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幼少期
32 呼び出し
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ー 時は少し遡る ー
フィリップの執務室を後にしたリリベットは自室に戻るとすぐに手紙を書く用意をさせた。
宛先はテイラー伯爵夫人であるダイアナだ。
学院時代はそれなりに仲良くしていたが、お互い結婚してからは少々疎遠になっていた。
そんな彼女に『話がしたいから王宮に来てほしい』と呼び付けるなど、かなり困惑させてしまう事だろう。
だが、セレナに関する情報を手に入れるにはそれしか思いつかない。
セレナが高位貴族であれば直接話を聞くことも出来るが、男爵夫人である彼女を呼び出す事も、直接訪ねて行く事も出来ない。
高位貴族の情報ならばそれなりに耳に入ってくるが、子爵以下の貴族に関してはほぼ皆無と言っても等しい。
よほど重罪な犯罪を犯せば別ではあるが、最近はそんな話すらない。
セレナの結婚にしても偶々耳に入ってきただけで、その後がどうなったかまでは聞いていない。
サラに聞くつもりは毛頭なかった。
現在、フィリップの愛人であるらしい彼女を視界に入れることすらしたくはない。
彼女もリリベットには近づきたくないようで、最近はフィリップの身の回りの世話しかしていない。
リリベットは手紙をしたためると封蝋を押して侍女に手渡した。
「これをすぐに届けてちょうだい。その場で返事を貰うのを忘れないようにね」
「かしこまりました」
侍女はリリベットから手紙を受け取ると、足早に部屋から出て行った。
リリベットはテラスに出ると、そこから下を見下ろした。
そこでは騎士団長を相手に剣の稽古をしているエドワードの姿がある。
(やはり、どう見てもあの子はエドワードにそっくりだわ)
先ほどの少年の姿が脳裏に蘇るが、その姿が本当に目にしたものなのかは少々怪しくなっていた。
(もしかしたら、勝手にそっくりだと思い込んでいるだけかもしれないわ…)
たとえリリベットの勘違いだとしても、久しぶりに学院時代の友人と話をするのは楽しみでもある。
(呼び出されるダイアナにしては迷惑な話かもしれないわね)
リリベットの手紙を困惑気味に受け取るダイアナの姿を想像して、リリベットはクスッと笑いを溢すのだった。
ダイアナに手紙を出して二日後、リリベットは王宮のお茶会室でダイアナを迎えていた。
「ようこそ、テイラー伯爵夫人。どうぞおかけになって」
にこやかに出迎えるリリベットに反して、ダイアナは緊張気味にお茶会室に入ってきた。
ギクシャクとした足取りでリリベットの近くに来ると、ぎこちなくカーテシーをする。
「お久しぶりでございます、妃殿下。この度はお声掛けいただきありがとうございます」
ダイアナの緊張ぶりが伝わってきて、リリベットはますます申し訳なさが募る。
「そんなに緊張しないで。ここには私達しかいないから、昔のように名前で呼び合いましょう」
「え? そ、そんな… 畏れ多いこと…」
リリベットの提案にダイアナは明らかに動揺している。
「大丈夫よ。ね、ダイアナ」
リリベットが名前で呼ぶと、少しだけ緊張がほぐれたようなダイアナがキョロキョロと部屋の中を見回した。
お茶会室の中が二人だけである事を確認すると、ようやく笑顔を見せた。
「ありがとうございます、リリベット様。流石に学院の頃のように呼び捨てには出来ないのでリリベット様と呼ばせていただきますね」
どこまでも一線を引こうとするダイアナにリリベットは苦笑を漏らす。
「仕方がないわね。それよりも突然呼び出してごめんなさいね。どうしてもダイアナに聞きたい事があったの」
「私にですか? なんでしょう?」
ダイアナには思い当たる事がないようで、リリベットの言葉に首を傾げるばかりだった。
「今はエルガー男爵夫人になっているセレナがいるでしょう? 彼女はいつ子供を産んだのかしら? ダイアナは知ってる?」
リリベットの問いかけにダイアナはますます困惑の表情を浮かべるのだった。
フィリップの執務室を後にしたリリベットは自室に戻るとすぐに手紙を書く用意をさせた。
宛先はテイラー伯爵夫人であるダイアナだ。
学院時代はそれなりに仲良くしていたが、お互い結婚してからは少々疎遠になっていた。
そんな彼女に『話がしたいから王宮に来てほしい』と呼び付けるなど、かなり困惑させてしまう事だろう。
だが、セレナに関する情報を手に入れるにはそれしか思いつかない。
セレナが高位貴族であれば直接話を聞くことも出来るが、男爵夫人である彼女を呼び出す事も、直接訪ねて行く事も出来ない。
高位貴族の情報ならばそれなりに耳に入ってくるが、子爵以下の貴族に関してはほぼ皆無と言っても等しい。
よほど重罪な犯罪を犯せば別ではあるが、最近はそんな話すらない。
セレナの結婚にしても偶々耳に入ってきただけで、その後がどうなったかまでは聞いていない。
サラに聞くつもりは毛頭なかった。
現在、フィリップの愛人であるらしい彼女を視界に入れることすらしたくはない。
彼女もリリベットには近づきたくないようで、最近はフィリップの身の回りの世話しかしていない。
リリベットは手紙をしたためると封蝋を押して侍女に手渡した。
「これをすぐに届けてちょうだい。その場で返事を貰うのを忘れないようにね」
「かしこまりました」
侍女はリリベットから手紙を受け取ると、足早に部屋から出て行った。
リリベットはテラスに出ると、そこから下を見下ろした。
そこでは騎士団長を相手に剣の稽古をしているエドワードの姿がある。
(やはり、どう見てもあの子はエドワードにそっくりだわ)
先ほどの少年の姿が脳裏に蘇るが、その姿が本当に目にしたものなのかは少々怪しくなっていた。
(もしかしたら、勝手にそっくりだと思い込んでいるだけかもしれないわ…)
たとえリリベットの勘違いだとしても、久しぶりに学院時代の友人と話をするのは楽しみでもある。
(呼び出されるダイアナにしては迷惑な話かもしれないわね)
リリベットの手紙を困惑気味に受け取るダイアナの姿を想像して、リリベットはクスッと笑いを溢すのだった。
ダイアナに手紙を出して二日後、リリベットは王宮のお茶会室でダイアナを迎えていた。
「ようこそ、テイラー伯爵夫人。どうぞおかけになって」
にこやかに出迎えるリリベットに反して、ダイアナは緊張気味にお茶会室に入ってきた。
ギクシャクとした足取りでリリベットの近くに来ると、ぎこちなくカーテシーをする。
「お久しぶりでございます、妃殿下。この度はお声掛けいただきありがとうございます」
ダイアナの緊張ぶりが伝わってきて、リリベットはますます申し訳なさが募る。
「そんなに緊張しないで。ここには私達しかいないから、昔のように名前で呼び合いましょう」
「え? そ、そんな… 畏れ多いこと…」
リリベットの提案にダイアナは明らかに動揺している。
「大丈夫よ。ね、ダイアナ」
リリベットが名前で呼ぶと、少しだけ緊張がほぐれたようなダイアナがキョロキョロと部屋の中を見回した。
お茶会室の中が二人だけである事を確認すると、ようやく笑顔を見せた。
「ありがとうございます、リリベット様。流石に学院の頃のように呼び捨てには出来ないのでリリベット様と呼ばせていただきますね」
どこまでも一線を引こうとするダイアナにリリベットは苦笑を漏らす。
「仕方がないわね。それよりも突然呼び出してごめんなさいね。どうしてもダイアナに聞きたい事があったの」
「私にですか? なんでしょう?」
ダイアナには思い当たる事がないようで、リリベットの言葉に首を傾げるばかりだった。
「今はエルガー男爵夫人になっているセレナがいるでしょう? 彼女はいつ子供を産んだのかしら? ダイアナは知ってる?」
リリベットの問いかけにダイアナはますます困惑の表情を浮かべるのだった。
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