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2学年 後期
第139話
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「それまで!」
審判が手を上げ、大きな声を上げる。
「勝者、柊!」
「「「「「ワーーー!!」」」」」
上げた手を綾愛に向けて、会場に知らせるように名前を呼ぶ。
それを受け、会場を満員にしている観客たちの歓声が鳴り響いた。
名門柊家の息女とはいえ、1年生でありながら去年優勝した綾愛。
大会が始まる前から、多くの者が優勝候補と名を上げていた。
1回戦を難なく勝利を収めたその戦いぶりから、評価は本物だと確信したのだろう。
「お疲れ……」
「ありがと」
勝者の名乗りを受けた綾愛は四方の観客へ向けて礼をして、セコンドの伸の所へと歩み寄る。
予想通りの勝利に、伸は当然と言った表情で綾愛にタオルを渡す。
たいして汗を掻いてはいないが、タオルを受け取った綾愛は額に掻いた汗を拭う。
「ホテルに戻るか? それとも……」
「奈津希の試合を見ていく!」
1回戦を勝利したことで、明日も試合がある。
速めにホテルに帰って心身を休めるのも、代表選手としての務めだ。
しかし、他の選手の試合を見るのも、対策を立てるために必要なこと。
どちらを選ぶか綾愛に決めさせようと問いかけようとしたが、伸の言葉が終わる前に答えが返ってきた。
「そうか。ほいっ」
「ありがと。着替えてくる」
「あぁ」
答えを聞いた伸は、控室に入ると着替えの入っているバッグを綾愛に渡す。
バッグを受け取ると、綾愛は控室の隣にある女子更衣室へと入って行った。
「……奈津希勝てるかな?」
「たぶん大丈夫だろ」
奈津希の試合を見るために、伸は着替え終わった綾愛と共に、隣の会場の観客席へと向かった。
選手とセコンドはパスがあるのですんなり入れたが、こちらの会場も結構な数の観客で席が埋まっている。
ようやく見つけた空席に座ると、綾愛は隣に座る伸へ心配そうに問いかけて来た。
伸の操作によって成長著しい了。
しかし、奈津希はギリギリとは言え、そんな了に勝利した実力者だ。
相手は三矢野学園の2年生男子。
あまり聞いたことない名字なので、名門家ということではないのだろう。
無名の同学年が相手なら、奈津希が負ける可能性は低いはず。
相手選手のウォーミングアップの素振りを見た伸は、綾愛を安心させるために奈津希の勝利を予想した。
「始め!!」
心配する綾愛を余所に、審判による開始の合図がおこなわれる。
「ハッ!」
「くっ!」
開始と共に、両者距離を詰めての武器による打ち合いが始まる。
最初は互角に見えた打ち合いだが、段々と差が生じて来た。
木製の薙刀を使用する奈津希と、木刀で戦う三矢野の選手。
有利なのは奈津希。
半歩から一歩深く踏み込まないとならないと奈津希に攻撃を与えられないため、相手選手の方が手数が少ない。
武器の長さによる間合いの差が、そのまま有利・不利に出ているようだ。
「このっ!!」
「っ!!」
このまま奈津希が押し切るかと思っていたが、相手も代表に選ばれるだけあって状況判断ができている。
一旦距離を取って、魔力弾による攻撃をおこない始めた。
威力も連射性もある。
だが、
「ハッ!」
「っ!? マジかよ……」
奈津希は躱すことなく、飛んできた魔力弾を薙刀で全て弾き飛ばす。
全弾弾かれるとは思っていなかったのか、相手選手は驚愕の表情を浮かべた。
「シッ!!」
「しまっ……!!」
相手選手が驚いた僅かな隙を逃しはしない。
奈津希は一気に距離を詰めて、相手に向けて突きを放った。
「それまで!! 勝者杉山!!」
「「「「「ワーーー!!」」」」」
「やった!!」
奈津希の突きが、相手選手の喉に当たる寸前で止められる。
それを見て、審判が奈津希の勝利を告げた。
勝者が決まり、観客たちは大きな歓声と共に拍手を送った。
隣にいる綾愛も勝利を喜び、思わず立ち上がって奈津希に向けて拍手を送った。
「……じゃあホテルに戻るか?」
「うん!」
観客の拍手を受けながら奈津希が退場するのを見届け、伸はこの場を後にする事を提案する。
それを受けて、自分と奈津希が勝利した喜びにより、綾愛はかなり機嫌が良さそうに頷いた。
「おぉ、おかえり」
「あぁ、ただいま」
伸がホテルの部屋に戻ると、先に帰っていた了と挨拶を交わす。
「柊も杉山も勝ったな」
「あぁ、了もおめでとう」
「サンキュ!」
会話からも分かるように、別会場の了は綾愛より先に勝利を収めていた。
了は、綾愛と奈津希の試合をホテルのモニターで観戦していたらしい。
八郷学園2年の選手全員が1回戦を突破したことに、喜んでいるようだ。
別会場で言えなかったため、伸が勝利を祝う言葉をかけると、了は嬉しそうに返事をした。
「3年は高橋先輩だけ、2年は全員が勝利で好スタート、1年は鷹藤か……」
この大会に出場しているのは、全国の魔術学園に通う才能あふれる選手ばかり。
そのため、八郷学園の全員が1回戦を突破できるなんてなかなかあり得ない。
3年生は去年も出場した了の剣道部の先輩の高橋が、2年生は全員が、1年生は道康が勝利することができた。
八郷学園の出場選手8人中3人が敗退したということだ。
半分以下になっていないということは、順当と言ったところだろう。
「それにしても、鷹藤兄貴はすごかったな……」
「あぁ……」
弟のことが話しに出てきたからか、官林学園の選手として出場している兄である鷹藤家の文康の試合の話へと移った。
「圧倒的だった……」
「そうだな……」
文康は1回戦を難なく突破した。
伸も了もモニター越しに見ていたが、その試合内容が問題だったため、思いだした2人は表情を暗くする。
「相手選手、両腕やられたんじゃないか?」
「あぁ、最後の一撃もわざと止めなかった気が……」
文康の試合は、開始してすぐに勝敗は決していたように思える。
しかし、相手選手が粘ることにスイッチが入ったのか、文康の攻撃が容赦なくなっていった。
文康の攻撃が当たっても、浅いために審判も止めづらそうにしていた。
というより、止められないように文康がわざと浅く当てていたようにも伸には見えた。
特に両腕に何度も攻撃を受けていたため、折れている可能性が高い。
そして、武器を持って構えをとっているだけでも必死な相手に対し、文康は容赦なく木刀を振り下ろした。
その攻撃は寸止めさられる様子がなかったことから、審判が止めに入る。
審判の試合を止める言葉が文康にかけられたが、それでも文康の攻撃が泊まることはなく、相手選手の肩を強かに打ち据えた。
両腕もだが、あの攻撃で肩の骨が折れたことは確実だ。
試合後に受けたインタビューで、文康は「熱くなって止めることが間に合わなかった」と言っていたが、伸にはそれが信用できなかった。
知らない者からすれば仕方がないで済まされるかもしれないが、伸は夏休み中の事件で文康の内面を知っているため信用できないのかもしれない。
「了も気を付けろよ……」
「あぁ……」
綾愛と奈津希はトーナメントの山が違うので、もしも文康と戦うなら決勝になる。
了の場合は、次の試合を勝てば文康と戦うことになる。
もしかしたら、文康が今日のような戦い方をしてくる可能性があるため。伸は了に注意を促す。
自分も同じように甚振られる想像をしてしまったのか、了の表情は少々暗い。
「んっ? 何だ? 暗い顔してんな……」
「……、お前は呑気だな……」
「ハハッ……」
2人が話している所に、同部屋の吉井が室内に入ってきた。
そして、了の表情を見て軽い口調でとかけてくる。
その口調に、了は気が抜けた表情になり、軽くツッコミを入れる。
伸も同じ思いだったため、了のツッコミに思わず笑ってしまった。
審判が手を上げ、大きな声を上げる。
「勝者、柊!」
「「「「「ワーーー!!」」」」」
上げた手を綾愛に向けて、会場に知らせるように名前を呼ぶ。
それを受け、会場を満員にしている観客たちの歓声が鳴り響いた。
名門柊家の息女とはいえ、1年生でありながら去年優勝した綾愛。
大会が始まる前から、多くの者が優勝候補と名を上げていた。
1回戦を難なく勝利を収めたその戦いぶりから、評価は本物だと確信したのだろう。
「お疲れ……」
「ありがと」
勝者の名乗りを受けた綾愛は四方の観客へ向けて礼をして、セコンドの伸の所へと歩み寄る。
予想通りの勝利に、伸は当然と言った表情で綾愛にタオルを渡す。
たいして汗を掻いてはいないが、タオルを受け取った綾愛は額に掻いた汗を拭う。
「ホテルに戻るか? それとも……」
「奈津希の試合を見ていく!」
1回戦を勝利したことで、明日も試合がある。
速めにホテルに帰って心身を休めるのも、代表選手としての務めだ。
しかし、他の選手の試合を見るのも、対策を立てるために必要なこと。
どちらを選ぶか綾愛に決めさせようと問いかけようとしたが、伸の言葉が終わる前に答えが返ってきた。
「そうか。ほいっ」
「ありがと。着替えてくる」
「あぁ」
答えを聞いた伸は、控室に入ると着替えの入っているバッグを綾愛に渡す。
バッグを受け取ると、綾愛は控室の隣にある女子更衣室へと入って行った。
「……奈津希勝てるかな?」
「たぶん大丈夫だろ」
奈津希の試合を見るために、伸は着替え終わった綾愛と共に、隣の会場の観客席へと向かった。
選手とセコンドはパスがあるのですんなり入れたが、こちらの会場も結構な数の観客で席が埋まっている。
ようやく見つけた空席に座ると、綾愛は隣に座る伸へ心配そうに問いかけて来た。
伸の操作によって成長著しい了。
しかし、奈津希はギリギリとは言え、そんな了に勝利した実力者だ。
相手は三矢野学園の2年生男子。
あまり聞いたことない名字なので、名門家ということではないのだろう。
無名の同学年が相手なら、奈津希が負ける可能性は低いはず。
相手選手のウォーミングアップの素振りを見た伸は、綾愛を安心させるために奈津希の勝利を予想した。
「始め!!」
心配する綾愛を余所に、審判による開始の合図がおこなわれる。
「ハッ!」
「くっ!」
開始と共に、両者距離を詰めての武器による打ち合いが始まる。
最初は互角に見えた打ち合いだが、段々と差が生じて来た。
木製の薙刀を使用する奈津希と、木刀で戦う三矢野の選手。
有利なのは奈津希。
半歩から一歩深く踏み込まないとならないと奈津希に攻撃を与えられないため、相手選手の方が手数が少ない。
武器の長さによる間合いの差が、そのまま有利・不利に出ているようだ。
「このっ!!」
「っ!!」
このまま奈津希が押し切るかと思っていたが、相手も代表に選ばれるだけあって状況判断ができている。
一旦距離を取って、魔力弾による攻撃をおこない始めた。
威力も連射性もある。
だが、
「ハッ!」
「っ!? マジかよ……」
奈津希は躱すことなく、飛んできた魔力弾を薙刀で全て弾き飛ばす。
全弾弾かれるとは思っていなかったのか、相手選手は驚愕の表情を浮かべた。
「シッ!!」
「しまっ……!!」
相手選手が驚いた僅かな隙を逃しはしない。
奈津希は一気に距離を詰めて、相手に向けて突きを放った。
「それまで!! 勝者杉山!!」
「「「「「ワーーー!!」」」」」
「やった!!」
奈津希の突きが、相手選手の喉に当たる寸前で止められる。
それを見て、審判が奈津希の勝利を告げた。
勝者が決まり、観客たちは大きな歓声と共に拍手を送った。
隣にいる綾愛も勝利を喜び、思わず立ち上がって奈津希に向けて拍手を送った。
「……じゃあホテルに戻るか?」
「うん!」
観客の拍手を受けながら奈津希が退場するのを見届け、伸はこの場を後にする事を提案する。
それを受けて、自分と奈津希が勝利した喜びにより、綾愛はかなり機嫌が良さそうに頷いた。
「おぉ、おかえり」
「あぁ、ただいま」
伸がホテルの部屋に戻ると、先に帰っていた了と挨拶を交わす。
「柊も杉山も勝ったな」
「あぁ、了もおめでとう」
「サンキュ!」
会話からも分かるように、別会場の了は綾愛より先に勝利を収めていた。
了は、綾愛と奈津希の試合をホテルのモニターで観戦していたらしい。
八郷学園2年の選手全員が1回戦を突破したことに、喜んでいるようだ。
別会場で言えなかったため、伸が勝利を祝う言葉をかけると、了は嬉しそうに返事をした。
「3年は高橋先輩だけ、2年は全員が勝利で好スタート、1年は鷹藤か……」
この大会に出場しているのは、全国の魔術学園に通う才能あふれる選手ばかり。
そのため、八郷学園の全員が1回戦を突破できるなんてなかなかあり得ない。
3年生は去年も出場した了の剣道部の先輩の高橋が、2年生は全員が、1年生は道康が勝利することができた。
八郷学園の出場選手8人中3人が敗退したということだ。
半分以下になっていないということは、順当と言ったところだろう。
「それにしても、鷹藤兄貴はすごかったな……」
「あぁ……」
弟のことが話しに出てきたからか、官林学園の選手として出場している兄である鷹藤家の文康の試合の話へと移った。
「圧倒的だった……」
「そうだな……」
文康は1回戦を難なく突破した。
伸も了もモニター越しに見ていたが、その試合内容が問題だったため、思いだした2人は表情を暗くする。
「相手選手、両腕やられたんじゃないか?」
「あぁ、最後の一撃もわざと止めなかった気が……」
文康の試合は、開始してすぐに勝敗は決していたように思える。
しかし、相手選手が粘ることにスイッチが入ったのか、文康の攻撃が容赦なくなっていった。
文康の攻撃が当たっても、浅いために審判も止めづらそうにしていた。
というより、止められないように文康がわざと浅く当てていたようにも伸には見えた。
特に両腕に何度も攻撃を受けていたため、折れている可能性が高い。
そして、武器を持って構えをとっているだけでも必死な相手に対し、文康は容赦なく木刀を振り下ろした。
その攻撃は寸止めさられる様子がなかったことから、審判が止めに入る。
審判の試合を止める言葉が文康にかけられたが、それでも文康の攻撃が泊まることはなく、相手選手の肩を強かに打ち据えた。
両腕もだが、あの攻撃で肩の骨が折れたことは確実だ。
試合後に受けたインタビューで、文康は「熱くなって止めることが間に合わなかった」と言っていたが、伸にはそれが信用できなかった。
知らない者からすれば仕方がないで済まされるかもしれないが、伸は夏休み中の事件で文康の内面を知っているため信用できないのかもしれない。
「了も気を付けろよ……」
「あぁ……」
綾愛と奈津希はトーナメントの山が違うので、もしも文康と戦うなら決勝になる。
了の場合は、次の試合を勝てば文康と戦うことになる。
もしかしたら、文康が今日のような戦い方をしてくる可能性があるため。伸は了に注意を促す。
自分も同じように甚振られる想像をしてしまったのか、了の表情は少々暗い。
「んっ? 何だ? 暗い顔してんな……」
「……、お前は呑気だな……」
「ハハッ……」
2人が話している所に、同部屋の吉井が室内に入ってきた。
そして、了の表情を見て軽い口調でとかけてくる。
その口調に、了は気が抜けた表情になり、軽くツッコミを入れる。
伸も同じ思いだったため、了のツッコミに思わず笑ってしまった。
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