【完結】偽装結婚の代償〜リュシアン視点〜

伽羅

文字の大きさ
8 / 12

8 生活の変化

 僕の話を聞いたヴァネッサはどこかホッとしたような顔をしている。

 おそらくアドリアンの子供を授かった事で僕から「堕ろせ」と言われる事を覚悟していたらしい。

 だが、この妊娠が僕とアドリアンの計画だと知って色々と腑に落ちる事もあったようだ。

 ヴァネッサがせっかく授かったアドリアンの子供を無下に扱ったりしないだろうとわかったので僕は満足して立ち上がった。

「ゆっくり休んでおいで。食事の時間になったら呼びに来るよ」

 そう言い残して部屋を出ると、そこにポーラが待っていた。

「リュシアン様。生活を別邸からこちらに移すと伺っておりますが、準備を進めてもよろしいでしょうか?」

「ああ、そうだね。僕も一緒に行こう」

 ヴァネッサの妊娠が発覚した以上、別邸で過ごす意味は無くなった。

 ポーラと共に別邸で指示を出していると食事の用意が出来たと伝えられた。

 本邸に戻ってヴァネッサの部屋に顔を出すと、彼女は丁度ベッドに起き上がろうとしているところだった。

「ヴァネッサ。食事の支度が出来たけど食べられそうかい」

 ヴァネッサが体を起こすのを手伝ってそのまま食堂にエスコートする。

 食堂に入るとそこには既に両親が着席していたが、ヴァネッサは父がいる事に驚いていた。

「まあ、お義父様。どうなされたんですか?」

 どうやら母上は僕だけでなく父上までも呼び戻していたようだ。

「ジョゼットから連絡をもらってね。昼食が終わり次第王宮に戻るよ。それよりも子供が出来たって? おめでとう」

「しばらくは安静にしてもらおうと思っているから、簡単にお祝いしようと思ったのよ。お酒は出せないけど乾杯しましょう」

 父上まで呼び戻した事で、王妃である妹にも孫が出来た事を周知させたようだ。

 そんな事まで妹と張り合っていたいのかね。

 母上はアドリアンが秘薬をアンジェリックに使ったと思っているから、それよりも早くヴァネッサが妊娠したのが嬉しいようだ。

 だが、実際には秘薬は使われていないから、アンジェリックがいつ妊娠するかはわからないな。

 何しろ最近のアドリアンはあまりアンジェリックとベッドを共にしていないからね。

 昨日の夜も僕の寝室へと転移をしてきていた。

 もう少しアンジェリックとベッドを共にするようにアドリアンに進言しておこう。

 食事を終えるとヴァネッサをまた先程の部屋に送り届けて、僕はまた移動の指示を出しに行った。

 本邸に移っても今までと生活はあまり変わらない。

 両親と食事を共にするのは週末だけだ。

 ただ、ヴァネッサは悪阻のせいで食事が喉を通らなくなったようだ。

「ヴァネッサ。。それしか食べないのか? もっと栄養をつけないと…」

 出された食事にほとんど手を付けないヴァネッサを見て驚いた。

「ごめんなさい。今はあまり欲しくはないの」

 そう言いながら青い顔をしているヴァネッサに不安が押し寄せる。

 医師が診察に訪れた際に同席してヴァネッサの様子を話したが「心配いりませんよ」とかわされた。

 だが、医師の見立てではお腹の子は順調に育っているようだ。

 そのうちに安定期に入り悪阻も収まったようでヴァネッサの食事の量も増えて行った。

 風呂を終えて寝る前にヴァネッサの寝室を訪れて、少し膨らんできたお腹を優しく撫でる。

「だいぶ大きくなってきたね。生まれてくるのが楽しみだよ」

 毎晩のようにヴァネッサのお腹に触れて、話しかけるのが日課になっていた。

 本邸に移ってもヴァネッサとベッドを共にする事はなかった。

 そうしてヴァネッサが臨月を迎える頃、王宮を揺るがす大事件が起こった。
感想 0

あなたにおすすめの小説

あなたが愛してくれたから

水無瀬 蒼
BL
溺愛α×β(→Ω) 独自設定あり ◇◇◇◇◇◇ Ωの名門・加賀美に産まれたβの優斗。 Ωに産まれなかったため、出来損ない、役立たずと言われて育ってきた。 そんな優斗に告白してきたのは、Kコーポレーションの御曹司・αの如月樹。 Ωに産まれなかった優斗は、幼い頃から母にΩになるようにホルモン剤を投与されてきた。 しかし、優斗はΩになることはなかったし、出来損ないでもβで良いと思っていた。 だが、樹と付き合うようになり、愛情を注がれるようになってからΩになりたいと思うようになった。 そしてダメ元で試した結果、βから後天性Ωに。 これで、樹と幸せに暮らせると思っていたが…… ◇◇◇◇◇◇

彼は罰ゲームでおれと付き合った

和泉奏
BL
「全部嘘だったなんて、知りたくなかった」

彼氏未満

茉莉花 香乃
BL
『俺ら、終わりにしない?』そんなセリフで呆気なく離れる僕と彼。この数ヶ月の夢のような時間は…本当に夢だったのかもしれない。 そんな簡単な言葉で僕を振ったはずなのに、彼の態度は…… ハッピーエンド 他サイトにも公開しています

蔑ろにされた王妃と見限られた国王

奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています 国王陛下には愛する女性がいた。 彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。 私は、そんな陛下と結婚した。 国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。 でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。 そしてもう一つ。 私も陛下も知らないことがあった。 彼女のことを。彼女の正体を。

当たり前の幸せ

ヒイロ
BL
結婚4年目で別れを決意する。長い間愛があると思っていた結婚だったが嫌われてるとは気付かずいたから。すれ違いからのハッピーエンド。オメガバース。よくある話。 初投稿なので色々矛盾などご容赦を。 ゆっくり更新します。 すみません名前変えました。

ふしだらオメガ王子の嫁入り

金剛@キット
BL
初恋の騎士の気を引くために、ふしだらなフリをして、嫁ぎ先が無くなったペルデルセ王子Ωは、10番目の側妃として、隣国へ嫁ぐコトが決まった。孤独が染みる冷たい後宮で、王子は何を思い生きるのか? お話に都合の良い、ユルユル設定のオメガバースです。

次は絶対死なせない

真魚
BL
【皇太子x氷の宰相】  宰相のサディアスは、密かにずっと想っていたカイル皇子を流行病で失い、絶望のどん底に突き落とされた。しかし、目覚めると数ヶ月前にタイムリープしており、皇子はまだ生きていた。  次こそは絶対に皇子を死なせないようにと、サディアスは皇子と聖女との仲を取り持とうとするが、カイルは聖女にまったく目もくれない。それどころかカイルは、サディアスと聖女の関係にイラつき出して…… ※ムーンライトノベルズにも掲載しています

世界一大好きな番との幸せな日常(と思っているのは)

かんだ
BL
現代物、オメガバース。とある理由から専業主夫だったΩだけど、いつまでも番のαに頼り切りはダメだと働くことを決めたが……。 ド腹黒い攻めαと何も知らず幸せな檻の中にいるΩの話。