今夜の涙

cafeみるく

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ちょうだい。

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彼は今日も仕事で疲れ切って、夜遅くに帰宅した。
このところ残業続きで、帰り道は薄暗い街灯の明かりで少し照らされているだけの道を歩く。明日も早くから仕事だと考えると、一刻も早く家に帰り、シャワーを浴び、ご飯を胃に流し込んで、さっさと眠りたい。そんなことを考えながら早足で歩いた。
 
やっと家に着いた。
玄関の明かりが灯っている。いつもは真っ暗なのにと、不思議に思いながらも鍵を差し込み扉を開けた。
 
すると、彼の5歳になる娘がドアの所で待って
いたのである。
普段なら娘はとっくに寝ている時間なので、
彼は驚いて言った。
 
「まだ起きていたのか。もう遅いから早く寝なさい」
「パパ。寝る前に聞きたいことがあるんだけど」
「何だ?」
「パパは一時間にいくらお金をかせぐの?」
 
突拍子もない質問で驚いたが、その後すぐに怒りがこみ上げてきた。
父親はイライラして言った。
 
「お前には関係ないことだ」
 
 
「何だって、そんなこと聞くんだ?」
「どうしても知りたいだけなの。一時間にいくらなの?」
 
女の子はお願いをした。
 
「あまり給料は良くないさ。。20ドルくらいだな。ただし残業代はタダだ」
「わあ」
 
女の子は言った。
 
「ねえ。パパ。私に10ドル貸してくれない?」
「何だって!」
 
疲れていた父親は激昂した。
 
「お前が何不自由なく暮らせるために、俺は働いているんだ。それが金が欲しいだなん
て。だめだ!早く部屋に行って寝なさい!」
 
女の子は、黙って自分の部屋に行った。
暫くして父親は後悔し始めた。少し厳しく叱
し厳しく叱り過ぎたかもしれない。。
多分、娘はどうしても買わなくちゃならない
ものがあったのだろう。
それに今まで娘は、そんなに何かをねだるようなことはしない方だった。

男は娘の部屋に行くと、そっとドアを開け
た。
「もう寝ちゃったかい?」
 
彼は小さな声で言った。
 
「ううん。パパ!」
 
女の子の声がした。少し泣いているようだ。
 
「今日は長いこと働いていたし、ちょっとイライラしてたんだ。」
 
女の子はベットから起き上がって顔を輝かせた。
 
「ありがとう。パパ!」
 
そして小さな手を枕の下に入れると、数枚の硬貨を取り出した。
父親はちょっとびっくりして言った。
 
「おいおい。もういくらか持ってるじゃないか」
「だって足りなかったんだもん。でも、もう足りたよ」
 
女の子は答えた。そして10ドル札と硬貨を父
親に差し出して、
 
「パパ!私20ドル持ってるの。これでパパの一時間を買えるよね?」
 
無邪気に聞いてくる娘の顔を見て、思わず抱きしめた。
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