みそっかす銀狐(シルバーフォックス)、家族を探す旅に出る

伽羅

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66 首輪の解除

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「お前達! 何処でこの首輪を手に入れた!」

 勢い込んで僕達に詰め寄るベルナールさんにたじたじになりながらもテオが説明をする。

「王都にいた奴隷商が連れていたのがこのハムスターです。なので奴隷商が口を割らない限り、何処で手に入れたのかもわかりません」

 それを聞いてベルナールさんはハッとしたように我に返った。

「いや、すまん。こんな所では落ち着いて話も出来んな。中に入るがいい」

 ベルナールさんは扉を開けて僕達を招き入れてくれた。

 中に入るとすぐの部屋に応接セットが置いてあった。

 魔術具の依頼に来た人とはここで商談をするのだろうか?

「とりあえず座ってくれ。今お茶を入れるからな」 

 僕達がソファーに腰を下ろすとベルナールさんは部屋の隅に置いてある機械の前で何かを始めた。

 どうやらお茶を入れる機械のようで、ボタンを押すとお茶がカップに注がれるようだ。

 前世にあったコーヒーマシンに似てなくもないかな。

 ベルナールさんは僕達の前にカップを置くと、僕の腕の中にいるハムスターを見てポンと手を打った。

「お前さんにも何かあげないといけないな。ちょっと待っておいで」

 一旦部屋から出て行ったベルナールさんは手に何かを持って戻って来た。

 それにもお茶を入れるとハムスターの前にそれを置いた。

 可愛いミニチュアのカップだ。

 ハムスターをテーブルの上に下ろすとハムスターは器用に両手でカップを持つとそれを飲んだ。

 あまりの可愛さに思わず皆でほっこりとしてしまった。

 僕達もお茶を頂いて一息付いた所で本題に入る事にした。

「この首輪の解除をお願いしたいんですが、出来ますか?」

 テオが聞くとベルナールさんはハムスターの首輪を見つめてふうっとため息をついた。

「あいつめ、まだこんな物を作っておるのか。いい加減に止めろと言ったのに…」

 どうやらやはりこの首輪を作った人物を知っているようだ。

「これを作ったのは儂の息子だ。最初は普通に取り外しが出来る首輪を作っていたのだが、いつの間にか複雑な性能を持つ物を作るようになっていた」

 ベルナールさんはハムスターの首輪にそっと触れた。

「この首輪もそうなんだろう。これを付けると人間に戻れないどころか、付けていると言葉まで喋れなくなってしまう」

 ハムスターはそれに同意するようにコクコクと頷いた。

「獣人を愛玩動物化させる物を作るなんてな。それを知って怒った儂と喧嘩になりあいつはここを出て行ってしまった。もう五年も会っておらん。いつか改心して戻って来てくれると信じて待っているんだが、これを見る限りそんな日は来そうに無いな」

 ベルナールさんの全てを諦めたような笑いに僕達は何も言えなかった。

「王都ではリリアーナ様と公爵が処刑されたそうだな。この先、獣人を蔑ろにする奴隷商達が捕まるのならば、この首輪を作った息子もいずれは捕まるのかもしれんな。だが、それは結局あいつの自業自得だ」

 既に王都では奴隷商の摘発が進んでいる。

 この首輪を作ったベルナールさんの息子も奴隷商に加担した罪で捕まる可能性もあるだろう。

 ベルナールさんの気持ちを思うとどう声をかけていいのかわからずに部屋の中にはしんみりとした空気が流れる。

「いや、余計な事を言ってしまったな。この首輪を解除して欲しいのだったな。ちょっと待っておれ」 

 ベルナールさんはまたもや部屋を出ていくと、今度は一枚の紙を持って来た。

 それをテーブルの上に広げたが、そこには何やら複雑な魔法陣が書かれていた。

「この首輪を解除する為の魔法陣だ。何かの役に立つかもと思って保存しておいて良かったよ。…さあ、この上に乗ってみなさい」
 
 ハムスターは恐る恐るテーブルの上に広げられた魔法陣の上に足を乗せていく。

 トコトコと進んで魔法陣の真ん中にハムスターが立つと、ピカッと魔法陣が光った。

 光が収まると同時にハムスターの首輪がポトリとハムスターの足元に落ちる。

「これ以上の改良はしていないみたいだな。これで外れなければどうしようかと思ったが無事に外れて良かった。さあ、人型に戻れるか試してみなさい」

 ハムスターはコクリと頷くとピョンとテーブルから床に飛び降りた。

 ハムスターの足が床に着地すると同時にハムスターの体をモヤが包み込む。

 僕達はその様子を固唾を呑んで見守った。

 モヤが晴れて現れたのは女の人だった。

 

 
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