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幼少期
37 会話の続き
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慌てて口を押さえた僕の肩を王妃はギュッと掴んできた。
長く伸ばされた爪が肩に食い込んできて痛みに顔をしかめる。
「今、なんて言ったの!? サラですって! あなた、あの女と連絡を取っているの!?」
「痛い! 離してください!」
王妃の手首を掴むと、彼女はハッとしたように僕の肩から手を離した。
…肩に爪の跡がついてないよね? 後で確認しなくちゃ…。
それにしてもサラの名前を出した途端、こんな風に取り乱すなんて…。
サラと何かあったのだろうか?
…いや、今は自分の失言をどう言い訳するかだな。
でも、ここで『サラと連絡を取っている』と嘘をついても、サラ本人に確認を取られたら僕の嘘がバレてしまう。
ここはやはり、正直に話すしかないよね。
僕の話を王妃が信じるかどうかはまた別の話だからね。
「サラと連絡を取っているわけじゃありません。信じられないかもしれませんが、僕は前世の記憶を持ったまま、この世界に転生したんです」
僕の話を聞き終わった王妃は、信じられないものを見るような目で僕を見つめている。
「前世の記憶を持ったまま転生? それが本当なら、あなたが生まれた日の事を話してごらんなさい」
王妃に促されて、僕はあの日の出来事を話した。
生まれてすぐに父親である国王に殺されかけた事。
サラに孤児院に連れていくように命令した事。
医者とサラに他言無用と口止めした事。
僕を抱き上げることはせずに名前だけを付けた事。
話せば話すほど自分が不憫で仕方がない。
けれど、それを聞いている王妃は表情ひとつ変えなかった。
…おかしいな?
こんな不幸な話を聞かされたら、普通の女性は涙ぐむか、怒ったりするものだろうに…。
話し終わった僕が上目遣いに王妃を見ると、王妃は何処か納得したような顔をしている。
「なるほどね。マクレガン家の陞爵のために陛下の愛人になったのかと思っていたけれど、あなたの事を盾に陞爵と愛人の座を得たわけね」
…は?
愛人って、サラが?
陛下の?
僕の話以上に信じられない事を聞いたような気がするんだけれど?
「それにしても使えない情報ね。せっかく陛下の弱みを握ったと思ったのに…。あなたから聞いたと言っても信じてもらえないだろうし…」
えっと?
つまり、今の話をネタに陛下をゆすろうとか思ってたのかな?
「…あの…。医者かサラに聞いた事にしては?」
途端に王妃は僕を睨みつけてくる。
「はあ? 私の話を聞いてた? サラは今は陛下の愛人なの! そんな女と話なんかするわけないでしょ! それに『医者から聞いた』と言えばその医者が処刑されてしまうでしょ! そういう事には容赦のない人なの! あなたも殺されかけたんだからわかるでしょ!」
王妃のマシンガントークに僕はただ、コクコクと頷くしか出来なかった。
王妃は、フウと息を吐くと他人のような視線を向ける。
「あなたには悪いけれど、この国の王子はエドワード一人よ。今更双子だったと公表するつもりもないし、あなたを引き取る事もしないわ。あなたも誰に何を言われても『他人の空似』で押し通してちょうだい。 …それとも王宮に来る気があるのかしら?」
王妃にそう聞かれて僕は思いっきり首を横に振る。
「とんでもない! 今更、『王子だから』とか言われて、王宮に引き取られても迷惑なだけです」
あ、思わず本音が漏れちゃったけど、怒られたりしないよね。
コホン、とわざとらしく咳払いをすると、王妃は柔らかく微笑んだ。
すました顔も綺麗だけれど、こうして微笑んだ顔は可愛らしく見える。
「そう。もう会えないかもしれないけれど、元気でね。エドアルド」
王妃は最後にようやく僕の名前を呼ぶとクルリと背を向けて向こうへ行ってしまった。
結局、王妃は僕の顔を見るためだけにここに現れたのだろうか?
王妃が振り返ってくれるかもと期待したが、そんな気配はない。
僕は軽く肩を竦めると王妃に背を向けて、皆がいる庭園へと戻っていった。
長く伸ばされた爪が肩に食い込んできて痛みに顔をしかめる。
「今、なんて言ったの!? サラですって! あなた、あの女と連絡を取っているの!?」
「痛い! 離してください!」
王妃の手首を掴むと、彼女はハッとしたように僕の肩から手を離した。
…肩に爪の跡がついてないよね? 後で確認しなくちゃ…。
それにしてもサラの名前を出した途端、こんな風に取り乱すなんて…。
サラと何かあったのだろうか?
…いや、今は自分の失言をどう言い訳するかだな。
でも、ここで『サラと連絡を取っている』と嘘をついても、サラ本人に確認を取られたら僕の嘘がバレてしまう。
ここはやはり、正直に話すしかないよね。
僕の話を王妃が信じるかどうかはまた別の話だからね。
「サラと連絡を取っているわけじゃありません。信じられないかもしれませんが、僕は前世の記憶を持ったまま、この世界に転生したんです」
僕の話を聞き終わった王妃は、信じられないものを見るような目で僕を見つめている。
「前世の記憶を持ったまま転生? それが本当なら、あなたが生まれた日の事を話してごらんなさい」
王妃に促されて、僕はあの日の出来事を話した。
生まれてすぐに父親である国王に殺されかけた事。
サラに孤児院に連れていくように命令した事。
医者とサラに他言無用と口止めした事。
僕を抱き上げることはせずに名前だけを付けた事。
話せば話すほど自分が不憫で仕方がない。
けれど、それを聞いている王妃は表情ひとつ変えなかった。
…おかしいな?
こんな不幸な話を聞かされたら、普通の女性は涙ぐむか、怒ったりするものだろうに…。
話し終わった僕が上目遣いに王妃を見ると、王妃は何処か納得したような顔をしている。
「なるほどね。マクレガン家の陞爵のために陛下の愛人になったのかと思っていたけれど、あなたの事を盾に陞爵と愛人の座を得たわけね」
…は?
愛人って、サラが?
陛下の?
僕の話以上に信じられない事を聞いたような気がするんだけれど?
「それにしても使えない情報ね。せっかく陛下の弱みを握ったと思ったのに…。あなたから聞いたと言っても信じてもらえないだろうし…」
えっと?
つまり、今の話をネタに陛下をゆすろうとか思ってたのかな?
「…あの…。医者かサラに聞いた事にしては?」
途端に王妃は僕を睨みつけてくる。
「はあ? 私の話を聞いてた? サラは今は陛下の愛人なの! そんな女と話なんかするわけないでしょ! それに『医者から聞いた』と言えばその医者が処刑されてしまうでしょ! そういう事には容赦のない人なの! あなたも殺されかけたんだからわかるでしょ!」
王妃のマシンガントークに僕はただ、コクコクと頷くしか出来なかった。
王妃は、フウと息を吐くと他人のような視線を向ける。
「あなたには悪いけれど、この国の王子はエドワード一人よ。今更双子だったと公表するつもりもないし、あなたを引き取る事もしないわ。あなたも誰に何を言われても『他人の空似』で押し通してちょうだい。 …それとも王宮に来る気があるのかしら?」
王妃にそう聞かれて僕は思いっきり首を横に振る。
「とんでもない! 今更、『王子だから』とか言われて、王宮に引き取られても迷惑なだけです」
あ、思わず本音が漏れちゃったけど、怒られたりしないよね。
コホン、とわざとらしく咳払いをすると、王妃は柔らかく微笑んだ。
すました顔も綺麗だけれど、こうして微笑んだ顔は可愛らしく見える。
「そう。もう会えないかもしれないけれど、元気でね。エドアルド」
王妃は最後にようやく僕の名前を呼ぶとクルリと背を向けて向こうへ行ってしまった。
結局、王妃は僕の顔を見るためだけにここに現れたのだろうか?
王妃が振り返ってくれるかもと期待したが、そんな気配はない。
僕は軽く肩を竦めると王妃に背を向けて、皆がいる庭園へと戻っていった。
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