5 / 57
5 森の中で
しおりを挟む
僕は懐にペーパーナイフを入れると、孤児院とは反対の王都へと続く道を歩き出した。
この町は国境に近い場所だから中央にある王都まではかなり距離がある。
しかし、せめて何か持ってくればよかったな。
着の身着のままじゃ、寝る場所どころか食事にもありつけないぞ。
やがて町の外に出る門へと辿り着いた。
首から下げていた冒険者登録証を差し出すと何も言わずに通してくれた。
身分証さえ提示すれば、よほど問題を起こしていない限り、出入りを止められる事はない。
それにしてもいくら昼間とは言え子供が一人で町を出ても何も言われないなんて、ちょっと問題じゃないのか?
前世の常識に照らし合わせたら問題になりそうな事も、この世界では当たり前のように行われている。
そんな常識の違いを実感しつつも僕は森へと入って行った。
「なぁ、何処まで行けばいいんだ?」
懐のペーパーナイフに問いかけると
「そうだなあ」
と、間の抜けた返事が返ってきた。
「とりあえず、キャンプが出来そうな場所を探してくれよ」
キャンプが出来そうな場所、ね。
川の近くでちょっと開けた場所ならいいかな。
どんどんと森の奥へと入って行くと、やがて川が見えてきた。その川沿いに沿ってキャンプが出来そうな場所を探す。
小一時間も歩いた頃、少し開けた場所に出た。このあたりならキャンプが出来そうだ。
「このあたりならいいか?」
ペーパーナイフは懐からスッと飛び出すと辺りをぐるりと回った。
「このくらいの広さなら大丈夫だろう。さあ! せっかく覚醒したんだ。魔力を使う訓練をしよう」
そう言うとペーパーナイフは僕の目の前に浮いた状態で止まった。
じっと見ていると薄汚れたペーパーナイフが見る見るうちに光り輝き始めた。
キラキラと輝くペーパーナイフの柄の部分には大きな宝石が付いている。
「さあ、その魔石にお前の魔力を注ぐんだ」
どうやら只の宝石では無く魔石らしいが、どうやったら魔力を注げるんだろう。
僕が戸惑っていると痺れを切らしたペーパーナイフが早くしろと急かしてきた。
「柄を握って魔力を注ぐんだ!」
僕は両手でペーパーナイフの柄を握ると念を送り込むように魔力を注いでいった。
するとペーパーナイフが一瞬強く光ると一振りの剣の大きさになっていた。
「おおっ! なかなかやるじゃないか。この大きさに戻るのも10年振りだな」
大きな剣になったにも関わらず、重みを感じない。こんなに軽い剣で相手を倒すことが出来るのだろうか。
そんな事を考えていると、前方の茂みがガサガサと揺れた。
「ちょうどいい所に獲物がやってきたようだ。この剣で仕留めてみろ」
ペーパーナイフ、もとい剣が言い終わると同時に茂みから魔獣が飛び出してきた。
ホーンラビットだ!
孤児院にあった魔獣図鑑に載っていた絵のままの姿のホーンラビットが飛び出してきた。
額に付いた角を僕に向けて突進してくる。
僕は剣を構えるとホーンラビットの角を目がけて振り下ろした。
ガキィーン!
角と剣がぶつかりあった音がしたが、ホーンラビットは横に弾き飛ばされた。
倒れたホーンラビットの体を目がけて剣を振り下ろすと、あっけなくホーンラビットは息絶えた。
「ふむ、剣の扱いはまぁまぁかな。やはり早急に公爵家に戻る必要があるな。次は魔力の扱い方だ。あの木に向かって剣から魔力を打ち出してみろ」
随分と人使いの荒い剣だ。
僕は剣の柄を握り直して構えると「ファイヤー」と唱えた。
剣の刃の部分が炎に包まれる。
「馬鹿! 森の中で火魔法を使う奴があるか!」
剣に怒鳴られて僕は慌てて火を消した。確かにこんな場所で使う魔法ではない。
風なら大丈夫だろうと剣に風を纏わせて、正面の木に向かって剣を振り下ろした。
風の刃が木に向かって飛んでいき、枝を切り落とす。
「初めてにしては上出来かな? さっきのホーンラビットで食事にしよう」
剣はそう言うと、サバイバルナイフくらいの大きさになった。
それを使ってホーンラビットを解体し、先程落とした枝で薪を作り、火を起こす。
気が付けば辺りは暗くなり始めていた。
どうやら今日はここで野宿をすることになりそうだ。
肉を焼きながらふとカインの事を思い出した。
結局、カインに別れを告げないまま町を出てしまっていた。
「どうした? 何を考えている?」
いつの間にかペーパーナイフの大きさになった剣が問いかける。
「カインに別れを言わずに来ちゃったなと思ってたんだ」
「ああ、いつも一緒にいたあの少年か。いずれ別れることはわかっていたんだ。仕方がないさ」
このペーパーナイフが言うように僕が公爵家の跡取りならば、住む世界が違うのは理解出来る。だけどせめて何か一言言いたかったな。
「いいから早く休め。明日に差し支えるぞ」
魔獣に襲われそうな森で野宿なんて大丈夫かな、と思いつつ横になる。
寝袋も何もないので地面に直接横になる。
何処かで獣の遠吠えのような声が聞こえる。
目が覚めたら天国でしたってオチになりませんように、と念じながら目を閉じる。
寝付けないかと思ったが、魔力を使ったせいかすぐに眠りについた。
この町は国境に近い場所だから中央にある王都まではかなり距離がある。
しかし、せめて何か持ってくればよかったな。
着の身着のままじゃ、寝る場所どころか食事にもありつけないぞ。
やがて町の外に出る門へと辿り着いた。
首から下げていた冒険者登録証を差し出すと何も言わずに通してくれた。
身分証さえ提示すれば、よほど問題を起こしていない限り、出入りを止められる事はない。
それにしてもいくら昼間とは言え子供が一人で町を出ても何も言われないなんて、ちょっと問題じゃないのか?
前世の常識に照らし合わせたら問題になりそうな事も、この世界では当たり前のように行われている。
そんな常識の違いを実感しつつも僕は森へと入って行った。
「なぁ、何処まで行けばいいんだ?」
懐のペーパーナイフに問いかけると
「そうだなあ」
と、間の抜けた返事が返ってきた。
「とりあえず、キャンプが出来そうな場所を探してくれよ」
キャンプが出来そうな場所、ね。
川の近くでちょっと開けた場所ならいいかな。
どんどんと森の奥へと入って行くと、やがて川が見えてきた。その川沿いに沿ってキャンプが出来そうな場所を探す。
小一時間も歩いた頃、少し開けた場所に出た。このあたりならキャンプが出来そうだ。
「このあたりならいいか?」
ペーパーナイフは懐からスッと飛び出すと辺りをぐるりと回った。
「このくらいの広さなら大丈夫だろう。さあ! せっかく覚醒したんだ。魔力を使う訓練をしよう」
そう言うとペーパーナイフは僕の目の前に浮いた状態で止まった。
じっと見ていると薄汚れたペーパーナイフが見る見るうちに光り輝き始めた。
キラキラと輝くペーパーナイフの柄の部分には大きな宝石が付いている。
「さあ、その魔石にお前の魔力を注ぐんだ」
どうやら只の宝石では無く魔石らしいが、どうやったら魔力を注げるんだろう。
僕が戸惑っていると痺れを切らしたペーパーナイフが早くしろと急かしてきた。
「柄を握って魔力を注ぐんだ!」
僕は両手でペーパーナイフの柄を握ると念を送り込むように魔力を注いでいった。
するとペーパーナイフが一瞬強く光ると一振りの剣の大きさになっていた。
「おおっ! なかなかやるじゃないか。この大きさに戻るのも10年振りだな」
大きな剣になったにも関わらず、重みを感じない。こんなに軽い剣で相手を倒すことが出来るのだろうか。
そんな事を考えていると、前方の茂みがガサガサと揺れた。
「ちょうどいい所に獲物がやってきたようだ。この剣で仕留めてみろ」
ペーパーナイフ、もとい剣が言い終わると同時に茂みから魔獣が飛び出してきた。
ホーンラビットだ!
孤児院にあった魔獣図鑑に載っていた絵のままの姿のホーンラビットが飛び出してきた。
額に付いた角を僕に向けて突進してくる。
僕は剣を構えるとホーンラビットの角を目がけて振り下ろした。
ガキィーン!
角と剣がぶつかりあった音がしたが、ホーンラビットは横に弾き飛ばされた。
倒れたホーンラビットの体を目がけて剣を振り下ろすと、あっけなくホーンラビットは息絶えた。
「ふむ、剣の扱いはまぁまぁかな。やはり早急に公爵家に戻る必要があるな。次は魔力の扱い方だ。あの木に向かって剣から魔力を打ち出してみろ」
随分と人使いの荒い剣だ。
僕は剣の柄を握り直して構えると「ファイヤー」と唱えた。
剣の刃の部分が炎に包まれる。
「馬鹿! 森の中で火魔法を使う奴があるか!」
剣に怒鳴られて僕は慌てて火を消した。確かにこんな場所で使う魔法ではない。
風なら大丈夫だろうと剣に風を纏わせて、正面の木に向かって剣を振り下ろした。
風の刃が木に向かって飛んでいき、枝を切り落とす。
「初めてにしては上出来かな? さっきのホーンラビットで食事にしよう」
剣はそう言うと、サバイバルナイフくらいの大きさになった。
それを使ってホーンラビットを解体し、先程落とした枝で薪を作り、火を起こす。
気が付けば辺りは暗くなり始めていた。
どうやら今日はここで野宿をすることになりそうだ。
肉を焼きながらふとカインの事を思い出した。
結局、カインに別れを告げないまま町を出てしまっていた。
「どうした? 何を考えている?」
いつの間にかペーパーナイフの大きさになった剣が問いかける。
「カインに別れを言わずに来ちゃったなと思ってたんだ」
「ああ、いつも一緒にいたあの少年か。いずれ別れることはわかっていたんだ。仕方がないさ」
このペーパーナイフが言うように僕が公爵家の跡取りならば、住む世界が違うのは理解出来る。だけどせめて何か一言言いたかったな。
「いいから早く休め。明日に差し支えるぞ」
魔獣に襲われそうな森で野宿なんて大丈夫かな、と思いつつ横になる。
寝袋も何もないので地面に直接横になる。
何処かで獣の遠吠えのような声が聞こえる。
目が覚めたら天国でしたってオチになりませんように、と念じながら目を閉じる。
寝付けないかと思ったが、魔力を使ったせいかすぐに眠りについた。
51
あなたにおすすめの小説
お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~
志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」
この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。
父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。
ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。
今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。
その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
神々に見捨てられし者、自力で最強へ
九頭七尾
ファンタジー
三大貴族の一角、アルベール家の長子として生まれた少年、ライズ。だが「祝福の儀」で何の天職も授かることができなかった彼は、『神々に見捨てられた者』と蔑まれ、一族を追放されてしまう。
「天職なし。最高じゃないか」
しかし彼は逆にこの状況を喜んだ。というのも、実はこの世界は、前世で彼がやり込んでいたゲーム【グランドワールド】にそっくりだったのだ。
天職を取得せずにゲームを始める「超ハードモード」こそが最強になれる道だと知るライズは、前世の知識を活かして成り上がっていく。
元皇子の寄り道だらけの逃避行 ~幽閉されたので国を捨てて辺境でゆっくりします~
下昴しん
ファンタジー
武力で領土を拡大するベギラス帝国に二人の皇子がいた。魔法研究に腐心する兄と、武力に優れ軍を指揮する弟。
二人の父である皇帝は、軍略会議を軽んじた兄のフェアを断罪する。
帝国は武力を求めていたのだ。
フェアに一方的に告げられた罪状は、敵前逃亡。皇帝の第一継承権を持つ皇子の座から一転して、罪人になってしまう。
帝都の片隅にある独房に幽閉されるフェア。
「ここから逃げて、田舎に籠るか」
給仕しか来ないような牢獄で、フェアは脱出を考えていた。
帝都においてフェアを超える魔法使いはいない。そのことを知っているのはごく限られた人物だけだった。
鍵をあけて牢を出ると、給仕に化けた義妹のマトビアが現れる。
「私も連れて行ってください、お兄様」
「いやだ」
止めるフェアに、強引なマトビア。
なんだかんだでベギラス帝国の元皇子と皇女の、ゆるすぎる逃亡劇が始まった──。
※カクヨム様、小説家になろう様でも投稿中。
ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者
哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。
何も成し遂げることなく35年……
ついに前世の年齢を超えた。
※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。
※この小説は他サイトにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる