主人公は高みの見物していたい

ポリ 外丸

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1学年 前期

第57話

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「……なんて魔術を作り出したんだ」

 夕食後、巨大イカの魔物を倒した時のことを柊家当主の俊夫に話したら、綾愛たちと同様に驚きの言葉を呟かれた。
 それもそのはず、俊夫は突然海水浴場に現れた魔物を伸に対応してもらう要請をしたのに、倒したのは違う人間で、しかも、それが娘の綾愛たちと同じ学園に通う少年で、伸の友人だという話ではないか。
 どうしてそのようなことになったのかと話を聞いてみると、伸がその場で作り出した魔術によってその友人の少年を操り、魔物を倒したという話だった。
 戦闘中に新しい魔術を考え出すだけでもあり得ないというのに、それをすぐさま実行してしまうという伸の非常識さに呆れるしかない。

「分かっていると思うけど……」

「はい。当然犯罪には使いません」

 人を思うように操れるとなると、犯罪に利用されたら犯人特定が困難になる。
 そのため、俊夫は伸がそうしないことを確認するように話しかける。
 俊夫が何を言いたいのか分かる伸は、誓うように返答をした。

「でも、真似できる人間は少ないと思いますよ」

「……というと?」

 自分の魔力で他人の魔力を使い操作する。
 それだけ聞くと、難しいことは難しいだろうが使えないことはないように思える。
 どうして真似できる人間が少ないと判断できるのか、俊夫には分からない。

「この魔術で操作していると気付かれないように他人を操ろうとするには、操る側に精密な魔力コントロールを必要とします。操作するには目視が必要のため遠隔操作もできないでしょうし、それに、かなりの魔力量がないと、他人の魔力を制御するなんてできません」

「なるほど……」

 この魔術を魔力コントロールが上手くない者が使った場合、催眠術などによって他人を操るように、動きに違和感を感じるため、魔術によって操られての犯行というのはすぐに分かるだろう。
 すぐに悟られるような使い手なら、操る人間を見ながらでないと操作できないために離れた位置にいることはできない。
 それに、人間1人を動かし続けるのにはかなりの魔力を使うため、誰もが使えると言ってもかなりの魔力量も必要になる。
 その説明を受け、俊夫は納得する。

「そもそも、この魔術が使いこなせるような魔術師なら、好きな仕事で大金を稼げるでしょう。犯罪に使うなんて無駄なことはしないでしょう」

 かなりの魔力量と、それを精密にコントロールできる能力がないと犯罪に利用できない。
 もしもこの操作魔術を使いこなせるような人間がいるとすれば、犯罪に利用するよりも真っ当な仕事に利用した方が充分高給を得られるはずだ。

「しかし、術者の弱みを掴まれれば、犯罪に使われるということもある。その魔術は公表しない方が良いな……」

「そうですね。まぁ、元々公表するつもりはないので大丈夫でしょう」

 たしかに、俊夫が言うように操作能力がある術者の家族を盾に、犯罪に利用されるという可能性もあるが、それは他の魔術でも同じこと。
 それに、伸にはこの魔術を広めるつもりはない。
 せっかく他人にバレないように他人を操れるのだから、今後も魔物討伐時に利用できる。
 出来る限り実力を隠したいために作り出した魔術なのだから、公表してバレるようなことになっては意味がない。
 魔闘組合へ新魔術の発見と公開をすれば、功績と名誉を称えて大金が支払われることになるだろう。
 しかし、伸としてはそんなものに興味がないため、このまま秘密にするつもりだ。

「今後の魔物退治は、この魔術を利用しようと思います」

「そうか、だれか代わりに戦う人間を用意すればいいわけだから……」

 鷹藤家の関係から、伸としては揉めないためにできる限り実力を隠しておきたい。
 この操作魔術を使えば、それも可能になる。
 柊家の人間で口の堅い人間を用意すればいいわけだから、そこまで難しいことではない。

「とは言っても、まだ完全に把握できていないので、夏休み中にでも調べるつもりです」

「そうだな。もしかしたら何かしらの条件が必要かもしれないからな」

 そもそも、思い付きでできた魔術だ。
 伸本人もまだ完全に把握している状況ではない。
 もしかしたら了が特別操り易かったのかもしれないため、色々な条件を検討する余地がある。
 今は夏休みで、それを調べる時間が沢山ある。
 とりあえず、伸は夏休み中に調べることにした。

「そうだ。3人とも仕事が終わったことだし、明日は自由にしていいぞ」

「本当ですか?」

「「やった!」」

 伸の魔術の話も終了し、俊夫は思いだしたように伸たちへと話しかけてきた。
 柊家の受けた大量発生した猪の魔物の討伐は今日のうちに終わったらしく、明日の1泊分が余ることになった。
 今さらキャンセルして帰るのはもったいないため、行きの車内で話したように明日1日遊んでいいことになった。
 伸・綾愛・奈津希の3人は内陸部の州で生まれ育ったため、せっかく来たのに海に入れないのはつらい。
 1日自由ということは、海水浴を楽しんで来いということだろう。
 許可が出て、3人は嬉しそうに声をあげ、高校生とは言ってもこういったところはまだ子供だと、俊夫としては微笑ましく思えた。





「……、何で俺が……」

 翌日の海水浴場。
 伸はトランクス型の海パン姿で、1人砂浜に立ち尽くし呟く。
 海水浴を楽しむのはいいが、伸は俊夫から変な男が近付かないように綾愛と奈津希の護衛をするように言われた。
 あの2人なら、簡単に男について行くような尻軽なことをするように思えない。
 例えそうなっても、伸には関係ないことだ。
 そのため、何故俊夫の言うことを断らなかったのか、伸としては今更少し不満に思っていた。

「新田君!」「お待たせ!」

「…………」

 伸が不満げな表情で立ち尽くしていたところへ、海の家の更衣室から水着姿に着替えた綾愛と奈津希が出てきた。
 その2人の水着姿を見て、伸は思わず無言になってしまう。

「何で黙っているの?」

「女性の水着姿を見たのだから、何か言うべきでしょ?」

「あぁ……」

 黙って見ているだけの伸に、2人は自分たちの水着姿の感想を求めてきた。
 そう言われて、伸は呆けていた状態から元に戻った。

「柊はスタイルいいんだな」

「……あんまり見ないでよ」

 綾愛がスタイルが良いのはなんとなく分かっていたことなので、伸は当たり障りないことを言う。
 それに対し、感想を求められたから答えたというのに、綾愛は理不尽な返答をしてくる。
 伸が2人の水着姿に固まったというのは少々適切ではない。
 どちらかというと、伸が固まったのは奈津希の水着姿の方だ。

「杉山……何でスク水なんだ?」

「需要と供給を考えた結果よ!」

 背も低く、胸なども少し寂しい奈津希が、何故かスク水で現れたのだ。
 完全にロリコン向けの姿に、その気のない伸としては一緒にいるのが何か恥ずかしい。
 分かってやっている返答の奈津希に、伸はやっぱり俊夫の指示に従うべきではなかったと頭を悩ませることになったのだった。

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