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侯爵令嬢のご依頼 5
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夕食に呼ばれたので、クローゼットの中にあった、比較的ゆったりとしたドレスに着替えた。
この前の水色のドレスとは違って、ノースリーブで胸元がバックリ開き気味の露出が高いデザインだ。スカートはロング丈。色は光沢のある藍色で、しなやかな布地の美しさが際立っており、ゆったりとしたドレープが魅惑的だ。
私を鏡台に座らせたフレイは、嬉々として、私の髪を梳った。
「今日は、イシュタルトさまとサリーナさまだけですから、ラフな感じに致しましょうね」
ラフ、という割には、念入りに化粧を施していく。
『ラフ』な部分はたぶん、髪を結い上げないという点だけのような気がしたが、普段、ほぼスッピンで、髪も無造作に縛っているだけの私の価値観とは違うのだろう。
「つかぬ事をお聞きしますが」
私は頬紅をさしているフレイに問いかける。
「どうして、みなさん、私にこんなに良くしてくださるのですか? いくらロバートの姉だとはいえ、ここまでしていただくいわれはないと思うのですが」
「イシュタルトさまのご意向ですわ。それに、私、アリサさまのようなお美しい方のお世話が出来て、侍女冥利につきます」
侍女冥利って何? 一瞬、何を言われたのか理解に苦しんだ。
「サリーナさまもお美しい方ですが、アリサさまは磨きがいがありますもの」
フレイは満足そうに私の顔を見た。
彼女の技術により、私が高貴な令嬢にさまっている。侍女冥利というのは、こういうことなのだろうか。
「アリサさまをご覧になるイシュタルト様のお顔が楽しみですわ」
フレイは本当に楽しそうだ。
フレイやサリーナと話していると、このお屋敷にお世話になる『私の理由』と、『イシュタルトの意向』のほかに、何か別の意図が働いている気がする。
さすがにノースリーブのドレスだけでは冷えるので、ふんわりと大判のスカーフで肩を覆った。
フレイに食堂まで案内してもらいながら、スカーフを魔力付与したら売れるだろうか、などと、とりとめのないことを考える。もっとも、薄物の生地だと、刺繍を施すほかに付与する方法はなさそうだ。
刺繍である程度の付与ができるのであれば、皮鎧を愛用するダリアのような軽戦士さんが鎧の下に着用しているシャツに応用できそうだ。皮鎧を愛用する人の中にも、プールポワンを着てくれるひとはいるが、金属鎧と違って、肌にあたってそれ程刺激にならないし、動きやすさと軽さを追及して皮鎧を選択しているのだから、分厚いキルティングをほどこしたプールポワンは今一つ人気がない。
「アリサさま?」
うわの空で歩いていた私は、フレイの言葉で我に返った。
食堂には、ロバートとサリーナが座っていた。ロバートは私の姿を認めると、満面の笑みをフレイに向けた。無言で、親指を上に向け、彼女の仕事をたたえている。
第三の陰謀? に、ロバートが絡んでいるのは、間違いなさそうである。
「アリサさん、ロバートの許可が下りました」
椅子に腰かけると、サリーナがニコニコと微笑みながらそう言った。
「はい?」
何のことだろうと思って、見返すと、ロバートが嬉しそうに微笑んでいる。
「アリサがその気でよかったよ。僕、どうやって説得するか、悩んでいたから」
「……何のこと?」
「夜会よ。週末の皇室主催の夜会のこと」
サリーナが嬉しそうにそう言った。
「ど、どういうこと?」
私は、ロバートを問いただす。絶対に反対してくれるものだと思っていたのに。
「魔道ギルドから、夜会の警護の依頼が入ったんだ。アリサに」
「夜会の警護?」
「そ。この前のハーピー騒ぎの主犯が捕まってないから。例の魔法陣の波動を知っている僕らに依頼が回ってきた」
魔導士になると、ギルドから仕事が回ってくることがあるが、たいてい名指しで依頼されるので断りにくいという話は、どこかで聞いたような気がする。
「僕は、裏方の警護に回るから、アリサは夜会に参加して欲しいんだ」
「……私が裏方じゃダメなの?」
「アリサ、宮殿の地理に詳しくないでしょ」
それはそうだ。
詳しいどころか、行ったこともない。
「日当も出るよ。ほら、依頼書。ま。依頼というより命令書だけど」
ロバートは私に魔道ギルドからの書簡を二つ渡してよこした。
ギルド長カペラの名で、あて名は間違いなく、私とロバート宛だ。
「日当、一万G」
私は、その金額に驚く。
「今回は、皇室警護だからね。破格だよ」
ロバートはにっこりと微笑む。
「でも、私、ドレスもないし、マナーも知らないから無理かも」
「何が無理なんだ?」
小ざっぱりとしたシャツに着替えたイシュタルトが食堂に入ってきた。
「兄上がいれば平気よ」
クスクスとサリーナが答える。
イシュタルトは首を傾げ、私のほうを見て、目を見開いた。
自意識過剰なのかもしれないが、なんだか視線が来ている気がして、さりげなくスカーフで胸元を隠す。
「じゃ、決まりね。さしあたっての問題はドレスよね。母上のドレスだと、流行おくれだわ」
「アリサは、ドレスって仕立てたことあるの?」
「え? 町娘が着るようなやつなら作れると思うけど……って。私行くとは言ってないけど」
サリーナとロバートの話が加速していって、私は混乱する。
「何の話だ?」
「アリサが皇室主催の夜会に出るという話です」
ロバートの言葉に、イシュタルトの顔が曇った。
「ロバート、正気か?」
イシュタルトがそう言うのも、もっともだと思う。
「正気も何も。魔道ギルドからの正式な依頼です。断れません」
ロバートに目で促され、私は書簡をイシュタルトに渡す。イシュタルトは、険しい目でそれを見た。
「アリサは、宮殿の地理に疎いから、裏方の警備は無理です」
「しかし、アゼル卿も来るぞ」
イシュタルトは苦い顔をする。
「大丈夫ですよ。僕が言うのもなんですが、アリサが本気で着飾れば、寄ってくるのはアゼル卿一人ですむわけがない。皇室主催ですからね。アヤツが横槍を入れられない高貴な方々が、アリサを取り巻いてくれます」
それは、私を買いかぶりすぎだと思う。
高貴な人がホイホイ私に引っかかるわけがない。姉至上主義なのはうれしいが、双子の私をそこまで褒めると、ナルシストだって他人様に思われそうで、少し心配だ。
「ジュドーより、タチが悪いのに引っかかったらどうする?」
イシュタルトの顔が険しい。
アレより、タチが悪いって、どんな奴だろう。
「そこは、イシュタルト様にお任せして」
ロバートはしれっとそう言う。
「ロバート、お前な……」
イシュタルトは、困った顔をした。
サリーナはああいったけど、やっぱり私をエスコートするのは迷惑に違いない。
「ロバート。行かなきゃならないのはわかったから。私、一人でも大丈夫。ほら、壁の花って言うじゃない? 魔術の波動を感じるだけなら、壁際でじっとしていればいいから。人目があればジュドーも変なことはしないと思うし」
私は腹をくくって、そう言った。これ以上、イシュタルトに迷惑はかけられない。
「ダメ。アリサが壁の花になんかになれるわけないでしょーが。イシュタルトさまが無理なら、レグルスに頼みに行ってくる。だから間違っても、一人で行くなどと言わないように」
ロバートは私を諭すように言う。
「ロバート、レグルスさまって?」
「あのひとも夜会に呼ばれているからね。アリサのエスコートを頼んだら、たぶん喜んで……」
ロバートはにやにやとした笑みを浮かべる。
どこか、黒い笑みだ。
「その必要はない。アリサのエスコートは俺がする」
イシュタルトがぶぜんとした表情で言う。
レグルスの名を聞いて、ムキになっているようにみえる。
面倒事なら、ライバルに押し付けるという考え方もあるだろうに、そうしないのは、イシュタルトが真面目だからだろうか。
「ご迷惑なのではありませんか?」
私はおそるおそる問いかける。
「アリサは、俺が相手では嫌か?」
「いえ。そんなことはありません。でも……」
ずっと貴族令嬢を側に近寄らせなかったというのに、私なんかを傍らに置いていいのだろうか。たぶん、魔道ギルドの依頼で仕方なく参加する私を野放しにはできないのだろうが。
「そうと決まったら、ドレスよ。あと、靴も必要ね」
ウキウキとサリーナが弾んだ声を出す。
「……アリサさん、どうします?」
どうしますと言われても。いっそ、軍服でも支給してもらったりしたら楽なのに。
「サリーナさまのオススメは、ありますか?」
「そうね。今日のドレスみたいなセクシー系がいいと思うわ。ねえ、兄上」
サリーナに話を振られて、イシュタルトは眉を寄せる。
「露出が多すぎるのは、やめたほうがいいと思うが?」
「こういうドレス、私には、似合いませんか?」
私みたいな色気と縁のない女が、セクシードレスでしなをつくっても、所詮、付け焼刃にすぎず、みっともないのかもしれない。
「そうは、言っていない」
イシュタルトが慌てて、そう言った。
「ただ、魔道ギルドの任務で行くのだろう? 男の視線を引くことより、いざというときに動きやすいドレスにしておかないと困るということだ」
「ああ、なるほど」
私が頷いていると、ロバートがなぜか笑いをかみ殺したようなしぐさをしている。
「それなら、明日、エレーナに来てもらうから、アドバイスをもらうといいよ」
「エレーナさまに?」
私が驚いた顔をすると、ロバートは「エレーナはセンスもいいし」とニコッと笑う。
ロバートよ。
皇族を呼び捨てって、お友達にしても親しすぎる気がするけど、大丈夫なのだろうか。
「夜会警護の打ち合わせをするのに、来てもらう予定だからね」
「……お前、エレーナさまは仮にも皇族だぞ。まさか、我が家に呼びつけたのか? それに、そういう事は俺に報告しろ」
イシュタルトが険しい顔をした。
「申し訳ありませんでしたが、オズワルトさまにはお話ししております。それに、僕が呼んだのではなく、アリサがここにいると言ったら、絶対に見に来たいと言って、強引に押し切られたんです」
ロバートは言葉とは裏腹に平然とした顔で、肩をすくめて見せた。
この前の水色のドレスとは違って、ノースリーブで胸元がバックリ開き気味の露出が高いデザインだ。スカートはロング丈。色は光沢のある藍色で、しなやかな布地の美しさが際立っており、ゆったりとしたドレープが魅惑的だ。
私を鏡台に座らせたフレイは、嬉々として、私の髪を梳った。
「今日は、イシュタルトさまとサリーナさまだけですから、ラフな感じに致しましょうね」
ラフ、という割には、念入りに化粧を施していく。
『ラフ』な部分はたぶん、髪を結い上げないという点だけのような気がしたが、普段、ほぼスッピンで、髪も無造作に縛っているだけの私の価値観とは違うのだろう。
「つかぬ事をお聞きしますが」
私は頬紅をさしているフレイに問いかける。
「どうして、みなさん、私にこんなに良くしてくださるのですか? いくらロバートの姉だとはいえ、ここまでしていただくいわれはないと思うのですが」
「イシュタルトさまのご意向ですわ。それに、私、アリサさまのようなお美しい方のお世話が出来て、侍女冥利につきます」
侍女冥利って何? 一瞬、何を言われたのか理解に苦しんだ。
「サリーナさまもお美しい方ですが、アリサさまは磨きがいがありますもの」
フレイは満足そうに私の顔を見た。
彼女の技術により、私が高貴な令嬢にさまっている。侍女冥利というのは、こういうことなのだろうか。
「アリサさまをご覧になるイシュタルト様のお顔が楽しみですわ」
フレイは本当に楽しそうだ。
フレイやサリーナと話していると、このお屋敷にお世話になる『私の理由』と、『イシュタルトの意向』のほかに、何か別の意図が働いている気がする。
さすがにノースリーブのドレスだけでは冷えるので、ふんわりと大判のスカーフで肩を覆った。
フレイに食堂まで案内してもらいながら、スカーフを魔力付与したら売れるだろうか、などと、とりとめのないことを考える。もっとも、薄物の生地だと、刺繍を施すほかに付与する方法はなさそうだ。
刺繍である程度の付与ができるのであれば、皮鎧を愛用するダリアのような軽戦士さんが鎧の下に着用しているシャツに応用できそうだ。皮鎧を愛用する人の中にも、プールポワンを着てくれるひとはいるが、金属鎧と違って、肌にあたってそれ程刺激にならないし、動きやすさと軽さを追及して皮鎧を選択しているのだから、分厚いキルティングをほどこしたプールポワンは今一つ人気がない。
「アリサさま?」
うわの空で歩いていた私は、フレイの言葉で我に返った。
食堂には、ロバートとサリーナが座っていた。ロバートは私の姿を認めると、満面の笑みをフレイに向けた。無言で、親指を上に向け、彼女の仕事をたたえている。
第三の陰謀? に、ロバートが絡んでいるのは、間違いなさそうである。
「アリサさん、ロバートの許可が下りました」
椅子に腰かけると、サリーナがニコニコと微笑みながらそう言った。
「はい?」
何のことだろうと思って、見返すと、ロバートが嬉しそうに微笑んでいる。
「アリサがその気でよかったよ。僕、どうやって説得するか、悩んでいたから」
「……何のこと?」
「夜会よ。週末の皇室主催の夜会のこと」
サリーナが嬉しそうにそう言った。
「ど、どういうこと?」
私は、ロバートを問いただす。絶対に反対してくれるものだと思っていたのに。
「魔道ギルドから、夜会の警護の依頼が入ったんだ。アリサに」
「夜会の警護?」
「そ。この前のハーピー騒ぎの主犯が捕まってないから。例の魔法陣の波動を知っている僕らに依頼が回ってきた」
魔導士になると、ギルドから仕事が回ってくることがあるが、たいてい名指しで依頼されるので断りにくいという話は、どこかで聞いたような気がする。
「僕は、裏方の警護に回るから、アリサは夜会に参加して欲しいんだ」
「……私が裏方じゃダメなの?」
「アリサ、宮殿の地理に詳しくないでしょ」
それはそうだ。
詳しいどころか、行ったこともない。
「日当も出るよ。ほら、依頼書。ま。依頼というより命令書だけど」
ロバートは私に魔道ギルドからの書簡を二つ渡してよこした。
ギルド長カペラの名で、あて名は間違いなく、私とロバート宛だ。
「日当、一万G」
私は、その金額に驚く。
「今回は、皇室警護だからね。破格だよ」
ロバートはにっこりと微笑む。
「でも、私、ドレスもないし、マナーも知らないから無理かも」
「何が無理なんだ?」
小ざっぱりとしたシャツに着替えたイシュタルトが食堂に入ってきた。
「兄上がいれば平気よ」
クスクスとサリーナが答える。
イシュタルトは首を傾げ、私のほうを見て、目を見開いた。
自意識過剰なのかもしれないが、なんだか視線が来ている気がして、さりげなくスカーフで胸元を隠す。
「じゃ、決まりね。さしあたっての問題はドレスよね。母上のドレスだと、流行おくれだわ」
「アリサは、ドレスって仕立てたことあるの?」
「え? 町娘が着るようなやつなら作れると思うけど……って。私行くとは言ってないけど」
サリーナとロバートの話が加速していって、私は混乱する。
「何の話だ?」
「アリサが皇室主催の夜会に出るという話です」
ロバートの言葉に、イシュタルトの顔が曇った。
「ロバート、正気か?」
イシュタルトがそう言うのも、もっともだと思う。
「正気も何も。魔道ギルドからの正式な依頼です。断れません」
ロバートに目で促され、私は書簡をイシュタルトに渡す。イシュタルトは、険しい目でそれを見た。
「アリサは、宮殿の地理に疎いから、裏方の警備は無理です」
「しかし、アゼル卿も来るぞ」
イシュタルトは苦い顔をする。
「大丈夫ですよ。僕が言うのもなんですが、アリサが本気で着飾れば、寄ってくるのはアゼル卿一人ですむわけがない。皇室主催ですからね。アヤツが横槍を入れられない高貴な方々が、アリサを取り巻いてくれます」
それは、私を買いかぶりすぎだと思う。
高貴な人がホイホイ私に引っかかるわけがない。姉至上主義なのはうれしいが、双子の私をそこまで褒めると、ナルシストだって他人様に思われそうで、少し心配だ。
「ジュドーより、タチが悪いのに引っかかったらどうする?」
イシュタルトの顔が険しい。
アレより、タチが悪いって、どんな奴だろう。
「そこは、イシュタルト様にお任せして」
ロバートはしれっとそう言う。
「ロバート、お前な……」
イシュタルトは、困った顔をした。
サリーナはああいったけど、やっぱり私をエスコートするのは迷惑に違いない。
「ロバート。行かなきゃならないのはわかったから。私、一人でも大丈夫。ほら、壁の花って言うじゃない? 魔術の波動を感じるだけなら、壁際でじっとしていればいいから。人目があればジュドーも変なことはしないと思うし」
私は腹をくくって、そう言った。これ以上、イシュタルトに迷惑はかけられない。
「ダメ。アリサが壁の花になんかになれるわけないでしょーが。イシュタルトさまが無理なら、レグルスに頼みに行ってくる。だから間違っても、一人で行くなどと言わないように」
ロバートは私を諭すように言う。
「ロバート、レグルスさまって?」
「あのひとも夜会に呼ばれているからね。アリサのエスコートを頼んだら、たぶん喜んで……」
ロバートはにやにやとした笑みを浮かべる。
どこか、黒い笑みだ。
「その必要はない。アリサのエスコートは俺がする」
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レグルスの名を聞いて、ムキになっているようにみえる。
面倒事なら、ライバルに押し付けるという考え方もあるだろうに、そうしないのは、イシュタルトが真面目だからだろうか。
「ご迷惑なのではありませんか?」
私はおそるおそる問いかける。
「アリサは、俺が相手では嫌か?」
「いえ。そんなことはありません。でも……」
ずっと貴族令嬢を側に近寄らせなかったというのに、私なんかを傍らに置いていいのだろうか。たぶん、魔道ギルドの依頼で仕方なく参加する私を野放しにはできないのだろうが。
「そうと決まったら、ドレスよ。あと、靴も必要ね」
ウキウキとサリーナが弾んだ声を出す。
「……アリサさん、どうします?」
どうしますと言われても。いっそ、軍服でも支給してもらったりしたら楽なのに。
「サリーナさまのオススメは、ありますか?」
「そうね。今日のドレスみたいなセクシー系がいいと思うわ。ねえ、兄上」
サリーナに話を振られて、イシュタルトは眉を寄せる。
「露出が多すぎるのは、やめたほうがいいと思うが?」
「こういうドレス、私には、似合いませんか?」
私みたいな色気と縁のない女が、セクシードレスでしなをつくっても、所詮、付け焼刃にすぎず、みっともないのかもしれない。
「そうは、言っていない」
イシュタルトが慌てて、そう言った。
「ただ、魔道ギルドの任務で行くのだろう? 男の視線を引くことより、いざというときに動きやすいドレスにしておかないと困るということだ」
「ああ、なるほど」
私が頷いていると、ロバートがなぜか笑いをかみ殺したようなしぐさをしている。
「それなら、明日、エレーナに来てもらうから、アドバイスをもらうといいよ」
「エレーナさまに?」
私が驚いた顔をすると、ロバートは「エレーナはセンスもいいし」とニコッと笑う。
ロバートよ。
皇族を呼び捨てって、お友達にしても親しすぎる気がするけど、大丈夫なのだろうか。
「夜会警護の打ち合わせをするのに、来てもらう予定だからね」
「……お前、エレーナさまは仮にも皇族だぞ。まさか、我が家に呼びつけたのか? それに、そういう事は俺に報告しろ」
イシュタルトが険しい顔をした。
「申し訳ありませんでしたが、オズワルトさまにはお話ししております。それに、僕が呼んだのではなく、アリサがここにいると言ったら、絶対に見に来たいと言って、強引に押し切られたんです」
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