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幼少期
23 僕の居場所
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僕は廊下に出ると自分の部屋へと向かった。
バタン、と後ろ手に扉を閉めてグルリと部屋の中を見回す。
この部屋は義父様が子供の頃に使っていた部屋だと言っていた。
義母様のお腹の中にいる子供が無事に産まれたら、その子に明け渡さなくちゃいけないのだろうか?
部屋の片隅にあるベッドに近寄り、腰を下ろすとそのまま後ろへ倒れ込んだ。
見慣れた光景が目に飛び込んでくる。
二人共、僕を実の息子のように可愛がってくれているけれど、自分達の血を分けた子供が産まれるとわかったから、また僕を孤児院に戻すのだろうか?
前の時はどちらも短い期間だったから、孤児院に戻されてもどうって事はなかった。
けれど、ここではもう六年も暮らしてきたのだ。
今更、孤児院に戻されるなんて事になったら、きっとへこんでしまうだろう。
『生みの親より育ての親』っていうのは本当だな。
僕はじわりと涙が滲んでくるのを止められなかった。
拭っても拭っても涙がどんどん溢れてくる。
おかしいな。
僕はこんなに泣き虫じゃなかったはずなのに…。
どのくらい時間が経ったのだろうか。
トントンと扉をノックする音が聞こえて、僕は慌てて身体を起こした。
「…はい」
返事をしながら、急いで涙を拭う。
「エドアルド、どうしたんだ?」
扉を開けて部屋に入ってきたのは義父様だった。
「義父様、義母様は? 側にいてあげなくて大丈夫なのですか?」
義父様は部屋に入ってくると、ベッドに腰掛けている僕の隣に座った。
「いつの間にかエドアルドがいなくなっていたから、セレナが様子を見てこいって言ったんだよ。…泣いていたのか?」
義父様が僕の顔を覗き込んで驚いたような声をあげる。
「…これは、その…」
言い訳をしようと思うのに、上手い具合に言葉が出て来ない。
義父様はそんな僕の顔を覗き込んで真剣な眼差しで告げる。
「エドアルド。もしかして自分が養子だと知っているのか?」
ズバリと言い当てられて、僕はグッと言葉に詰まる。
「…はい。…なんとなく、ここじゃない所の記憶があって…。…もしかしたら養子なのかなって…」
流石に前世の記憶があるとはいえなかった。
ましてや今の国王の息子で、双子だったから捨てられたなんて、信じてもらえないだろう。
「…そうか。そんな昔の記憶があるのか。もしかして私達がお前を手放すと思って泣いていたのか?」
少し咎めるような口調に僕はビクリと身体を震わせた。
「…ごめんなさい…。…でも、やっと自分達の子供が生まれるんでしょう? …だから…」
バシッ!
僕の言葉は義父様の平手打ちによって遮られた。
左頬がジンジンと痛む。
「…とうさま…」
初めて義父様に頬を叩かれて呆然としていると、義父様は僕をギュッと抱きしめてきた。
「私達をそんな薄情な人間だと思っているのか? たとえ血のつながりがなくてもお前は私達の息子だ。誰が何と言おうともそれは変わらない」
「…義父様…」
頬を叩かれた痛みよりも、僕を息子として受け入れてくれる義両親の心が嬉しくて、僕はポロポロと涙を溢した。
そんな僕の背中を義父様がトントンと優しく叩いてくれる。
それが妙に心地よくて僕はそのまま眠りに落ちたのだった。
******
泣き疲れて眠ってしまったエドアルドを布団の中に寝かせると、ダニエルはそっと部屋を出た。
幼い頃から何処か遠慮がちなエドアルドの態度に疑問を持っていたが、やはり自分が養子だと知っていたようだ。
六年間育ててきたから、今更エドアルドを手放すつもりはないが、将来この男爵家を継がせるかというと話は別だ。
これから産まれてくる子供が女の子であれば、エドアルドと結婚させる事もあり得るが、男の子だった場合はそうはいかない。
親戚連中もエドアルドを養子だと知っている。
男の子だった場合はその子に家督を譲る事になるだろう。
その場合、エドアルドはどうしたら良いのだろうか?
「今はまだ、そんな事は考えなくて良いか」
先ずは無事にセレナの出産を終えるのが先だろう。
ダニエルはそう決意し、セレナの元へと戻っていった。
バタン、と後ろ手に扉を閉めてグルリと部屋の中を見回す。
この部屋は義父様が子供の頃に使っていた部屋だと言っていた。
義母様のお腹の中にいる子供が無事に産まれたら、その子に明け渡さなくちゃいけないのだろうか?
部屋の片隅にあるベッドに近寄り、腰を下ろすとそのまま後ろへ倒れ込んだ。
見慣れた光景が目に飛び込んでくる。
二人共、僕を実の息子のように可愛がってくれているけれど、自分達の血を分けた子供が産まれるとわかったから、また僕を孤児院に戻すのだろうか?
前の時はどちらも短い期間だったから、孤児院に戻されてもどうって事はなかった。
けれど、ここではもう六年も暮らしてきたのだ。
今更、孤児院に戻されるなんて事になったら、きっとへこんでしまうだろう。
『生みの親より育ての親』っていうのは本当だな。
僕はじわりと涙が滲んでくるのを止められなかった。
拭っても拭っても涙がどんどん溢れてくる。
おかしいな。
僕はこんなに泣き虫じゃなかったはずなのに…。
どのくらい時間が経ったのだろうか。
トントンと扉をノックする音が聞こえて、僕は慌てて身体を起こした。
「…はい」
返事をしながら、急いで涙を拭う。
「エドアルド、どうしたんだ?」
扉を開けて部屋に入ってきたのは義父様だった。
「義父様、義母様は? 側にいてあげなくて大丈夫なのですか?」
義父様は部屋に入ってくると、ベッドに腰掛けている僕の隣に座った。
「いつの間にかエドアルドがいなくなっていたから、セレナが様子を見てこいって言ったんだよ。…泣いていたのか?」
義父様が僕の顔を覗き込んで驚いたような声をあげる。
「…これは、その…」
言い訳をしようと思うのに、上手い具合に言葉が出て来ない。
義父様はそんな僕の顔を覗き込んで真剣な眼差しで告げる。
「エドアルド。もしかして自分が養子だと知っているのか?」
ズバリと言い当てられて、僕はグッと言葉に詰まる。
「…はい。…なんとなく、ここじゃない所の記憶があって…。…もしかしたら養子なのかなって…」
流石に前世の記憶があるとはいえなかった。
ましてや今の国王の息子で、双子だったから捨てられたなんて、信じてもらえないだろう。
「…そうか。そんな昔の記憶があるのか。もしかして私達がお前を手放すと思って泣いていたのか?」
少し咎めるような口調に僕はビクリと身体を震わせた。
「…ごめんなさい…。…でも、やっと自分達の子供が生まれるんでしょう? …だから…」
バシッ!
僕の言葉は義父様の平手打ちによって遮られた。
左頬がジンジンと痛む。
「…とうさま…」
初めて義父様に頬を叩かれて呆然としていると、義父様は僕をギュッと抱きしめてきた。
「私達をそんな薄情な人間だと思っているのか? たとえ血のつながりがなくてもお前は私達の息子だ。誰が何と言おうともそれは変わらない」
「…義父様…」
頬を叩かれた痛みよりも、僕を息子として受け入れてくれる義両親の心が嬉しくて、僕はポロポロと涙を溢した。
そんな僕の背中を義父様がトントンと優しく叩いてくれる。
それが妙に心地よくて僕はそのまま眠りに落ちたのだった。
******
泣き疲れて眠ってしまったエドアルドを布団の中に寝かせると、ダニエルはそっと部屋を出た。
幼い頃から何処か遠慮がちなエドアルドの態度に疑問を持っていたが、やはり自分が養子だと知っていたようだ。
六年間育ててきたから、今更エドアルドを手放すつもりはないが、将来この男爵家を継がせるかというと話は別だ。
これから産まれてくる子供が女の子であれば、エドアルドと結婚させる事もあり得るが、男の子だった場合はそうはいかない。
親戚連中もエドアルドを養子だと知っている。
男の子だった場合はその子に家督を譲る事になるだろう。
その場合、エドアルドはどうしたら良いのだろうか?
「今はまだ、そんな事は考えなくて良いか」
先ずは無事にセレナの出産を終えるのが先だろう。
ダニエルはそう決意し、セレナの元へと戻っていった。
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