御伽ヒロイック学院 ーラノベ主人公科ー

もみじ

文字の大きさ
12 / 43
第一章 脱ホームレス、立ち直りへの道

ホームレスだって事が生徒にもうバレた!

しおりを挟む
 粛々しゅくしゅくと闇に支配された御伽公園。正義は息を切らして公園のベンチに崩れた。ここまで来ればもう一安心、都留岐を上手く巻けた。彼女には悪い事をしたがここでホームレスと知られる訳にはいかないのだ。初任給が入るまで後三週間、まとまった金さえ入ればアパートを借りられる。携帯電話も買えばもうこんな逃げるような生活送らなくて済む。人並みの生活を取り戻せる。
 木枯らしと共にちらほらと雪が舞い、正義は身を縮めて震えた。今年は随分冷える。初冬でこの寒さならば真冬ともなれば氷点下にもなるだろう。ホームレス達にとって凍死者の出る危険な季節である。そう考えるとその前にホームレスを脱出できる自分は幸運だった。やはり人は住むべくして住む生き物、野晒のざらしの生活など向いていない。
 正義は公園のトイレに隠してあった段ボールを引っ張り出すと階段の下へと運び、手馴てなれた手つきで段ボールハウスを組み立てるとそれをブルーシートで覆った。もうじきこの段ボールハウスともお別れと思うと今までのホームレス生活が走馬灯そうまとうのように蘇る。
 ホームレスになりたての頃は寒夜かんやのベンチで寝て危うく死にかけた。その後段ボールを手に入れるも幾度となく他のホームレスに盗まれ苦い思いをしたものだ。
 常人には信じられないだろうが段ボールと言うのはホームレスにとって喉から手が出るほど欲しい代物なのである。特に冬場は夜寝るために必要である。段ボールハウスは保温性に優れ、二重三重と重ねる事で真冬の寒さを大分しのげる。特に日本製は外国製よりも質が良く、ホームレスの間ではとても重宝ちょうほうされる。その中でもさらに貴重なのが強化段ボール。初めから二層三層構造になっている強化段ボールはたった一枚で通常の段ボール複数分に匹敵する。ホームレス界のヒノキと言って良い。正義が今使っているのがこれである。また、お湯の入ったペットボトルを中に置く事で内部の温度は格段に上がる。これもホームレスの知恵である。
 正義が懐かしくも苦い思い出にひたっているとそれを邪魔するように何者かがハウスの隣に座った。段ボール越しに人の声が聞こえる。暫く無視するも居なくなる気配は無い。酷く震えた声に正義はたまれなくなった。こんな寒い夜に何時まで外で話しているのか?雨宿りにしては長すぎる。堪らず外に顔を出すとそこには身を寄せ合う二人の娘。

「お前等こんな夜遅くそこで何してる?」
「おっちゃん邪魔して悪ぃ。でももうちっとここで雨宿りさせてくんねぇか?行くとろねぇんだ」

 生傷の痛ましい娘が答える。十代前半だろうか?見た目はまだ子供。隣ではもう一人が寒そうに震えている。

「お前等死ぬぞ?とっとと家に帰れ」
「それが色々あって追い出されちまったんだ。迷惑かけねぇからもう少しここに居させてくれよ」

 正義は自分がホームレスになりたての頃を思い出す。あの頃は何も知らず大分苦労した。おそらく彼女達もそうだ。服装は小奇麗だし、昨日今日家を出たに違いない。まだ若いのに不憫ふびんな娘達。その姿は昔の自分と重なる。

「とりあえず寝るな、寝たら死ぬぞ。今夜はコンビニで夜を明かして昼間寝ろ」
「それがそういう訳にもいかねぇんだよ。こいつ昼間学校行ってて今のうちに寝とかないと寝れねぇんだ」
「お前等学生か?」
「あたしはちげぇよ」
「仕方ねぇな、一人だけなら入れてやる」
「本当か?ありがとおっちゃん」

 嬉しげに感謝する娘。こんな満たされた気持ちになるのは久しぶりである。おそらくエンゲルスを倒して以来。忘れかけていた人助けの喜びが蘇る。

「なぁいくさ、良かったな。お前だけでも入れてもらえ」

 “いくさ?”正義はその名にびくりとした。愉悦が吹き飛ぶ。

「男と一緒に寝るなんてヤダよ」
「んな事言ってる場合か?お前マジで死ぬぞ」

 抱きかかえられた女の子と正義の目が合った。二人は見つめあったまま硬直する。
こんな偶然ありえない。この広い町でこんな夜遅くに知り合いと出くわすなんて天文学的な確立である。神の悪戯にしては非情過ぎる。正義の中で“人並みの生活”が音を立てて崩れる。

「せ、先生!?」

 いくさと呼ばれる娘が青くなった唇を震わせた。

「み、朏ぃぃぃぃ!?」

正義のファルセットが寒天かんてんに轟く。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

「魔物の討伐で拾われた少年――アイト・グレイモント」

(イェイソン・マヌエル・ジーン)
ファンタジー
魔物の討伐中に見つかった黄金の瞳の少年、アイト・グレイモント。 王宮で育てられながらも、本当の冒険を求める彼は7歳で旅に出る。 風の魔法を操り、師匠と幼なじみの少女リリアと共に世界を巡る中、古代の遺跡で隠された力に触れ——。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

アガルタ・クライシス ―接点―

来栖とむ
SF
神話や物語で語られる異世界は、空想上の世界ではなかった。 九州で発見され盗難された古代の石板には、異世界につながる何かが記されていた。 同時に発見された古い指輪に偶然触れた瞬間、平凡な高校生・結衣は不思議な力に目覚める。 不審な動きをする他国の艦船と怪しい組織。そんな中、異世界からの来訪者が現れる。政府の秘密組織も行動を開始する。 古代から権力者たちによって秘密にされてきた異世界との関係。地球とアガルタ、二つの世界を巻き込む陰謀の渦中で、古代の謎が解き明かされていく。

アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。  そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。  【魔物】を倒すと魔石を落とす。  魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。  世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

処理中です...