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第3章
第73話 材料
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「始まったな……」
「えぇ……」
アデマス王国とラクト帝国の第二戦が始まった。
ラクト帝国は出し惜しみするつもりないようで、早々から生物兵器を送り出した。
それを、限とレラは離れた位置で眺めていた。
「最初のうちは様子を見る。あの生物兵器と敷島の連中に潰しあってもらおう」
「はい」
本当の所は、敷島の連中は一人残らず自分の手で殺してしまいたいところだ。
しかし、いくら何でも数が多すぎる。
それはラクト帝国側に寝返ったオリアーナたち研究員も同様だ。
標的同士が潰し合うのだから、数が減るのを待つことにした。
「タイミングを見て動くぞ。いつでも行ける心づもりでいろ」
「はい」
オリアーナたち研究員の暗殺に向かうつもりでいるが、戦況次第でどちらにも向かうつもりでいる。
そのため、限はどちらを潰しに行っても良い心づもりでいることを指示し、レラはその指示に頷いた。
「源斎殿、あれが……?」
「あぁ、オリアーナたちが作り上げた生物兵器のようだ」
ラクト帝国の陣営から生物兵器が出現したのを見て、援軍に来た五十嵐光蔵が菱山源斎へ問いかける。
その問いに頷くと、源斎は説明を付け加える。
「奴らはあれを制御できているのですかな?」
アデマス王国にいた頃、オリアーナたちが造った生物兵器は暴走を起こしたことがある。
それによって兵が怪我をしたことがあり、研究施設の閉鎖を決定することになったのだ。
その時よりも強力な兵器が、オリアーナたちにコントロールできているのか光蔵は気になった。
「隷属紋でコントロールしているようだ。どうやら作り上げる段階で何かしているのであろう」
「なるほど……」
前の戦いで気付いたことだが、生物兵器の魔物たちの背には奴隷紋が付けられている。
どうやら、それによってオリアーナたちはコントロール下に置いているようだ。
自分より弱い者に隷属魔法をかけられても、魔物はその抵抗力によって魔法を弾いてしまう。
それなのに従魔にできているというのは、あの魔物が作り上げらる段階で隷属化する工程が組み込まれているのだろう。
あくまでも源斎の予想ではあるが、そうでないと説明着かないため、光蔵もその考えに納得した。
「あの巨体に、剛力の6本腕。恐らく敷島の者でもある程度上位の者しか1人で戦うのは危険ですぞ」
「そのようですな」
敷島の人間は一騎当千の実力者と言われているが、それはあくまで島の外に出ることを許可された普通レベルの者のことだ。
上位にいる者は、更に強力な戦闘力を有している。
その上位の者たちでなければ、あの生物兵器の相手は難しいというのが、1度生物兵器の実力を見た源斎の考えだった。
身に纏っている魔力を見るだけであの魔物が強いのは分かるため、光蔵は源斎の忠告を素直に受け入れた。
「奴らはなんてものを造り上げたんだ……」
「全くですな……」
オリアーナたちが造り上げた魔物はかなり危険だ。
援軍に来ておいてなんだが、面倒なことになったと思わないでもない。
相当気合いを入れて挑まないと、こちらの兵もかなりの痛手を被ることだろう。
迫り来るオリアーナたちが造ったと思われる生物兵器を見て、光蔵は困った表情で呟き、源斎もその思いに同意を示した。
「愚痴っていても意味がない。敷島の実力を見せてやりましょう!」
「あぁ!」
予想以上に危険な平気だということは分かった。
かと言って、敷島の者たちは恐れ慄くような者たちではない。
光蔵と源斎は、迫り来る生物兵器に対して迎撃を開始することにした。
「くっ! 思ったより減らない……」
数体の生物兵器と敷島の者たちの戦闘が開始される。
その戦いを見て、ラクト帝国側のクラレンス伯爵は僅かに焦りを見せる。
前回は苦戦した6本腕の変異種に対し、敷島の連中が連携して対処している。
当たれば危険な攻撃も、当たらなければ意味がない。
変異種の振り回す攻撃が当たらず、敷島の者たちを一気に減らすことがなかなかできないでいた。
「さすが敷島の者たちということでしょうか……」
同じ光景を見ながら、オリアーナは小さく呟く。
敷島の連中は戦闘の面においては天才的な一族だと、敵ながら評価していた。
その理由から、このような状況になることは予想できたことだった。
「……冷静なようだが、奴らを仕留めるまでの数は揃っているのか?」
「大丈夫です」
自分と同様に敷島の連中を憎く思っているはずのオリアーナが、まだ冷静な態度をしていることにクラレンスは意外に思う。
このままこの状況が続くようでは、次第に生物兵器の数が減らされて行くことになり、今度はこっちが撤退を考えなくてはならなくなる。
そんな状況にならないように、クラレンスはオリアーナへ向けて兵器の数を確認した。
その確認に対し、オリアーナは自信ありげに頷きを返す。
「もし足りなくなっても、閣下がすぐに用意してくださるのでしょ?」
「ま、まあな……」
オリアーナの問いに対し、クラレンスは少したじろぐ。
何故なら、あの生物兵器の材料とされているものが何なのかを理解しているからだ。
材料とされているのは人間。
帝国内で殺人などの重犯罪をおこなった者を、処刑するのではなく生物兵器の材料として利用しているのだ。
奴隷化した犯罪者に魔物化する薬を投与し、魔物の姿に変化したら強化薬を投与する。
それによって、あの生物兵器の変異種が完成するのだ。
敷島の者との戦いが現状のまま続き、もしも生物兵器の材料となる囚人たちを使い切ってしまっても、搔き集めれば良いだけの話だ。
その役割はクラレンス次第。
しかし、この戦場に新たな囚人を連れてくるのは時間がかかる。
つまり、オリアーナは囚人以外の人間でも良いから連れて来いと言っているのだ。
その程度のことは貴族の権限でなんとかできるが、人道としては外れた行為なのは言うまでもない。
平気で人体実験をおこなってきたオリアーナとは違い、クラレンスには人間としての良心がまだ残っているようだ。
「しかし、このままでは敷島の連中が調子に乗ってしまいます。少し変化を加えましょう」
「あぁ、頼む……」
材料さえあれば問題ない状況だが、敷島の連中を好きにさせているのは気に入らない。
そう考えたオリアーナは、少し状況を変えるべく、生物兵器を製造している研究員たちの所へ向かうことにした。
「えぇ……」
アデマス王国とラクト帝国の第二戦が始まった。
ラクト帝国は出し惜しみするつもりないようで、早々から生物兵器を送り出した。
それを、限とレラは離れた位置で眺めていた。
「最初のうちは様子を見る。あの生物兵器と敷島の連中に潰しあってもらおう」
「はい」
本当の所は、敷島の連中は一人残らず自分の手で殺してしまいたいところだ。
しかし、いくら何でも数が多すぎる。
それはラクト帝国側に寝返ったオリアーナたち研究員も同様だ。
標的同士が潰し合うのだから、数が減るのを待つことにした。
「タイミングを見て動くぞ。いつでも行ける心づもりでいろ」
「はい」
オリアーナたち研究員の暗殺に向かうつもりでいるが、戦況次第でどちらにも向かうつもりでいる。
そのため、限はどちらを潰しに行っても良い心づもりでいることを指示し、レラはその指示に頷いた。
「源斎殿、あれが……?」
「あぁ、オリアーナたちが作り上げた生物兵器のようだ」
ラクト帝国の陣営から生物兵器が出現したのを見て、援軍に来た五十嵐光蔵が菱山源斎へ問いかける。
その問いに頷くと、源斎は説明を付け加える。
「奴らはあれを制御できているのですかな?」
アデマス王国にいた頃、オリアーナたちが造った生物兵器は暴走を起こしたことがある。
それによって兵が怪我をしたことがあり、研究施設の閉鎖を決定することになったのだ。
その時よりも強力な兵器が、オリアーナたちにコントロールできているのか光蔵は気になった。
「隷属紋でコントロールしているようだ。どうやら作り上げる段階で何かしているのであろう」
「なるほど……」
前の戦いで気付いたことだが、生物兵器の魔物たちの背には奴隷紋が付けられている。
どうやら、それによってオリアーナたちはコントロール下に置いているようだ。
自分より弱い者に隷属魔法をかけられても、魔物はその抵抗力によって魔法を弾いてしまう。
それなのに従魔にできているというのは、あの魔物が作り上げらる段階で隷属化する工程が組み込まれているのだろう。
あくまでも源斎の予想ではあるが、そうでないと説明着かないため、光蔵もその考えに納得した。
「あの巨体に、剛力の6本腕。恐らく敷島の者でもある程度上位の者しか1人で戦うのは危険ですぞ」
「そのようですな」
敷島の人間は一騎当千の実力者と言われているが、それはあくまで島の外に出ることを許可された普通レベルの者のことだ。
上位にいる者は、更に強力な戦闘力を有している。
その上位の者たちでなければ、あの生物兵器の相手は難しいというのが、1度生物兵器の実力を見た源斎の考えだった。
身に纏っている魔力を見るだけであの魔物が強いのは分かるため、光蔵は源斎の忠告を素直に受け入れた。
「奴らはなんてものを造り上げたんだ……」
「全くですな……」
オリアーナたちが造り上げた魔物はかなり危険だ。
援軍に来ておいてなんだが、面倒なことになったと思わないでもない。
相当気合いを入れて挑まないと、こちらの兵もかなりの痛手を被ることだろう。
迫り来るオリアーナたちが造ったと思われる生物兵器を見て、光蔵は困った表情で呟き、源斎もその思いに同意を示した。
「愚痴っていても意味がない。敷島の実力を見せてやりましょう!」
「あぁ!」
予想以上に危険な平気だということは分かった。
かと言って、敷島の者たちは恐れ慄くような者たちではない。
光蔵と源斎は、迫り来る生物兵器に対して迎撃を開始することにした。
「くっ! 思ったより減らない……」
数体の生物兵器と敷島の者たちの戦闘が開始される。
その戦いを見て、ラクト帝国側のクラレンス伯爵は僅かに焦りを見せる。
前回は苦戦した6本腕の変異種に対し、敷島の連中が連携して対処している。
当たれば危険な攻撃も、当たらなければ意味がない。
変異種の振り回す攻撃が当たらず、敷島の者たちを一気に減らすことがなかなかできないでいた。
「さすが敷島の者たちということでしょうか……」
同じ光景を見ながら、オリアーナは小さく呟く。
敷島の連中は戦闘の面においては天才的な一族だと、敵ながら評価していた。
その理由から、このような状況になることは予想できたことだった。
「……冷静なようだが、奴らを仕留めるまでの数は揃っているのか?」
「大丈夫です」
自分と同様に敷島の連中を憎く思っているはずのオリアーナが、まだ冷静な態度をしていることにクラレンスは意外に思う。
このままこの状況が続くようでは、次第に生物兵器の数が減らされて行くことになり、今度はこっちが撤退を考えなくてはならなくなる。
そんな状況にならないように、クラレンスはオリアーナへ向けて兵器の数を確認した。
その確認に対し、オリアーナは自信ありげに頷きを返す。
「もし足りなくなっても、閣下がすぐに用意してくださるのでしょ?」
「ま、まあな……」
オリアーナの問いに対し、クラレンスは少したじろぐ。
何故なら、あの生物兵器の材料とされているものが何なのかを理解しているからだ。
材料とされているのは人間。
帝国内で殺人などの重犯罪をおこなった者を、処刑するのではなく生物兵器の材料として利用しているのだ。
奴隷化した犯罪者に魔物化する薬を投与し、魔物の姿に変化したら強化薬を投与する。
それによって、あの生物兵器の変異種が完成するのだ。
敷島の者との戦いが現状のまま続き、もしも生物兵器の材料となる囚人たちを使い切ってしまっても、搔き集めれば良いだけの話だ。
その役割はクラレンス次第。
しかし、この戦場に新たな囚人を連れてくるのは時間がかかる。
つまり、オリアーナは囚人以外の人間でも良いから連れて来いと言っているのだ。
その程度のことは貴族の権限でなんとかできるが、人道としては外れた行為なのは言うまでもない。
平気で人体実験をおこなってきたオリアーナとは違い、クラレンスには人間としての良心がまだ残っているようだ。
「しかし、このままでは敷島の連中が調子に乗ってしまいます。少し変化を加えましょう」
「あぁ、頼む……」
材料さえあれば問題ない状況だが、敷島の連中を好きにさせているのは気に入らない。
そう考えたオリアーナは、少し状況を変えるべく、生物兵器を製造している研究員たちの所へ向かうことにした。
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