御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜

伽羅

文字の大きさ
26 / 215
幼少期 

26 アーサーとの会話

しおりを挟む
 僕が口を開くより先にアーサーの方から話しかけてきた。

「エドアルド様、よろしくお願いします」

 そう言って笑いかけられたけれど、正直同じ年頃の男の子に「様」をつけられるのは何だかむず痒い。

「エドで構いませんよ」

「それじゃ、僕もアーサーで…」

 そう言うとアーサーは声を潜めてきた。

「堅苦しい喋り方は嫌いなんだ。こういう喋り方で良いかな?」

「他の人に話しかける時は取り繕った方がいいだろうけど、僕もくだけた喋り方で構わないよ」

 そう言うとアーサーはちょっと安心したような笑顔を見せる。

「お茶会なんて、女の子だけでやっていればいいのにな。どうせ学院に通うようになったら嫌でも他の子達と交流を持つようになるんだから…」

 …学院?

 そんなものがあるのか?

「学院って貴族が通うのか? まさか王族も一緒とか?」

 アーサーにそう尋ねると、アーサーはキョトンとした目で僕を見た。

「なんだ、知らないのか? まあ、僕は兄上が学院に通っているからな。貴族は皆十歳になったら学院に通うようになっているんだ。勿論、王族の方も一緒だよ」

 そんな話は初耳だった。

 孤児院では読み書きと簡単な計算は教えられていたし、ある程度大きくなると仕事先を見つけて孤児院を出ていたからだ。

 平民は学院には通わないという事なのだろうか?

「平民は学院には通わないの?」

「平民」という言葉にアーサーはちょっと目を見開いたが、すぐに元の表情へと戻した。

「平民はどうかなぁ? そこまで詳しくは知らないな」

 まだ、義両親からは学院についての話は聞いた事がない。

 いずれ話すつもりだったのかは分からないが、今は義母様の出産が最優先だろうから、そちらが落ち着いてから話をした方がいいだろう。

「学院ではどんな事を勉強するんだ?」

 僕が通えるかどうかはわからないけれど、この世界の学院にはちょっと興味がある。

「兄上の話では剣術をしたり、魔法の勉強をしたりするらしいよ」 

 魔法?

 この世界に魔法があるなんて、初めて知ったよ。

「魔法の勉強もあるのか?」

「そう。学院に入ったら魔法の適性があるかどうかチェックされるんだ。そこで適性があれば魔法の勉強が出来るんだって」

「そうなんだ」 

 この世界で魔法が使われているなんて見たことがないな…あれ?

 ここにきて初めて僕は、今まで不思議に思わなかった事に気づいた。

 馬車が走るような世界なのに、ランプやロウソク、マッチを使わずに灯りが灯っているという事だ。

「…もしかして、灯りがつくのも魔法が関係している?」 

 恐る恐るアーサーに質問すると、彼はポカンと口を開けた後、盛大に吹き出した。

「プッ! フフフ!」

 アーサーに笑われて僕は恥ずかしさにいたたまれなくなる。

「アーサー、そんなに笑わなくても」

「…ゴメンゴメン。僕も同じ事を兄上に質問したから思い出しちゃって…」

 アーサーは目尻をちょっとこすりながら、ようやく笑うのを止めた。

「灯りが灯るのは魔導具に魔石を使っているからだよ。魔力が空になればまた魔石に魔力を込めれば何度でも使えるんだ」

 …なるほど。

 そうすると、料理を作るのにも何らかの魔道具を使っているのだろうか?

 七年もこの世界にいるのに未だに知らないな事の方が多いようだ。

「僕達はエドワード王子と同い年だから、学院では同級生になるね」

 アーサーはサラリと告げるが、僕の心はドクンと大きく跳ねる。

「…アーサーはエドワード王子に会った事があるの?」 

 アーサーの口から『エドワード王子に似ている』という言葉が出て来ていない。

 それでも僕は確かめずにはいられなかった。

「まさか! 僕みたいな下位貴族がおいそれとエドワード王子に会えるはずがないよ。学院に行ってもそうそうお近づきにはなれないだろうね」

 アーサーがエドワード王子に会った事がないと知って、ホッとしたようながっかりしたような気分だ。

 この場にいる誰からも『エドワード王子に似ている』と指摘されないという事は、ここにいる子供達はエドワード王子の顔を知らないなのだろう。

 この後もアーサーとのおしゃべりが続き、楽しい時間は過ぎていった。




しおりを挟む
感想 135

あなたにおすすめの小説

帰国した王子の受難

ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。 取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。

悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。

三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。 何度も断罪を回避しようとしたのに! では、こんな国など出ていきます!

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

えっ私人間だったんです?

ハートリオ
恋愛
生まれた時から王女アルデアの【魔力】として生き、16年。 魔力持ちとして帝国から呼ばれたアルデアと共に帝国を訪れ、気が進まないまま歓迎パーティーへ付いて行く【魔力】。 頭からスッポリと灰色ベールを被っている【魔力】は皇太子ファルコに疑惑の目を向けられて…

わたし、不正なんて一切しておりませんけど!!

頭フェアリータイプ
ファンタジー
書類偽装の罪でヒーローに断罪されるはずの侍女に転生したことに就職初日に気がついた!断罪なんてされてたまるか!!!

とある公爵の奥方になって、ざまぁする件

ぴぴみ
恋愛
転生してざまぁする。 後日談もあり。

断罪現場に遭遇したので悪役令嬢を擁護してみました

ララ
恋愛
3話完結です。 大好きなゲーム世界のモブですらない人に転生した主人公。 それでも直接この目でゲームの世界を見たくてゲームの舞台に留学する。 そこで見たのはまさにゲームの世界。 主人公も攻略対象も悪役令嬢も揃っている。 そしてゲームは終盤へ。 最後のイベントといえば断罪。 悪役令嬢が断罪されてハッピーエンド。 でもおかしいじゃない? このゲームは悪役令嬢が大したこともしていないのに断罪されてしまう。 ゲームとしてなら多少無理のある設定でも楽しめたけど現実でもこうなるとねぇ。 納得いかない。 それなら私が悪役令嬢を擁護してもいいかしら?

婚約破棄から~2年後~からのおめでとう

夏千冬
恋愛
 第一王子アルバートに婚約破棄をされてから二年経ったある日、自分には前世があったのだと思い出したマルフィルは、己のわがままボディに絶句する。  それも王命により屋敷に軟禁状態。肉塊のニート令嬢だなんて絶対にいかん!  改心を決めたマルフィルは、手始めにダイエットをして今年行われるアルバートの生誕祝賀パーティーに出席することを目標にする。

処理中です...