御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜

伽羅

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学院編

102 無傷

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 ヴィクター先生はうずくまっている僕の前に跪いた。

「エドアルド君、ちょっと腕に触るぞ」

 僕が軽く頷くとヴィクター先生は押さえている方の腕をそっと持ち上げた。

「これは痛くないか? ちょっと袖を捲るぞ」

 ヴィクター先生が僕の運動着の袖を捲り上げる。

 けれど、そこには何の傷も無かった。

 アーサーの模造剣が当たった箇所がうっすらと赤くなってはいたものの、他には何の異常もない。

「ちょっと触るぞ」

 ヴィクター先生が赤くなっている所に触れてくるけれど、今は何の痛みも痒じなかった。

 実際に剣で切られた事はないけれど、さっき感じた痛みは本物の剣で切られたような感覚だった。

 それほどの痛みを感じたのに実際にはほんの少しだけ赤みを帯びているだけなんてどういう事だろう?

「痛みはないようだな? 少し向こうで休憩するか?」 

 ヴィクター先生に問われたが僕はそれを断った。

「いえ、大丈夫です。このまま続けます」

 僕が立ち上がるとヴィクター先生は落ちている模造剣を拾って渡してくれる。

「そうか。無理はするなよ」

 そして周りで固唾を飲んで見守っている他の生徒達にげきを飛ばす。

「誰が休んで良いと言った! さっさと続けろ!」

 いやはや、結構なスパルタ教師ぶりだね。

 皆が稽古に戻る中、アーサーはなおも僕から離れない。

「エド、本当に大丈夫か?」

「大丈夫。きっと、ツボに当たったんだよ。だからあんなに痛かったんだ?」

「ツボ?」

 アーサーが聞き慣れない言葉に首を傾げる。

 うっかり言っちゃったけど、この世界には「鍼灸治療」の概念は無いんだっけ?

「えっと、つまり神経が重なっているところだよ。そこを押さえると痛かったり気持ち良かったりする箇所があるんだって。たまたまそこに剣が当たったから痛かっただけなんだよ」

 僕の説明から前世の知識だとわかったらしく、アーサーは妙に納得したような顔をする。

「そうか。エドが大丈夫って言うのならこのまま稽古を続けるけど、無理そうならすぐに言ってくれよ」

「わかった」

 アーサーは僕と距離を取ると、その場で模造剣を構えた。

 だけど、やはり気にしているのかすぐにはこちらに向かって来ない。

 大した事はない、ということをアピールする為にも、今度はこちらからアーサーに向かって剣を振りかぶる。

 すかさずアーサーは自分の模造権で僕の模造剣を受け止める。

 カン、カンという小気味よい音があちこちで響いている。

 再開後は特に何の問題もなく順調に過ぎていった。

 剣術の授業も終わり僕達は更衣室へと足を運ぶ。

 タオルで汗を拭き取り制服へと着替える。

 本当はシャワーを浴びてさっぱりしたいところだけれど、流石にそこまでの設備はない。

 その代わり、更衣室の出口にエアーシャワーのような設備が備えられている。

 二~三人が入れるスペースに入ると、サッと風が吹いてきて全身をサッパリさせてくれるのだ。

 それまでの汗ばんだ身体がウソのようにスッキリとして、運動前の状態に戻してくれる。

 もしかしたら風魔法かグリーン魔法が使われているのだろうか?

 だとしたらある意味シャワー室よりも便利だと思う。

 何しろ服を着たままで快適な状態にしてくれるんだからね。

 剣術の授業はいつも昼食の前に行われる。

 着替えが終わった者はそのまま食堂に行き、昼食を摂って良いようになっている。

 僕とアーサーも着替えを終えるとそのまま食堂に向かった。

 他のクラスはまだ授業が終わっていないらしく、少し閑散とした状態だ。

 食事を取りながら、僕は先ほどのジェイミーの顔を思い浮かべた。

 彼に好かれていない事は十分承知しているが、それでもやけにあの薄い笑いが気にかかる。

「どうした、エド。食欲が無いのか? やっぱりさっきの打ち合いが原因なのか?」

 アーサーが心配そうに声をかけてくる。

 …いけない。

 アーサーの前でこんなふうに考え込んじゃダメだったな。

 僕はキョロキョロと辺りを見回してジェイミーの姿がないのを確認すると、先ほどのジェイミーの様子を話した。

 
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