御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜

伽羅

文字の大きさ
48 / 242
幼少期 

48 誘拐

しおりを挟む
 コールリッジ子爵家はエルガー男爵家から馬車で十分ぐらいの所にあると聞いている。

 だが、生憎とこの世界には腕時計なんて存在しない。

 したがって馬車に揺られている時間が十分だったのかどうかはわからなかった。

「随分と時間が過ぎたみたいだけど、コールリッジ子爵家ってそんなに遠いのかな?」 

 僕が尋ねるとメイドも不思議そうに首を傾げる。

「どうなんでしょう? 伺った事がないので私にはわかりかねます」

 外も見えないので今自分達が何処を走っているのかさっぱりわからない。

 もしかして僕達は騙されてこの馬車に乗せられたんじゃないだろうか?

 そんな考えが頭をよぎった頃にようやく馬車が停まった。

 ホッと息をつくと馬車の扉が開いて御者が姿を見せる。

「お待たせいたしました。さあ。エドアルド様、どうぞ」

 御者に手を差し出されて、僕はその手を取って馬車から降りる。

 僕の後からメイドが馬車を降りようとしたその時、御者は馬車の扉を閉めて鍵をかけた。

 当然、降りようとしていたメイドは馬車の中に閉じ込められてしまった。

「な、何を?」

 僕は訳がわからずその場に立ち尽くす。

 馬車の中に閉じ込められたメイドがドンドンと馬車の扉を叩く。

「開けてください! これは一体どういう事ですか? エドアルド様! ご無事ですか!? エドアルド様!」

 御者は先ほどまでの温厚そうな表情は何処へやら、ニヤリと口を歪ませた。

「お前が付いて来ると言った時はどうしようかと思ったが、エドアルド様が先に降りてくれて助かったよ。しばらくそこで大人しくしててくれ。気が向いたら出してやるよ」

 そう言うと御者は驚いている僕に向き直る。

「さあ、エドアルド様。私と一緒に来てくださいますね? さもないとこのメイドが酷い目に合うかもしれませんよ」

 そう言われて僕はただ、コクリと頷くしかなかった。

 どうやら彼の目的は僕だけだったようだ。

 この状況ではどうやったって僕に勝ち目はない。

 それに僕を殺すのが目的ならばとうにられているはずだ。

 だけど何が目的で僕を誘拐したのだろうか?

 身代金目当てでない事は明白だ。

 我が家は男爵家だし、そもそも僕は養子としてエルガー家に貰われている。

 少し調べれば僕が養子なのはすぐに判明するはずだ。

 そんな僕を誘拐するなんて…。

 まさか!?

 僕が捨てられた王子だと知っている人物がいるのだろうか?

 僕は今一度、僕が生まれた時の事を思い返してみた。

 あの時、父親である国王は『三人だけの秘密』だと言っていた。

 つまり、国王とサラと医者の三人だ。

 国王が僕を連れ戻すなら密かにエルガー家に接触すれば済む話だ。

 サラが僕を誘拐するとは思えない。

 母親である王妃によれば、今は国王の愛人らしいから、僕の事なんてどうでもいいはずだ。

 では、医者はどうだろうか?

 あの時の印象からして、とても今回の事を計画するような人物には見えなかった。

 では、一体誰が僕を誘拐したのだろうか?

 訳がわからないまま、僕は御者に連れられて目の前にある建物の中へと入って行く。

 僕の後ろではまだ、馬車の扉をドンドンと叩く音が聞こえていたが、屋敷の扉がしまった途端、それも聞こえなくなった。

 廊下を歩きながら、僕は横にいる御者に尋ねた。

「あの人を殺したりはしませんよね? 無事に家に返してくれますよね?」

 僕の質問に御者はすうっと目を細める。

「流石はエドアルド様、随分とお優しいですね。彼女が大人しく私達の言う事を聞けば命までは取りませんよ。でも、大人しくなるまで時間はかかりそうですがね」

 やがて御者は立ち止まると目の前の扉をノックした。

「旦那様、エドアルド様をお連れしました」

 そう告げると扉を開いて僕を中へ入るように促す。

 僕が室内に入ると、ソファーに座っていた一人の年老いた男性が立ち上がる。

「おお! エドアルド様。ようこそいらっしゃいました。確かにフィリップ様の若い頃にそっくりですな」

 ここで父親の名前が出てきた事で僕は確信した。

 この人は僕が王子だと知っているのだと…。




 

 

 
しおりを挟む
感想 144

あなたにおすすめの小説

あっ、追放されちゃった…。

satomi
恋愛
ガイダール侯爵家の長女であるパールは精霊の話を聞くことができる。がそのことは誰にも話してはいない。亡き母との約束。 母が亡くなって喪も明けないうちに義母を父は連れてきた。義妹付きで。義妹はパールのものをなんでも欲しがった。事前に精霊の話を聞いていたパールは対処なりをできていたけれど、これは…。 ついにウラルはパールの婚約者である王太子を横取りした。 そのことについては王太子は特に魅力のある人ではないし、なんにも感じなかったのですが、王宮内でも噂になり、家の恥だと、家まで追い出されてしまったのです。 精霊さんのアドバイスによりブルハング帝国へと行ったパールですが…。

骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方

ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。 注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。

嫌われたと思って離れたのに

ラム猫
恋愛
 私は、婚約者のカイルに嫌われたと思った。冷たくそっけなく、近づくたびに避けられる日々。  距離を置くことを選び、留学の準備も進めて心を落ち着かせようとするけれど——。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

完結 王族の醜聞がメシウマ過ぎる件

音爽(ネソウ)
恋愛
王太子は言う。 『お前みたいなつまらない女など要らない、だが優秀さはかってやろう。第二妃として存分に働けよ』 『ごめんなさぁい、貴女は私の代わりに公儀をやってねぇ。だってそれしか取り柄がないんだしぃ』 公務のほとんどを丸投げにする宣言をして、正妃になるはずのアンドレイナ・サンドリーニを蹴落とし正妃の座に就いたベネッタ・ルニッチは高笑いした。王太子は彼女を第二妃として迎えると宣言したのである。 もちろん、そんな事は罷りならないと王は反対したのだが、その言葉を退けて彼女は同意をしてしまう。 屈辱的なことを敢えて受け入れたアンドレイナの真意とは…… *表紙絵自作

田舎娘をバカにした令嬢の末路

冬吹せいら
恋愛
オーロラ・レンジ―は、小国の産まれでありながらも、名門バッテンデン学園に、首席で合格した。 それを不快に思った、令嬢のディアナ・カルホーンは、オーロラが試験官を買収したと嘘をつく。 ――あんな田舎娘に、私が負けるわけないじゃない。 田舎娘をバカにした令嬢の末路は……。

心が折れた日に神の声を聞く

木嶋うめ香
ファンタジー
ある日目を覚ましたアンカーは、自分が何度も何度も自分に生まれ変わり、父と義母と義妹に虐げられ冤罪で処刑された人生を送っていたと気が付く。 どうして何度も生まれ変わっているの、もう繰り返したくない、生まれ変わりたくなんてない。 何度生まれ変わりを繰り返しても、苦しい人生を送った末に処刑される。 絶望のあまり、アンカーは自ら命を断とうとした瞬間、神の声を聞く。 没ネタ供養、第二弾の短編です。

結婚結婚煩いので、愛人持ちの幼馴染と偽装結婚してみた

夏菜しの
恋愛
 幼馴染のルーカスの態度は、年頃になっても相変わらず気安い。  彼のその変わらぬ態度のお陰で、周りから男女の仲だと勘違いされて、公爵令嬢エーデルトラウトの相手はなかなか決まらない。  そんな現状をヤキモキしているというのに、ルーカスの方は素知らぬ顔。  彼は思いのままに平民の娘と恋人関係を持っていた。  いっそそのまま結婚してくれれば、噂は間違いだったと知れるのに、あちらもやっぱり公爵家で、平民との結婚など許さんと反対されていた。  のらりくらりと躱すがもう限界。  いよいよ親が煩くなってきたころ、ルーカスがやってきて『偽装結婚しないか?』と提案された。  彼の愛人を黙認する代わりに、贅沢と自由が得られる。  これで煩く言われないとすると、悪くない提案じゃない?  エーデルトラウトは軽い気持ちでその提案に乗った。

処理中です...