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50 公爵家の婚約者選び
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杞憂していた父上との話し合いも何事もなく終わり、僕はホッとしていた。
そして明日は中等科の卒業式を迎えるという夜、自室でシヴァの体に頭を預けてまったりしていると、不意にアーサーが僕の目の前に現れた。
「明日は卒業式か。中等科はダンスパーティーがないからつまらないな」
ん?
今聞き捨てならない事を言われたような…
僕は体を起こすとアーサーに問い返した。
「中等科はってことは、高等科の卒業式にはダンスパーティーがあるって事?」
僕の問い掛けにアーサーは、さも当然、とばかりにふんぞり返る。
「当たり前じゃないか。貴族の卒業式だぞ。ダンスパーティーは必須だよ。私の若い頃は…」
アーサーの自慢話は聞き流して大丈夫だ。
だけどダンスパーティーなんてあるんだな。
前世でも踊ると言ったら、せいぜいアイドルのダンスを真似するか、運動会で皆で踊るしかしてこなかったのに。
この世界でのダンスパーティーって言ったらやっぱり社交ダンスだよね。
僕に踊れるのかな?
考え込んでいる僕の目の前にまたもアーサーが現れた。
「ジェレミー、人の話はちゃんと聞けよ!」
そんな事より二年後とはいえ、僕がダンスを踊れるようになるかどうかが問題だ。
僕はアーサーを両手でガシッと掴むと、勢い込んで訴えた。
「アーサーの話より、これからの事の方が大事だよ。僕はまだダンスなんて踊った事ないよ。ダンスパーティーって全員参加なの? それにバートナーがいるんじゃないの? 相手を見つけられなかったらどうなるの?」
僕の矢継ぎ早の質問にアーサーは、スルリと僕の手からすり抜けると、ペシペシと僕の手を叩いた。
「落ち着け、何を慌ててるんだ。まだ先の話だぞ。それにダンスの練習は学校でも必須科目になっているから心配するな。もっとも授業で恥をかかないようにジュリアが家庭教師を雇うかもしれないがな」
アーサーの言葉に前半はホッとしたが、後半は全く安心出来なかった。
ダンスの家庭教師?
まさかそんな家庭教師をつけられる事になるとは思ってもみなかった。
「父上もダンスは踊れるんだよね?」
アーサーに聞くと、当然だとばかりに刀身を縦に振った。
「アルフレッドの卒業式の後のダンスパーティーも凄かったな。あの頃はまだ婚約者が決まっていなかったから、パートナー無しで出席していたんだが、殆どの令嬢が自分のパートナーを差し置いてアルフレッドにダンスをせがんでいたからな。もっとも後で問題になるのですべて断っていたけどな」
うわぁ~。
想像するだけで怖い話だ。
「ジュリアの卒業式の時には既にアルフレッドの婚約者になっていたので、アルフレッドがエスコートしていたよ。その時の令嬢達のジュリアを見る目ときたら…。あ~、今思い出しても寒気がする」
そう言ってアーサーはブルリと体を震わせた。
僕もアーサーの話を聞いただけで、ぞわりと体に寒気が走る。
さぞかし母上には辛い卒業パーティーだっただろう。
「母上が父上と婚約したのはいつなの?」
流石にこういう話は本人達には聞きづらいので、その辺りを知っていそうなアーサーに聞いてみる。
「ジュリアが卒業式を迎える前だったな。…そう言えばジェレミーは公爵家がどうやって婚約者を決めるのか知らないんだっけ?」
アーサーの言い方に僕はキョトンとした。
まるで特別な方法があるような言い方だ。
「家柄とかを見て親が決めるんじゃないの? それとも恋愛結婚とか?」
貴族だから自由恋愛とかは許されそうにないけれど、父上達の態度を見るとお互いに愛し合っているようだから、もしかしたら恋愛結婚かと思っていたけど違うようだ。
「流石に恋愛結婚は許されないな。魔力が釣り合わないと、私やグィネヴィアを扱える子供が生まれなくなるからな」
なんと、我が公爵家の結婚は魔力の釣り合いが優先なのか。知らなかったな。
「魔力の釣り合いって、何処で見分けるの?」
アーサーに問うと、よくぞ聞いてくれた、とばかりに喋りだした。
「まず、公爵家で舞踏会を開いて貴族達を集める。そこで婚約者のいない令嬢を個室に呼んで、グィネヴィアを見る事が出来たらその女性が婚約者に選ばれる」
……は?
意味が良くわからない。
アーサーとグィネヴィアって誰にでも見られると思っていたのだけど、どうやら違うようだ。
「それって、グィネヴィアを見る事が出来るのが何人も居たりしないの?」
僕の質問にアーサーはふるふると刀身を横に振る。
「何を言っている。身分の高い順に呼ぶんだから、誰かがグィネヴィアを見る事が出来た時点で終了だ。身分の低い者には面接の機会すら与えられないということだ。それでもジュリアの時はなかなかグィネヴィアを見る事が出来る令嬢が現れずに焦っていたな。まさかあんなに下位の侯爵家から魔力の高い令嬢が出てくるとは思わなかったよ」
アーサーにそう言われて母上の実家の侯爵家を思い出す。
確かにあまり裕福そうではなかったよね。
そういう点でも母上は他の令嬢達からやっかまれていのかな。
友人が少なかったからこそ、ランスロットやエレインに付け込まれたのかもしれないな。
どちらにしてもまだ中等科を卒業もしていないのに、今から高等科の卒業の事を考えても仕方がないな。
僕はそれ以上考えるのをやめて、明日の卒業式に備えて早めに休むことにした。
そして明日は中等科の卒業式を迎えるという夜、自室でシヴァの体に頭を預けてまったりしていると、不意にアーサーが僕の目の前に現れた。
「明日は卒業式か。中等科はダンスパーティーがないからつまらないな」
ん?
今聞き捨てならない事を言われたような…
僕は体を起こすとアーサーに問い返した。
「中等科はってことは、高等科の卒業式にはダンスパーティーがあるって事?」
僕の問い掛けにアーサーは、さも当然、とばかりにふんぞり返る。
「当たり前じゃないか。貴族の卒業式だぞ。ダンスパーティーは必須だよ。私の若い頃は…」
アーサーの自慢話は聞き流して大丈夫だ。
だけどダンスパーティーなんてあるんだな。
前世でも踊ると言ったら、せいぜいアイドルのダンスを真似するか、運動会で皆で踊るしかしてこなかったのに。
この世界でのダンスパーティーって言ったらやっぱり社交ダンスだよね。
僕に踊れるのかな?
考え込んでいる僕の目の前にまたもアーサーが現れた。
「ジェレミー、人の話はちゃんと聞けよ!」
そんな事より二年後とはいえ、僕がダンスを踊れるようになるかどうかが問題だ。
僕はアーサーを両手でガシッと掴むと、勢い込んで訴えた。
「アーサーの話より、これからの事の方が大事だよ。僕はまだダンスなんて踊った事ないよ。ダンスパーティーって全員参加なの? それにバートナーがいるんじゃないの? 相手を見つけられなかったらどうなるの?」
僕の矢継ぎ早の質問にアーサーは、スルリと僕の手からすり抜けると、ペシペシと僕の手を叩いた。
「落ち着け、何を慌ててるんだ。まだ先の話だぞ。それにダンスの練習は学校でも必須科目になっているから心配するな。もっとも授業で恥をかかないようにジュリアが家庭教師を雇うかもしれないがな」
アーサーの言葉に前半はホッとしたが、後半は全く安心出来なかった。
ダンスの家庭教師?
まさかそんな家庭教師をつけられる事になるとは思ってもみなかった。
「父上もダンスは踊れるんだよね?」
アーサーに聞くと、当然だとばかりに刀身を縦に振った。
「アルフレッドの卒業式の後のダンスパーティーも凄かったな。あの頃はまだ婚約者が決まっていなかったから、パートナー無しで出席していたんだが、殆どの令嬢が自分のパートナーを差し置いてアルフレッドにダンスをせがんでいたからな。もっとも後で問題になるのですべて断っていたけどな」
うわぁ~。
想像するだけで怖い話だ。
「ジュリアの卒業式の時には既にアルフレッドの婚約者になっていたので、アルフレッドがエスコートしていたよ。その時の令嬢達のジュリアを見る目ときたら…。あ~、今思い出しても寒気がする」
そう言ってアーサーはブルリと体を震わせた。
僕もアーサーの話を聞いただけで、ぞわりと体に寒気が走る。
さぞかし母上には辛い卒業パーティーだっただろう。
「母上が父上と婚約したのはいつなの?」
流石にこういう話は本人達には聞きづらいので、その辺りを知っていそうなアーサーに聞いてみる。
「ジュリアが卒業式を迎える前だったな。…そう言えばジェレミーは公爵家がどうやって婚約者を決めるのか知らないんだっけ?」
アーサーの言い方に僕はキョトンとした。
まるで特別な方法があるような言い方だ。
「家柄とかを見て親が決めるんじゃないの? それとも恋愛結婚とか?」
貴族だから自由恋愛とかは許されそうにないけれど、父上達の態度を見るとお互いに愛し合っているようだから、もしかしたら恋愛結婚かと思っていたけど違うようだ。
「流石に恋愛結婚は許されないな。魔力が釣り合わないと、私やグィネヴィアを扱える子供が生まれなくなるからな」
なんと、我が公爵家の結婚は魔力の釣り合いが優先なのか。知らなかったな。
「魔力の釣り合いって、何処で見分けるの?」
アーサーに問うと、よくぞ聞いてくれた、とばかりに喋りだした。
「まず、公爵家で舞踏会を開いて貴族達を集める。そこで婚約者のいない令嬢を個室に呼んで、グィネヴィアを見る事が出来たらその女性が婚約者に選ばれる」
……は?
意味が良くわからない。
アーサーとグィネヴィアって誰にでも見られると思っていたのだけど、どうやら違うようだ。
「それって、グィネヴィアを見る事が出来るのが何人も居たりしないの?」
僕の質問にアーサーはふるふると刀身を横に振る。
「何を言っている。身分の高い順に呼ぶんだから、誰かがグィネヴィアを見る事が出来た時点で終了だ。身分の低い者には面接の機会すら与えられないということだ。それでもジュリアの時はなかなかグィネヴィアを見る事が出来る令嬢が現れずに焦っていたな。まさかあんなに下位の侯爵家から魔力の高い令嬢が出てくるとは思わなかったよ」
アーサーにそう言われて母上の実家の侯爵家を思い出す。
確かにあまり裕福そうではなかったよね。
そういう点でも母上は他の令嬢達からやっかまれていのかな。
友人が少なかったからこそ、ランスロットやエレインに付け込まれたのかもしれないな。
どちらにしてもまだ中等科を卒業もしていないのに、今から高等科の卒業の事を考えても仕方がないな。
僕はそれ以上考えるのをやめて、明日の卒業式に備えて早めに休むことにした。
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