主人公は高みの見物していたい

ポリ 外丸

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1学年 後期

第61話

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「キィ!」

「「あぁ……」」

 ピモと名付けた伸の従魔であるピグミーモンキーの可愛らしさに、完全に心を奪われたような綾愛と奈津希。
 話の途中だというのに、これではいつまで経っても先に進まないため、伸は従魔のピモを手招きして自分の下へと呼び戻した。
 満面の笑みでピモを撫でたりしていた2人は、伸の下へ戻っていくピモを名残惜しそうな声で見送った。

「「…………」」

「…………」

 手の上に戻り、ピモは嬉しそうに伸の親指に頬ずりする。
 その様子をみた2人は、何で戻したんだと訴えるような視線を向けてきた。
 その視線に対し、伸は無表情で説明の途中だということを2人に思い出させた。

「それで? 金井君の魔力操作が上手くなった理由は?」

「…………ハァ~」

 話の途中だということを思いだした綾愛は、さっきまでのはしゃいでいた様子から、わざとらしく身を正すようにして問いかけてくる。
 さっきの無駄に待たされた時間がなかったかのような振る舞いに、伸としては一言いいたいところだ。
 しかし、それを言っている時間も無駄になると思い、ため息1つで収めることにした

「了に限らず、みんな魔力操作が上手くない」

 花紡州にある魔闘組合支部の支部長である紅林しか魔術師の知り合いがいなかったため、伸の中では彼が基準となっている。
 そのため、紅林並のコントロールが普通だと思っていたが、柊家の魔術師で彼より上手いのは当主の俊夫くらいしか見ていない気がする。
 そして、綾愛たちの探知魔術のレベルを見て、自分の基準が間違っていたと気が付いたのだ。
 知り合いのいない田舎者だから、それまで気付かなかったのだろう。

「言っては何だけど、あなたが特殊なのよ」

 伸の強さの秘密の1つは、魔力の精密なコントロールによるものだと綾愛は思っている。
 相当努力したのだと思うが、他が下手なのではなく単純に伸が特別上手すぎるのだ。
 綾愛としては、それだけは言っておきたかった。

「それは置いておいて、俺が了以上に上手く了の魔力を操ることによって、その時の感覚が体に残っていたんだと思う」

 魔力は体内を血液のように流れているもの。
 それを素早く動かせるようになるには、自分で地道に訓練を重ねるしかない。
 しかし、了の知らない所で操作魔術でいつも以上に速く滑らかに魔力操作されるという経験を受けたことで、体にその感覚が残っていたのだろう。
 その経験によって、了の魔力操作が飛躍的に上がったのだと、伸の中では結論付けている。

「そんなことが……」

「ピモ。身体強化」

 他ならぬ伸の導き出した結論のため、恐らくそれが正しいのかもしれない。
 しかし、そんなことは聞いたことはない。
 あくまでも予想の段階でしかないと反論しようとした綾愛へ、伸はも一度手の上のピモを見せる。
 そして、そのピモに短く指示を出した。

「キィ!」

「「っ!!」」

 伸の指示に頷いたピモは、魔力を操作して身に纏う。
 指示通りの身体強化だ。
 その様子を見て、綾愛と奈津希は目を見開いて固まった。

「そんな!」

「ピグミーモンキーが身体強化なんて聞いたことない!」

 僅かな停滞の後に、綾愛と奈津希はまたもピモへと視線を集中した。
 今度のは可愛らしさにではなく、身体強化した驚きによる視線だ。
 魔物の中には、身体強化をする者もいないことはない。
 しかし、弱い魔物だと身体強化を使うようなのは見たことがない。
 ペットとして知られている種類のピグミーモンキーではなおさらだ。

「……もしかして!?」

「あぁ、こいつを使って操作魔術を試したところ、身体強化が使えるようになった」

 ピモの身体強化を見て、綾愛はあることに思い至った。
 その考えを綾愛が言う前に、伸は先読みするように正解を口にした。
 ピグミーモンキーという弱小魔物のピモが、魔力を使いこなせるようになった理由。
 それは、伸の操作魔術の副作用だ。

「この子と同じことが金井君にも起こった?」

「その通り。だから了が魔力操作が上手くなった理由が予想できた」

「……なるほど」

 ピモは超小型の猿のため、部屋の中でも操作魔術の調査ができた。
 暇さえあれば何度も操作魔術を使っていたため、魔力の使い方を理解してしまったようだ。
 伸もピモが身体強化をした時に驚いたものだ。
 そして、本来魔力を使わないピグミーモンキーが使えるようになったのだから、了にも何かしらの変化が起きている可能性は感じていた。
 それが魔力コントロールの上昇という副作用だろう。

「新田君の操作魔術にそんな効果があるなんて……」

 操作魔術の副作用を聞いて、奈津希は感心したように呟いている。
 了からしたら、記憶にない状態での成長。
 自分の努力によるものではないという正体不明の上達に不安はあるだろうが、しかしそれは何の文句もないものだ。
 苦手だった魔力の放出という技術が、一気に成長したからだ。

「じゃあ、操ってもらえば私も魔力コントロールが上手くなるって事?」

「まぁ、多分そうだな」

 地道な練習なしでの魔力コントロールの上昇なんて、嬉しいことこの上ない。
 そんなことができるなら、自分もやってもらいたいと思ったのか、綾愛は期待したような目で話しかけてくる。
 サンプルが少ないので絶対とは言い難いが、確率的には今の所100%のため、確かに綾愛を操れば魔力コントロールが上昇するだろう。

「言っとくけど、俺並になれるわけではないぞ。了やピモを見る限りワンランク上がるってくらいだ」

「そこまで期待していないけど……それでもいい!」

 綾愛の魔力コントロールの上昇がどこまで期待しているのか分からないが、了やピモを見る限りだとそれくらいだと伸は判断した。
 操作されただけで伸並になれるとは思っていなかったが、少しでも上達できるならありがたい。
 そのため、綾愛は目を家が痩せて伸を見つめた。

「……さすがに柊殿の許可なくお前ら操ろうなんて思わないけどな」

 綾愛だけでなく、奈津希も期待したような目をしている。
 自分も操ってくれと言わんばかりの視線だ。
 しかし、了の時は緊急事態という意味があったが、そんな状況でもない限りわざわざ人を操るようなことをしようと思わない。
 そんなことをせずに自分で動いた方が早いからだ。
 しかも、綾愛たちは柊家の人間。
 綾愛を溺愛しているという俊夫の許可なく綾愛を操作して、もしも何かあった時に責任を取らされてはたまったもんじゃない。
 そうならないように、伸は先んじて綾愛たちの希望を阻止した。

「……じゃあ、お父さんの許可を得よう」

「うん!」

 伸にはやんわり断られたのに、2人は諦めていない。
 断るために出した提案だというのに、真に受けてしまったようだ。

「……まぁ、いいか」

 どうせ俊夫が許可する訳がない。
 そのため、伸は2人のことはそのまま放置することにしたのだった。

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