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1学年 前期
第38話
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「あの魔人は鷹藤家で止められると思うかい?」
「……止められると思います」
柊家当主の俊夫との話は続き、鷹藤家に任せることで魔人が討伐できるのかを問いかけられた。
直接戦った伸なら、魔人の強さを判断できると考えての質問だろう。
その問いに対し、伸は少し思案した後返答した。
「魔物の数にもよりますが、当主の康義、その息子の康則の2人に鷹藤の者たちが加われば倒せるでしょう」
「そうか……」
鷹藤の本家当主の康義。
現在この国で最強の魔術師といわれている。
その息子の康則も、父程とはいかずともなかなか能力者だ。
分家にも康則に近い能力を持った人間はいる。
それらが協力して魔人の討伐に当たれば、この1ヵ月に魔人たちが大量の魔物を従えていない限り、負けることはないと思える。
恐らく、鷹藤家に任せておけば、この事件も終息を迎えるだろう。
伸のその説明に、俊夫は静かに頷いた。
「単体なら柊殿も勝てる相手ですからね」
「……俺はあっさりやられた身だ。勝てると言い切れんよ」
俊夫は、部下の木畑に擬態していた魔人によって死にかける大怪我を負った。
その木畑は、本当に魔人の食べられたらしく遺体も出てこない。
出来ることなら自分の手でその魔人を倒したいと、俊夫は思っているのかもしれない。
だが、この国のことを考えるなら魔人討伐が最優先。
魔人の討伐は鷹藤に任せるしかないと、俊夫は残念そうに呟いた。
「それにしても、今回魔人を倒してしまったらますます鷹藤の評価が上がてしまうな……」
「……こればっかりはしょうがないですよ」
魔人が2体もいると分かっていれば、柊家の人間も護送につけることも考えられた。
せっかく上がった柊家の株も、世間の話題はすぐに鷹藤に移ることだろう。
伸にとって鷹藤家はちょっとした因縁ある相手。
柊家によって伏せられているが、魔人を先に捕まえたのは伸だ。
それが逃げられて鷹藤に手柄を上げられるなんて、横取りされた感も否めない。
俊夫としてはそのことが気になって呟くと、伸も残念に思いつつも今回は仕方ないと受け入れているように返答した。
「……つかぬことを聞きますが、魔人が八郷地区に来れば問題ないんですよね?」
「あぁ……」
俊夫と間に広げられた地図を見て、伸はなんとなくあることを思いだした。
そして、こっちが手を出せない理由が、縄張り意識によるものだけだということを確認するために問いかけた。
「もしかしたら、八郷地区に来させることもできるかもしれません」
「何っ!? 本当か? しかし、そんなこと……」
伸の言葉に、俊夫は強く反応する。
一般市民のことを考えれば、このまま鷹藤に任せてしまえばいいだけのことだ。
しかし、部下の仇を討ちたい俊夫、鷹藤に一泡吹かせたい伸。
その問題を解決するには、魔人が八郷地区に来ればいいだけの話だ。
伸にはそれを解決する方法が思い浮かんでいた。
「魔人が隠れているのが、もしもここら辺なら八郷地区に誘き出すこともできるかもしれません」
「ここ……?」
伸が指さしたのは、魔人が潜んでいるであろう範囲内にある山の一部だった。
しかし、その場所は八郷地区に近いといっても官林地区であり、俊夫の中では何が言いたいのか分からない。
「ここは八郷地区に通じる自然にできた洞窟があるんです」
「洞窟? ここは……そうか!!」
伸の指さした場所を少しの間見つめていると、たしかにそこに洞窟があったことを俊夫は思いだした。
もしも、ここに魔人が潜んでいるのなら、八郷地区側へ誘き出すこともできるかもしれない。
「この周囲に民家はない。誘き出せれば戦うのにも問題ない」
洞窟のある場所は、人里離れた山奥。
誘き出して戦うことになっても、市民に被害が及ぶことはない。
前回伸が捕縛した時よりも、遠慮なく魔術を放って大丈夫と言っていいだろう。
「しかし、どうやってこちら側へおびき寄せる?」
魔人たちがこの洞窟を利用しているのなら、こっちにとって都合がいい。
後はどうやってこちらに誘い込むかだ。
無闇に刺激して、逆に官林地区側に出て行ってしまったら、準備を整えている最中の鷹藤家にも迷惑をかける。
誘い込むにしても、方法とタイミングが問題になってくる。
「こちらとしては、鷹藤家が洞窟内への進入を見てから行動を起こすつもりです。片方の魔人はもしかしたら俺への怒りが残っているかもしれません。俺の魔力に触れれば誘き出せるかもしれません」
「なるほど……」
寸滝町で再生魔術を操る医者を誘拐しているのは、魔人が伸によって両腕を斬り飛ばされたからだ。
攫った医者に無理をさせれば、恐らく1ヵ月もあれば両腕が治っている可能性がある。
実力差は分かっているだろうが、今度は仲間の魔人も一緒にいる。
自分の魔力に触れれば、前回やられた恨みを晴らすためにこちらへ向かって来るかもしれない。
そう思った伸の説明に、俊夫は納得するように呟いた。
「しかし、その洞窟を柊家の魔術師が大人数で包囲して魔人を討伐すれば、鷹藤家は何故八郷地区に繋がっていることを言わなかったのかとなるため、少数で待ち受けるということになります」
いくら八郷地区に誘い出して魔人を討伐したとしても、その用意周到さから魔人を見つけたのに報告を怠ったと因縁をつけられる可能性がある。
そうならないためには、ここに洞窟があることを思いだし、洞窟が官林地区に繋がっているかを確認するために来たら、たまたま魔人に出くわしたと言い訳を作るしかない。
そのため、大人数での討伐はできなくなり、誘い出すにも少数で待ち受けるしかない。
「少数となると。戦えるのは俺と柊殿だけになりますが……、やってみますか?」
「う~ん……」
突発的な遭遇による討伐。
それを言い訳に戦うなら、魔人と戦えるのは自分と俊夫だけだろう。
そう考えた伸は、最終判断を俊夫に委ねることにした。
問いかけられた俊夫は、悩むように腕を組み、目をつぶって無言で考え始めた。
「よしっ! やろう!」
少し悩んだ俊夫は、決意したように目を開いて結論を叫ぶ。
「鷹藤のことなど関係なく、木畑の敵が討ちたい! 私憤でしかないが、それが私の本心だ!」
「分かりました……」
部下である木畑が殺されたことに気付けなかったことを、俊夫はいまだに引きずっていた。
その思いを払拭するためにも、魔人の討伐をしたいのだろう。
柊家までの案内役でしかないが、伸も木畑のことを知っている身だ。
綾愛が言うには、俊夫は木畑を自分の右腕にするつもりでいたとのことだ。
その彼のことを殺した魔人のことが許せないでいるのだろう。
部下思いの一面に触れ、伸は俊夫の思いにこたえることにし、魔人を誘い出すことに決定した。
「では、鷹藤の動きがあったら呼んでください」
「あぁ!」
魔人を誘い出すことが決まり、それから伸は俊夫と細かい打ち合わせを済ませた。
こちらは鷹藤が動いてから動くことになるので、それまで俊夫は少数の部下と共に洞窟の様子を確認し、学生の伸はいつも通りに学園生活を送る。
急に休学でもしようものなら怪しまれるための、それを誤魔化すためのカモフラージュだ。
伸ならいつでも転移してこれるので、呼ばれてから駆けつけても問題はない。
打ち合わせも済んだ伸は、俊夫に会釈して学園の寮へと転移していった。
「んっ? ……たしかにあそこには洞窟がある。しかし、何で彼がそれを知っているんだ?」
伸に言われるまでは思いだせなかったが、この洞窟を俊夫が知ったのはある事件に関わったからだ。
その事件がなければ知ることもなかっただろう。
伸の実家は供応市と聞いているため、その伸が知っていることが不思議に思えた。
「まさか……」
洞窟とその事件のことを思いだしていると、俊夫はあることに思い至った。
自分で導き出しておいてなんだが、その考えが信じられず、さっきまで伸のいた場所へと目を移した。
そして、いなくなった伸を思いだし、その実力からその可能性がどんどん膨れ上がってきた。
「そう言うことか……」
伸の非常識な実力を考え出すと、自分の考えが正しいと思えた俊夫は、1人納得したように呟いたのだった。
「……止められると思います」
柊家当主の俊夫との話は続き、鷹藤家に任せることで魔人が討伐できるのかを問いかけられた。
直接戦った伸なら、魔人の強さを判断できると考えての質問だろう。
その問いに対し、伸は少し思案した後返答した。
「魔物の数にもよりますが、当主の康義、その息子の康則の2人に鷹藤の者たちが加われば倒せるでしょう」
「そうか……」
鷹藤の本家当主の康義。
現在この国で最強の魔術師といわれている。
その息子の康則も、父程とはいかずともなかなか能力者だ。
分家にも康則に近い能力を持った人間はいる。
それらが協力して魔人の討伐に当たれば、この1ヵ月に魔人たちが大量の魔物を従えていない限り、負けることはないと思える。
恐らく、鷹藤家に任せておけば、この事件も終息を迎えるだろう。
伸のその説明に、俊夫は静かに頷いた。
「単体なら柊殿も勝てる相手ですからね」
「……俺はあっさりやられた身だ。勝てると言い切れんよ」
俊夫は、部下の木畑に擬態していた魔人によって死にかける大怪我を負った。
その木畑は、本当に魔人の食べられたらしく遺体も出てこない。
出来ることなら自分の手でその魔人を倒したいと、俊夫は思っているのかもしれない。
だが、この国のことを考えるなら魔人討伐が最優先。
魔人の討伐は鷹藤に任せるしかないと、俊夫は残念そうに呟いた。
「それにしても、今回魔人を倒してしまったらますます鷹藤の評価が上がてしまうな……」
「……こればっかりはしょうがないですよ」
魔人が2体もいると分かっていれば、柊家の人間も護送につけることも考えられた。
せっかく上がった柊家の株も、世間の話題はすぐに鷹藤に移ることだろう。
伸にとって鷹藤家はちょっとした因縁ある相手。
柊家によって伏せられているが、魔人を先に捕まえたのは伸だ。
それが逃げられて鷹藤に手柄を上げられるなんて、横取りされた感も否めない。
俊夫としてはそのことが気になって呟くと、伸も残念に思いつつも今回は仕方ないと受け入れているように返答した。
「……つかぬことを聞きますが、魔人が八郷地区に来れば問題ないんですよね?」
「あぁ……」
俊夫と間に広げられた地図を見て、伸はなんとなくあることを思いだした。
そして、こっちが手を出せない理由が、縄張り意識によるものだけだということを確認するために問いかけた。
「もしかしたら、八郷地区に来させることもできるかもしれません」
「何っ!? 本当か? しかし、そんなこと……」
伸の言葉に、俊夫は強く反応する。
一般市民のことを考えれば、このまま鷹藤に任せてしまえばいいだけのことだ。
しかし、部下の仇を討ちたい俊夫、鷹藤に一泡吹かせたい伸。
その問題を解決するには、魔人が八郷地区に来ればいいだけの話だ。
伸にはそれを解決する方法が思い浮かんでいた。
「魔人が隠れているのが、もしもここら辺なら八郷地区に誘き出すこともできるかもしれません」
「ここ……?」
伸が指さしたのは、魔人が潜んでいるであろう範囲内にある山の一部だった。
しかし、その場所は八郷地区に近いといっても官林地区であり、俊夫の中では何が言いたいのか分からない。
「ここは八郷地区に通じる自然にできた洞窟があるんです」
「洞窟? ここは……そうか!!」
伸の指さした場所を少しの間見つめていると、たしかにそこに洞窟があったことを俊夫は思いだした。
もしも、ここに魔人が潜んでいるのなら、八郷地区側へ誘き出すこともできるかもしれない。
「この周囲に民家はない。誘き出せれば戦うのにも問題ない」
洞窟のある場所は、人里離れた山奥。
誘き出して戦うことになっても、市民に被害が及ぶことはない。
前回伸が捕縛した時よりも、遠慮なく魔術を放って大丈夫と言っていいだろう。
「しかし、どうやってこちら側へおびき寄せる?」
魔人たちがこの洞窟を利用しているのなら、こっちにとって都合がいい。
後はどうやってこちらに誘い込むかだ。
無闇に刺激して、逆に官林地区側に出て行ってしまったら、準備を整えている最中の鷹藤家にも迷惑をかける。
誘い込むにしても、方法とタイミングが問題になってくる。
「こちらとしては、鷹藤家が洞窟内への進入を見てから行動を起こすつもりです。片方の魔人はもしかしたら俺への怒りが残っているかもしれません。俺の魔力に触れれば誘き出せるかもしれません」
「なるほど……」
寸滝町で再生魔術を操る医者を誘拐しているのは、魔人が伸によって両腕を斬り飛ばされたからだ。
攫った医者に無理をさせれば、恐らく1ヵ月もあれば両腕が治っている可能性がある。
実力差は分かっているだろうが、今度は仲間の魔人も一緒にいる。
自分の魔力に触れれば、前回やられた恨みを晴らすためにこちらへ向かって来るかもしれない。
そう思った伸の説明に、俊夫は納得するように呟いた。
「しかし、その洞窟を柊家の魔術師が大人数で包囲して魔人を討伐すれば、鷹藤家は何故八郷地区に繋がっていることを言わなかったのかとなるため、少数で待ち受けるということになります」
いくら八郷地区に誘い出して魔人を討伐したとしても、その用意周到さから魔人を見つけたのに報告を怠ったと因縁をつけられる可能性がある。
そうならないためには、ここに洞窟があることを思いだし、洞窟が官林地区に繋がっているかを確認するために来たら、たまたま魔人に出くわしたと言い訳を作るしかない。
そのため、大人数での討伐はできなくなり、誘い出すにも少数で待ち受けるしかない。
「少数となると。戦えるのは俺と柊殿だけになりますが……、やってみますか?」
「う~ん……」
突発的な遭遇による討伐。
それを言い訳に戦うなら、魔人と戦えるのは自分と俊夫だけだろう。
そう考えた伸は、最終判断を俊夫に委ねることにした。
問いかけられた俊夫は、悩むように腕を組み、目をつぶって無言で考え始めた。
「よしっ! やろう!」
少し悩んだ俊夫は、決意したように目を開いて結論を叫ぶ。
「鷹藤のことなど関係なく、木畑の敵が討ちたい! 私憤でしかないが、それが私の本心だ!」
「分かりました……」
部下である木畑が殺されたことに気付けなかったことを、俊夫はいまだに引きずっていた。
その思いを払拭するためにも、魔人の討伐をしたいのだろう。
柊家までの案内役でしかないが、伸も木畑のことを知っている身だ。
綾愛が言うには、俊夫は木畑を自分の右腕にするつもりでいたとのことだ。
その彼のことを殺した魔人のことが許せないでいるのだろう。
部下思いの一面に触れ、伸は俊夫の思いにこたえることにし、魔人を誘い出すことに決定した。
「では、鷹藤の動きがあったら呼んでください」
「あぁ!」
魔人を誘い出すことが決まり、それから伸は俊夫と細かい打ち合わせを済ませた。
こちらは鷹藤が動いてから動くことになるので、それまで俊夫は少数の部下と共に洞窟の様子を確認し、学生の伸はいつも通りに学園生活を送る。
急に休学でもしようものなら怪しまれるための、それを誤魔化すためのカモフラージュだ。
伸ならいつでも転移してこれるので、呼ばれてから駆けつけても問題はない。
打ち合わせも済んだ伸は、俊夫に会釈して学園の寮へと転移していった。
「んっ? ……たしかにあそこには洞窟がある。しかし、何で彼がそれを知っているんだ?」
伸に言われるまでは思いだせなかったが、この洞窟を俊夫が知ったのはある事件に関わったからだ。
その事件がなければ知ることもなかっただろう。
伸の実家は供応市と聞いているため、その伸が知っていることが不思議に思えた。
「まさか……」
洞窟とその事件のことを思いだしていると、俊夫はあることに思い至った。
自分で導き出しておいてなんだが、その考えが信じられず、さっきまで伸のいた場所へと目を移した。
そして、いなくなった伸を思いだし、その実力からその可能性がどんどん膨れ上がってきた。
「そう言うことか……」
伸の非常識な実力を考え出すと、自分の考えが正しいと思えた俊夫は、1人納得したように呟いたのだった。
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