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2学年 前期
第113話
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「すいません!」
「んっ?」
月曜日。
いつものように学食に向かう伸に、話しかけてくる者がいた。
その呼びかけに応じ、伸は足を止めて振り返った。
「新田伸先輩ですよね?」
「……あぁ、そうだけど」
170cmほどの伸より少し小さい身長をした、綺麗な顔立ちをした少年が立っていた。
その少年の顔を見た伸は、思わず来たかと呟きそうになった。
「俺は鷹藤道康って言います」
「……知っているよ。有名人だからな」
話しかけて来たのは、あの鷹藤家の次男。
道康だった。
同じ1年生だけでなく、2、3年生の間でも有名になっていた人物だ。
知らない訳もなく、伸は当たり障りなく返答した。
それを受けた道康は、薄っすら笑みを浮かべる。
無名の問題児。
そんな伸にも、自分が知られていることが嬉しいようだ。
「柊先輩と交際しているって本当ですか?」
「……誰がそんな事を言っていたんだ?」
先週の週末に綾愛たちと話し、そういった噂がまだ残っているとは聞いていたが、まさか本当だとは思わず、伸は道康の質問に一瞬固まった。
その噂が誰から出たのか気になり問いかけると、道康は食堂内にいる3人組を無言で指さした。
「あいつら……」
道康が指さしたのは、いつも伸とつるんでいる了・石・吉の3人だった。
伸の視線に気が付いた3人は、何となくニヤニヤしながら成り行きを見ているようだ。
その態度は、若干不愉快だ。
伸は、後であの3人に飯を驕らせることに決めた。
「どっちなんですか!?」
伸が3人組を睨んでいると、待ちきれなくなったのか、道康が強めの口調で問いかけてきた。
「それは……」
「その通りですよ」
当然伸は綾愛との交際を否定しようとした。
しかし、それを言い終わる前に、横から代弁するような肯定の言葉が飛んできた。
「杉山……」
「ちょっ! 奈津希!」
言葉を飛ばして来たのは、綾愛の付き人兼友人である杉山奈津希だった。
側にいる綾愛も、突然のことで驚いている。
校内でも女子寮でも、綾愛といつも一緒にいるというのに、どうしてそのような出まかせを言うのか伸と綾愛は理解できない。
そのため、2人は奈津希に文句を言いたげに睨みつけた。
“チョイ、チョイ”
「「……?」」
2人の視線を受けた奈津希は、何か話があるらしく手招きする。
伸と綾愛は、訝し気な表情でその手招きに応じた。
「2人が付き合っていることにしておけば、彼からこれ以上干渉してくることはなくなると思いまして……」
「……そうかしら?」
「いや、これだと……」
2人を手招きした奈津希は、他の人間に聞かれないように小声で話す。
伸と綾愛が交際しているとなれば、名門家の立場から道康は横取りするような品のないことはできない。
そう考え、奈津希は伸に協力してもらおうと考えたのだ。
綾愛と道康が交際するとなったら、鷹藤家はそのまま両者の婚姻にまでこじつける可能性がある。
魔人討伐で人気が上がっているとは言っても、まだまだ鷹藤家の方が家格が上。
もしも婚姻となれば、柊家が鷹藤家に乗っ取られる可能性が高い。
そんな事は防がなければならない綾愛としては、絶対に道康との交際はあり得ない。
仮初の相手ならと、綾愛は奈津希の考えに乗ろうとした。
伸としても、鷹藤家の企みは阻止したいところだが、奈津希の考えには少々問題があると思えた。
「新田先輩! 柊先輩をかけて俺と勝負してください!」
「ほら……」
たしかに鷹藤家の人間が、交際している人間から横取りするような世間的に品のないとされることはできない。
しかし、正々堂々と勝負してのこととなると話は別だ。
道康が考えていた通りのことをして来たため、伸はげんなりしたような表情をするしかなかった。
「冗談だろ? 名門の鷹藤家の人間と戦って、一般人の俺が勝てる訳ないだろ?」
「柊先輩が一般人に惚れるとは思えません!」
無名の問題児を相手に、鷹藤家の人間が決闘を申し込むなんて、弱い者いじめになりかねない。
そのことを暗に伝えるが、道康は引く気はないようだ。
「誰が惚れ……」
「駄目よ。余計なことを言うと、話がこじれるわ」
「でも……」
他の生徒も聞き耳を立てている状況で、自分が伸に惚れていると言われるのは心外だ。
綾愛は顔を赤くして道康の言葉を否定しようとする。
それを言い終わる前に奈津希が綾愛の口を塞ぎ、小声で忠告をした。
分からなくもないが、納得できないため綾愛は奈津希に文句を言おうとする。
「綾愛ちゃんも彼がいつでも実力を隠しているのは良くないと思っているでしょ?」
「……、それはそうだけど……」
伸が実力を隠しているのは、柊家の者にしか伝えられていない。
そして、その理由を知っているのは、当主である俊夫のみで、綾愛と奈津希はその理由を知らない。
どういう理由かは分からないが、いつまでも隠しておけるようなことではない。
それならば、いっそのことバラして、柊家が保護すればいいだけのことだ。
綾愛は以前からそう考えており、奈津希にも話していた。
奈津希が伸を綾愛の交際相手と欺いたのは、実はこうなることも考えての発言だった。
たしかに伸の実力を世間に知らしめることができればと考えていたが、それよりも自分が惚れていると皆に勘違いされるのが困る。
綾愛としては、もっと違う形での方法にしてほしかった。
『ごめんね。綾愛ちゃん……』
伸の実力の暴露。
その狙いからこのような形になったと綾愛に思わせたが、実は奈津希には綾愛には隠している考えがあった。
実は、奈津希は柊家当主夫人の静奈からある命を受けていた。
それは、綾愛を伸に近付けろと言うものだ。
柊家としては、若くしてとんでもない実力を有する伸のことを手放したくない。
伸を柊家に取り込むには、婿にするのが一番。
そのために出された命だ。
奈津希も、伸と綾愛がくっ付けば、柊家は鷹藤家以上の力を得られる。
将来安泰だ。
友人なのに騙すようなことをしているのが分かっているため、奈津希は心の中で綾愛に謝罪していた。
「もちろん逃げないですよね?」
「……まあいいか。受けて立つよ」
伸が嫌そうな顔をしているのを見て、道康がよくあるような挑発をしてくる。
そんな安い挑発に乗るつもりはないため、伸は決闘の申し込みを断ろうとしたが、よく考えたら断る理由が思いつかない。
柊家と鷹藤家がくっ付くのを阻止するためには、決闘で道康を倒してしまうのが一番手っ取り早い気がして来た。
なので、伸は嫌々ながらも、道康からの決闘の申し出を受け入れることにした。
「んっ?」
月曜日。
いつものように学食に向かう伸に、話しかけてくる者がいた。
その呼びかけに応じ、伸は足を止めて振り返った。
「新田伸先輩ですよね?」
「……あぁ、そうだけど」
170cmほどの伸より少し小さい身長をした、綺麗な顔立ちをした少年が立っていた。
その少年の顔を見た伸は、思わず来たかと呟きそうになった。
「俺は鷹藤道康って言います」
「……知っているよ。有名人だからな」
話しかけて来たのは、あの鷹藤家の次男。
道康だった。
同じ1年生だけでなく、2、3年生の間でも有名になっていた人物だ。
知らない訳もなく、伸は当たり障りなく返答した。
それを受けた道康は、薄っすら笑みを浮かべる。
無名の問題児。
そんな伸にも、自分が知られていることが嬉しいようだ。
「柊先輩と交際しているって本当ですか?」
「……誰がそんな事を言っていたんだ?」
先週の週末に綾愛たちと話し、そういった噂がまだ残っているとは聞いていたが、まさか本当だとは思わず、伸は道康の質問に一瞬固まった。
その噂が誰から出たのか気になり問いかけると、道康は食堂内にいる3人組を無言で指さした。
「あいつら……」
道康が指さしたのは、いつも伸とつるんでいる了・石・吉の3人だった。
伸の視線に気が付いた3人は、何となくニヤニヤしながら成り行きを見ているようだ。
その態度は、若干不愉快だ。
伸は、後であの3人に飯を驕らせることに決めた。
「どっちなんですか!?」
伸が3人組を睨んでいると、待ちきれなくなったのか、道康が強めの口調で問いかけてきた。
「それは……」
「その通りですよ」
当然伸は綾愛との交際を否定しようとした。
しかし、それを言い終わる前に、横から代弁するような肯定の言葉が飛んできた。
「杉山……」
「ちょっ! 奈津希!」
言葉を飛ばして来たのは、綾愛の付き人兼友人である杉山奈津希だった。
側にいる綾愛も、突然のことで驚いている。
校内でも女子寮でも、綾愛といつも一緒にいるというのに、どうしてそのような出まかせを言うのか伸と綾愛は理解できない。
そのため、2人は奈津希に文句を言いたげに睨みつけた。
“チョイ、チョイ”
「「……?」」
2人の視線を受けた奈津希は、何か話があるらしく手招きする。
伸と綾愛は、訝し気な表情でその手招きに応じた。
「2人が付き合っていることにしておけば、彼からこれ以上干渉してくることはなくなると思いまして……」
「……そうかしら?」
「いや、これだと……」
2人を手招きした奈津希は、他の人間に聞かれないように小声で話す。
伸と綾愛が交際しているとなれば、名門家の立場から道康は横取りするような品のないことはできない。
そう考え、奈津希は伸に協力してもらおうと考えたのだ。
綾愛と道康が交際するとなったら、鷹藤家はそのまま両者の婚姻にまでこじつける可能性がある。
魔人討伐で人気が上がっているとは言っても、まだまだ鷹藤家の方が家格が上。
もしも婚姻となれば、柊家が鷹藤家に乗っ取られる可能性が高い。
そんな事は防がなければならない綾愛としては、絶対に道康との交際はあり得ない。
仮初の相手ならと、綾愛は奈津希の考えに乗ろうとした。
伸としても、鷹藤家の企みは阻止したいところだが、奈津希の考えには少々問題があると思えた。
「新田先輩! 柊先輩をかけて俺と勝負してください!」
「ほら……」
たしかに鷹藤家の人間が、交際している人間から横取りするような世間的に品のないとされることはできない。
しかし、正々堂々と勝負してのこととなると話は別だ。
道康が考えていた通りのことをして来たため、伸はげんなりしたような表情をするしかなかった。
「冗談だろ? 名門の鷹藤家の人間と戦って、一般人の俺が勝てる訳ないだろ?」
「柊先輩が一般人に惚れるとは思えません!」
無名の問題児を相手に、鷹藤家の人間が決闘を申し込むなんて、弱い者いじめになりかねない。
そのことを暗に伝えるが、道康は引く気はないようだ。
「誰が惚れ……」
「駄目よ。余計なことを言うと、話がこじれるわ」
「でも……」
他の生徒も聞き耳を立てている状況で、自分が伸に惚れていると言われるのは心外だ。
綾愛は顔を赤くして道康の言葉を否定しようとする。
それを言い終わる前に奈津希が綾愛の口を塞ぎ、小声で忠告をした。
分からなくもないが、納得できないため綾愛は奈津希に文句を言おうとする。
「綾愛ちゃんも彼がいつでも実力を隠しているのは良くないと思っているでしょ?」
「……、それはそうだけど……」
伸が実力を隠しているのは、柊家の者にしか伝えられていない。
そして、その理由を知っているのは、当主である俊夫のみで、綾愛と奈津希はその理由を知らない。
どういう理由かは分からないが、いつまでも隠しておけるようなことではない。
それならば、いっそのことバラして、柊家が保護すればいいだけのことだ。
綾愛は以前からそう考えており、奈津希にも話していた。
奈津希が伸を綾愛の交際相手と欺いたのは、実はこうなることも考えての発言だった。
たしかに伸の実力を世間に知らしめることができればと考えていたが、それよりも自分が惚れていると皆に勘違いされるのが困る。
綾愛としては、もっと違う形での方法にしてほしかった。
『ごめんね。綾愛ちゃん……』
伸の実力の暴露。
その狙いからこのような形になったと綾愛に思わせたが、実は奈津希には綾愛には隠している考えがあった。
実は、奈津希は柊家当主夫人の静奈からある命を受けていた。
それは、綾愛を伸に近付けろと言うものだ。
柊家としては、若くしてとんでもない実力を有する伸のことを手放したくない。
伸を柊家に取り込むには、婿にするのが一番。
そのために出された命だ。
奈津希も、伸と綾愛がくっ付けば、柊家は鷹藤家以上の力を得られる。
将来安泰だ。
友人なのに騙すようなことをしているのが分かっているため、奈津希は心の中で綾愛に謝罪していた。
「もちろん逃げないですよね?」
「……まあいいか。受けて立つよ」
伸が嫌そうな顔をしているのを見て、道康がよくあるような挑発をしてくる。
そんな安い挑発に乗るつもりはないため、伸は決闘の申し込みを断ろうとしたが、よく考えたら断る理由が思いつかない。
柊家と鷹藤家がくっ付くのを阻止するためには、決闘で道康を倒してしまうのが一番手っ取り早い気がして来た。
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