主人公は高みの見物していたい

ポリ 外丸

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3学年 後期

第235話

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【これより、八郷学園柊選手対、八郷学園新田選手の決勝戦をおこないます!】

「「「「「ワーーーッ!!」」」」」

 会場に流れるアナウンスにより、満員の観客たちから大きな歓声が上がる。
 毎年決勝は熱気に包まれるのだが、気のせいかいつも以上に聞こえるのはなぜだろうか。

「どっちが勝つと思う?」

 いつまでもざわつく観客たち。
 毎年人気の大会だけあり、多くのにわか解説者が大量に出現する。
 そういった者たちが会場にもまばらに存在しており、話されている内容はこれと同じものだ。

「そりゃ、柊だろう? 2連覇中だからな」

 俄解説者の多くは、これと同じ意見だろう。
 名門柊家の綾愛は、これまで2連覇をしている上に、高校生3年と言えば一番脂の乗った状態と言ってもいい。 
 そんな綾愛が負けるなんて思えないのは、妥当な考えと言っていいだろう。

「でも、今年初めての出場なのに、婚約者の方もここまで上がってきてるしな……」

 8:2の割合で、伸のことが気になっている正当な解説者も存在しているようだ。
 しかしながら、あくまでも僅かな可能性を考慮したうえでの発言であって、本気で伸が勝つとは思っていないようだ。

「名前で呼べよ……」

 聞きたくなくても、伸には会場の声が聞こえてくる。
 俄評論家たちの多くが伸の名前を言うことはない。
 あくまでも柊家の婚約者という印象しかないようだ。
 そのため、伸は誰にも気づかれないように文句を言うことしかできなかった。

「全力で挑むわ……」

「……そうか」

 はっきり言って、始める前から勝敗は決している。
 柊家当主であり、父の俊夫以上の実力を有している伸。
 そんな伸に、勝てると言えるだけの実力がないことは自分でも分かっている。
 しかし、勝てないと分かっているからと言って負けを認めるわけにはいかないため、綾愛は全力を尽くすことを伸に告げて木刀を構える。
 戦う前から自分が勝つとは分かっているが、綾愛もかなりの実力をつけてきている。
 そのため、伸は油断することなく対処することを心に決めて木刀を構えた。

「始め!!」

「ハッ!!」

「っ!?」

 審判の試合開始の合図を受け、綾愛が早々に動く。
 伸を中心に円を描くように、移動しながら魔力弾を放つ。

“シャッ!!”

「えっ?」

 迫りくる魔力弾を、伸は木刀を横一線に振って斬り飛ばした。
 かなり強めの威力で放ったというのにあっさりと防がれ、綾愛は戸惑いの声を上げる。

「魔術を躱したところを狙ってたのか?」

「そのはずだったんだけどね……」

 図星だったらしく、綾愛は伸の指摘に表情硬く返答した。

「シッ!!」

「っと!」

 離れての攻撃で隙を伺うのをやめたのか、今度は距離を詰めてきた綾愛。
 無駄な魔力消費を最小限にした身体強化だ。
 伸の人体操作を受けたことで、魔力操作能力が向上したためだろう。
 その身体強化によって高速移動した綾愛は、伸の脳天に木刀を振り下ろしてきた。
 そんな綾愛の攻撃を、伸はギリギリのところで回避する。

「ハッ!!」

「っ!!」

 攻撃を躱されることを予想していたのだろう。
 綾愛は左手で魔力弾を放つ。
 離れた場所からでは当たらなくても、至近距離なら分からない。
 そう考えての攻撃だろう。

「危なっ!」

 顔面目掛けて飛んできた至近距離からの魔力弾を、伸は上体を大きく反らすことで回避する。

「セイッ!」

 上体を反らしたことで、伸の視界から自分は消えている。
 そこを狙い、綾愛は更なる攻撃を放つ。
 狙いは足。
 当たれば、伸の動きを鈍らせることができるかもしれないと考えてのものだ。

“バッ!!”

「っ!!」

 足の脛部分を狙って放たれた綾愛の攻撃を、伸は上体を反らした勢いを利用してのバック転をおこなって回避した。

「これも躱すなんて……」

 トーナメントの位置から言って、自分が伸と戦うことになるのは決勝戦になる事は分かっていた。
 そのため、伸と戦うときのことを考えて、色々な連携を頭の中でシミュレーションしてきた。
 伸の実力を考えると、通用するかどうかの確率はかなり低いと思っていたが、本当に躱されると心理的に来るものがある。

「……面白い連続攻撃だ。近距離からの魔力弾は良い攻撃だったが、その前の攻撃が良くなかったな」

「前の攻撃……?」

 伸は先程の連携攻撃の評価をし始める。
 指導を受ける時と同じように、綾愛はその評価に耳を傾ける。

「パワーで言ったら男である俺の方が上。だからしっかりと両手で木刀を持って攻撃しないと、撃ち負ける可能性が高い。それなのに右手で持った木刀による攻撃なんて、何か企んでいると相手に気付かれるぞ」

 至近距離から魔力弾を放つために、左手に魔力を集めることに意識が向いてしまった。
 そのため、綾愛はその前の攻撃を片手でおこなうことになってしまった。
 伸はそこを指摘したのだ。

「今の柊ほどの魔力操作技術があるなら、ノーモーションからでもある程度の魔力弾が撃てたはずだ」

「なるほど……」

 伸の話を聞き、綾愛は納得の言葉を呟く。
 たしかに、魔力操作技術が向上した今なら、そこまで意識することなくても魔力弾を放つことはできると思えたからだ。

「さて、続きだ……」

「えぇ……」

 いつの間にか、いつものように指導する形になってしまっていた。
 そのことに気付いた伸が試合を再開することを告げ、綾愛も頷きで返した。
 そんな2人は、自然と笑みを浮かべていた。

「「っっっ!?」」

 試合を再開しようとした次の瞬間、伸と綾愛は何かに気付いたようにその場から飛び退く。

“ドンッ!!”

「「「「「っっっ!?」」」」」

 先程まで伸と綾愛がいたところに、火炎の球が上空から落ちてきた。
 伸と綾愛がやったことではないことは一目瞭然のため、観客たちは驚きと共に上空へ視線を向けた。

“スタッ!!”

「お楽しみのところ失礼……」

 どこか楽しそうな声色と共に、何者かが武舞台上に降り立った。

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