御伽ヒロイック学院 ーラノベ主人公科ー

もみじ

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第三章 御伽ヒロイック学院

ぬいぐるみ=妖精

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 夕暮れの職員室、強い西日が部屋に射す。
 騒動になるような授業をこれ以上続けるわけにもいかず、午後は自習になる。
 幸い翔は竹さんの魔法で回復した。しかし二度も打たれた彼の怒りはそう簡単には収まらず、しまいには訴えると言う始末。その場は都留岐がなだめてくれたものの、正義のやった事が許された訳ではない。

 正義は島の前に立たされた。
 島は椅子にもたれ、肩叩き棒で自らの肩をほぐす。

「糾先生、全く学習しないね。これで二回目だよ・・・僕等はヒーローである前に社会人なんだからいつまでも感情に流されてたらダメだよ」

「すみません・・・」と小さく返事する正義。

「暴力沙汰はこれっきりにしてよ。ただでさえ生徒数減って経営が厳しいんだからこれ以上評判落とさないでよね。とりあえずこの件は僕の方で何とかするから糾先生はもう帰りなさい」

 そう言うと島は日誌を取り職員室を出て行った。
 正義は深く溜息をつき自分の席に腰掛ける。
 世は実に理不尽だ。明らかに生徒が悪いと言うのに最後は教師が悪者扱いされる。一体自分にどんな非があるというのか?翔には理性殺しと言うイラつく原因がある、それも考慮してほしいものだ。 だがどんなに虫が好かなくても殴って良い理由にはならない、それが世の中と言うものである。
 定時までまだ時間がある。ふと、卓上のノートパソコンに目が行った。学院から与えられた正義のパソコン、それは初期設定のまま淡々と鮮やかなブルーの画面を表示する。
 一体何を思ったか?・・・それはただ何となくだった。正義は無意識から来る興味にまるで操られるように指を動かす。
 画面に表示された「e」のアイコン。それをクリックする。そして徐(おもむろ)に“スティレット”と入力した。エンターキーを押すと検索エンジンがウェヴサイトに眠る膨大な情報を掘り起こす。

 まず短剣の画像が目に飛び込んだ。
 “スティレット”中世紀後半に普及した短剣の一種。瀕死の騎士にとどめを刺すため用いられた事から「慈悲」の意味を持つと記されている。
 そしてその後に魔法少女スティレットの項目が続く。
 正義は躊躇いなくその項目を開いた。

 “魔法少女スティレット”平成13年から14年にかけて活躍した魔法少女。七光ななひかりの街を舞台に仲間の魔法少女バレット等と共に邪氣眼じゃきがんの封印にはげむ。

 バレット、聞き覚えのある名前。今朝の都留岐の浮かない様子に合点がいった。知り合いどころか仲間だったのである。嘗ての戦友がジャスティスに喧嘩を売っていたら誰でも心配になる。ましてや自分の職場に害があるとすれば尚更心境は複雑だろう。
 正義はさらに記事を読み進める。しかしそれ以上に正義の求める情報はそこには無かった。いったん戻り、今度は“スティレット エロ ”と入力する。すると検索エンジンは更なる情報を提供する。

 正義の目が画面に釘付けになった。羽つきのベレー帽に白ポンチョ、性欲を掻き立てるスラリと伸びた足にニーソックス。長い髪を三つ編みにした少女・・・の卑猥ひわいな画像が一面に広がる。
 一見誰だか分からないが髪を伸ばした都留岐と思えばそう見えなくもない。淫乱、痴女、ビッチ・・・正に変態。そこに世界の平和を守ったヒーローとしての面影など欠片もない。多数の獣人に羽交い絞めにされ、ただその性欲を満たすためだけのなげかわしいヒーロー。
 コメントには「スティレットタンかわゆす」「腰が堪らん!ハァハァ・・・」「スティレットは俺の嫁」等、他にも下品な内容が続く。

 心の中で思わず“都留岐はお前の嫁じゃねぇ!!”と突っ込んだ。

 それにしてもその画像の多さには驚かされる。中には犬やら何やら関係ないものもあるが、それを差し引いても優に千は超えている・・・犬?
 これまた見覚えのあるダックスフンド。ただ単に獣人がダックスを強姦しているだけの胸糞悪い画像、だがこの犬何処かで見た。
 その時、正義は強烈な視線を感じる。今朝、職員会議で感じたあの視線である。ゆっくりその方向を見るとそこにはこちらを見つめるダックスの縫いぐるみが一つあった。

 確か教室に置いてあったはずの都留岐の縫いぐるみ。何故ここに?・・・気味が悪い。

 正義は縫いぐるみを警戒しつつ、横目でコメントを読む。
「クゥにののしられたい」「何かに目覚めそう」とどうでもいい事が書かれている。試しに“スティレット クゥ”で検索すると二人の仲睦なかむつまじい姿が映された。

 “クゥ”本名クゥ=テバルト・ティターニア。妖精界、テゥルナノーグ皇国の第五皇女・第十一皇位継承者。高圧的な性格で封建主義的なおもむきがある。魔法少女スティレットのパートナー、彼女と共に超法規的組織ヴェアヴォルフの野望を打ち砕いたとある。

 妖精?・・・まさかこの縫いぐるみ、生きているのか?いや、生きているものが縫いぐるみのフリをしている。

 正義は自分の右手を見た。他者に触れる事を禁じられた呪われし手。あらゆる異能を食い潰し、感染、拡大するむべき能力“能力汚染アビリティ―ペースト
 もし、ただの縫いぐるみならこの右手を拒みはすまい。だがもし生きているのであれば、あの場に居合わせていたのならあらためて能力の恐ろしさを語る必要もない。
 正義はおそるおそる右手を伸ばす。夕日に照らされ、右手の影が縫いぐるみにかかる。一際ひときわ異彩を放つ大きな手がつぶらな瞳に迫った。

!!!?・・・

 手に生じる違和感。それはすぐさま痛みへと変わった。

「痛てぇえっ!!」

 正義は反射的に手を引く。見れば手に鉛筆の芯が突き刺さっている。
 電動鉛筆削りがガリガリと音を立てた。立ち上がる縫いぐるみ、そして削り直された鉛筆を正義の方に向ける。
「無礼者!控えなさい。そのうす汚れた手でワタクシに触れようとは何事ですか!?」

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