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46 ハミルトンの告白
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「フェリシア、ちょっといいかな?」
お茶を飲み終えて部屋に戻ろうかと立ち上がったところでハミルトンに呼び止められた。
先程、お祖父様にジェシカの遺髪と遺骨を渡したから、ジェシカの話を聞きたいのかしら?
「はい、何でしょう?」
それなのにハミルトンは何も言わずにチラチラとお祖父様とお義母様の様子を伺っている。
そんなハミルトンの様子を見てお祖父様がハァ、とため息をついた。
「ハミルトン、私とパトリシアの事なら気にしなくていいぞ。この場にいないものと思え」
そう言われてハミルトンは顔を引き攣らせていた。
流石に気にするなと言われてもちょっと無理があると思うんだけどね。
お義母様は何事か、とばかりに好奇心に満ちた目をしているし、お祖父様は何処となく愉しそうな顔をしている。
もしかして、ユージーンに宣言していた事かしら。
少し照れたようなハミルトンの顔を見て私は何となくそう思った。
お祖父様とお義母様の前でそんな話をされるのは少し抵抗があるけれど、だからといって話を聞かないわけにはいかないわね。
私はもう一度椅子に座ると、ハミルトンに向き直った。
いつになく真剣な眼差しのハミルトンに思わずドキドキしてしまう。
「フェリシア。知り合ってまだ間がない君にこんな事を言うのはどうかと思われるかもしれない。だが、僕は初めて会った時から君を好きになったんだ。どうか僕と結婚を前提として付き合ってもらえないか?」
予想していた通りのハミルトンの言葉に、私の胸は更にドキドキが強くなり、心臓が口からとびだしそうな気配だ。
距離が離れていてほんとに良かった。
近くにいたら心臓の音が聞こえてしまいそうだものね。
私は返事をする前にチラリとお祖父様とお義母様に視線を移した。
二人共、ニコニコと私達を微笑ましそうに見つめている。
ハミルトンの言動を咎めようとはしない所を見ると、ハミルトンが何を言い出すのかわかっていたみたいね。
そうだとすると尚更気恥ずかしくなってくるわ。
ハミルトンくらいの立場であれば、強引に私との婚姻を進めてもおかしくはない。
それなのに私の気持ちを尊重してくれるのは、やはりジェシカと私の父親がそれぞれやらかしてしまった事が原因だろう。
なかなか返事をしない私をハミルトンが不安そうな表情で見ている。
ハミルトンが誠意を見せてくれたのだから、私もきちんと向き合わないとね。
「ありがとうございます、ハミルトン様。実を言うと私もハミルトン様の事が気になっていました。でも、だからといって即結婚に結び付けられたくはありません。それでもよろしければお付き合いさせてください」
この先、お互いに他に好きな人が出来ないとも限らないものね。
ちょっとズルい答えかもしれないけれど、即座に結論を出さなくてもいいはずだ。
それでもハミルトンは嬉しそうにコクコクと頷いた。
「ありがとう、フェリシア。無理だと断られないだけマシだよ。これからよろしくね」
ハミルトンが手を差し出しかけたけれど、流石にこの距離では握手も難しいわね。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
ペコリと頭を下げた事で、私達の告白タイムは終わりを告げる。
パチパチとお祖父様とお義母様から拍手がおきた事で私とハミルトンはハッと我に返る。
他人がいるのはわかっていたはずなのに、少しばかり二人の世界に入っていたみたいね。
「お付き合いをするのはいいが、エリックとユージーンが邪魔をして来そうだな」
ワッハッハ、と笑うお祖父様にハミルトンがげんなりとした顔を見せる。
今日のあの二人の態度を見ていれば、あながちそれも間違いじゃないわね
ハミルトンは立ち上がると私の側に回ってくる。
「フェリシア、部屋まで送るよ」
差し出された手を取って立ち上がると、柔らかく微笑んた顔が、直ぐ目の前に迫る。
付き合うと決めたせいか、妙にドキドキしてしまうわ。
私とハミルトンはお祖父様とお義母様にお暇を告げると、二人で食堂を出た。
お茶を飲み終えて部屋に戻ろうかと立ち上がったところでハミルトンに呼び止められた。
先程、お祖父様にジェシカの遺髪と遺骨を渡したから、ジェシカの話を聞きたいのかしら?
「はい、何でしょう?」
それなのにハミルトンは何も言わずにチラチラとお祖父様とお義母様の様子を伺っている。
そんなハミルトンの様子を見てお祖父様がハァ、とため息をついた。
「ハミルトン、私とパトリシアの事なら気にしなくていいぞ。この場にいないものと思え」
そう言われてハミルトンは顔を引き攣らせていた。
流石に気にするなと言われてもちょっと無理があると思うんだけどね。
お義母様は何事か、とばかりに好奇心に満ちた目をしているし、お祖父様は何処となく愉しそうな顔をしている。
もしかして、ユージーンに宣言していた事かしら。
少し照れたようなハミルトンの顔を見て私は何となくそう思った。
お祖父様とお義母様の前でそんな話をされるのは少し抵抗があるけれど、だからといって話を聞かないわけにはいかないわね。
私はもう一度椅子に座ると、ハミルトンに向き直った。
いつになく真剣な眼差しのハミルトンに思わずドキドキしてしまう。
「フェリシア。知り合ってまだ間がない君にこんな事を言うのはどうかと思われるかもしれない。だが、僕は初めて会った時から君を好きになったんだ。どうか僕と結婚を前提として付き合ってもらえないか?」
予想していた通りのハミルトンの言葉に、私の胸は更にドキドキが強くなり、心臓が口からとびだしそうな気配だ。
距離が離れていてほんとに良かった。
近くにいたら心臓の音が聞こえてしまいそうだものね。
私は返事をする前にチラリとお祖父様とお義母様に視線を移した。
二人共、ニコニコと私達を微笑ましそうに見つめている。
ハミルトンの言動を咎めようとはしない所を見ると、ハミルトンが何を言い出すのかわかっていたみたいね。
そうだとすると尚更気恥ずかしくなってくるわ。
ハミルトンくらいの立場であれば、強引に私との婚姻を進めてもおかしくはない。
それなのに私の気持ちを尊重してくれるのは、やはりジェシカと私の父親がそれぞれやらかしてしまった事が原因だろう。
なかなか返事をしない私をハミルトンが不安そうな表情で見ている。
ハミルトンが誠意を見せてくれたのだから、私もきちんと向き合わないとね。
「ありがとうございます、ハミルトン様。実を言うと私もハミルトン様の事が気になっていました。でも、だからといって即結婚に結び付けられたくはありません。それでもよろしければお付き合いさせてください」
この先、お互いに他に好きな人が出来ないとも限らないものね。
ちょっとズルい答えかもしれないけれど、即座に結論を出さなくてもいいはずだ。
それでもハミルトンは嬉しそうにコクコクと頷いた。
「ありがとう、フェリシア。無理だと断られないだけマシだよ。これからよろしくね」
ハミルトンが手を差し出しかけたけれど、流石にこの距離では握手も難しいわね。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
ペコリと頭を下げた事で、私達の告白タイムは終わりを告げる。
パチパチとお祖父様とお義母様から拍手がおきた事で私とハミルトンはハッと我に返る。
他人がいるのはわかっていたはずなのに、少しばかり二人の世界に入っていたみたいね。
「お付き合いをするのはいいが、エリックとユージーンが邪魔をして来そうだな」
ワッハッハ、と笑うお祖父様にハミルトンがげんなりとした顔を見せる。
今日のあの二人の態度を見ていれば、あながちそれも間違いじゃないわね
ハミルトンは立ち上がると私の側に回ってくる。
「フェリシア、部屋まで送るよ」
差し出された手を取って立ち上がると、柔らかく微笑んた顔が、直ぐ目の前に迫る。
付き合うと決めたせいか、妙にドキドキしてしまうわ。
私とハミルトンはお祖父様とお義母様にお暇を告げると、二人で食堂を出た。
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