主人公は高みの見物していたい

ポリ 外丸

文字の大きさ
237 / 281
3学年 後期

第236話

しおりを挟む
「お前……」

「どうして……」

 試合の最中に現れた人間に、伸と綾愛は戸惑いの声を上げる。

「……おいっ!」

「あいつって……」

「何で……」

 会場中もざわついている。
 その理由は、決勝戦に乱入者が現れたことによるものだけではなく、その人間がこの場にいることが信じられないためだ。

「……生きていたのか? 鷹藤文康……」

 伸が話しかける。
 現れた文康に対して。
 文康と言えば、夏休み中に鷹藤家に出現したオレガリオという魔人によって誘拐され、生死不明の行方不明になっていた。
 警察や鷹藤家の捜索も実らず、半ば絶望的状態となっていた文康が、元気な状態でいきなり現れたのだから、会場にいる誰もが驚くのも無理はない。

「んっ? 誰だお前?」

「…………」

 問いかけられた文康は、伸の顔を見て首を傾げて問い返してくる。
 言葉だけだ聞くとイラっと来るが、よく考えたら文康と話したことなどほとんどないため、自分を知らないのも無理はないと無言で納得していた。

「そうか! お前が柊家の婿だとかいう奴か?」

「……そうだ」

 鷹藤家からの干渉を防ぐため、伸は綾愛の婚約者と言うことになっている。
 そのため、文康の言葉に頷きで返す。

「お前に用はない。引っ込んでろ。俺が用があるのはお前だ! 柊綾愛!」

「…………私?」

 伸に対して、元々眼中にないような物言いをする文康。
 その次に発せられた言葉からも分かるように、狙いは綾愛の方のようだ。 

「柊家のくせに調子に乗りやがって! この国の魔闘師は全員鷹藤家の下に存在しているにいすぎない! 他の家が上に来るなどあり得ないんだ!」

 去年犯罪を犯して官林学園を退学になり、誘拐されるまで自宅謹慎をおこなっているという話を聞いていたが、傲慢・我儘な性格は変わっていないようだ。
 魔闘師の頂点は鷹藤家。
 それ以外は、鷹藤家を引き立てるために存在しているに過ぎないという傲慢な考えと、人気を柊家に取られたことが気にくわないという我儘。
 聞くに値しないお子様な考えだ。

「それに貴様! 以前俺と婚約することなんて死んでも嫌だとか抜かしやがったな!? それで選んだのが聞いたこともないような家の人間だなんてふざけんじゃねえ!!」

 怒りをぶちまけているうちに思い出したのか、文康は去年の夏の話を持ち出してきた。
 綾愛が、鷹藤家から文康・道康のどちらかと婚約の打診を受けたときの話だ。
 元々興味がなかった相手だった上に、魔物をけしかけようとしていたという話を知ってしまったため、文康・道康の兄弟は嫌悪の対象でしかなくなっていた。
 そのため、綾愛は完全に拒否する言葉として、「死んでも嫌だ」と言った時の話だ。

「……それで? 結局何が言いたいの?」

「簡単な話だ。望み通り……」

 一応聞いてはいたが、真剣に取り合う必要のないことばかりだ。
 なので、綾愛は文康がここに来た目的を尋ねた。

「殺してやる!!」

 綾愛の問いに対し、文康は笑みと共に腰に差していた鞘から刀を抜く。
 そして、その刀を綾愛に向けて、一気に殺気を膨れ上がらせた。

「そこまでだ!!」

「動くな!!」

 行方不明だったとかは関係なく、乱入者であることは変わりない。
 当然、それを排除するため、大会運営の委員会が雇ったであろう警備の魔闘師が文康のことを取り囲み、取り押さえに向かって行った。

「やめろ!!」

 2年連続の魔人の出現。
 そのこともあってか、警備の魔闘師たちは相当な実力の有している者が集められたのか、魔人の実力次第では勝つことも不可能ではないだろう。
 彼らなら、任せておけば大丈夫と思う者がほとんどの中、伸は彼らに文康への接近をやめるように大声を上げた。

“ドンッ!!”

「「「「「っっっ!?」」」」

 伸の静止の言葉を聞き入れることなく、武器を手に一斉に襲い掛かった警備の魔闘師たち。
 そんな彼らが、文康によって吹き飛ばされる。
 刀で攻撃したのではない。
 ただ一瞬だけ体内の魔力を膨れ上げただけだ。

「な、なんだ?」

「この魔力量は……」

 膨れ上げた魔力をそのまま身に纏い、身体強化する文康。
 その魔力量に、警備の魔闘師たちは驚愕の表情で呟く。
 以前の文康からは想像できない程の魔力量。
 その魔力量で身体強化しているとなると、文康は相当な強さであるということだ。
 プロの、しかも高ランクの魔闘師である自分たちよりも上の実力を持つ高校生が存在しているなんて信じられない。
 そのため、彼らは文康に襲い掛かるのが躊躇われた。

「退がれ!! あんたらじゃそいつを捕まえることなんて無理だ!!」

「「「「「なにっ!?」」」」」

 伸の言葉に怒りを滲ませる警備の魔闘師たち。
 決勝まで来た時点で、相当な実力の持ち主なのは分かっているが、自分たちなら何とか勝てると思っていたからだろう。
 彼らは伸の言葉を聞き流そうとした。
 しかし、次の言葉によって、その考えを改めることになる。

「そいつはだ!!」

「「「「「っっっ!?」」」」」

 見た目は完全に文康だが、纏っている魔力は禍々しく、とても人間のものとは思えない。
 それもそのはず、そこにいる文康は魔人そのものだからだ。
 伸の発言を受けて、警備の魔闘師たちだけでなく、会場中の観客たちも凍り付いたのだった。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

プライベート・スペクタル

点一
ファンタジー
【星】(スターズ)。それは山河を変えるほどの膂力、千里を駆ける脚力、そして異形の術や能力を有する超人・怪人達。 この物語はそんな連中のひどく…ひどく個人的な物語群。 その中の一部、『龍王』と呼ばれた一人の男に焦点を当てたお話。 (※基本 隔週土曜日に更新予定)

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

異世界で目覚めたら、もふもふ騎士団に保護されてました ~ちびっ子だけど、獣人たちの平穏のためお世話係がんばります!!~

ありぽん
ファンタジー
神のミスで命を落とした芽依は、お詫びとして大好きな異世界へ転生させてもらえることに。だが転生の際、またしても神のミスで、森の奥地に幼女の姿で送られてしまい。転生の反動で眠っていた瞳は、気づかないうちに魔獣たちに囲まれてしまう。 しかしそんな危機的状況の中、森を巡回していた、獣人だけで構成された獣騎士団が駆け付けてくれ、芽依はどうにかこの窮地を切り抜けることができたのだった。 やがて目を覚ました芽依は、初めは混乱したものの、すぐに現状を受け入れ。またその後、同じ種族の人間側で保護する案も出たが、ある事情により、芽依はそのまま獣騎士団の宿舎で暮らすことに。 そこで芽依は、助けてくれた獣騎士たちに恩を返すため、そして日々厳しい任務に向かう獣人たちが少しでも平穏に過ごせるようにと、お世話係を買って出る。 そんな芽依に、当初は不安だった獣人たちだったが、元気で明るい瞳の存在は、次第に獣人たちの力となっていくのだった。 これはちびっ子転生者の芽依が、獣人や魔獣たちのために奮闘し、癒しとなっていく。そんな、ほっこりまったり? な物語。

詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~

Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」 病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。 気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた! これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。 だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。 皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。 その結果、 うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。 慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。 「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。 僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに! 行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。 そんな僕が、ついに魔法学園へ入学! 当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート! しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。 魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。 この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――! 勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる! 腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

処理中です...