御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜

伽羅

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幼少期 

17 出戻り

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 あ、ども。

 また孤児院に出戻ってきたエドです。

 って、誰に挨拶してるんだ?

 二度目の養子縁組先も、義母の妊娠という形で終わりを迎えた僕は、ハンナに付き添われてこの孤児院に戻ってきた。

「ごめんなさいね、エドアルド。次はきっと良いお家が見つかるわ」 

 義両親はあっさりとした別れの挨拶を僕に告げる。

 元々、自分達の子供を授かりたくて僕を養子に迎えたんだから、当然の態度だろう。

 だけど、ハンナは直接僕を世話してくれていたから、僕と別れなければならない事を非常に残念がっていた。

 念入りに僕の身だしなみを整えると、僕を抱っこして馬車に乗り込んだ。

 義両親に見送られる中、馬車は孤児院に向けて出発した。

 ガタガタと揺れる馬車の中で、ハンナはボロボロと涙を零す。

「お二人とも、いくら待望のお子様が出来たからってエドアルド様を手放すなんて …。エドアルド様ならきっと良いお兄様になれるでしょうに…」

 そんな風に言ってくれるけれど、それはちょっと僕を買いかぶり過ぎだと思う。

 何しろ、前世では財産の独り占めを目論んだ弟に殺されてしまったからね。

 これで義両親に男の子でも産まれたら、またもや同じ目に合わないとも限らない。

 もうそんな展開は懲り懲りだ。

 馬車が孤児院に着くと、既に連絡がいっていたらしく、院長先生がホクホク顔で待っていた。

「やあやあ、お疲れ様でしたな。院長室へ参りましょうか」

 ハンナは僕を抱っこしたまま、院長先生の後をついていく。

 院長室へ入ると、院長先生はそのままソファーへと腰を下ろした。

 向かいに腰を下ろしたハンナが僕を院長先生に手渡そうとしたが、院長先生は受け取ろうとはしなかった。

「すみませんが、他に預かっている物がありませんかな?」

 ハンナはこの言葉に少しムッとしたような顔を見せる。

 いつも笑顔を絶やさないハンナにこんな顔をさせるなんて、流石は院長先生だな。

 ハンナは脇に置いたバックから。金貨の入った巾着を取り出すと院長先生に差し出した。

 院長先生は恭しくそれを受け取ると、巾着の紐を緩めて中を覗き込む。

 片手を突っ込んで一枚の金庫を取り出すと、しげしげと眺めて確認した。

「間違いなくお約束どおりの枚数がありますな。それでは養子縁組の解除の手続きをいたしましょうか」

 ハンナは金貨の他に預かっていた書類を院長先生に手渡す。

「…確かに。それでは、こちらが金貨の受領証です」 

 ハンナは渡された書類をバッグにしまうと、膝の上の僕を抱えて立ち上がった。

「エドアルド様はどちらに連れていけばよろしいんですか?」

「ご案内いたしましょう」

 院長先生は巾着を何処かにしまうと、ハンナを先導して院長室を出た。

 廊下を進んでいくと、向こうの部屋で子供達が遊んでいるのが見えた。

「あっ! エド? 帰ってきたんだ!」

 目ざとく僕を見つけたジャックが大声をあげると、他の子供達が一斉にこちらを向く。

 何人かがハンナの元に駆け寄ってくると、ハンナは僕に笑いかけた。

「エドアルド様にはお友達がたくさんいらっしゃるのですね。どうか、お元気で…」

 ハンナは子供達の前に僕を下ろすと、カミラ先生とルイーズ先生に頭を下げて孤児院を出て行った。

(ハンナ、バイバイ)

 僕は心の中でハンナに別れを告げると、僕を取り囲む子供達に笑って見せる。

「『戻って来る事がないようにな』って言ったのに、なんで戻って来ちゃうかな」

 ジャックが呆れたような声で言うけれど、それを言わなかったら戻ることも無かったんじゃないかな?

 あれはやっぱりフラグだったと思うんだよね。

 こうしてまた、僕の孤児院での生活が始まった。




 孤児院で暮らすうち、僕は一歳の誕生日を迎えた。

 僕の誕生日の日付けは孤児院に捨てられた日の前日になっている。

 へその緒の処置がまだ新しかったから、産まれてそれほど時間が経っていないだろうという事らしい。

 もっとも、この国の王子の誕生日が僕の誕生日だと知っている。

 これは口が裂けても言えないけどね。

 僕がこの国の王子の片割れだなんて知られたら、何が起こるかわかったもんじゃない。

 孤児院の皆にささやかなお祝いをしてもらい、僕は初めての誕生日を迎えたのだった。



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