主人公は高みの見物していたい

ポリ 外丸

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1学年 前期

第40話

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「気を付けろ! 数が多いぞ!」

「「「「「ハイッ!!」」」」」

 八郷地区側で伸たちが密かに行動を起こしていることなど知らず、鷹藤家の者たちは慎重に洞窟内を進んでいた。
 倒しては現れる魔物たちに、康義は周囲の者へ注意を促す。
 探知すると、トンネルの先にはまだまだ魔物が潜んでいるのが分かるため、周囲の者たちも康義の言葉に返事をした。

「危ないっ!!」

 主力となる祖父の康義たちとは別に、文康は魔物たちが作ったであろういくつもある道の1つを進んでいた。
 魔物が多いトンネルは主力が担当しているため、文康たちの方の魔物は数が少ない。
 側にいる者たちがほとんど倒してしまうため、文康はやることがなかった。
 それでも警戒を解かずにいたことにより、文康は仲間の危険に反応する。

「このっ!!」

「文康様!?」

 突如地下から出現した巨大モグラに、文康は腰から抜いた刀で斬りかかる。
 文康の刀が魔物の首を斬り裂き、背後に出現した魔物に気付かずにいた仲間を救うことに成功した。

「大丈夫か?」

「ありがとうございます! さすがは未来のご当主です」

「これぐらいたいしたことではない」

 助けられた男性は、文康へ感謝の言葉を述べる。
 そして、高校生でありながらこれほどの魔物を倒せる技術の高さに、褒め称えるようなことも付け加えた。
 その言葉に、文康はまんざらでもなさそうな表情で返答した。

『やはり俺の力は魔物に通用する。きっと魔人にだって……』

 実の所、康義は今回孫の文康を参戦させたのは、まだまだ実力が足りないと自信に分からせることが狙いだった。
 しかし、仲間へと意識の向いていた魔物を運よく倒せたことにより、伸びた鼻を折ることに失敗した。
 それどころか、伸びた鼻は更に伸びることになってしまったのだった。





◆◆◆◆◆

「フゥ……」

 八郷地区側で魔人たちが出てくるのを待ち受けている伸たち。
 洞窟内から現れた魔物たちだったが、伸によってあっという間に討伐された。
 魔物を倒し終わった伸は、周囲に魔物がいないことを探知し、ひとまず安心したように一息ついた。

「お見事!」

「いえ、数が少なかったので……」

 魔物を一掃した伸に対し、柊家の当主の俊夫は端的な言葉で褒める。
 伸はそれに返答しつつも表情を変えない。
 言葉通り、前回よりも出てきた魔物が少なかったため、この程度で喜ぶほど狭量ではない。

「鷹藤の方にもあるので、そこまでの数は送れないのですかね?」

「そうかもしれないな……」

 新たな魔人が現れたことで、前回と同程度の魔物が出現することを予想していたが、洞窟の反対側からは鷹藤が迫ってきている状況だ。
 そちらへの対応も考えないといけないことから、出てくる魔物が少ないのかもしれない。
 少ないことに関しては文句はないので、伸たちは魔人が出てくるのを待つことにした。

「っ!! 危ないっ!!」

「っ!!」

 一息つくにしても、警戒を緩めたわけではない。
 伸が倒した魔物をどかすために魔術を使って収納しようとしていたところへ、地下から急激に迫り来る者の反応を探知した。
 その狙いは俊夫。
 伸は慌てて俊夫へ声をあげる。
 俊夫もその存在に気付いたのか、伸の言葉とほぼ同時にその場から跳び退いた。

“ドンッ!!”

 その次の瞬間、先程まで俊夫のいた場所から魔人のモグラ男が姿を現した。
 体内の魔力からいって、先日伸が捕まえた魔人だ。
 しかも、同じような人面をした者と一緒に出てきた。
 僅かに遅れて出てきた方が、恐らく新しく現れた魔人なのだろう。
 両魔人は、兄弟という話だったが、たしかに似ている。
 違いといえば、新しく現れた方の魔人の方がスマートな体型をしているということだろうか。

「チッ! 余計な奴から始末しようと高速移動してきたというのに……」

 姿を現した魔人は、俊夫の暗殺に失敗したことに舌打しつつ呟く。
 前回のことで伸の実力を知っているからか、少しでも邪魔になりそうな俊夫のことを始末しておきたかったようだ。

「なるほど、魔物を出してきたのは柊殿の始末が狙いか……」

 伸が洞窟内に魔力を送り、魔人に自分がここにいることを知らせた時にはかなりの距離があった。
 反対側から攻め入ってきている鷹藤の方ではなく、こちらの方に向かって来るにしてもまだ時間がかかるだろうと考えていたが、裏をかいてきたようだ。
 いくら伸でも、戦闘中に広範囲の探知は難しい。
 それでもかなりの範囲を探知できるが、さすがに地中深くを探ることはできない。
 そこを突いて、まずは俊夫を倒そうとしたようだ。

「おのれ! 姑息な奴め!」

 気付かなければ、前回と同じように戦うことなく魔人にやられることになっていた。
 自分に対し不意打ちばかりしてくる魔人に、俊夫は腹を立てて眉間にしわを寄せた。

「雑魚の始末に失敗したが、まあいても2対1だ。気にする事でもないか……」

「貴様……」「落ち着いて下さい。柊殿」

 どうやら前回あっさりと深手を負わせたことで、モグラ男は俊夫の評価をかなり低く見ているようだ。
 まるで、いてもいなくても変わらないと言いたげに、伸に向かって話している。
 眼中にないと言っているに等しい舐めた態度に、俊夫はこめかみに血管を浮かび上がらせて武器の刀を握りしめる。
 今にも怒りで攻めかかろうとしている俊夫を、伸は冷静になるように抑える。
 怒りは時として力になるが、それに任せた攻撃は読まれやすい。
 あの魔人は、前回伸にやられたことを俊夫に向けてしているに過ぎないのだ。
 伸に止められたことにより俊夫も少しは冷静になったようだが、魔人を睨みつけたままだ。

「あっちじゃなく、よくこっちに来たな?」

「こっちの方が数が少ないからな。今回は弟もいる。こちらに負ける要素はない」

 あっちというのは鷹藤家が攻め入っている官林地区側のことだ。
 両腕を斬り飛ばされて敗北を喫したのだから、伸を恐れて鷹藤家の方へ向かうことも考えられた。
 しかし、魔人たちが選んだのは伸たちの方。
 勝てると思っているのかと、暗に言うかのような伸の問いに、魔人は自信ありげに返答する。
 官林地区側の方はたしかに大多数で、こちらは伸と俊夫だけだ。
 伸さえ倒してしまえばいいのだから、こっちの方が逃走できると踏んでの選択のようだ。
 それと、ちょっとしたことだが、どうやらスマートな体型の方が弟のようだ。

「お前を殺して俺たちの餌にしてやる。あの医者たちのようにな!」

「てめえ……」

 伸に斬り飛ばされた腕を回復するために、魔人によって攫われた医者たち。
 魔人を誘き出す時に探知した時、伸は彼らが殺されていたことを確認していた。
 そのことを魔人も分かっていたらしく、伸を煽るように挑発してきた。
 無理やり腕を治すように言われた医者たちは、自分の命をつなぐために仕方なく魔人の腕を治したのだろう。
 それが用済みとなり殺された彼らのことを思うと、伸も魔人へ対しての怒りが湧いてきた。

「今回は逃がさん! またボコってやんよ!」

「そうだ! それに2対1ではない! 2対2だ!」

 怒りが湧いたが、それに身を任せるようなことはしない。
 話していても時間の無駄なので、伸と俊夫は刀を魔人たちへと向けて構えた。

「来るみたいだよ。兄さん」

「フンッ! あいつは前回俺にあっさり腹を尽き抜かれたようなザコだ。あのガキの方に気を付ければいい」

 武器を構えた伸たちに対し、魔人兄弟も両手の爪を伸ばして戦闘態勢に入る。
 しかし、まだ俊夫のことを舐めているのか、兄魔人の方は笑みを浮かべながら弟魔人へと言葉を返した。

「あいつの方は私に任せてくれ」

「了解しました。気を付けてください」

「あぁ!」

 いつまでも舐めているならそれでも構わない。
 俊夫としては、木畑の仇を討つだけだ。
 その思いを知っている伸は、俊夫の言葉に頷き言葉を返す。
 そして、伸と俊夫の2人対2体の魔人たちとの戦いが始まった。

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