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43 散策
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お父様は私の手を取って庭園を歩き出す。
その手を振り払うわけにもいかずに私はそのまま大人しく付いて行くのだけれど、そんな私達の後ろをエイブラムさんは何も言わずに歩いている。
「綺麗だろう、ここの庭園は。クリスティンが好きな花を揃えてみたんだよ」
お父様が歩きながら花の名前を教えてくれる。
…花の名前までちゃんと覚えているなんて、本当にお父様はお母様が好きだったのね。
そんなふうにゆったりと庭園を歩く私達の前に立ちはだかる人物が現れた。
「陛下。お部屋に籠もっておいでだと伺ったのですが、どうやら庭園を散策されるまで回復されたようですね。ですが、それよりも先に目を通すべき書類が山積みになっている事をお忘れではないですよね」
冷ややかな目の宰相サマが、ジロリとお父様を見つめる。
「ワ、ワスレテナイヨ…」
お父様、声が上ずってますわ。
「アリス様、誠に申し訳ございませんが陛下は返していただきますね」
宰相はそう私に断ると、お父様を引きずるように連れ去ってしまった。
二人共、仕事を先に終わらせてしまえばいいのに、どうしてそれよりも私を優先にするのかしら。
気を取り直して後ろのエイブラムさんを振り返ると、その後方から誰かが近付いて来た。
「団長、ここにいらっしゃったのですね。せっかく王宮におられるんだから一緒に訓練しましょう」
いい笑顔で副団長さんがエイブラムさんに声をかける。
「えっ、いや、私は…」
「アリス様、それでは団長をお借りしますね」
エイブラムさんの返事も聞かずに副団長さんは、エイブラムさんの背中を押して訓練場の方へと押しやっていく。
…副団長さんもなかなか鍛えていらっしゃるわ。
だけど、どうして私の周りの男性は有無を言わさずに連れ去られてしまうのかしら?
一人ポツンと庭園に残された私にセアラが声をかけて来た。
「アリス様、お部屋に戻られますか?」
今まで側にいた事を気付かせないなんて、流石はお母様の侍女だっただけあるわね。
「そうね。一人でここにいても仕方がないものね」
私はセアラを伴って自分の部屋に戻るといつものように読書を始めた。
翌日、朝食を終えた後で部屋に戻ると、セアラが一通の手紙を持って来た。
「アリス様、ジェンクス侯爵夫人からお手紙を預かって参りました」
差出人は確かにエイブラムさんのお母様の名前があった。
開封してみると、お茶会を開催するので出席してほしいと書いてある。
「ジェンクス侯爵夫人からお茶会のお誘いなのだけれど、出席しても大丈夫かしら?」
まだそんなに貴族同士のお付き合いに慣れていない私が参加しても大丈夫なのかしらね。
セアラに尋ねてみると、私を安心させるように頷いてくれる。
「ガブリエラ様でしたらクリスティン様のご友人でしたから、アリス様の事もご指導してくださいます」
どうやら私の為にセアラが侯爵夫人にお願いしたみたいね。
セアラはお母様の侍女ではあるけれど、元々はお母様の同級生で子爵令嬢だったらしい。
実家が没落して行くあてが無くなったセアラをお母様が侍女に引き立てたそうよ。
セアラに教えを乞いながら侯爵夫人に手紙の返事を書いて届けてもらう。
それからお茶会に着ていく衣装を吟味していると、何故かお父様とお兄様が顔を出してきた。
「アリス、こちらのドレスがいいんじゃないか?」
「いえ、父上。それは少し地味です。アリスにはやはりこちらの華やかなドレスの方が似合います」
「何を言う。それよりはこちらの方が可憐で可愛らしいぞ!」
「いやいや、父上。それよりもこちらの方が…」
私とセアラをそっちのけでお父様とお兄様があれこれと口を出してきては、ドレスを私に着せようとする。
二人の暴走ぶりに他の侍女達もあっけに取られてドン引き状態だ。
誰か、あの二人をこの場から連れ出してちょうだい!
その手を振り払うわけにもいかずに私はそのまま大人しく付いて行くのだけれど、そんな私達の後ろをエイブラムさんは何も言わずに歩いている。
「綺麗だろう、ここの庭園は。クリスティンが好きな花を揃えてみたんだよ」
お父様が歩きながら花の名前を教えてくれる。
…花の名前までちゃんと覚えているなんて、本当にお父様はお母様が好きだったのね。
そんなふうにゆったりと庭園を歩く私達の前に立ちはだかる人物が現れた。
「陛下。お部屋に籠もっておいでだと伺ったのですが、どうやら庭園を散策されるまで回復されたようですね。ですが、それよりも先に目を通すべき書類が山積みになっている事をお忘れではないですよね」
冷ややかな目の宰相サマが、ジロリとお父様を見つめる。
「ワ、ワスレテナイヨ…」
お父様、声が上ずってますわ。
「アリス様、誠に申し訳ございませんが陛下は返していただきますね」
宰相はそう私に断ると、お父様を引きずるように連れ去ってしまった。
二人共、仕事を先に終わらせてしまえばいいのに、どうしてそれよりも私を優先にするのかしら。
気を取り直して後ろのエイブラムさんを振り返ると、その後方から誰かが近付いて来た。
「団長、ここにいらっしゃったのですね。せっかく王宮におられるんだから一緒に訓練しましょう」
いい笑顔で副団長さんがエイブラムさんに声をかける。
「えっ、いや、私は…」
「アリス様、それでは団長をお借りしますね」
エイブラムさんの返事も聞かずに副団長さんは、エイブラムさんの背中を押して訓練場の方へと押しやっていく。
…副団長さんもなかなか鍛えていらっしゃるわ。
だけど、どうして私の周りの男性は有無を言わさずに連れ去られてしまうのかしら?
一人ポツンと庭園に残された私にセアラが声をかけて来た。
「アリス様、お部屋に戻られますか?」
今まで側にいた事を気付かせないなんて、流石はお母様の侍女だっただけあるわね。
「そうね。一人でここにいても仕方がないものね」
私はセアラを伴って自分の部屋に戻るといつものように読書を始めた。
翌日、朝食を終えた後で部屋に戻ると、セアラが一通の手紙を持って来た。
「アリス様、ジェンクス侯爵夫人からお手紙を預かって参りました」
差出人は確かにエイブラムさんのお母様の名前があった。
開封してみると、お茶会を開催するので出席してほしいと書いてある。
「ジェンクス侯爵夫人からお茶会のお誘いなのだけれど、出席しても大丈夫かしら?」
まだそんなに貴族同士のお付き合いに慣れていない私が参加しても大丈夫なのかしらね。
セアラに尋ねてみると、私を安心させるように頷いてくれる。
「ガブリエラ様でしたらクリスティン様のご友人でしたから、アリス様の事もご指導してくださいます」
どうやら私の為にセアラが侯爵夫人にお願いしたみたいね。
セアラはお母様の侍女ではあるけれど、元々はお母様の同級生で子爵令嬢だったらしい。
実家が没落して行くあてが無くなったセアラをお母様が侍女に引き立てたそうよ。
セアラに教えを乞いながら侯爵夫人に手紙の返事を書いて届けてもらう。
それからお茶会に着ていく衣装を吟味していると、何故かお父様とお兄様が顔を出してきた。
「アリス、こちらのドレスがいいんじゃないか?」
「いえ、父上。それは少し地味です。アリスにはやはりこちらの華やかなドレスの方が似合います」
「何を言う。それよりはこちらの方が可憐で可愛らしいぞ!」
「いやいや、父上。それよりもこちらの方が…」
私とセアラをそっちのけでお父様とお兄様があれこれと口を出してきては、ドレスを私に着せようとする。
二人の暴走ぶりに他の侍女達もあっけに取られてドン引き状態だ。
誰か、あの二人をこの場から連れ出してちょうだい!
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