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12 新しい魔法
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リーズに指摘されて僕は自分の尻尾を振り返った。
確かにそこには二本の尻尾があった。
ゆらゆらと動かしてみるとどちらも僕の意志で動いている。
「え? 何で?」
どうして尻尾が二本になったのかわからずに戸惑っていると、ロジェが思い出したように言った。
「そういえば狐は使える魔法の数によって尻尾が増えると聞いたことがあるぞ」
それを聞いて僕も父さんと母さんの姿を思い浮かべた。
確かに二人とも三本の尻尾を持っていたっけ。
「僕の父さんと母さんも三本の尻尾を持っていたよ。だけどあれは大人の狐だからだと思っていたんだけど、そうじゃないんだね」
父さんと母さんは生活魔法は使えていたけど、他の魔法は何が使えるのかは知らない。
二人が敵に攻撃している場面なんて見たこともないからね。
父さんと母さんの姿を思い浮かべた事で無性に家族に会いたくなった。
「シリル。他には魔法は使えないのか?」
ロジェに問われて僕はあの時の事を思い出した。
「後は風魔法が使えるよ。この前の夜中に、皆に見つかった時は風魔法を使って何かをひっくり返しちゃったんだ」
【ウインド】と唱えて風を起こして枯れ葉を巻き上げて見せる。
「なるほど。今のところ使えるのは光、火、水、風魔法だけか。それじゃ他の魔法も使えるか試してみよう。リーズ、シリルに土魔法を見せてあげてご覧」
ロジェに言われてリーズはちょっと焦っていた。
「えっ、私が? でもまだあんまり上手くは出来ないよ」
「お前の訓練の一貫でもあるんだからやってみなさい」
なるほど。ロジェはなかなかスパルタ教育のようだ。
最初は躊躇っていたリーズも自分の魔法の勉強だと言われればやらないわけにはいかないとばかりに手のひらに魔力を集中させている。
「アースウォール」
リーズの詠唱と共に地面が徐々に盛り上がり、1メートル四方の壁がリーズの前に出現した。
これだけでもリーズには大仕事だったようで顔を真っ赤にしている。
「ほう。この間よりは大きな壁が出来たようだな。それじゃ今度はこれを消してご覧」
ロジェは更にリーズに無茶振りをしてくるが、こちらは問題なかったようで「消えろ」と言うリーズの声で土壁は跡形もなく消えていた。
「凄いや、リーズ。一瞬で消えたよ」
僕が褒めるとリーズはちょっと照れたように笑った。
「消すのは割りと簡単なんだけどな。私は土魔法はちょっと苦手なの」
土魔法かぁ。
応用すれば土木建築とかにも使えそうだな。
もっとも今はちょっと必要無いだろうけどね。
「シリルはどうだ? やってみるか?」
ロジェに言われるまでもなく僕は挑戦する気満々だ。
「勿論、やってみるよ」
狐の姿のまま、後ろ足で立ち上がると前足を地面にかざして魔力を注いだ。
【アースウォール】
ボコボコっと土が盛り上がり、あっと言う間に高い壁が出来上がった。
目の前にいたはずのロジェとリーズの姿が完全に遮断されて見えなくなった。
「すごーい、シリル。私より高い壁が出来てる」
ひょいと壁の向こうからリーズが顔を出して来た。
ロジェも壁のこちら側へと移動してくる。
「こいつは凄いな。初めてでこれだけの壁を作れるなんて大したものだ」
ロジェは自分よりも高い壁をコンコンと叩きながら僕を褒めてくれる。
消すことも出来るかどうかを試してみたが、こちらも問題はなかった。
その後もリーズが学校で習ったという魔法をリーズの復習も兼ねて一緒に練習をした。
ライトの明るさの調節の仕方や、水魔法を使って汚れを落とす方法など、生活魔法が主だった。
「そろそろお昼にしようか。シリル、薪を集めて来るから焚き火を起こしてご覧」
ロジェとリーズが手分けをして集めてきた薪に僕は火魔法を使って火を起こした。
焚き火をしていると野生動物や魔獣が近付いて来る事はないらしい。
パメラが作ってくれたお弁当を食べながら、この後の事を話し合った。
「シリルは他の魔法も使ってみたいのか?」
ロジェに言われるまでもなく、出来るだけ早くたくさんの魔法を習得したいと思っている。
「勿論だよ。一日でも早く父さん達の所に帰りたいからね」
僕が意気込んでいるのと対象的にリーズが悲しそうな顔をしているのには気が付かなかった。
「そうか。それじゃこの後も魔法の練習をするけど、無理はするなよ。パメラに怒られるからな」
ロジェの軽口にリーズもふふっと笑いを漏らした。
焚き火の火を僕のウォーターボールで鎮火させると、今度は風魔法の訓練に入った。
「風魔法を使って敵を倒す方法だ。いいか、見てろよ。ウインドカッター!」
ロジェの詠唱と共にヒュッと空を切って風が飛んでいき、向こうの木の枝をバシッと切り落とした。
かまいたちのようなものだね。
リーズは既に習得しているらしく難なくウインドカッターで木の枝を切り落としている。
僕も負けじと手裏剣を出すイメージで、向こうの木に向かってウインドカッターを繰り出した。
スパッ!
こちらも問題はないようだ。
こうして魔法の訓練を終えた僕達は暗くなる前に帰路についた。
確かにそこには二本の尻尾があった。
ゆらゆらと動かしてみるとどちらも僕の意志で動いている。
「え? 何で?」
どうして尻尾が二本になったのかわからずに戸惑っていると、ロジェが思い出したように言った。
「そういえば狐は使える魔法の数によって尻尾が増えると聞いたことがあるぞ」
それを聞いて僕も父さんと母さんの姿を思い浮かべた。
確かに二人とも三本の尻尾を持っていたっけ。
「僕の父さんと母さんも三本の尻尾を持っていたよ。だけどあれは大人の狐だからだと思っていたんだけど、そうじゃないんだね」
父さんと母さんは生活魔法は使えていたけど、他の魔法は何が使えるのかは知らない。
二人が敵に攻撃している場面なんて見たこともないからね。
父さんと母さんの姿を思い浮かべた事で無性に家族に会いたくなった。
「シリル。他には魔法は使えないのか?」
ロジェに問われて僕はあの時の事を思い出した。
「後は風魔法が使えるよ。この前の夜中に、皆に見つかった時は風魔法を使って何かをひっくり返しちゃったんだ」
【ウインド】と唱えて風を起こして枯れ葉を巻き上げて見せる。
「なるほど。今のところ使えるのは光、火、水、風魔法だけか。それじゃ他の魔法も使えるか試してみよう。リーズ、シリルに土魔法を見せてあげてご覧」
ロジェに言われてリーズはちょっと焦っていた。
「えっ、私が? でもまだあんまり上手くは出来ないよ」
「お前の訓練の一貫でもあるんだからやってみなさい」
なるほど。ロジェはなかなかスパルタ教育のようだ。
最初は躊躇っていたリーズも自分の魔法の勉強だと言われればやらないわけにはいかないとばかりに手のひらに魔力を集中させている。
「アースウォール」
リーズの詠唱と共に地面が徐々に盛り上がり、1メートル四方の壁がリーズの前に出現した。
これだけでもリーズには大仕事だったようで顔を真っ赤にしている。
「ほう。この間よりは大きな壁が出来たようだな。それじゃ今度はこれを消してご覧」
ロジェは更にリーズに無茶振りをしてくるが、こちらは問題なかったようで「消えろ」と言うリーズの声で土壁は跡形もなく消えていた。
「凄いや、リーズ。一瞬で消えたよ」
僕が褒めるとリーズはちょっと照れたように笑った。
「消すのは割りと簡単なんだけどな。私は土魔法はちょっと苦手なの」
土魔法かぁ。
応用すれば土木建築とかにも使えそうだな。
もっとも今はちょっと必要無いだろうけどね。
「シリルはどうだ? やってみるか?」
ロジェに言われるまでもなく僕は挑戦する気満々だ。
「勿論、やってみるよ」
狐の姿のまま、後ろ足で立ち上がると前足を地面にかざして魔力を注いだ。
【アースウォール】
ボコボコっと土が盛り上がり、あっと言う間に高い壁が出来上がった。
目の前にいたはずのロジェとリーズの姿が完全に遮断されて見えなくなった。
「すごーい、シリル。私より高い壁が出来てる」
ひょいと壁の向こうからリーズが顔を出して来た。
ロジェも壁のこちら側へと移動してくる。
「こいつは凄いな。初めてでこれだけの壁を作れるなんて大したものだ」
ロジェは自分よりも高い壁をコンコンと叩きながら僕を褒めてくれる。
消すことも出来るかどうかを試してみたが、こちらも問題はなかった。
その後もリーズが学校で習ったという魔法をリーズの復習も兼ねて一緒に練習をした。
ライトの明るさの調節の仕方や、水魔法を使って汚れを落とす方法など、生活魔法が主だった。
「そろそろお昼にしようか。シリル、薪を集めて来るから焚き火を起こしてご覧」
ロジェとリーズが手分けをして集めてきた薪に僕は火魔法を使って火を起こした。
焚き火をしていると野生動物や魔獣が近付いて来る事はないらしい。
パメラが作ってくれたお弁当を食べながら、この後の事を話し合った。
「シリルは他の魔法も使ってみたいのか?」
ロジェに言われるまでもなく、出来るだけ早くたくさんの魔法を習得したいと思っている。
「勿論だよ。一日でも早く父さん達の所に帰りたいからね」
僕が意気込んでいるのと対象的にリーズが悲しそうな顔をしているのには気が付かなかった。
「そうか。それじゃこの後も魔法の練習をするけど、無理はするなよ。パメラに怒られるからな」
ロジェの軽口にリーズもふふっと笑いを漏らした。
焚き火の火を僕のウォーターボールで鎮火させると、今度は風魔法の訓練に入った。
「風魔法を使って敵を倒す方法だ。いいか、見てろよ。ウインドカッター!」
ロジェの詠唱と共にヒュッと空を切って風が飛んでいき、向こうの木の枝をバシッと切り落とした。
かまいたちのようなものだね。
リーズは既に習得しているらしく難なくウインドカッターで木の枝を切り落としている。
僕も負けじと手裏剣を出すイメージで、向こうの木に向かってウインドカッターを繰り出した。
スパッ!
こちらも問題はないようだ。
こうして魔法の訓練を終えた僕達は暗くなる前に帰路についた。
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