御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜

伽羅

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幼少期 

29 出産

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 月日は過ぎていき、義母様のお腹はどんどん大きくなっていった。

 妊婦を間近で見るのは初めてなので、こんなにもお腹が大きくなるものかと単純に驚いている。

 義母様はお腹が大きくなるにつれて、動くのも億劫になっているようだ。

 僕がもう少し大きければ、義母様を支えてあげられるんだけれどな。

「セレナ。そんな大きなお腹で屋敷の中をウロウロしなくても…。一日中ベッドに寝ていてもいいんだよ」 

 義父様は義母様が転んでしまうんじゃないかと気が気ではないらしい。

「ダニエルったら…。一日中寝ていたら歩くのを忘れてしまいそうになるわ。それに動かないと余計にお腹が大きくなりそうなんだもの」

 義母様は義父様の心配を取り合おうともしない。

 前世で聞きかじったところによると、適度に運動する方がいいらしいけれど、それを言っちゃうと「何処でそんな話を?」と問い詰められそうだから迂闊な事は喋れない。

 そんな僕に出来る事はせいぜい、義母様の後をついて回るのが関の山かな。

 この世界の医学がどの程度なのかはわからないが、出産予定日が告げられなかったところを見るとあまり発達していないのかもしれない。

 今にもはち切れそうなお腹を抱えた義母様の後を追って屋敷の中を歩いていると「あ…」と呟いて義母様がその場にうずくまった。

「義母様?」

 僕が義母様の顔を覗き込むと、義母様は痛みを堪えるような表情を浮かべていた。

「…お腹が…」

 もしかして、陣痛ってやつだろうか?

「誰か! 誰か来て! 義母様が!」

 僕が思い切り叫ぶと、近くの部屋にいた侍女が飛び出してきた。

「奥様! 大丈夫ですか!? お部屋まで歩けますか?」

 義母様は痛みに歪んだ顔で頷くと、侍女に支えられて歩き出した。

 僕も微力ながら反対側から義母様を支えて歩く。

 他から駆けつけた侍女が僕に代わって義母様を支えてくれた。

 僕は一歩下がって義母様達の後を追う。

 執事によって医者と王宮にいる義父様に連絡がいった。

 僕はといえばベッドに寝かされた義母様の横で、なすすべもなく立っているだけだった。

 ベッドの上で額に脂汗を浮かべて苦痛に呻いている義母様を見ている事しか出来ないなんて、随分と役立たずな僕だ。

 気持ちだけが焦る中、ようやく医者がやって来た。

 医者は部屋に入るなり、ベッドの横に立っている僕の姿を見咎めた。

「心配なのはわかるが、今は部屋の外に出ていてくれるかな」

 僕はコクリと頷くと、義母様の部屋を後にする。

 バタンと閉じられた扉の前で立ち尽くしていると、バタバタと足音が聞こえて義父様が走ってきた。

「エドアルド! セレナは!」

 あまりの剣幕に咄嗟に声が出ず僕が部屋を指差すと、義父様はノックもせずに部屋に飛び込んだ。

 …が、すぐに侍女によって部屋から叩き出されていた。

 義父様は閉じられた扉に向かい大声をあげる。

「セレナ! しっかり! 僕がついているからね!」

「ちょ…、義父様…」 

 そんな大声を出したら怒られるよ。

 僕は慌てて義父様の服の裾を引っ張った。

 案の定、扉が開いて怖い顔をした侍女が仁王立ちになっている。

「旦那様。ご心配なのはわかりますが、静かに待てないんですか? あまりうるさいようなら外へ出てもらいますよ」

 侍女に怒られてシュンとなる義父様の目の前で再び扉が閉まった。

 部屋の中から義母様のうめき声が微かに聞こえてくる。

 ウロウロと部屋の前をうろつく義父様を見かねた執事が、椅子を持ってきて廊下の壁際に置いた。

「旦那様、少し落ち着いてください。エドアルド様もこちらにお座りください」
 
 僕と義父様は椅子に座ったものの、義母様のうめき声が気になって一向に落ち着かない。

 そのうちに夕食の時間になったが、とても食堂に行って食事をする気にはならない。

 侍女が軽食を用意してくれたけれど、あまり喉を通らなかった。

 そのうちに夜も更けて、僕がうつらうつらしかけた頃の事だった。

「おぎゃあ、おぎゃあ」

 突然聞こえてきた産声に僕の意識が覚醒した。

「う、生まれた! セレナ!」

 義父様が立ち上がって扉の前に立つと、カチャリと扉が開いた。

「おめでとうございます、旦那様。元気な男の子ですよ。さあ、中へどうぞ」

 義父様は侍女を突き飛ばさんばかりに部屋の中へ入っていった。

 僕はゆっくりと義父様の後から部屋の中へ入る。

 そこには生まれたばかりの我が子を抱いて、嬉しそうに義母様に笑いかける義父様がいた。

 僕の入る隙などないくらいに仲睦まじい親子の姿がそこにあった。

「エドアルド、見てご覧。お前の弟だよ」

 僕に気づいた義父様が、僕を手招きする。

 義父様の所へ行き、腕の中を覗くと、ちっちゃくて可愛い赤ちゃんがいた。

「…可愛い…」 

 思わず呟くと「フフッ」と義母様が嬉しそうに微笑んだ。

 義母様と義父様の話し合いの結果、クリスと名付けられた。




 クリスが生まれて一週間後、僕は一人の人物の訪問を受けた。


 

 
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