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47 お迎え
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ハミルトンと一緒に歩くのはこれが初めてじゃないのに、告白をされたせいか妙に意識をしてしまう。
それはハミルトンも同じみたいで、少し緊張しているような空気が伝わってくる。
何か話した方がいいのかな、と思いながらも結局何も言えずに黙って歩く。
屋敷の中が広いといっても、食堂から私の部屋まではそんなに距離はない。
私の部屋が近付いて来るにつれて、徐々に足取りが遅くなる。
ようやく私の部屋の扉の前に到着して、私はハミルトンの腕からそっと手を離した。
横を見上げると優しい眼差しのハミルトンがそこにいる。
このまま黙って立っているわけにもいかないので、私はニコリと微笑んだ。
「ありがとうございます、ハミルトン様。それでは…」
「…ああ、それじゃ…」
ハミルトンが見送る中、私は扉を開けて中に入った。
扉が閉まるとしばらくして、ハミルトンが立ち去る足音が微かに聞こえた。
明日から私が王宮に行ってしまえば、頻繁に会う事は出来ないだろうけれど、時々はデートぐらい出来るかしら?
それにしても、本当に私が国王の娘だったなんて、未だに信じられないわ。
私の母親は私を身ごもったまま、国王の前から姿を消したとか言っていたけれど、それも王妃様の仕業なのかしら?
既にこの世にいない人だから、二人の間に何があったのかはわからないわね。
国王であるお父様も詳細はわからないみたいだしね。
とりあえず、王宮に行っても私の事を心良く思っていない人はいないみたいね。
私はアンナを呼んでお風呂の支度をしてもらい、ゆったりとした気分で公爵家の最後の夜を過ごした。
翌朝、目が覚めて身支度をしていると、部屋の扉をノックする音が聞こえた。
(…こんなに朝早くから誰かしら?)
身支度を手伝ってくれているアンナが扉の方へ向かい、扉を開けて誰かと会話をしている。
(あの声は、ハミルトン?)
やがて扉を閉めて、アンナが私の所に戻って来た。
「フェリシア様。ハミルトン様がお見えです」
こんなに早くからハミルトンが来た事にも驚いたが、アンナが私を「フェリシア様」と呼んだ事にはもっとびっくりした。
「アンナ、どうして私をフェリシアだと言ったの?」
「昨日の夜のうちにモーガンさんから皆に報告がありました。ジェシカ様は実は国王陛下の娘で本当の名前はフェリシア様だと判明したと。この後、王宮からお迎えが来る事も聞いております」
既に公爵家の使用人達には私がフェリシアだと伝わっているのね。
それよりも、ハミルトンを待たせているんだったわ。
「ハミルトン様は、何のご用なの?」
「食堂に向かうのにお迎えにいらしたそうです」
そう言いながらもアンナはテキパキと私の身支度を終えていった。
身支度を終えて部屋の扉に向かい、アンナが扉を開くとそこにハミルトンが立っていた。
「おはよう、フェリシア。一緒に食堂に行こう」
朝からキラキラの笑顔を向けられて、ちょっと顔が引き攣ってしまうわ。
「おはようございます、ハミルトン様。わざわざ申し訳ありません」
嬉しいけれどちょっと照れるわ。
アンナも何処となく好奇心に満ちたような視線を私達に向けているしね。
食堂に向かうと私達が一番乗りだったわ。
どれだけハミルトンは私に会うのが待ち遠しかったのかしら。
席に着いて待っているとやがてお義母様、そしてお祖父様の順に食堂に入って来た。
何事もなく、朝食を終えて食後のお茶を待っていると、バタバタと足音が響いて食堂の扉がバタンと開いた。
「おはよう、フェリシア。迎えに来たよ」
ユージーンが満面の笑みを私に向けて立っている。
その後を追いかけてきたモーガンが、申し訳なさそうにお祖父様の所にやってきた。
「申し訳ありません、旦那様。まだ食事中だとお止めしたのですが…」
流石に公爵家の執事でもこの国の王太子を突っぱねる事は出来ないわよね。
って、いうか早すぎない?
それはハミルトンも同じみたいで、少し緊張しているような空気が伝わってくる。
何か話した方がいいのかな、と思いながらも結局何も言えずに黙って歩く。
屋敷の中が広いといっても、食堂から私の部屋まではそんなに距離はない。
私の部屋が近付いて来るにつれて、徐々に足取りが遅くなる。
ようやく私の部屋の扉の前に到着して、私はハミルトンの腕からそっと手を離した。
横を見上げると優しい眼差しのハミルトンがそこにいる。
このまま黙って立っているわけにもいかないので、私はニコリと微笑んだ。
「ありがとうございます、ハミルトン様。それでは…」
「…ああ、それじゃ…」
ハミルトンが見送る中、私は扉を開けて中に入った。
扉が閉まるとしばらくして、ハミルトンが立ち去る足音が微かに聞こえた。
明日から私が王宮に行ってしまえば、頻繁に会う事は出来ないだろうけれど、時々はデートぐらい出来るかしら?
それにしても、本当に私が国王の娘だったなんて、未だに信じられないわ。
私の母親は私を身ごもったまま、国王の前から姿を消したとか言っていたけれど、それも王妃様の仕業なのかしら?
既にこの世にいない人だから、二人の間に何があったのかはわからないわね。
国王であるお父様も詳細はわからないみたいだしね。
とりあえず、王宮に行っても私の事を心良く思っていない人はいないみたいね。
私はアンナを呼んでお風呂の支度をしてもらい、ゆったりとした気分で公爵家の最後の夜を過ごした。
翌朝、目が覚めて身支度をしていると、部屋の扉をノックする音が聞こえた。
(…こんなに朝早くから誰かしら?)
身支度を手伝ってくれているアンナが扉の方へ向かい、扉を開けて誰かと会話をしている。
(あの声は、ハミルトン?)
やがて扉を閉めて、アンナが私の所に戻って来た。
「フェリシア様。ハミルトン様がお見えです」
こんなに早くからハミルトンが来た事にも驚いたが、アンナが私を「フェリシア様」と呼んだ事にはもっとびっくりした。
「アンナ、どうして私をフェリシアだと言ったの?」
「昨日の夜のうちにモーガンさんから皆に報告がありました。ジェシカ様は実は国王陛下の娘で本当の名前はフェリシア様だと判明したと。この後、王宮からお迎えが来る事も聞いております」
既に公爵家の使用人達には私がフェリシアだと伝わっているのね。
それよりも、ハミルトンを待たせているんだったわ。
「ハミルトン様は、何のご用なの?」
「食堂に向かうのにお迎えにいらしたそうです」
そう言いながらもアンナはテキパキと私の身支度を終えていった。
身支度を終えて部屋の扉に向かい、アンナが扉を開くとそこにハミルトンが立っていた。
「おはよう、フェリシア。一緒に食堂に行こう」
朝からキラキラの笑顔を向けられて、ちょっと顔が引き攣ってしまうわ。
「おはようございます、ハミルトン様。わざわざ申し訳ありません」
嬉しいけれどちょっと照れるわ。
アンナも何処となく好奇心に満ちたような視線を私達に向けているしね。
食堂に向かうと私達が一番乗りだったわ。
どれだけハミルトンは私に会うのが待ち遠しかったのかしら。
席に着いて待っているとやがてお義母様、そしてお祖父様の順に食堂に入って来た。
何事もなく、朝食を終えて食後のお茶を待っていると、バタバタと足音が響いて食堂の扉がバタンと開いた。
「おはよう、フェリシア。迎えに来たよ」
ユージーンが満面の笑みを私に向けて立っている。
その後を追いかけてきたモーガンが、申し訳なさそうにお祖父様の所にやってきた。
「申し訳ありません、旦那様。まだ食事中だとお止めしたのですが…」
流石に公爵家の執事でもこの国の王太子を突っぱねる事は出来ないわよね。
って、いうか早すぎない?
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