御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜

伽羅

文字の大きさ
156 / 271
学院編

156 到着

 僕は向かい側に座るブライアンの姿を見て(あれっ?)と思った。

 学院に来ていたのなら制服を着ているはずなのに、彼が着ているのはどう見ても私服のようだ。

 もしかしてブライアンも今日は学院を休んでいたのだろうか?

 クラスが違うので確かな事は言えないが、ブライアンの姿を見る限りそうなのだろう。

 それにしても二人は僕をどこに連れて行く気なんだろう。

 宰相とブライアンの親子が揃っているという事はアルドリッジ公爵家に向かうのだろうか?

 外の景色を見ようとしたが、窓にはカーテンが下ろされていて何も見えない。

 中から外の景色が見えないという事は、外からもこの馬車の中に誰が乗っているかわからないという事だ。

 そんな隠密行動を取らなくてはいけないなんて余程の事が起こったに違いない。

 やがて馬車が止まると重い扉が開くような音が聞こえた。

 どうやらどこかの門が開いた音のようだが、その音が止むと再び馬車が走り出した。

 門を入ったはずなのになかなか止まらないのはそれだけ玄関までの距離があるという事だろう。

 しばらく走っていた馬車の速度を落とすと、ようやく馬車が止まった。

 御者が降りて扉に近づいてくる足音が聞こえる。

 外から扉が開けられると真っ先にブライアンが降りて次に宰相が続いた。

 宰相が振り返り僕に手を差し出してきた。

「エドアルド様、どうぞお降りください」

 差し出された手を無視するわけにもいかず、僕はその手につかまって馬車から降りた。

「…ここは…?」

 僕は降りた先の閑散とした玄関に違和感を感じた。

 普通の貴族の屋敷なら出迎えの執事か使用人かがいるはずだ。

 なのにここには玄関先に立つ護衛騎士すらいなかった。

「今日は特別に人払いをしています。それよりも中に入る前にその眼鏡を外してもらえますか?」

 宰相に言われて僕は渋々と眼鏡を外してポケットに仕舞った。

 宰相は眼鏡を外した僕の顔をじっと見ると満足そうにうなずいた。

「さあ、どうぞこちらへ…」

 宰相が自ら扉を開けて屋敷の中へと入って行った。

 その後を僕とブライアンが続いて行くのだけれど、屋敷の中はかなり豪華な造りになっていた。

 いったいここは何処なんだろう?

 キラキラと輝く装飾品や美術品に目を奪われ、思わずキョロキョロとしてしまう。

 宰相は歩き慣れた場所なのか迷いもなく進んで行く。

 やがて一つの扉の前で立ち止まった。

 宰相が扉をノックすると、中から「どうぞ」という女性の声が聞こえた。

 今の声は誰だ?

 何処かで聞いたような声に誰の声かを必死に思い出そうとするが、まるで見当もつかない。

 考えている間にも宰相は扉を開いて僕に中に入るように促した。

 僕は部屋の中に入ろうとして、その場にいる人物に驚きのあまり固まってしまった。

「エドアルド様、早くお入りください」

 宰相に部屋の中に押し込まれるように足を踏み入れた。

 僕に続いて宰相とブライアンも部屋の中に入ると、そこにいる人達に深々と頭を下げた。

「お待たせいたしました。エドアルド様を連れてまいりました」

 部屋の中央に据えられたソファには国王陛下と王妃が並んで座っていた。

 王妃の姿を見て先ほどの声の主が王妃であることにようやく思い至った。

 どうやら僕を連れてくるように宰相に言いつけたのはこの二人のようだ。

 それにしてもどうしてこの二人が僕を呼び出したんだろうか?

 今更僕に王宮に戻って来いとか言うんじゃないよね?

 僕は戦々恐々としながら二人を見つめるのだった。
 
感想 156

あなたにおすすめの小説

あっ、追放されちゃった…。

satomi
恋愛
ガイダール侯爵家の長女であるパールは精霊の話を聞くことができる。がそのことは誰にも話してはいない。亡き母との約束。 母が亡くなって喪も明けないうちに義母を父は連れてきた。義妹付きで。義妹はパールのものをなんでも欲しがった。事前に精霊の話を聞いていたパールは対処なりをできていたけれど、これは…。 ついにウラルはパールの婚約者である王太子を横取りした。 そのことについては王太子は特に魅力のある人ではないし、なんにも感じなかったのですが、王宮内でも噂になり、家の恥だと、家まで追い出されてしまったのです。 精霊さんのアドバイスによりブルハング帝国へと行ったパールですが…。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

姉に代わって立派に息子を育てます! 前日譚

mio
恋愛
ウェルカ・ティー・バーセリクは侯爵家の二女であるが、母亡き後に侯爵家に嫁いできた義母、転がり込んできた義妹に姉と共に邪魔者扱いされていた。 王家へと嫁ぐ姉について王都に移住したウェルカは侯爵家から離れて、実母の実家へと身を寄せることになった。姉が嫁ぐ中、学園に通いながらウェルカは自分の才能を伸ばしていく。 数年後、多少の問題を抱えつつ姉は懐妊。しかし、出産と同時にその命は尽きてしまう。そして残された息子をウェルカは姉に代わって育てる決意をした。そのためにはなんとしても王宮での地位を確立しなければ! 自分でも考えていたよりだいぶ話数が伸びてしまったため、こちらを姉が子を産むまでの前日譚として本編は別に作っていきたいと思います。申し訳ございません。

【完結】子爵令嬢の秘密

りまり
恋愛
私は記憶があるまま転生しました。 転生先は子爵令嬢です。 魔力もそこそこありますので記憶をもとに頑張りたいです。

転生後はゆっくりと

衣更月
ファンタジー
貧しい集落で生まれたリリは、生まれた瞬間から前世の記憶があった。 日本人特有の”配慮”に徹した赤ん坊を演じていたことで、両親から距離を置かれた挙句、村人からも「不気味な子」として敬遠されることに…。 そして、5才の誕生日に遠くの町に捨てられた。 でも、リリは悲観しない。 前世の知識チートは出来ないけど、大人メンタルで堅実に。 目指すは憧れのスローライフが出来るほど、ほどほどの守銭奴としてリリは異世界人として順応していく。 全25話(予定)

帰国した王子の受難

ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。 取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

「ちょっと待った」コールをしたのはヒロインでした

みおな
恋愛
「オフェーリア!貴様との婚約を破棄する!!」  学年の年度末のパーティーで突然告げられた婚約破棄。 「ちょっと待ってください!」  婚約者に諸々言おうとしていたら、それに待ったコールをしたのは、ヒロインでした。  あらあら。婚約者様。周囲をご覧になってくださいませ。  あなたの味方は1人もいませんわよ?  ですが、その婚約破棄。喜んでお受けしますわ。