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38 説明(ハミルトン視点)
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車椅子が完成したその日、お祖父様は夕食を僕達と一緒に摂る事になった。
こうしてお祖父様と同じテーブルで食事をするのはいつぶりだろうか?
ジェシカが車椅子などという物を考えてくれなければ、もう二度とこんな時は訪れなかったかもしれない。
翌日、ジェシカと一緒に車椅子のお祖父様と庭を散歩した。
楽しそうに笑うジェシカを微笑ましく見つめながら、この後は何をしようかと考えていた。
また一緒に買い物をするのもいいかもしれないな。
散歩を終えて玄関ホールに戻り、ジェシカに声をかけようとしたその時、玄関が開いてユージーンが入って来た。
その後ろを慌てたような表情のモーガンが追いかけている。
…何だ?
今日来るとは聞いていないぞ。
ユージーンは僕をチラリと一瞥した後、ジェシカに向かって笑顔を振りまく。
「君がフェリシアかい? 迎えに来たよ、僕の妹」
…は?
今、ジェシカをフェリシアと呼んだのか?
おまけに言うに事欠いて「僕の妹」だって?
それに迎えに来たとはどういう事だ?
ジェシカは声も出せずに固まっている。
ここは僕が助けてやらないと!
「ユージーン! いきなり現れて何を言っているんだ? ジェシカが君の妹だと? どうしてそんな話が出てくるんだ?」
ジェシカを僕の後ろに庇うようにユージーンの前に立ち塞がると、ユージーンはそんな僕を見てニヤリと笑う。
「ユージーン。今、お前はジェシカをフェリシアと呼んだな? 一体どういう事か説明してくれんか?」
お祖父様も車椅子に座ったまま僕の隣に並んでジェシカをユージーンから遠ざけようとしている。
ユージーンはジェシカが実はフェリシアと言う名前で、国王陛下の恋人だった女性が産んだ娘だと言い出した。
そしてあろうことか、ジェシカ、いやフェリシアを王宮に連れて行くと言うのだ。
玄関ホールで押し問答している僕達をなだめたのは執事のモーガンだった。
モーガンはいつの間にか応接室の準備を整えて話し合いの場を設けてくれた。
おまけに母上までもが呼ばれて来るなんて、有能過ぎるだろう。
その場で改めてユージーンはフェリシアについての話をした。
本物のジェシカは既に亡くなっていて、フェリシアも友人のジェシカの死を受け入れられなかったらしい。
弁護士のベイルにも言いそびれてしまったそうだ。
この屋敷に来て本当の事を打ち明けようとしたのに、僕が照れ隠しとはいえ少しきつい事を言ってしまったせいで言えなかったんだな。
泣き出したフェリシアを抱きしめたかったけれど、流石にそれは出来なかった。
お祖父様がフェリシアにお礼を言うのを聞きながら、僕は他の事を考えていた。
今まではフェリシアは平民だと思っていたから、結婚するのに身分差があるから難しいかもしれないと思っていた。
しかし、本当にフェリシアが陛下の娘ならば、僕と結婚するのに何の支障もない。
むしろ諸手を上げて歓迎されるんじゃないのだろうか。
そんな事を考えているとユージーンが僕を見てまたもやニヤリと笑う。
…何だ?
何を企んでいる?
その理由はすぐに判明した。
フェリシアを王宮に連れて帰ると言うのだ。
確かに陛下の娘であれば王女という立場であり、王宮に行くのは当然だろう。
だが、せっかくこの屋敷で一緒に暮らしているのに、ユージーンに掻っ攫われたくはない。
「ちょっと待て、ユージーン! フェリシアが君の妹だとどうして断定出来るんだ? ただ陛下に似ているだけかもしれないだろう?」
何とかフェリシアが王宮に行くのを阻止しようとするが、ユージーンはそんな僕を見て楽しそうに笑う。
こいつ、僕がフェリシアの事を好きなのを知っていて、わざと邪魔をしようとしているな。
「仕方がない。それならばハミルトンも一緒に来い。フェリシアが父上の娘だと証明をしようじゃないか」
ユージーンの奴、随分と自信満々だな。
どうやってフェリシアが陛下の娘だと証明するんだ?
こうしてお祖父様と同じテーブルで食事をするのはいつぶりだろうか?
ジェシカが車椅子などという物を考えてくれなければ、もう二度とこんな時は訪れなかったかもしれない。
翌日、ジェシカと一緒に車椅子のお祖父様と庭を散歩した。
楽しそうに笑うジェシカを微笑ましく見つめながら、この後は何をしようかと考えていた。
また一緒に買い物をするのもいいかもしれないな。
散歩を終えて玄関ホールに戻り、ジェシカに声をかけようとしたその時、玄関が開いてユージーンが入って来た。
その後ろを慌てたような表情のモーガンが追いかけている。
…何だ?
今日来るとは聞いていないぞ。
ユージーンは僕をチラリと一瞥した後、ジェシカに向かって笑顔を振りまく。
「君がフェリシアかい? 迎えに来たよ、僕の妹」
…は?
今、ジェシカをフェリシアと呼んだのか?
おまけに言うに事欠いて「僕の妹」だって?
それに迎えに来たとはどういう事だ?
ジェシカは声も出せずに固まっている。
ここは僕が助けてやらないと!
「ユージーン! いきなり現れて何を言っているんだ? ジェシカが君の妹だと? どうしてそんな話が出てくるんだ?」
ジェシカを僕の後ろに庇うようにユージーンの前に立ち塞がると、ユージーンはそんな僕を見てニヤリと笑う。
「ユージーン。今、お前はジェシカをフェリシアと呼んだな? 一体どういう事か説明してくれんか?」
お祖父様も車椅子に座ったまま僕の隣に並んでジェシカをユージーンから遠ざけようとしている。
ユージーンはジェシカが実はフェリシアと言う名前で、国王陛下の恋人だった女性が産んだ娘だと言い出した。
そしてあろうことか、ジェシカ、いやフェリシアを王宮に連れて行くと言うのだ。
玄関ホールで押し問答している僕達をなだめたのは執事のモーガンだった。
モーガンはいつの間にか応接室の準備を整えて話し合いの場を設けてくれた。
おまけに母上までもが呼ばれて来るなんて、有能過ぎるだろう。
その場で改めてユージーンはフェリシアについての話をした。
本物のジェシカは既に亡くなっていて、フェリシアも友人のジェシカの死を受け入れられなかったらしい。
弁護士のベイルにも言いそびれてしまったそうだ。
この屋敷に来て本当の事を打ち明けようとしたのに、僕が照れ隠しとはいえ少しきつい事を言ってしまったせいで言えなかったんだな。
泣き出したフェリシアを抱きしめたかったけれど、流石にそれは出来なかった。
お祖父様がフェリシアにお礼を言うのを聞きながら、僕は他の事を考えていた。
今まではフェリシアは平民だと思っていたから、結婚するのに身分差があるから難しいかもしれないと思っていた。
しかし、本当にフェリシアが陛下の娘ならば、僕と結婚するのに何の支障もない。
むしろ諸手を上げて歓迎されるんじゃないのだろうか。
そんな事を考えているとユージーンが僕を見てまたもやニヤリと笑う。
…何だ?
何を企んでいる?
その理由はすぐに判明した。
フェリシアを王宮に連れて帰ると言うのだ。
確かに陛下の娘であれば王女という立場であり、王宮に行くのは当然だろう。
だが、せっかくこの屋敷で一緒に暮らしているのに、ユージーンに掻っ攫われたくはない。
「ちょっと待て、ユージーン! フェリシアが君の妹だとどうして断定出来るんだ? ただ陛下に似ているだけかもしれないだろう?」
何とかフェリシアが王宮に行くのを阻止しようとするが、ユージーンはそんな僕を見て楽しそうに笑う。
こいつ、僕がフェリシアの事を好きなのを知っていて、わざと邪魔をしようとしているな。
「仕方がない。それならばハミルトンも一緒に来い。フェリシアが父上の娘だと証明をしようじゃないか」
ユージーンの奴、随分と自信満々だな。
どうやってフェリシアが陛下の娘だと証明するんだ?
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