148 / 271
学院編
148 宰相の提案
僕はまっすぐに前を向くと宰相に向かって断言をする。
「僕は王宮になんて行きません。エドワードにも言いましたが、このまま平凡に暮らしたいんです」
宰相はしばらく僕をじっと注視していたが、やがてフッと表情を緩めた。
「わかりました。陛下にはそのように伝えましょう。ところで、エドアルド様はいつ、ご自分が王子だと自覚されたのですか?」
ああ、やはりその質問をしてきたか。
母親である王妃は僕が前世の記憶を持っていると言わなかったようだから、そこの部分は隠してしまおう。
宰相が信じるか信じないかはともかく、説明するのが面倒くさいからね。
「僕が養子だという事は弟のクリスが生まれた時に聞いていました。その後、お茶会の席に王妃様にお会いして僕が王子だと知ったんです」
「…なるほど。それで、ダニエルとセレナはエドアルド様が王子だと知って…。いや、先ほどのセレナの様子を見るに二人は知らないようですね」
僕はコクリと頷いて宰相の言葉を肯定した。
「義両親は僕が王子だとは知りません。…あの義父様は王宮でエドワード王子に会ったりはしないのですか?」
未だに王宮に勤めている義父様から『エドワード王子に似ている』という指摘を受けてはいない。
いつかは義父様からそんな言葉が出てくるのではないかと思っているが、その時になんと言えば良いのか迷っている。
「エドワード王子はまだ王宮のプライベートゾーン以外の出入りを禁じられていますからね。しかし、十二歳になれば少しずつ公的な場に出られるようになります」
十二歳!?
僕達は既に十一歳を過ぎているから、来年の誕生日には王宮に出入りする貴族には顔を見られるという事だ。
その貴族の中には僕の事を知っている人も少なからずいるに違いない。
どうする?
騒ぎになる前に僕はこの家から出ていった方が良いんだろうか?
押し黙った僕に宰相は優しく微笑む。
「ここはエドアルド様から二人に伝えた方がよろしいですよ。あの二人ならエドアルド様がどんな人間でも受け入れてくれるでしょうからね。王宮でエドワード王子を見て真実を知るよりもエドアルド様から打ち明けられた方が嬉しいでしょうからね」
宰相は義両親の事を良く知っているようだ。
呼び捨てにしているのもただ単に二人の身分が低いからじゃなくて、仲が良いがゆえの事なのだろう。
確かにあの二人は僕が王子だと知ってもどうこうするような人達じゃない。
何しろ実の子供であるクリスが生まれても僕を手放したりはしなかった人達だからね。
二人の前に僕を養子に迎えた二組の夫婦は、自分達の子供が生まれると分かった途端、僕をまた孤児院に返した。
実子と分け隔てなく育てる自信がなかったのだろうか?
もっとも、あのまま一緒にいて虐待を受けるよりはマシだしね。
そうならないように回避してくれただけでも有り難いとしよう。
「わかりました。今日にでも義両親に話してみます」
思い立ったが吉日と言うからな。
先延ばしにすると余計に言いづらくなるだろう。
「それでは、私はこれで失礼します。エドアルド様もお元気で。また、お会いしましょう」
いや、もう会いたくないんだけど!
面と向かってそう言うわけにもいかず、僕は曖昧に笑って誤魔化した。
宰相は立ち上がって一礼すると、そのまま応接室を出て行った。
扉の閉まる音が聞こえた途端、僕はソファの背にぐったりと身体を預けるのだった。
「僕は王宮になんて行きません。エドワードにも言いましたが、このまま平凡に暮らしたいんです」
宰相はしばらく僕をじっと注視していたが、やがてフッと表情を緩めた。
「わかりました。陛下にはそのように伝えましょう。ところで、エドアルド様はいつ、ご自分が王子だと自覚されたのですか?」
ああ、やはりその質問をしてきたか。
母親である王妃は僕が前世の記憶を持っていると言わなかったようだから、そこの部分は隠してしまおう。
宰相が信じるか信じないかはともかく、説明するのが面倒くさいからね。
「僕が養子だという事は弟のクリスが生まれた時に聞いていました。その後、お茶会の席に王妃様にお会いして僕が王子だと知ったんです」
「…なるほど。それで、ダニエルとセレナはエドアルド様が王子だと知って…。いや、先ほどのセレナの様子を見るに二人は知らないようですね」
僕はコクリと頷いて宰相の言葉を肯定した。
「義両親は僕が王子だとは知りません。…あの義父様は王宮でエドワード王子に会ったりはしないのですか?」
未だに王宮に勤めている義父様から『エドワード王子に似ている』という指摘を受けてはいない。
いつかは義父様からそんな言葉が出てくるのではないかと思っているが、その時になんと言えば良いのか迷っている。
「エドワード王子はまだ王宮のプライベートゾーン以外の出入りを禁じられていますからね。しかし、十二歳になれば少しずつ公的な場に出られるようになります」
十二歳!?
僕達は既に十一歳を過ぎているから、来年の誕生日には王宮に出入りする貴族には顔を見られるという事だ。
その貴族の中には僕の事を知っている人も少なからずいるに違いない。
どうする?
騒ぎになる前に僕はこの家から出ていった方が良いんだろうか?
押し黙った僕に宰相は優しく微笑む。
「ここはエドアルド様から二人に伝えた方がよろしいですよ。あの二人ならエドアルド様がどんな人間でも受け入れてくれるでしょうからね。王宮でエドワード王子を見て真実を知るよりもエドアルド様から打ち明けられた方が嬉しいでしょうからね」
宰相は義両親の事を良く知っているようだ。
呼び捨てにしているのもただ単に二人の身分が低いからじゃなくて、仲が良いがゆえの事なのだろう。
確かにあの二人は僕が王子だと知ってもどうこうするような人達じゃない。
何しろ実の子供であるクリスが生まれても僕を手放したりはしなかった人達だからね。
二人の前に僕を養子に迎えた二組の夫婦は、自分達の子供が生まれると分かった途端、僕をまた孤児院に返した。
実子と分け隔てなく育てる自信がなかったのだろうか?
もっとも、あのまま一緒にいて虐待を受けるよりはマシだしね。
そうならないように回避してくれただけでも有り難いとしよう。
「わかりました。今日にでも義両親に話してみます」
思い立ったが吉日と言うからな。
先延ばしにすると余計に言いづらくなるだろう。
「それでは、私はこれで失礼します。エドアルド様もお元気で。また、お会いしましょう」
いや、もう会いたくないんだけど!
面と向かってそう言うわけにもいかず、僕は曖昧に笑って誤魔化した。
宰相は立ち上がって一礼すると、そのまま応接室を出て行った。
扉の閉まる音が聞こえた途端、僕はソファの背にぐったりと身体を預けるのだった。
あなたにおすすめの小説
聖女様と間違って召喚された腐女子ですが、申し訳ないので仕事します!
碧桜
恋愛
私は花園美月。20歳。派遣期間が終わり無職となった日、馴染の古書店で顔面偏差値高スペックなイケメンに出会う。さらに、そこで美少女が穴に吸い込まれそうになっていたのを助けようとして、私は古書店のイケメンと共に穴に落ちてしまい、異世界へ―。実は、聖女様として召喚されようとしてた美少女の代わりに、地味でオタクな私が間違って来てしまった!
落ちたその先の世界で出会ったのは、私の推しキャラと見た目だけそっくりな王(仮)や美貌の側近、そして古書店から一緒に穴に落ちたイケメンの彼は、騎士様だった。3人ともすごい美形なのに、みな癖強すぎ難ありなイケメンばかり。
オタクで人見知りしてしまう私だけど、元の世界へ戻れるまで2週間、タダでお世話になるのは申し訳ないから、お城でメイドさんをすることにした。平和にお給料分の仕事をして、異世界観光して、2週間後自分の家へ帰るつもりだったのに、ドラゴンや悪い魔法使いとか出てきて、異能を使うイケメンの彼らとともに戦うはめに。聖女様の召喚の邪魔をしてしまったので、美少女ではありませんが、地味で腐女子ですが出来る限り、精一杯頑張ります。
ついでに無愛想で苦手と思っていた彼は、なかなかいい奴だったみたい。これは、恋など始まってしまう予感でしょうか!?
*カクヨムにて先に連載しているものを加筆・修正をおこなって掲載しております
断罪される令嬢は、悪魔の顔を持った天使だった
Blue
恋愛
王立学園で行われる学園舞踏会。そこで意気揚々と舞台に上がり、この国の王子が声を張り上げた。
「私はここで宣言する!アリアンナ・ヴォルテーラ公爵令嬢との婚約を、この場を持って破棄する!!」
シンと静まる会場。しかし次の瞬間、予期せぬ反応が返ってきた。
アリアンナの周辺の目線で話しは進みます。
姉に代わって立派に息子を育てます! 前日譚
mio
恋愛
ウェルカ・ティー・バーセリクは侯爵家の二女であるが、母亡き後に侯爵家に嫁いできた義母、転がり込んできた義妹に姉と共に邪魔者扱いされていた。
王家へと嫁ぐ姉について王都に移住したウェルカは侯爵家から離れて、実母の実家へと身を寄せることになった。姉が嫁ぐ中、学園に通いながらウェルカは自分の才能を伸ばしていく。
数年後、多少の問題を抱えつつ姉は懐妊。しかし、出産と同時にその命は尽きてしまう。そして残された息子をウェルカは姉に代わって育てる決意をした。そのためにはなんとしても王宮での地位を確立しなければ!
自分でも考えていたよりだいぶ話数が伸びてしまったため、こちらを姉が子を産むまでの前日譚として本編は別に作っていきたいと思います。申し訳ございません。
あっ、追放されちゃった…。
satomi
恋愛
ガイダール侯爵家の長女であるパールは精霊の話を聞くことができる。がそのことは誰にも話してはいない。亡き母との約束。
母が亡くなって喪も明けないうちに義母を父は連れてきた。義妹付きで。義妹はパールのものをなんでも欲しがった。事前に精霊の話を聞いていたパールは対処なりをできていたけれど、これは…。
ついにウラルはパールの婚約者である王太子を横取りした。
そのことについては王太子は特に魅力のある人ではないし、なんにも感じなかったのですが、王宮内でも噂になり、家の恥だと、家まで追い出されてしまったのです。
精霊さんのアドバイスによりブルハング帝国へと行ったパールですが…。
「ちょっと待った」コールをしたのはヒロインでした
みおな
恋愛
「オフェーリア!貴様との婚約を破棄する!!」
学年の年度末のパーティーで突然告げられた婚約破棄。
「ちょっと待ってください!」
婚約者に諸々言おうとしていたら、それに待ったコールをしたのは、ヒロインでした。
あらあら。婚約者様。周囲をご覧になってくださいませ。
あなたの味方は1人もいませんわよ?
ですが、その婚約破棄。喜んでお受けしますわ。
即席異世界転移して薬草師になった
黒密
ファンタジー
ある日、学校から帰ってきて机を見たら即席異世界転移と書かれたカップ麺みたいな容器が置いてある事に気がついた普通の高校生、華崎 秦(かざき しん)
秦は興味本位でその容器にお湯と中に入っていた粉を入れて三分待ち、封を開けたら異世界に転移した。
そして気がつくと異世界の大半を管理している存在、ユーリ・ストラスに秦は元の世界に帰れない事を知った。
色々考えた結果、秦は異世界で生きることを決めてユーリから六枚のカードからスキルを選んだ。
秦はその選んだスキル、薬草師で異世界を生きる事になる。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。