28 / 57
28 クリスの話
しおりを挟む
僕がクリスの顔を見ると、クリスはちょっと申し訳無さそうな顔をした。
「ごめん。ジェレミーを見つけて声をかけようとしたら彼女との話が聞こえてきたんだ。それにジェレミーが孤児院にいた事は公爵から聞いていたからね」
クリスの言葉に僕は唖然とした。
まさかクリスがそんな事まで知っているとは思ってもみなかったのだ。
「ああ。全部公爵から聞いて知っているよ。僕も最近聞かされたけれど、君の母親が家を出た事も全て僕の父上に報告していたそうだ」
そこまで父上は国王に報告していたのか。
確かに仲が良さそうだったけれど、それはちょっとやり過ぎじゃないのか?
僕がちょっと不満に思っているのがクリスにも伝わったみたいだ。
僕を諭すように告げた。
「そんな不満そうな顔をするなよ。詳細を知らないとフォローが出来ないだろう。エレインだっけ? 彼女を処刑したのも僕の父上が許可を出したからさ。公爵家だけの訴えでは流石に処刑まで出来ないからね」
クリスにそう言われてはっとした。
確かに父上が訴えただけで貴族を処刑出来るとは思えない。やはり国王が内情を知っていたから処刑されたのだろう。
それに母上がしょっちゅう王妃に呼び出されているのは、母上の社交を王妃がサポートしてくれているからに違いないと思う。
「戻ったら父上に報告しておくよ。彼女を身請けして何処かに養女に出すようにね。だけど君はもう彼女に合わない方がいい。彼女がこれで生きる希望が持てたらいいけどね」
クリスに言われて僕は頷くしかなかった。
実の母親に娼館に売られて、客を取らされるようになった自分を僕に見られたなんて。多分、僕には一番会いたくなかったに違いない。
「ごめん、ジェレミー。僕が誘ったばかりに…」
クリスはそう言って僕に謝るけれど、僕はそうは思わなかった。
「いや、むしろお礼を言うべきなのかもしれない。ここでアンに会わなければ、彼女の現状を知らなかったのだから。彼女がそう思っているかはわからないけどね」
いつもはうるさいアーサーなのに、さっきから一言も喋らないのはアーサーなりに気を遣っているんだろう。
「お店を見つけたんだけど、どうする?」
このまま帰ってもいいんだけど、という言葉を飲み込むクリスに僕は笑いかけた。
「せっかく街に出てきたんだから、行ってみようよ。クリスだって楽しみにしていたんだろう」
少し安堵したような顔のクリスと連れ立って僕は歩き出した。
アンの事もだけれど、僕はカインがどこに行ったのかが気になった。
あの男達は孤児院を出た後の街で僕を襲ってきた。それに僕達は森で一晩過ごしているから、孤児院のあった街で誰かを攫ったとしても不思議ではない。
クリスには普段通りに装っていたつもりだけれど、僕が無理をしている事は伝わっていたと思う。
カフェでしばらく過ごした後、それぞれ母上へのお土産を買って僕達は帰路に着いた。
別れ際、クリスは「父上に必ず伝えておくよ」と約束してくれた。
部屋に戻ってソファーにぐったりと座る。
アンの悲しそうな顔が脳裏に蘇る。
僕はどうしてこんなにも無力なんだろう。
こうして自分の親元に戻る事が出来ても、僕自身は何の力も持っていない。
アーサーやシヴァが助けてくれなければ、魔獣を倒す事も出来ない。
うだうだと考えているうちに、いつの間にかソファーに突っ伏して寝てしまったようだ。
バトラーに揺り起こされて目が覚めた。
「ジェレミー様。夕食のお時間ですが、お起きになられますか?」
バトラーに告げられて僕は慌てて起き上がった。
「ごめん、バトラー。すっかり寝ちゃってたよ」
アーサーもシヴァも僕をそっとしておいてくれるのはいいけど、放ったらかし過ぎじゃないかな。
僕はバトラーに連れられて食堂へと向かう。
既に父上と母上はテーブルについていて僕が来るのを待っていたようだ。
「どうした、ジェレミー。寝ていたと聞いたが、具合でも悪いのか?」
父上が珍しく僕を気遣ってくれるのは、王宮でクリスが何か父上に進言したからだろうか。
「いえ、大丈夫です。後で父上にお話があるのですが、お時間をいただけますか?」
僕が父上に聞くと、母上が少し拗ねたような顔をした。
「あら、ここでは言えない話なの? …まぁ、いいわ。男同士でないと出来ない話もあるんでしょう」
ちょっと話の方向がずれてるような気もするけれど、母上に聞かせたい話ではない事は確かだ。
「わかった。食事が終わったら私の部屋に来なさい。バトラー。後でジェレミーの案内を頼む」
バトラーが心得たとばかりにお辞儀をして、僕達は食事を続けた。
「ごめん。ジェレミーを見つけて声をかけようとしたら彼女との話が聞こえてきたんだ。それにジェレミーが孤児院にいた事は公爵から聞いていたからね」
クリスの言葉に僕は唖然とした。
まさかクリスがそんな事まで知っているとは思ってもみなかったのだ。
「ああ。全部公爵から聞いて知っているよ。僕も最近聞かされたけれど、君の母親が家を出た事も全て僕の父上に報告していたそうだ」
そこまで父上は国王に報告していたのか。
確かに仲が良さそうだったけれど、それはちょっとやり過ぎじゃないのか?
僕がちょっと不満に思っているのがクリスにも伝わったみたいだ。
僕を諭すように告げた。
「そんな不満そうな顔をするなよ。詳細を知らないとフォローが出来ないだろう。エレインだっけ? 彼女を処刑したのも僕の父上が許可を出したからさ。公爵家だけの訴えでは流石に処刑まで出来ないからね」
クリスにそう言われてはっとした。
確かに父上が訴えただけで貴族を処刑出来るとは思えない。やはり国王が内情を知っていたから処刑されたのだろう。
それに母上がしょっちゅう王妃に呼び出されているのは、母上の社交を王妃がサポートしてくれているからに違いないと思う。
「戻ったら父上に報告しておくよ。彼女を身請けして何処かに養女に出すようにね。だけど君はもう彼女に合わない方がいい。彼女がこれで生きる希望が持てたらいいけどね」
クリスに言われて僕は頷くしかなかった。
実の母親に娼館に売られて、客を取らされるようになった自分を僕に見られたなんて。多分、僕には一番会いたくなかったに違いない。
「ごめん、ジェレミー。僕が誘ったばかりに…」
クリスはそう言って僕に謝るけれど、僕はそうは思わなかった。
「いや、むしろお礼を言うべきなのかもしれない。ここでアンに会わなければ、彼女の現状を知らなかったのだから。彼女がそう思っているかはわからないけどね」
いつもはうるさいアーサーなのに、さっきから一言も喋らないのはアーサーなりに気を遣っているんだろう。
「お店を見つけたんだけど、どうする?」
このまま帰ってもいいんだけど、という言葉を飲み込むクリスに僕は笑いかけた。
「せっかく街に出てきたんだから、行ってみようよ。クリスだって楽しみにしていたんだろう」
少し安堵したような顔のクリスと連れ立って僕は歩き出した。
アンの事もだけれど、僕はカインがどこに行ったのかが気になった。
あの男達は孤児院を出た後の街で僕を襲ってきた。それに僕達は森で一晩過ごしているから、孤児院のあった街で誰かを攫ったとしても不思議ではない。
クリスには普段通りに装っていたつもりだけれど、僕が無理をしている事は伝わっていたと思う。
カフェでしばらく過ごした後、それぞれ母上へのお土産を買って僕達は帰路に着いた。
別れ際、クリスは「父上に必ず伝えておくよ」と約束してくれた。
部屋に戻ってソファーにぐったりと座る。
アンの悲しそうな顔が脳裏に蘇る。
僕はどうしてこんなにも無力なんだろう。
こうして自分の親元に戻る事が出来ても、僕自身は何の力も持っていない。
アーサーやシヴァが助けてくれなければ、魔獣を倒す事も出来ない。
うだうだと考えているうちに、いつの間にかソファーに突っ伏して寝てしまったようだ。
バトラーに揺り起こされて目が覚めた。
「ジェレミー様。夕食のお時間ですが、お起きになられますか?」
バトラーに告げられて僕は慌てて起き上がった。
「ごめん、バトラー。すっかり寝ちゃってたよ」
アーサーもシヴァも僕をそっとしておいてくれるのはいいけど、放ったらかし過ぎじゃないかな。
僕はバトラーに連れられて食堂へと向かう。
既に父上と母上はテーブルについていて僕が来るのを待っていたようだ。
「どうした、ジェレミー。寝ていたと聞いたが、具合でも悪いのか?」
父上が珍しく僕を気遣ってくれるのは、王宮でクリスが何か父上に進言したからだろうか。
「いえ、大丈夫です。後で父上にお話があるのですが、お時間をいただけますか?」
僕が父上に聞くと、母上が少し拗ねたような顔をした。
「あら、ここでは言えない話なの? …まぁ、いいわ。男同士でないと出来ない話もあるんでしょう」
ちょっと話の方向がずれてるような気もするけれど、母上に聞かせたい話ではない事は確かだ。
「わかった。食事が終わったら私の部屋に来なさい。バトラー。後でジェレミーの案内を頼む」
バトラーが心得たとばかりにお辞儀をして、僕達は食事を続けた。
36
あなたにおすすめの小説
お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~
志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」
この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。
父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。
ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。
今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。
その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
神々に見捨てられし者、自力で最強へ
九頭七尾
ファンタジー
三大貴族の一角、アルベール家の長子として生まれた少年、ライズ。だが「祝福の儀」で何の天職も授かることができなかった彼は、『神々に見捨てられた者』と蔑まれ、一族を追放されてしまう。
「天職なし。最高じゃないか」
しかし彼は逆にこの状況を喜んだ。というのも、実はこの世界は、前世で彼がやり込んでいたゲーム【グランドワールド】にそっくりだったのだ。
天職を取得せずにゲームを始める「超ハードモード」こそが最強になれる道だと知るライズは、前世の知識を活かして成り上がっていく。
元皇子の寄り道だらけの逃避行 ~幽閉されたので国を捨てて辺境でゆっくりします~
下昴しん
ファンタジー
武力で領土を拡大するベギラス帝国に二人の皇子がいた。魔法研究に腐心する兄と、武力に優れ軍を指揮する弟。
二人の父である皇帝は、軍略会議を軽んじた兄のフェアを断罪する。
帝国は武力を求めていたのだ。
フェアに一方的に告げられた罪状は、敵前逃亡。皇帝の第一継承権を持つ皇子の座から一転して、罪人になってしまう。
帝都の片隅にある独房に幽閉されるフェア。
「ここから逃げて、田舎に籠るか」
給仕しか来ないような牢獄で、フェアは脱出を考えていた。
帝都においてフェアを超える魔法使いはいない。そのことを知っているのはごく限られた人物だけだった。
鍵をあけて牢を出ると、給仕に化けた義妹のマトビアが現れる。
「私も連れて行ってください、お兄様」
「いやだ」
止めるフェアに、強引なマトビア。
なんだかんだでベギラス帝国の元皇子と皇女の、ゆるすぎる逃亡劇が始まった──。
※カクヨム様、小説家になろう様でも投稿中。
ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者
哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。
何も成し遂げることなく35年……
ついに前世の年齢を超えた。
※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。
※この小説は他サイトにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる