47 / 271
幼少期
47 お迎え
その日も日課となった屋敷内のランニングに精を出していた。
初めの頃は一周回るだけでヘトヘトになっていたが、今は二周回れるほどに体力もついてきた。
走り終えた僕が玄関先に戻ってきた時、どこかの馬車が屋敷の中に入ってきた。
今日は来客があるとは聞いていないけれど、僕が聞き漏らしたのだろうか?
待っていたメイドから手渡されたタオルで汗を拭いていると、馬車から降りてきた御者が僕達に近づいて来た。
「失礼いたします。もしかしてエドアルド様でしょうか?」
初めて見る顔に警戒しつつ、答えようとするとメイドが僕を庇うように前に出た。
「どちら様ですか? まずはそちらから名乗るのが筋でしょう?」
人当たりの良さそうな顔をした御者は、ばつが悪そうに目尻を下げる。
「これは申し訳ありません。実はコールリッジ家からの使いで参りました。アーサー様がぜひエドアルド様に遊びに来て欲しいと仰られまして…」
「アーサーが来てるの?」
僕はメイドの後ろからひょっこり顔を出したが、馬車からアーサーが降りてくる気配はない。
御者は僕の視線を受けてブルブルと首を振る。
「いえ、アーサー様はいらしておりません。手が離せないとの事で私を迎えによこされたのです。一緒に来ていただけますか?」
御者にそう聞かれてもすぐには答えられない。
それに、今ランニングを終えたばかりで汗まみれの状態だ。
このままの格好で出かけるわけにはいかない。
「少々お待ちください。奥様にお伺いを立ててきます。エドアルド様もお着替えをなさらなくては…」
メイドが僕に代わって返事をすると、御者は恭しく頷いた。
「承知いたしました。それではこちらで待たせていただきます」
僕とメイドは御者をその場に残して屋敷の中に入った。
それにしても、アーサーが僕を屋敷に招いてくれるなんて初めての事だ。
だったらアーサーが馬車に乗って迎えに来てくれてもいいのにな。
でも、待てよ。
御者の人がアーサーは「手が離せない」とか言っていたな。
もしかして僕と遊ぶための準備を何かしているのかな?
そんな事を考えながら僕とメイドは義母様の所へ向かった。
「奥様、失礼いたします」
義母様の執務室に向かうと、義母様は手紙を読んでいる最中だった。
「あら、エドアルド。汗びっしょりじゃないの。早く着替えていらっしゃい。…何かあったの?」
義母様は僕と一緒に入ってきたメイドに問いかけた。
「奥様、コールリッジ家の使いという方がいらっしゃいました。何でもエドアルド様を迎えに来られたとか。いかがいたしましょう?」
「コールリッジ家から? そんな話は聞いていないのだけれど…」
突然の事に義母様も困惑を隠せないようだ。
そもそも、前もって予定を告げてこないのもおかしい。
だが、相手は子爵家だ。
後で不興を買う事になっても困る。
義母様はしばらく考えた後で、渋々頷いた。
「仕方がないわ。とりあえずエドアルドは着替えて来なさい。それから、エドアルド一人で行かせるわけにはいかないから、あなたも付いていってちょうだい」
「かしこまりました。それではエドアルド様。まずは着替えてきましょう」
「はい。義母様、失礼します」
義母様は少し心配そうな視線を僕に向けてくる。
僕は義母様の執務室を出ると僕の部屋へ向かった。
着替えを出してもらい、急いで身支度を終える。
メイドも出かける準備を終えて、僕の部屋へ戻って来る。
「エドアルド様、準備はよろしいですね」
「良いよ。付き合わせてごめんね」
「とんでもありません。これが私の仕事ですから」
メイドはニコッと笑って僕を先導して玄関へと向かった。
玄関を出ると馬を撫でていた御者がパッとこちらを向く。
「お待たせいたしました。エドアルド様を一人で行かせるわけにはいきませんので、私が付き添いで参ります」
「わかりました。では、どうぞ馬車にお乗りください」
御者が馬車の扉を開けてくれた。
僕が先に乗り込んで、その後をメイドが乗ってくる。
座席に座ってすぐに、この馬車には窓がない事に気づいた。
だが、馬車の中は灯りが点いていて真っ暗ではない。
「変わった馬車だね」
そう呟くとメイドが不安そうに眉を顰めている。
僕達が乗り込むとすぐに御者が馬車の扉を閉め、しばらくすると馬車が走り出した。
僕達は外の景色がわからないまま、馬車に揺られるのだった。
初めの頃は一周回るだけでヘトヘトになっていたが、今は二周回れるほどに体力もついてきた。
走り終えた僕が玄関先に戻ってきた時、どこかの馬車が屋敷の中に入ってきた。
今日は来客があるとは聞いていないけれど、僕が聞き漏らしたのだろうか?
待っていたメイドから手渡されたタオルで汗を拭いていると、馬車から降りてきた御者が僕達に近づいて来た。
「失礼いたします。もしかしてエドアルド様でしょうか?」
初めて見る顔に警戒しつつ、答えようとするとメイドが僕を庇うように前に出た。
「どちら様ですか? まずはそちらから名乗るのが筋でしょう?」
人当たりの良さそうな顔をした御者は、ばつが悪そうに目尻を下げる。
「これは申し訳ありません。実はコールリッジ家からの使いで参りました。アーサー様がぜひエドアルド様に遊びに来て欲しいと仰られまして…」
「アーサーが来てるの?」
僕はメイドの後ろからひょっこり顔を出したが、馬車からアーサーが降りてくる気配はない。
御者は僕の視線を受けてブルブルと首を振る。
「いえ、アーサー様はいらしておりません。手が離せないとの事で私を迎えによこされたのです。一緒に来ていただけますか?」
御者にそう聞かれてもすぐには答えられない。
それに、今ランニングを終えたばかりで汗まみれの状態だ。
このままの格好で出かけるわけにはいかない。
「少々お待ちください。奥様にお伺いを立ててきます。エドアルド様もお着替えをなさらなくては…」
メイドが僕に代わって返事をすると、御者は恭しく頷いた。
「承知いたしました。それではこちらで待たせていただきます」
僕とメイドは御者をその場に残して屋敷の中に入った。
それにしても、アーサーが僕を屋敷に招いてくれるなんて初めての事だ。
だったらアーサーが馬車に乗って迎えに来てくれてもいいのにな。
でも、待てよ。
御者の人がアーサーは「手が離せない」とか言っていたな。
もしかして僕と遊ぶための準備を何かしているのかな?
そんな事を考えながら僕とメイドは義母様の所へ向かった。
「奥様、失礼いたします」
義母様の執務室に向かうと、義母様は手紙を読んでいる最中だった。
「あら、エドアルド。汗びっしょりじゃないの。早く着替えていらっしゃい。…何かあったの?」
義母様は僕と一緒に入ってきたメイドに問いかけた。
「奥様、コールリッジ家の使いという方がいらっしゃいました。何でもエドアルド様を迎えに来られたとか。いかがいたしましょう?」
「コールリッジ家から? そんな話は聞いていないのだけれど…」
突然の事に義母様も困惑を隠せないようだ。
そもそも、前もって予定を告げてこないのもおかしい。
だが、相手は子爵家だ。
後で不興を買う事になっても困る。
義母様はしばらく考えた後で、渋々頷いた。
「仕方がないわ。とりあえずエドアルドは着替えて来なさい。それから、エドアルド一人で行かせるわけにはいかないから、あなたも付いていってちょうだい」
「かしこまりました。それではエドアルド様。まずは着替えてきましょう」
「はい。義母様、失礼します」
義母様は少し心配そうな視線を僕に向けてくる。
僕は義母様の執務室を出ると僕の部屋へ向かった。
着替えを出してもらい、急いで身支度を終える。
メイドも出かける準備を終えて、僕の部屋へ戻って来る。
「エドアルド様、準備はよろしいですね」
「良いよ。付き合わせてごめんね」
「とんでもありません。これが私の仕事ですから」
メイドはニコッと笑って僕を先導して玄関へと向かった。
玄関を出ると馬を撫でていた御者がパッとこちらを向く。
「お待たせいたしました。エドアルド様を一人で行かせるわけにはいきませんので、私が付き添いで参ります」
「わかりました。では、どうぞ馬車にお乗りください」
御者が馬車の扉を開けてくれた。
僕が先に乗り込んで、その後をメイドが乗ってくる。
座席に座ってすぐに、この馬車には窓がない事に気づいた。
だが、馬車の中は灯りが点いていて真っ暗ではない。
「変わった馬車だね」
そう呟くとメイドが不安そうに眉を顰めている。
僕達が乗り込むとすぐに御者が馬車の扉を閉め、しばらくすると馬車が走り出した。
僕達は外の景色がわからないまま、馬車に揺られるのだった。
あなたにおすすめの小説
あっ、追放されちゃった…。
satomi
恋愛
ガイダール侯爵家の長女であるパールは精霊の話を聞くことができる。がそのことは誰にも話してはいない。亡き母との約束。
母が亡くなって喪も明けないうちに義母を父は連れてきた。義妹付きで。義妹はパールのものをなんでも欲しがった。事前に精霊の話を聞いていたパールは対処なりをできていたけれど、これは…。
ついにウラルはパールの婚約者である王太子を横取りした。
そのことについては王太子は特に魅力のある人ではないし、なんにも感じなかったのですが、王宮内でも噂になり、家の恥だと、家まで追い出されてしまったのです。
精霊さんのアドバイスによりブルハング帝国へと行ったパールですが…。
姉に代わって立派に息子を育てます! 前日譚
mio
恋愛
ウェルカ・ティー・バーセリクは侯爵家の二女であるが、母亡き後に侯爵家に嫁いできた義母、転がり込んできた義妹に姉と共に邪魔者扱いされていた。
王家へと嫁ぐ姉について王都に移住したウェルカは侯爵家から離れて、実母の実家へと身を寄せることになった。姉が嫁ぐ中、学園に通いながらウェルカは自分の才能を伸ばしていく。
数年後、多少の問題を抱えつつ姉は懐妊。しかし、出産と同時にその命は尽きてしまう。そして残された息子をウェルカは姉に代わって育てる決意をした。そのためにはなんとしても王宮での地位を確立しなければ!
自分でも考えていたよりだいぶ話数が伸びてしまったため、こちらを姉が子を産むまでの前日譚として本編は別に作っていきたいと思います。申し訳ございません。
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
転生後はゆっくりと
衣更月
ファンタジー
貧しい集落で生まれたリリは、生まれた瞬間から前世の記憶があった。
日本人特有の”配慮”に徹した赤ん坊を演じていたことで、両親から距離を置かれた挙句、村人からも「不気味な子」として敬遠されることに…。
そして、5才の誕生日に遠くの町に捨てられた。
でも、リリは悲観しない。
前世の知識チートは出来ないけど、大人メンタルで堅実に。
目指すは憧れのスローライフが出来るほど、ほどほどの守銭奴としてリリは異世界人として順応していく。
全25話(予定)
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
心が折れた日に神の声を聞く
木嶋うめ香
ファンタジー
ある日目を覚ましたアンカーは、自分が何度も何度も自分に生まれ変わり、父と義母と義妹に虐げられ冤罪で処刑された人生を送っていたと気が付く。
どうして何度も生まれ変わっているの、もう繰り返したくない、生まれ変わりたくなんてない。
何度生まれ変わりを繰り返しても、苦しい人生を送った末に処刑される。
絶望のあまり、アンカーは自ら命を断とうとした瞬間、神の声を聞く。
没ネタ供養、第二弾の短編です。
「ちょっと待った」コールをしたのはヒロインでした
みおな
恋愛
「オフェーリア!貴様との婚約を破棄する!!」
学年の年度末のパーティーで突然告げられた婚約破棄。
「ちょっと待ってください!」
婚約者に諸々言おうとしていたら、それに待ったコールをしたのは、ヒロインでした。
あらあら。婚約者様。周囲をご覧になってくださいませ。
あなたの味方は1人もいませんわよ?
ですが、その婚約破棄。喜んでお受けしますわ。