ただいま、入札中【短編】

ジェリージュンジュン

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大丈夫だ。

 俺は予定通り面接に行くことができる。


 俺は耐えた。

 1秒が何時間にも感じるようなこの空間で、指先一つ動かさずに立ち尽くしていた。

 大丈夫だ。

もうじき、全てが終わる。

 俺は、このまま早く時間が過ぎることだけを祈っていた。


――しかし、次の瞬間!


 「おとなしくしろ!」


こともあろうか、俺は大声をあげながら、男に飛びついていた。

それは、一瞬の出来事。

 自分でも、なぜそんな行動に出たのか分からない。

 頭より先に体が反応したというべきだろうか。

 男が紙幣をポケットにねじこもうとした時、一瞬隙ができた。

ナイフの刃が下を向いた瞬間を逃さず、俺は飛びついていた。


 「てめえ! 殺すぞ!」

 「ナイフを離せ!」


 俺は男と揉み合いになった。

すると!


グサッ!――


「うっ!」


 俺の腹に、偶然、ナイフが刺さってしまった。


 「く、くそ!」


それを見た男は、ドアを乱暴に開け、外に飛び出して行った。


 「うっ……うぅ……」


 俺は床に仰向けで倒れた。

 血が止まらない。

 意識が遠くなる。

 目に映るものが、全て歪み始めていた。


あぁ……いったい、なんでこんなことに……

俺は、何もせずにただの傍観者でいるはずだった。

 予定通り、面接に行くはずだった。


なのに、なんで……こんなことに……



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