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9 二曲目のダンス
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演奏が終わり、ダンスを終えた私とザカライアは飲み物や軽食が置いてあるテーブルの方へと移動した。
「はい、どうぞ」
「ありがとう」
ザカライアに渡されたグラスを受け取り一口飲んだ後で周りを見回すと、お姉様とクリストファー王子が目に入った。
クリストファー王子もお姉様にグラスを渡して何やら楽しそうに談笑している。
そこへ令嬢が入れ替わり立ち替わりクリストファー王子の元へ行き話しかけているが、クリストファー王子は軽く頷くだけで彼女達を躱している。
どうやら片時でもお姉様とは離れたくないようだ。
(エラじゃなくてお姉様の事を気に入ったみたいね。やはり元のお話とはかけ離れた物になっているわ)
エラは? と探してみれば、こちらもブライアンと共に軽食コーナーでブライアンに料理を取ってもらっている。
ブライアンは今の宰相の息子でいずれは父親の跡を継いで、クリストファー王子を支える宰相になると噂されている人物だ。
そんな人がエラに好意を持つなんて、やはりこの世界は「シンデレラ」のお話の世界なのだろう。
そう考えてざっと周りを見回すと、あちらこちらでカップルが出来上がっているように見受けられる。
クリストファー王子に突進して玉砕した令嬢達も肉食動物の如く、他の男性に方向転換し勝利を得たようだ。
(あら? もしかしてお相手が見つかっていないのは私だけ?)
今現在、私の側にいるのは魔法使いのザカライアだけだ。
彼は魔法使いだから当然、結婚相手としては考えられない。
だが、ここで焦って貧乏くじを引くような事は避けたい。
(残り物には福があるって言うから、そのうち私にもいい人が見つかるわ)
そう思いつつ、隣に立っているザカライアの顔を見上げる。
長く伸ばした黒髪に深い紫色の瞳の彼は無駄に顔がいい。
(髪の色が濃いほど魔力が高いと聞くけれど、それで言うとザカライアも凄い魔法使いなのかしら?)
じっとザカライアの顔を見ていると、私の視線に気付いたようで、ザカライアがふと私の顔に視線を落とす。
「何? どうかした?」
ニコッと微笑まれ、私は思わず視線を反らしてしまう。
「べ、別に…。何でもないわ」
そのうちに辺りがざわざわとし始めた。
(どうしたのかしら?)
皆が見ている方向に視線を巡らすと、クリストファー王子とお姉様、ブライアンとエラが揃って二曲目のダンスを始める所だった。
同じカップルで二曲続けて踊るのは、夫婦か恋人同士、或いはそれに近い間柄と認識される可能性が高い。
それを承知の上でダンスを踊っているのであれば、クリストファー王子もブライアンもお姉様とエラをそういう相手だと公言しているようなものだ。
(お姉様もエラも大変な方と結婚する事になるのだけれど…。まあ、本人が納得しているのならば私が口を挟む事でもないわね)
むしろ結婚相手が決まって良かったと祝福するべきだろう。
二組のカップルを微笑ましく見守っていると、スッと私の前に手が差し出された。
「僕達も踊りませんか?」
ザカライアがまた私をダンスに誘っているけれど、私はこの手を取っていいのだろうか?
すぐに手を取らない私にザカライアはコテリと首を傾げる。
「どうかしましたか?」
「二曲も続けてあなたと踊っても良いのか考えていたの」
そう答える私にザカライアは「ああ」と合点がいったようだ。
「先ほども言いましたとおり、誰も僕達の事は気にしないようにしていますからね。貴女に変な噂が立ったりはしませんよ」
ザカライアの言葉からすると、今の私はホールにいる人達からは認識されていない事にならないだろうか?
だから誰も私に声をかけて来ないのかもしれない。
それはそれで問題があると思うのだけれど、今更他の人達に私の事を認識してもらっても、もう遅いような気がする。
(仕方がないわ。私の結婚相手はまた探す事にしましょう)
私が諦めてザカライアの手を取ると、ザカライアは嬉しそうに私をホールの中央へとエスコートして行く。
軽やかなステップを踏むザカライアとのダンスを楽しんだ後、私はお義父様とお母様の所へ向かった。
「あら? アナベルもいたんだったわね。今誰かと踊っていなかったかしら?」
お母様が怪訝そうに私を見て首を傾げているけれど、それ以上深くは考えていないようだ。
私はザカライアを紹介しようと後ろを振り返ったけれど、既にザカライアは姿を消していた。
そこへクリストファー王子とお姉様、ブライアンとエラが揃ってこちらへやってくる。
「タルボット侯爵」
クリストファー王子に声をかけられ、両親と私は揃って挨拶をする。
「今宵はドロシー嬢に出会えて大変嬉しく思う。後日、屋敷にお邪魔しても構わないか?」
「クリストファー王子。ありがとうございます。娘共々、お待ちしております」
クリストファー王子の横から今度はブライアンが進み出てくる。
「タルボット侯爵。僕もお邪魔して構いませんね」
宰相の息子であるブライアンの事も断るわけにはいかず、お義父様は了承する。
こうして私達は午前零時の鐘が鳴るより前に王宮を後にした。
「はい、どうぞ」
「ありがとう」
ザカライアに渡されたグラスを受け取り一口飲んだ後で周りを見回すと、お姉様とクリストファー王子が目に入った。
クリストファー王子もお姉様にグラスを渡して何やら楽しそうに談笑している。
そこへ令嬢が入れ替わり立ち替わりクリストファー王子の元へ行き話しかけているが、クリストファー王子は軽く頷くだけで彼女達を躱している。
どうやら片時でもお姉様とは離れたくないようだ。
(エラじゃなくてお姉様の事を気に入ったみたいね。やはり元のお話とはかけ離れた物になっているわ)
エラは? と探してみれば、こちらもブライアンと共に軽食コーナーでブライアンに料理を取ってもらっている。
ブライアンは今の宰相の息子でいずれは父親の跡を継いで、クリストファー王子を支える宰相になると噂されている人物だ。
そんな人がエラに好意を持つなんて、やはりこの世界は「シンデレラ」のお話の世界なのだろう。
そう考えてざっと周りを見回すと、あちらこちらでカップルが出来上がっているように見受けられる。
クリストファー王子に突進して玉砕した令嬢達も肉食動物の如く、他の男性に方向転換し勝利を得たようだ。
(あら? もしかしてお相手が見つかっていないのは私だけ?)
今現在、私の側にいるのは魔法使いのザカライアだけだ。
彼は魔法使いだから当然、結婚相手としては考えられない。
だが、ここで焦って貧乏くじを引くような事は避けたい。
(残り物には福があるって言うから、そのうち私にもいい人が見つかるわ)
そう思いつつ、隣に立っているザカライアの顔を見上げる。
長く伸ばした黒髪に深い紫色の瞳の彼は無駄に顔がいい。
(髪の色が濃いほど魔力が高いと聞くけれど、それで言うとザカライアも凄い魔法使いなのかしら?)
じっとザカライアの顔を見ていると、私の視線に気付いたようで、ザカライアがふと私の顔に視線を落とす。
「何? どうかした?」
ニコッと微笑まれ、私は思わず視線を反らしてしまう。
「べ、別に…。何でもないわ」
そのうちに辺りがざわざわとし始めた。
(どうしたのかしら?)
皆が見ている方向に視線を巡らすと、クリストファー王子とお姉様、ブライアンとエラが揃って二曲目のダンスを始める所だった。
同じカップルで二曲続けて踊るのは、夫婦か恋人同士、或いはそれに近い間柄と認識される可能性が高い。
それを承知の上でダンスを踊っているのであれば、クリストファー王子もブライアンもお姉様とエラをそういう相手だと公言しているようなものだ。
(お姉様もエラも大変な方と結婚する事になるのだけれど…。まあ、本人が納得しているのならば私が口を挟む事でもないわね)
むしろ結婚相手が決まって良かったと祝福するべきだろう。
二組のカップルを微笑ましく見守っていると、スッと私の前に手が差し出された。
「僕達も踊りませんか?」
ザカライアがまた私をダンスに誘っているけれど、私はこの手を取っていいのだろうか?
すぐに手を取らない私にザカライアはコテリと首を傾げる。
「どうかしましたか?」
「二曲も続けてあなたと踊っても良いのか考えていたの」
そう答える私にザカライアは「ああ」と合点がいったようだ。
「先ほども言いましたとおり、誰も僕達の事は気にしないようにしていますからね。貴女に変な噂が立ったりはしませんよ」
ザカライアの言葉からすると、今の私はホールにいる人達からは認識されていない事にならないだろうか?
だから誰も私に声をかけて来ないのかもしれない。
それはそれで問題があると思うのだけれど、今更他の人達に私の事を認識してもらっても、もう遅いような気がする。
(仕方がないわ。私の結婚相手はまた探す事にしましょう)
私が諦めてザカライアの手を取ると、ザカライアは嬉しそうに私をホールの中央へとエスコートして行く。
軽やかなステップを踏むザカライアとのダンスを楽しんだ後、私はお義父様とお母様の所へ向かった。
「あら? アナベルもいたんだったわね。今誰かと踊っていなかったかしら?」
お母様が怪訝そうに私を見て首を傾げているけれど、それ以上深くは考えていないようだ。
私はザカライアを紹介しようと後ろを振り返ったけれど、既にザカライアは姿を消していた。
そこへクリストファー王子とお姉様、ブライアンとエラが揃ってこちらへやってくる。
「タルボット侯爵」
クリストファー王子に声をかけられ、両親と私は揃って挨拶をする。
「今宵はドロシー嬢に出会えて大変嬉しく思う。後日、屋敷にお邪魔しても構わないか?」
「クリストファー王子。ありがとうございます。娘共々、お待ちしております」
クリストファー王子の横から今度はブライアンが進み出てくる。
「タルボット侯爵。僕もお邪魔して構いませんね」
宰相の息子であるブライアンの事も断るわけにはいかず、お義父様は了承する。
こうして私達は午前零時の鐘が鳴るより前に王宮を後にした。
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