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第8章
第162話
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「ヴァーリャという国はどんなところなのですか?」
1日乗り続ければ馬にも慣れ、ケイは馬を速足で走らせる程度にはなった。
落ちてもそれ程の痛みを感じないというのは、かなり有利に働いている。
ケイに合わせて進んで来たが、目標のヴァーリャの国にはもう少しで国境に着きそうだ。
今日中にルイオレジャいう町に着きたいとのことだが、日暮れまでに着きたいところだ。
着きそうとなると、ヴァーリャという国に興味が湧く。
なので、ケイはリカルドにヴァーリャという国のことを尋ねた。
「牛人族の王が統治する国で、綺麗な湖がある国だ」
牛人族とは牛から進化したと言われている人種で、小さい角が頭に生えているのが特徴の種族だ。
ベジタリアンなため、色々な野菜を育てているとのことだ。
ケイも野菜作りをしているため、どんな野菜が育てられているのか興味がある。
「湖ですか?」
ケイと美花は、船が転覆して死にかけた経験がいまだに拭えないのか、なんとなく表情が曇る。
海ほどではないが、湖も少し苦手に感じる。
「ツピエデラという町にあるシーマ湖と言う所で、釣りが楽しめることで有名だ」
「……それは面白そうですね」
水が苦手ではあるが、ケイも美花も釣りは好きだ。
アンヘル島では娯楽が少ないので、しょっちゅう釣りをして食料確保と暇つぶしをしている。
船が苦手なケイと美花は、基本沖釣りになるのだが、島生まれの子供たちは船や海にトラウマなんてないから、素潜りで銛突きをしたり、船で沖に出て釣りをしたりする者もいる。
シーマという湖ではどんな魚が釣れるのか楽しみになったケイは、馬の速度を上げ始めた。
いつの間にか、普通に走らせることができるようになっていた。
ケイが速度を出せるようになれば、他の者たちも進むのは早くなる。
夕暮れが迫る頃、ケイたちはルイオレジャの町へたどり着いたのだった。
「大会? 釣りの?」
翌日、ケイが馬を走らせることが出来るようになり、一行は順調に進むことができるようになった。
そのまま進み続けると、リカルドから聞いていたツピエデラという町に着き、シーマ湖を見に散歩に向かった。
すると、町の掲示板らしきところに大きなポスターが張られていることに気が付いた。
魚を釣り上げる人間の絵が描かれており、シーマ湖での釣り大会が明日から開催されるとの文章が書かれていた。
「釣り大会があるらしいな……」
リカルドもこれは知らなかったらしく、ポスターに目が釘付けになっている。
アンヘル島に来てから、リカルドは釣りに目覚めたらしく、趣味の一つとして楽しんでいるそうだ。
「「これは……」」
ケイとリカルドは声をそろえて小声で呟く。
釣り好きとしては、これは見過ごせないところだ。
「参加するしかないでしょう!」
「だな!」「ですな!」
美花の参加決定の言葉に、ケイとリカルドも賛成する。
前日エントリーが通るか分からずに大会事務局へ向かうと、リカルドがカンタルボスの王だと知っていた者がおり、すんなり参加の許可が下りたのだった。
《え~、ただいまより毎年恒例釣り大会をおこないたいと思います!》
翌日、ケイたちはそれぞれ自分の釣竿を持って大会会場へ向かった。
多くの参加者たちの中で少しの間待っていると、拡声器の魔道具を使って大会開催者が話を始めた。
ケイはともかく、リカルドのことを考えたら特別待遇をしたいところだろうが、リカルド自身が他の参加者同様の扱いで良いという風に言っていたため、そのように扱うことになっている。
《今日の勝者は一番大きい魚を釣った方です!》
今日、明日と、2日続くこの釣り大会。
日ごとに、釣った魚の大きさと重さで勝者を決めるらしい。
今日の判定方法は大きさ(長さ)での勝負だそうだ。
ルールとしては、他の釣り人への妨害行為の禁止。
使う釣竿は特別制限はないが、先ほど言ったように他者の妨害になる場合は失格処分になる可能性があるとのことだった。
大会では船で湖内に入る事は禁止で、全員沖から釣るように定められている。
それ以外は特に禁止事項がない。
結構自由な感じの大会のようだ。
《それでは! よーい!》
元々、ケイと美花は船に乗っての釣りはしたくないので、この大会のルールはありがたい。
カンタルボスからここまで一緒に来た護衛たちのことを考えると、ケイたちもそれほど離れる訳にはいかず、ケイ・美花・リカルドは近場での釣りになるのは仕方がない。
護衛のメンバーを3つに分けるという案もあったのだが、離れて連携が取れなくなるのは危険なので3人近場で釣ることになった。
地元民ではないケイたちは、どこで何が釣れるとかは分からない。
なので、自然と他の参加者がいない所で陣取ることになった。
《始め!!》
場所が決まると、ちょうど開始の合図が聞こえて来た。
そのため、ケイたちは糸を投げて釣りを始めたのだった。
「ところで……」
「んっ?」
釣りを始め、魚がかかるまでの間を埋めるため、ケイはある疑問をリカルドに尋ねることにした。
「この国は牛人族が多いというのは道中で分かりました」
ヴァーリャ王国では牛人が多いと聞いていたが、昨日泊まったルイオレジャの町もこのツピエデラの町もたしかに牛人の人たちが多い。
他の種族ももちろんいるのだが、やはり多いのは牛人だ。
そうなると、気になることがある。
「ベジタリアンの牛人が多いのに、魚釣りが好きな人が多いですね……」
この大会の参加者も、牛人の人たちが多かった。
食べる訳でもないのに釣りが好きなんて、なんとなく疑問に思う所がある。
「釣った魚は大体他国に売るためらしい」
「なるほど……」
他の国も海に面しているので、魚介類には困ることは無い。
しかし、ここの湖の魚は他では取れないらしく、しかも美味いから人気があるらしい。
カンタルボスも輸入しているのだそうだ。
「楽しみね!」
「そうだな!」
美味いと聞くと、釣る楽しみが増える。
リカルドの話を聞いて、ケイと美花の浮きを見る目がさらに真剣になったのは言うまでもない。
1日乗り続ければ馬にも慣れ、ケイは馬を速足で走らせる程度にはなった。
落ちてもそれ程の痛みを感じないというのは、かなり有利に働いている。
ケイに合わせて進んで来たが、目標のヴァーリャの国にはもう少しで国境に着きそうだ。
今日中にルイオレジャいう町に着きたいとのことだが、日暮れまでに着きたいところだ。
着きそうとなると、ヴァーリャという国に興味が湧く。
なので、ケイはリカルドにヴァーリャという国のことを尋ねた。
「牛人族の王が統治する国で、綺麗な湖がある国だ」
牛人族とは牛から進化したと言われている人種で、小さい角が頭に生えているのが特徴の種族だ。
ベジタリアンなため、色々な野菜を育てているとのことだ。
ケイも野菜作りをしているため、どんな野菜が育てられているのか興味がある。
「湖ですか?」
ケイと美花は、船が転覆して死にかけた経験がいまだに拭えないのか、なんとなく表情が曇る。
海ほどではないが、湖も少し苦手に感じる。
「ツピエデラという町にあるシーマ湖と言う所で、釣りが楽しめることで有名だ」
「……それは面白そうですね」
水が苦手ではあるが、ケイも美花も釣りは好きだ。
アンヘル島では娯楽が少ないので、しょっちゅう釣りをして食料確保と暇つぶしをしている。
船が苦手なケイと美花は、基本沖釣りになるのだが、島生まれの子供たちは船や海にトラウマなんてないから、素潜りで銛突きをしたり、船で沖に出て釣りをしたりする者もいる。
シーマという湖ではどんな魚が釣れるのか楽しみになったケイは、馬の速度を上げ始めた。
いつの間にか、普通に走らせることができるようになっていた。
ケイが速度を出せるようになれば、他の者たちも進むのは早くなる。
夕暮れが迫る頃、ケイたちはルイオレジャの町へたどり着いたのだった。
「大会? 釣りの?」
翌日、ケイが馬を走らせることが出来るようになり、一行は順調に進むことができるようになった。
そのまま進み続けると、リカルドから聞いていたツピエデラという町に着き、シーマ湖を見に散歩に向かった。
すると、町の掲示板らしきところに大きなポスターが張られていることに気が付いた。
魚を釣り上げる人間の絵が描かれており、シーマ湖での釣り大会が明日から開催されるとの文章が書かれていた。
「釣り大会があるらしいな……」
リカルドもこれは知らなかったらしく、ポスターに目が釘付けになっている。
アンヘル島に来てから、リカルドは釣りに目覚めたらしく、趣味の一つとして楽しんでいるそうだ。
「「これは……」」
ケイとリカルドは声をそろえて小声で呟く。
釣り好きとしては、これは見過ごせないところだ。
「参加するしかないでしょう!」
「だな!」「ですな!」
美花の参加決定の言葉に、ケイとリカルドも賛成する。
前日エントリーが通るか分からずに大会事務局へ向かうと、リカルドがカンタルボスの王だと知っていた者がおり、すんなり参加の許可が下りたのだった。
《え~、ただいまより毎年恒例釣り大会をおこないたいと思います!》
翌日、ケイたちはそれぞれ自分の釣竿を持って大会会場へ向かった。
多くの参加者たちの中で少しの間待っていると、拡声器の魔道具を使って大会開催者が話を始めた。
ケイはともかく、リカルドのことを考えたら特別待遇をしたいところだろうが、リカルド自身が他の参加者同様の扱いで良いという風に言っていたため、そのように扱うことになっている。
《今日の勝者は一番大きい魚を釣った方です!》
今日、明日と、2日続くこの釣り大会。
日ごとに、釣った魚の大きさと重さで勝者を決めるらしい。
今日の判定方法は大きさ(長さ)での勝負だそうだ。
ルールとしては、他の釣り人への妨害行為の禁止。
使う釣竿は特別制限はないが、先ほど言ったように他者の妨害になる場合は失格処分になる可能性があるとのことだった。
大会では船で湖内に入る事は禁止で、全員沖から釣るように定められている。
それ以外は特に禁止事項がない。
結構自由な感じの大会のようだ。
《それでは! よーい!》
元々、ケイと美花は船に乗っての釣りはしたくないので、この大会のルールはありがたい。
カンタルボスからここまで一緒に来た護衛たちのことを考えると、ケイたちもそれほど離れる訳にはいかず、ケイ・美花・リカルドは近場での釣りになるのは仕方がない。
護衛のメンバーを3つに分けるという案もあったのだが、離れて連携が取れなくなるのは危険なので3人近場で釣ることになった。
地元民ではないケイたちは、どこで何が釣れるとかは分からない。
なので、自然と他の参加者がいない所で陣取ることになった。
《始め!!》
場所が決まると、ちょうど開始の合図が聞こえて来た。
そのため、ケイたちは糸を投げて釣りを始めたのだった。
「ところで……」
「んっ?」
釣りを始め、魚がかかるまでの間を埋めるため、ケイはある疑問をリカルドに尋ねることにした。
「この国は牛人族が多いというのは道中で分かりました」
ヴァーリャ王国では牛人が多いと聞いていたが、昨日泊まったルイオレジャの町もこのツピエデラの町もたしかに牛人の人たちが多い。
他の種族ももちろんいるのだが、やはり多いのは牛人だ。
そうなると、気になることがある。
「ベジタリアンの牛人が多いのに、魚釣りが好きな人が多いですね……」
この大会の参加者も、牛人の人たちが多かった。
食べる訳でもないのに釣りが好きなんて、なんとなく疑問に思う所がある。
「釣った魚は大体他国に売るためらしい」
「なるほど……」
他の国も海に面しているので、魚介類には困ることは無い。
しかし、ここの湖の魚は他では取れないらしく、しかも美味いから人気があるらしい。
カンタルボスも輸入しているのだそうだ。
「楽しみね!」
「そうだな!」
美味いと聞くと、釣る楽しみが増える。
リカルドの話を聞いて、ケイと美花の浮きを見る目がさらに真剣になったのは言うまでもない。
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