の妻と子供を同時に失ってしまった……
一見普通そうに振る舞っているが長年親しい者にはどれだけ苦しんでいるのが手に取る様に分かっていた。
「……すまない」
「ジンが悪い訳ではありませんでした。悪いのはハンです」
ウェイは一切私を責める事はなかった。
何がこの国の王だ!私は肝心な時に何も役に立たなかった。
せめてハオランを見つけ出さなければと鎖国をした。
そもそもハン家が他国との不穏の交流もあった為にハン家の者が他国に逃げるのも許せなかった。
他の臣下に対してはハンに裏切られた事を無念だと周知させていたが、長年の目標であったハン家をようやく取り潰せるとせいせいしていた。
「ハンよ。最後に言いたい事はあるか?」
「自分の父親の殺害者が本当は誰だったか聞きたくないですか?」
最後の悪あがきなのかハンは私の興味を引くような言葉を選んだようだ。
しかし、私はとっくの昔に結論を出しており全く動揺しなかった。
その事にハンは驚き狼狽えていた。
「最後に言いた事はそれか?私は特に返事をするつもりはない。さあ、長年父の代から1番の側近だった者として、私が切腹して死んで行くまでを見ててやろう。首は切らずにな」
切腹とは他国で自害する時の方法だ。
自分で腹を切った所を他の者が首を刎ねる。
腹を切った位では中々死なずに苦しむ事から首を刎ねて苦しまずにあの世に行ける方法だ。
だがハンに関しては苦しむ所が見たかったので首を跳ねるのを辞めた。
自分で腹を斬る時は1番の側近にしては往生際が悪かった為、私が一緒に腹を斬るのを手伝ってあげた。
「長い時間、いい呻き声をするな……ハン、お前は声がまだ出せるほと元気なのだな」
「ああ……父はとっくの昔に声も無い存在になったなぁ」
ハンが死んでいく顔と呻き声を聞きながら、いない父と酒を飲んだ。
そしてハンの首だけを持ってハン家の者達が幽閉されている場所の前に見せしめに置いてから何度もハオランの行方を聞き出した。
ハオランの捜索が難航していると感じとったハン家の者が俺に交渉を持ちかける様になったので、そういう奴は容赦なく殺したら、もう本当に何も知らないと言う者だけになってしまった。
しかし、ハオランが見つからない……ウェイは実権を完全に掌握した私に「側近を辞めたい」と申し出た。
本当は了承したくなかったが、ハオランを思うと何も言えずに了承した。
私は父が死んでから一生懸命この国の為に働いて、王として采配を振り、ハン家の勢力を押し退けてきたが……
実権が手に入った代わりに、何もかも失ったような気がした。
私の手の中にあった大切な者達がポロポロとこぼれ落ちて最後は誰も残って無いような無力感だけがずっと私の中にある。
それでも元側近だったウェイは職を辞してからも、時々私を心配してお酒を飲もうと誘ってくれる。
酒を飲みながら私より年上のウェイは髪に白い物が混じるようになってきたな……と思っていた時に、ウェイが酒に酔うと無意識にイーランやハオランと語り合っているのを目の当たりにしてしまった。
「……ああ、ハオラン……そこにいたのか……」
「ウェイ、何だ?寝ぼけているのか?」
「イーラン……ハオランと仲いいな……」
「ウェイ……」
「私も……そっちに……連れて行ってくれ……」
「……ウェイ……すまない」
「………早く……行きたいんだ……」
「っ……ウェイ……お前まで私を1人ぼっちにしないでくれ。お願いだ……」
私がウェイ家に忍ばせている部下がいるように、ハン家の者もウェイ家に忍びこませているかもしれない。
宮廷には幸せそうな出産間近のイーランを連れ添ってウェイとリーが見守りにやってきた。
絶対にイーランを死なせない。
イーランが元気な赤ん坊を出産した時は宮廷中が喜びで満ち溢れていたと思ったのに、その直後にイーランの容体急変で喜びは一瞬で動揺に変わり、私は勿論、イーランの夫であるウェイの一族はイーランの方に全員心を寄せてしまっていた。
その時誰か1人でも一族から赤ん坊の見守りをしていれば……それが私の手の者であったなら誘拐なんてさせなかったのに。
それからの後悔の日々……1番辛かったのはイーランの夫であるウェイだ。
最愛の妻と子供を同時に失ってしまった……
一見普通そうに振る舞っているが長年親しい者にはどれだけ苦しんでいるのが手に取る様に分かっていた。
「……すまない」
「ジンが悪い訳ではありませんでした。悪いのはハンです」
ウェイは一切私を責める事はなかった。
何がこの国の王だ!私は肝心な時に何も役に立たなかった。
せめてハオランを見つけ出さなければと鎖国をした。
そもそもハン家が他国との不穏の交流もあった為にハン家の者が他国に逃げるのも許せなかった。
他の臣下に対してはハンに裏切られた事を無念だと周知させていたが、長年の目標であったハン家をようやく取り潰せるとせいせいしていた。
「ハンよ。最後に言いたい事はあるか?」
「自分の父親の殺害者が本当は誰だったか聞きたくないですか?」
最後の悪あがきなのかハンは私の興味を引くような言葉を選んだようだ。
しかし、私はとっくの昔に結論を出しており全く動揺しなかった。
その事にハンは驚き狼狽えていた。
「最後に言いた事はそれか?私は特に返事をするつもりはない。さあ、長年父の代から1番の側近だった者として、私が切腹して死んで行くまでを見ててやろう。首は切らずにな」
切腹とは他国で自害する時の方法だ。
自分で腹を切った所を他の者が首を刎ねる。
腹を切った位では中々死なずに苦しむ事から首を刎ねて苦しまずにあの世に行ける方法だ。
だがハンに関しては苦しむ所が見たかったので首を跳ねるのを辞めた。
自分で腹を斬る時は1番の側近にしては往生際が悪かった為、私が一緒に腹を斬るのを手伝ってあげた。
「長い時間、いい呻き声をするな……ハン、お前は声がまだ出せるほと元気なのだな」
「ああ……父はとっくの昔に声も無い存在になったなぁ」
ハンが死んでいく顔と呻き声を聞きながら、いない父と酒を飲んだ。
そしてハンの首だけを持ってハン家の者達が幽閉されている場所の前に見せしめに置いてから何度もハオランの行方を聞き出した。
ハオランの捜索が難航していると感じとったハン家の者が俺に交渉を持ちかける様になったので、そういう奴は容赦なく殺したら、もう本当に何も知らないと言う者だけになってしまった。
しかし、ハオランが見つからない……ウェイは実権を完全に掌握した私に「側近を辞めたい」と申し出た。
本当は了承したくなかったが、ハオランを思うと何も言えずに了承した。
私は父が死んでから一生懸命この国の為に働いて、王として采配を振り、ハン家の勢力を押し退けてきたが……
実権が手に入った代わりに、何もかも失ったような気がした。
私の手の中にあった大切な者達がポロポロとこぼれ落ちて最後は誰も残って無いような無力感だけがずっと私の中にある。
それでも元側近だったウェイは職を辞してからも、時々私を心配してお酒を飲もうと誘ってくれる。
酒を飲みながら私より年上のウェイは髪に白い物が混じるようになってきたな……と思っていた時に、ウェイが酒に酔うと無意識にイーランやハオランと語り合っているのを目の当たりにしてしまった。
「……ああ、ハオラン……そこにいたのか……」
「ウェイ、何だ?寝ぼけているのか?」
「イーラン……ハオランと仲いいな……」
「ウェイ……」
「私も……そっちに……連れて行ってくれ……」
「……ウェイ……すまない」
「………早く……行きたいんだ……」
「っ……ウェイ……お前まで私を1人ぼっちにしないでくれ。お願いだ……」
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